Re:夢X夜   作:ろあ

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2019/10/05

 あれは2019年10月4日の夢だった。 

 

 

 

 阪大の近くに、大阪なんとか大学というものがあった。黒い格子で外から透けて見えるオブジェのような理系棟はちょっとした名物である。友人の何人かがそこへ入っていったのを尻目に、私は何か科学ジョークでも交えたツイートをしようと自撮り写真を撮った。

 さて、そうこうしているうちに私は友人に理系棟の二階へと引っ張り込まれた。なんでも、教授を紹介してやるとのことだ。自分の人生はいま若干詰んでいるので、この手の人脈は掴むべきなのだろう。何となくそう思ってホイホイついていくと、四十代くらいの教授がいた。ところが話をしていると、どうもこの教授は恋人を求めているようだ。事前情報から知った私のことがえらく気に入ったらしく、最後にはとうとう連絡先を渡された。友人たちは悪戯が成功してケラケラと笑っていた。

 

 忘れ物でもしたのだろうか、私はそれから再び理系棟に向かった。いつの間にかオブジェのような建物は普通の校舎に変わっている。二階の暗い廊下では西洋人の男たちがはしゃいでいた。中々目的地に着かずうろついているうち、再び二階の廊下に来た。すると今度は西洋人の子供が、腹ペコだ腹ペコだと言ってはしゃいでいた。私は子供の一人に手を掴まれた。気が付くと、近くにははしゃぐ男もいた。そして私は一室から漏れた悲鳴と血飛沫に気付いた。そしてこの西洋人たちは食人鬼なのだと気づいた。子供たちと男に連行され、校舎内を歩く。一階へ、そして地下へ。クリスマスの飾りつけがしてあった。地下の一部は濠になっていた。地上が見える。弟がいた。私は隙を見て濠をよじ登り、弟の手を借りて地上へ出た。地上には巨大な火鍋があって、私はその上を飛んでいた。

 

 それから、追手との対決があった。この頃には物語の主人公は私ではなく、他の何人かだった。あるYoutuberが対決に使うおもちゃを紹介していた。かき氷を容器の中にぶちまけるだけのものだ。ところがそれは対決に使用されず、代わりにテレビゲームのようなものが使われた。ミニゲームで剣に力を貯めたあと、スマブラのような直接対決という形式だ。ミニゲームのBGMは子供が歌うたどたどしいものだったが、不思議な魅力のある曲でファンには懐かしの名曲として愛されているらしい。

 

 そのあと、2D描写の通路で巨大なボム兵と赤コウラとマリオの顔面が渋滞を起こしていた。それを三次元世界から眺めていたのび太(以前旧友を喩えて言ったものではなく、『ドラえもん』ののび太)が、古事記の一節を引用して「僕には足りないところがあるから、君の余分なところで埋めてほしい」と言った。すると近くにいたしずちゃんがのび太のへそに指を突っ込んだ。のび太のへそからは隠語ばかりの載った辞典が取り出された。のび太はこれであのマリオたちを何とかするつもりだったのだろうか?

 

 

 

 それから、私は修学旅行の隊列の最後尾にいた。どこかの旅館の廊下のようだ。この時間は皆、伝統舞踊を披露する時間のようだ。隊列の前の方から順に有志が踊る。どういうわけかすべて日本の伝統舞踊ばかりだ。私は何かないかと思って小学校の運動会でやった座頭市のパフォーマンスを思い出した。しかし、ひとつ前のパフォーマーが伝統舞踊に対する熱烈かつ排他的な思想を叫んだため、流石にここで現代映画のダンスをできる空気ではないなと思いとどまった。

 

 隊列はそのまま旅館を出て帰路に着く予定だった。しかし、そこで小学校時代のガキ大将が不満を漏らした。「なんか、これじゃ物足りない」と。すると私はそれに呼応した。

 「そうだ、このままじゃ後悔が残る」

 「このまま帰っていいのか?」

 「そうだ、一度しかない修学旅行だぞ」

 「いま帰ったら、一生後悔するんじゃないか?」

 「何かの足りない人間になってしまうんじゃないか?」

 「抜け出そう!」

 「抜け出そう!」

 そうして我々は旅館の靴箱を抜けると、その外に広がっていたプールに出た。だだっ広いプール。ウォータースライダーまで着いた豪勢なもので、フェンスに囲まれている。私たちはその中を泳ぐと、トビウオの要領でフェンスを飛び越えようとした。勢いをつけるため、プールの端、地下水路になっている部分に潜ったりもした。

 プールの外は学校で、複数のプールを擁していた。フェンスを乗り越え、プールからプールへ。登れないフェンスや教師の追手をかいくぐるため、私はルートを練った。しかし進めていくうち、私の足は止まった。雲梯のように渡るはずだった庇の鉄板が、夏の日差しに焼かれて掴めたものじゃない。下から算数教師がやってきて、「残念だったな。君のように机上で計画ばかり練る人間の陥りやすいミスだ」と笑った。見ると、ガキ大将が向こうのフェンスを渡っていた。私は救助を要請したが、無視された。しかし、その後気付けば私も彼のいたところまで進んでいた。彼の後を追っていくと、しかし飛び降りる直前で数人のパルスィたちが集まってきて私を蹴落とした。だがそれを受け止めたのもまたパルスィの分身の一人である。

 

 パルスィたちの正体は神々だったらしい。中でも、私を抱きとめた者は太陽神だった。岡本太郎タッチの正体を現した太陽神は輝きを放つと、月や星の神たちと訣別し、この世を照らすことを決めた。この世界は明けない夜の世界だったらしい。『BLEACH』の死神たちが住んでいたが、彼らの身体からもまた、「灯」が失われていたという。太陽神の輝きにより、世界に光が満ちる。死神たちがポエムを読むのを尻目に、私は校舎の端、海沿いにせり出した桟橋をかけていた。

 

 ここでアニメのエンディングのように挿入歌が入った。自分の知る限りでは『対象a』辺りが最も類似するイメージだが、サビはもう少し力強い。ELISAかLiaあたりの高音女声だ。ワルツのリズムに合わせ、しっとりとした声色でAメロを進めてゆく。歌詞は英語で、Bメロは何だったか「aaaaaa, bbbbbb, cccccc」と名詞か形容詞を三つ並べて終わった。私はそれに合わせ、バレエのように舞いながら一歩、二歩、三歩と歩み出た。途切れる伴奏。少しの静寂の後、サビに入る。「I (Shall?) you, forever」と伸びやかなハイトーン。私はそれに合わせて手を伸ばし、踊った。

 

 

 

 正直、自分に作曲ができるならこんなメモより曲を書き留めたいと思う。そんな程度には感動的な曲だった。

 Key作品あたりの、自分の世代のセカイ系作品群を思い出して執筆意欲に襲われた。


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