Re:夢X夜   作:ろあ

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2020/02/10

 どういう風の吹き回しか、任天堂がGB版のポケットモンスターにグラフィック向上パッチを当てた。依然としてドット絵だがカラーになった上に画素数はDS版以上のものだったので、その世代のゲーマーである自分が遊ぶにも堪えるものだった。

 私は近所の国道沿いで羽虫と戯れていた。黄色い風船のような羽虫だ。餌か何かに反応してついてくるのが楽しくてしばらくそうしていると、手持ちのピジョットとはぐれた。ピジョットはやたらと大きかったので高架越しにも視認できたが、合図を送っても帰ってこなかった。門限だか何だかで、やむを得ず帰路に着いた。

 帰り道の途中、私の代表作のヒロインがやはり巨大化していた。彼女は巨大化の弊害によりそれなりの迫害を受けてきたようだ。0.4倍に縮小してやると、人並みの背丈となった彼女は私についてきた。

 

 さて、私は何かしらの施設に集住していた。エレベータで自分の部屋のある階へと上がる。ヒロインは産業革命相当の文明を知らないので、謎の箱を訝しんでいた。エレベータは二つあったが、私は絶対に二人だけで乗れるように乗った。閉まるところに後から誰か来たが、急いで閉めた。

 部屋の前につく。やけに近代的だが、どうやらここは彼女と同じ世界の騎士団の寮のようだ。私の個室にはすでにルームメイトの同僚がいる。それが突然部屋から出てきたので、私は慌ててヒロインをドアの横のロッカーへ「喋るな」と言って押し込んだ。

 このままでは埒が明かない。私は彼女の安住の地を求めて寮内を彷徨った。いつしか寮は中学の校舎へと変わっていた。屋外の非常階段を上ると、裸の上級生たちが随分息巻いた様子で降りてきていた。すれ違うたび、私は怯えていた。一番上まで行くと、上級生のリーダー格が白い学ランを着ていた。どうやら右翼的な学生運動をやっているようだ。リーダーは私の何が気に入らなかったのか、私の喉元に日本刀を突きつけた。いわく、彼らは「義」に基づく活動をしているそうだ。そこで私は彼の言う「義」というものを計るべく、騒ぎに集まってきた野次馬に倫理的な問いを投げるよう求めた。「菓子を盗んだ若い侍女を庇うため、老い先短い老婆がわざと怪しげな笑みを浮かべている。一人を銃殺するならどちらか」という問いだった。

 

 

 

 問いの答えは不明だが、衝突は次のステージに進んだ。我々は天空城の天守閣で様々な勝負をした。熱々のラーメンのチャーシューをカルタに見立てて取り合うものなどだ。私の味方は歴代ポケモンの主人公たちで、なぜかカプコンやコーエーあたりのゲームに見るリアルな造形だった。それから、ある芸能人の顔を共有する二人がバーベルを使った演武対決をしているシーンがやたらと強調された。

 

 

 

 対決の行方は分からなかったが、右翼グループと揉めた私は天空城、ひいては学校に居場所がなくなって去ることになった。

 Web小説界隈を見限ったときのことに準えて、多少の皮肉を残していった気がする。


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