アッシュ・レコード   作:道草 いのり

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ほんっっっとにごめんなさい。
カルディナ編書き終わる前に受験期に入っちゃったため、一旦カルディナ編は中止してしばらくこんな感じで思いついた短編投稿したり前から指摘もらってたとこ修正したりにします。


ウィンドウショッピング

 ◼︎◇ 【高位信仰者】雪姫 桜

 

 今日は服を買うためにウィンドウショッピングにきてる。

 今までは【シンデレラ】を使う関係上着る服は《自動修復》の装備スキルがついたものに限られていた。

 しかし【アルノーツ】を手に入れた今はそかうではない。

 せっかく【アルノーツ】を手に入れたのだから今まではできなかったおしゃれというものをしてみたい。

 ちなみにリーナはアルター王国を離れるということで各方面への挨拶に行っており別行動だ。

 私も後で【司祭】のお姉さんのとこに挨拶に行かなくてはならない。

 

「あ、これかわいい」

 

 そんなことを考えながらお店を回っていると一着のチェニック見つけた。

 真っ白な生地に所々花の刺繍がされており、装備スキルには《破損耐性》と書かれている。

 それ以上のスキルは何も書かれてないが、私の場合は服が壊れないということが何よりも重要だ。

 壊れてさえいなければ【アルノーツ】の《装備品回復》の効果で時間をかければ修復できるし、《破損耐性》も《装備強度強化》のスキルと重ねがければかなり頑丈になるだろう。

 

 《破損耐性》のスキルレベルがそこまで高くないためか、あるいは装備スキルが一つしかないからか、値段も今の所持金で十分買えるくらいだ。

 

「すいません、このチェニックと合う感じの装備を選びたいんですけど、どこら辺にありますかね?」

 

 近くにいた男性の店員さんに聞いてみるとすぐに笑顔で応対してくれる。

 

「はい、えーそれでした…………」

 

「あの、どうかしました?」

 

「いえ、失礼しました。それでしたらこちらなどいかがでしょうか?」

 

 途中で笑顔が固まったような気がしたが、すぐに気を取り直して店の奥から商品を引っ張り出してきてくれる。

 取り出されてきたのはジーンズのショートパンツに亜麻色のローブだった。

 

「どちらも装備スキルはついてませんが元は頑丈な鉱石だったものを<エンブリオ>のスキルで加工したものです。そのチェニックとも合いますしローブの方は雪を避けるときに役立ちます」

 

「へえ、いいですね」

 

 装備スキルがついてないためかどちらも値段はそんなに高くない。

 むしろチェニックよりは安いくらいだ。

 

 それに頑丈というのも…

 …あれ?私って頑丈なのをお願いしますってオーダーしたかな?

 それにこのローブ見た感じ防塵ローブみたいな雰囲気あるけどなんで雪限定で言ったんだろう?

 

「ーーーーーー」

 

「ーーーー」

 

「ーーーーーー」

 

 そのとき、店の外で何か音が聞こえたような気がした。

 

「あれ、今何か音しませんでした?」

 

「さあ、どうでしょう?」

 

「…気のせいかな」

 

 ともあれ、三つとも気に入ったので買うことにした。

 防塵ローブは立ち回りの邪魔になるから普段は身につけないだろうけど、誰かに貸すときとかでも役に立つだろう。

 試着室を借りて、早速着替えてから後で【司祭】のお姉さんに見てもらおうと心に決めるのだった。

 

 

 

 

 ◼︎◇

 時は少し遡る。

 

「いいか?この店に前に俺たちをデスペナにしたやつがいる。お前ら、準備はいいかー!!」

 

「いや、準備って言っても街中だからお前が闇属性魔法でダメージ与えるだけだろ?」

 

「ばか、相手は聖職者系統だぞ。お前の<エンブリオ>で【拘束】すんだよ」

 

 ここに集まった三人は先日桜に無意識のうちにデスペナにされたPKだ。

 デスペナに際してのランダムドロップや【劣化】による装備破壊によって相当な損害を被っている。

 先日の取り調べによってあの時の犯人が桜であると掴んだ三人はその報復にやってきたのだった。

 

「それだけじゃねえ!お前が【拘束】した後《窃盗》や《強盗》スキルで奪えるものは全部奪ってやる!それをもって俺らへの慰謝料としてもらおうじゃねえか」

 

「おう、そりゃいい!あんだけのスキル持ってんなら相当稼いでるだろうからなあ!」

 

「ねえ、それ大丈夫?女の子拘束して持ち物剥ぎ取るとか通報されたりしないよな?」

 

 なお、いきりたつ二人に対し一人冷静な男がいるのはその男が桜による損害をあまり受けてないからである。

【盗賊】でありHPが低かったため装備が壊される前にデスペナになり、ランダムドロップでもあまり貴重なものは失わなかった。

 ここにきたのは完全に他の二人に巻き込まれたからである。

 反面、先程から二人を先導している男は【暗黒騎士】であったため、中途半端に呪怨系状態異常に耐性がありHPも高かったが故に高価な鎧や呪いの武器を軒並みロストしている。

 

「よっしゃいくぞお前らあ!」

 

「おう!」

 

「え、俺の意見はまるっと無視?あ、そう」

 

 そして二人の男が先頭に、勢いよく扉を開けようとしてーー

 

 

 

「ーーーーーえ?」

 

 開けようとした男の右腕がーー()()()()()()()

 なんの抵抗もなく、まるで包丁をケーキに徹しでもしたかのように唐突に腕が切断され、血に濡れた断面を晒していた。

 

「う、うわああっ!!」

 

 男がその光景に思わず後退りをし、足を一歩後退させる。

 すると今度は右足のかかとが切断された。

 靴を装備していたというのに靴すら何もなかったかのように足と一緒に切断されている。

 

 そのままバランスを崩し、体が崩れ落ちると共に残った足を、手を、体を、首を、顔を細切れに切断されていき、その損壊の激しさから地面につく前に光の塵となった。

 

「は、はあ!?」

 

「え、なに今の」

 

 あまりにも突然のことに残された二人が動揺したときにはもう既に時は遅くーー

 

「ひっ」

 

「うっ」

 

 その首から血が流れ出しており、そこでようやく自分の首に()が巻きついてると知った。

 

 いつの間にか店の扉には『乱暴なお客様は入店お断り』と書かれた貼り紙が扉についておりーー

 

「ちょっ」

 

「まっ」

 

 自分たちの体中に『こいつらPK』と書かれた紙が張ってあるのが目に入った時には、その首は既に落ちていた。

 




【凄糸変 アラクネー】
TYPE:ワールド・アームズ
糸巻き型の<エンブリオ>。
ホルスターのようになっており手足や腰など全身に仕込んでいる。

《コンバート・ヤーン》
範囲内の鉱物やモンスターのドロップ品を無数の糸に変換する。
変換できる糸の質はDEXと素材に依存する。
ドロップ品次第ではモンスターのスキルを反映させた糸を得ることも可能。


【偽水晶之捕獲群】
大昔に古代の機械式ゴーレムから人工知能を取り出し現行の<マジンギア>に組み込む研究をしていたドライフの数少ない成功例にして模造品。
フラグマン製の煌玉蟲シリーズよりは性能が劣化しているが消費MPも常識的な範囲になっており魔法系超級職でなくとも使用可能。
【捕獲群】は他の模造品に比べてもかなりの機能がオミットされており、保有スキルも少なくなっているが量産されていてかなりの数がいる。

店員ーー【アルノーツ】を捕らえたPKも普段は戦闘に使わず罠を張ることに使用しており直接的な戦闘に投入はしていない。

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