蒼白詩編は好きな外伝なので去年に続いて2年連続締めくくりで嬉しい。
あんなすごいののあとだと見てくれる人いるか不安だけど続きをどうぞ
◼︎◇【大侍】デュアル
桜がステージに祭りあげられ慌てているころ,
呑んだくれていたデュアルは数件目の店に入るとこだった。
ここまで飲んでいると明日の決闘は大丈夫なのかと不安になるとこだが,最悪ウェグニに状態異常を吸収して貰えばいいと割り切っておりいつも以上に飲んでいた。
「たのもーにござるー」
いろいろ間違っている気がしなくもない日本語を使いながら入った店ではなぜか人だかりができていた。
人だかりの中には大声で騒ぎ立てている者もいれば写真を撮ってる者もいる。
覗き込んでみるとその中心には二人の女の子がいた。
「すげぇ,あと少しで全メニュー制覇だぞ,格好は変だけど」
「まさかあのシフォンちゃんに並ぶ女の子がいるとは,格好は変だけど」
「まじですげぇ,どうやったらあんな小さな体にあんな量入るんだ。格好は好みだけど」
一人は黒髪を二つお団子にしてくくり,魔改造したチャイナドレスを着ている。
袖口を大きくしてミニスカにし,各所にフリルをあしらったいろんな意味で凄そうな服を着た10歳くらいの女の子。
年相応というかなんというかフォークとスプーンを使ってほっぺをリスのように膨らませながら一心不乱に食事を掻き込んでいる。
その胸元には一輪の薔薇が光っていた。
そしてもう一人はその子よりもよほどに顕著だ。
七歳か八歳に届くかどうかという身でありながら,衣類を一切身につけず,代わりに包帯を体に巻いている。
それがミイラ男のように全身に巻いているのかといえばそうではなく,頭や腕や片足,胸や腰などの要所に巻き付けてあるだけで,それ以外は露出している。
まだ成長期すら迎えてないような女児であるだけにそれは魅惑ではなく異質な格好として映る。
先日あったハロウィンイベントから装備を変えていないのであろうか。
こちらはシフォンとは対照的にフォークとナイフを使って静かに食事をしていた。
まるで上流階級のお嬢様のような綺麗な食べ方であるにも関わらず、食べる速度はシフォンとほとんど変わらない。
汚れやすそうな包帯も真っ白なままであった。
そしてさらに目を引いてるのがその二人の隣にうず高く積まれた皿の山。
よほどにいいバランスで立ってるのか,その皿の間にはカップや器まであるにもかかわらず,揺れることなく積まれている。
少女たちの背を足してもまだ高いであろう皿の山は一つの推論を成り立たせるのに十分だった。
それはーー
「まさか,あの二人が食べたのでござるか」
「ああ,メニューの端から全部。もう三時間以上も食ってんぞ。しかもあの二人が一緒に食べてるわけじゃなくて,それぞれ,端から端までだ。すげぇよ,シフォンちゃん以外にもあんな子がいるなんて」
少女たちを囲んでた男の一人が教えてくれる。
「シフォン?」
「中国服のあの子だよ。カルディナのいろんなとこで大食いをやってる女の子でな!一種のアイドル的存在なんだ」
その言葉にデュアルもどこかで聞いた噂を思い出す。
一度とある店を壊滅させたことがあり,それ以外でも店の食料庫から食材を喰らい尽くしてしまうということで数多の店から恐れられてる天災児。
「あの“食いしん暴”でござるか」
「ああ,食事の邪魔だけは絶対するなよ。…死ぬぞ」
最後のはガチだった。
なるほど,一人の素性は分かった。
となると,気になるのは
「もう一人の方は?」
「突如現れた謎の女の子だよ。シフォンちゃんと友達ってわけでもないみたいだし」
「握手とかさせてくれねぇかなあ」
レジェンダリア内外で噂になりつつある
なんとなく面白かったのでデュアルも人混みに混じって野次馬の一人と化す
そしてわずか十分後,二人は同時にスープをすすり終わり,店のメニューを完食した。
「すげぇぇ!」
「シフォンちゃんこれで二十四軒目制覇だぞー!!」
「あの子,あの子は何者なんだ!」
騒然となる店の中で,紙ナプキンで口元を拭ったあと手を合わせてごちそうさまをしてからシフォンが包帯の女の子に話しかける。
「すごい食べっぷりだったのですう!私以外にこんなに食べれる人は初めて見ましたあ!」
食べてる時の寡黙な様子とはうってかわって興奮して腕を振り回しながら話しかけるシフォンに対し
「私もだよ,シフォンちゃんってばすごいね」
包帯の少女は食事のときと同じく優雅にコーヒーをすすりながら答える。
「ぜひ,フレンドになってくださいい!こんな機会は滅多にないのですう!」
見た目の年齢は逆であるはずなのだが,手をブンブン振り回しながら興奮してる女の子と,食後のコーヒーをすすりながら落ち着いて話してる女の子では随分ギャップがあるように見える。
ところで,この高く積まれた皿を店員はどうやって片付けるのでござろうかとウェグニが益体も無いことを考えていた時,
ーーーーッ!!
突如,店が凍りついた。
否,そう錯覚しただけだ。
反射的に後ろに飛びずさりながら腰に展開した<エンブリオ>の柄に手をかける。
店に入ってきた大男の威圧感に先ほどまで大盛り上がりだった人々までおしゃべりをやめて凍りついている。
それほどに男は異常だった。
二メートルを超える身長にボロボロのローブとパンツを纏っているだけであり,フードを深くかぶっていてその顔はよく見えない。
その体に詰め込まれた筋肉は目を引いた。
だが,それよりも注目を集めているのはその男の肌の色だ。
灰色がかった黒であり,リアルではあり得ない肌の色,人々は戸惑い,中には【恐怖】の状態異常を発しているものもいた。
だが,そんな中で大男にしゃべりかける者が一人いた。
「あ,フラらん。もうお食事は終わったの?」
「……」
「そう,こっちも終わったよ。それじゃあいこうか」
知り合いであるのか、はたまた異様な格好をしてる共通点故か、少女は男に臆せず話しかける。
しかし男からの返答はない。
だが、その少女は聞こえてないはずの声を聞いているようであった。
そして飲み終わったコーヒーカップを皿の上に投げ上げて女の子は席を立つ。
その異質な雰囲気に誰もが飲まれて言葉を発するどころか動くことすらできない。
二人が店を出て行こうとした時ーー。
「待って欲しいのですう!フレンド登録してくださあい!」
その大男の雰囲気にも飲まれず先ほどと同じ調子で言葉を投げかけた者がいた。
元気よく手を挙げたシフォンが女の子へと話しかける。
「ーーうん,いいよ。私はリムル・スローター」
「シフォンなのですう!また今度会ったら一緒にお食事しましょお!」
そして店の異様な雰囲気を意に介さず二人はフレンド登録を終え,リムルと大男は店を出て行き,シフォンはお勘定を払いに金貨の数を数える。
やがて緊張が解けたものからザワザワと話し出す。
そんな中、店の中であの大男の脅威を正しく感じとっていた一人であろうデュアルは、柄から手を離せないまま冷や汗を流していた。