アッシュ・レコード   作:道草 いのり

2 / 22
個人的な好みで【上位信仰者】にしてたけど、指摘があったんで【高位信仰者】に修正しました。


進化

 ◼︎◽︎【礼拝者】雪姫 桜

 

 …昨日の死因を整理してみよう。

 まず、レベル上げをしてたらいつの間にか【礼拝者】のレベルが31になってた。

 これはいい。

 

 次、ずっとダメージを受けては回復という工程を繰り返していたからか《継続回復》が下級職では最大のLv5になった。

 ついでに回復魔法の《○○ヒール》系もLv3になった。

 これもいい。

 

 最後…【シンデレラ】が進化した。

 問題はこれだ。

 

 第二形態に至ることで獲得したスキル。

 《灰まみれの日々》

 なんというか、《灰を被ったお姫様》の凝縮版みたいな感じで腕や足に触れたものに強力な【劣化】を付与するというものだ。

 

 ただ、これもデメリットは相変わらず取り払われていなかったようで試しにモンスターに使ってみたら肘のあたりまで私の腕も一気に崩れた。

 代わりにモンスターも《灰を被ったお姫様》の時のように徐々に崩れるという感じではなく、一気に身体全体が塵になったけど、問題はそれだけじゃない。

 部位欠損は《継続回復》でも《サードヒール》でも治せなかったたのだ。

 これはまたどうにかしないといけないな、と思いながら気を取り直して《灰を被ったお姫様》を発動させたら、進化する前より遥かに早いペースで身体が一気に崩れてデスペナルティになった。

 一昨日よりはまだ抵抗できていた感はあるけど、そんなのなんの慰めにもならない。

 下級職で取れるレベルキャップまで《継続回復》を上げたのに、これでは全く釣り合っていない。

 このままでは上級職を取っても上級に至った途端にまた振り出しに戻るという可能性があり得る。

 

 そしてなにより一番の問題ーー服をどうするか、という問題がある。

 今はまだ装備スキルの自動回復で耐えれているけど、限界を迎える時はそう遠くない気がする。

 こんな<エンブリオ>が孵化したことによって私も自信を失ってきてるけど、私はドMでも露出狂でもない。

 むしろデンドロにはいろんな服があると聞いて、学校ではなかなかできないおしゃれとかできるんじゃないかと思って楽しみにしてたくらいだ。

 それがまさかの自分の<エンブリオ>のせいで装備できるものに大きな制限がかかってる。

 

 ファリナに相談しようかとも思ったけど、昨日も具体的なアドバイスはもらえなかった以上、相談してもあまりいい考えが思いつくとは思えない。

 ネットでも調べてみたけど、【礼拝者】以上のジョブを見つけることはできなかった。

 八方塞がりになってしまったので、とりあえずログインだけして噴水の脇に腰掛けている。

 なんとなしに周りの<マスター>の人を見ているけど、まだ初心者ばかりなので参考になりそうな人はいなさそうだ。

 あ、あそこの二人手繋いで歩いてる。カップルなのかな?

 でもデートの先がモンスター狩だったら風情なさそ

「背信ですかー?」

 

「きゃあ!!」

 

 急に横から出てきた顔にびっくりした私は漫画みたいにひっくり返って噴水にダイブしたのだった、

 

「ごめんなさいー、大丈夫でしたー?」

 

「あはは、まあ、なんとか」

 

 どうやら今日はおやすみだったらしく【司祭】のお姉さんーーホホンさんはちょっとお出かけをしていたらしい。

 その折に私がじっとカップルの男女を見つめていたので声をかけた、と。

 ちなみに今は彼女の家に来て着替えさせてもらっている。

 

「でもなんですか、背信って?」

 

「いやー、あんまりにも熱心に見つめてるものですから爆発しろとか思ってるのかなーと思いましてー。国教の教えはスキルで人々を癒しますというものですしー?」

 

「あ、いや、あれはちょっと考え事してただけで」

 

「ですからー、その場合は馴染みの呪術師ギルドを紹介しようかなーと」

 

「馴染み!?」

 

 いかにも聖職者前とした人から出たまさかの言葉である。

 相変わらずぽわぽわしてるので本気で言ってるのかどうかよく分からない。

 

「ところでー、桜さんは恋とかしたことありますかー?」

 

「いきなりですね!?えと、昔幼稚園にいたかっこいい子が初恋だったのかなー?と今では思いますけど」

 

「最近はー?」

 

「えーと、それ以降は特に」

 

 男子が寄り付かない学校に通っているのだ。

 全寮制であることも含めて出会いなどあるはずがない。

 

「そうですかー」

 

「…?」

 

 気のせいだと思うけどどこかふわふわした感じが陰ったような…

 

「で、その悩みというのはー?」

 

「急に話が戻りましたね!?」

 

 ほんとに掴みどころがない…。

 とは言っても服が乾くまで暇なのでダメ元で相談してみる。

 

「という感じなんですけど、解決策ってあります?」

 

「んー、そうですねぇ」

「一応、回復力を上げる装備もあることにはあるんですけど安いとあんまり効果も高くないんですよねー。効果が高いと装備制限もありますしー……あ、そういえばー」

 

「何かあるんですか!?」

 

 いかにも思いついたという感じで手を打ったお姉さんに、私も食いつく。

 

「かなりマイナーなジョブなんですけど【信仰者(ディサイプル)】というジョブがありましてー、回復魔法を一切覚えない代わりに自身のみの回復量を劇的に高めるというジョブですー。普通は聖職者関係じゃない熱心な方が自分の信仰心を示すために就くジョブなんですけどー………これならいけるんじゃないですかー?」

 

 信ずる者は救われる、ということだろうか?

 確かに使い道といえばパーティに回復職がいるタンクが下級職で取るようなジョブかもしれない。

 でも、回復魔法といっても危なくならない限りは隙を作らないために戦闘前にバフをかけて戦闘終了後に回復するという感じだ。

 それなら戦闘が終わった後に全快するまで回復魔法を使い続ければいいということで、わざわざ下級職の一つを埋める必然性は低い。

 ステータスも低いみたいだし、就く人が少ないのも頷ける。

 でも私にとっては好都合だ。

 

「なるほど、ありがとうございます。それで、服は…」

 

「それに関してはあまりいい案は思いつきませんねー。お金稼いで高い装備買った方がいいと思いますー」

 

「そうですか……はい、ありがとうございます。それじゃ、早速【信仰者】に就いてきます」

 

 こうして私は【シンデレラ】のデメリットを克服したのだった。

 

 

 

 

 ◼︎◽︎【高位信仰者(ハイ・ディサイプル)】雪姫 桜

 

 あれからしばらく経った。

【シンデレラ】も第三形態に進化し新たなスキルを覚えたことで私のビルド構築は次の段階に移っていた。

 デンドロが発売されてから二ヶ月も経ったこともあり、話題は最強ビルドの模索や上級になってから覚える必殺スキルにシフトしている。

 とは言っても、私は【生贄】MP特化理論をしようにもテイムモンスターやガードナーがいるわけじゃないし、ジェム貯蔵連打理論を取ろうにも魔法職ではないので、完全に蚊帳の外だ。

 必殺スキルについては【シンデレラ】が上級にすら至ってない以上望むべくもない。

 

 ジョブも下級職三つをカンストし、上級職も【高位信仰者】を取って今はレベル86と言ったところだ。

 本当は【礼拝者】系統上級職である【巡礼者】を取りたかったのだけど、まだ転職条件を満たせていないので仕方がない。

 服に関しては相変わらずで最初に貰った《自動回復》つきの装備を使用している。

 もっと別の装備もつけたいんだけど、《灰を被ったお姫様》に耐えれる装備がこれしかない以上どうしようもない。

 買ってる装備が全て《自動回復》に特化した装備なので、私のステータスは貧弱なままだ。

【礼拝者】が満遍なくステータスが上がるジョブで、【信仰者】がほとんどステータスが上がらないジョブとはいえ、私の素のステータスは<エンブリオ>補正を受けた下級職のマスターの大半には劣っていると思う。

 

 でも、それもそろそろ限界にきている。

 第三形態に進化した時に、服が耐えれる時間がかなり減ったのだ。

 たまに発動しすぎてところどころ服が崩れる時だってある。

 狩場の争奪戦も落ち着いたようで最近は狩場を巡ってても誰かと会うことはないけど、女の子として、そしてロレーヌ女学院の生徒として、野外でこんな格好をし続けるのはいささか以上に気が咎める。

 第四形態ーー上級になったら一般には犬から虎レベルでの違いが出るらしい。

 そうなる前に腕のいい【裁縫屋】か装備を見つけなければいけないけど、それもかなり難航している。

 今は予備で買った【礼拝者】用の装備を着回すことでなんとか耐えてる感じだ。

 

 問題が全て解決したわけではないが、それでも安定してレベルアップはできるようになった。

 いつものように狩場を回りつつレベルアップをしている時だった。

 広域に展開した【シンデレラ】で弱いモンスターを狩りつつ耐えるモンスターがいれば《灰まみれの日々》で触って消していく。

 そんなことをしていた時に

 

「ぎゃああああああワーン」

「きゃああああああああ」

 

 男の人?と女の子の悲鳴が聞こえた。

 もしかしたら女の子が男に襲われているのかと思ったけどどうも男の人の方もかなり切羽詰まった声で、パーティを組んでる人達がもしやモンスターに襲われているのではないかと思い、急いで向かう。

 サブジョブに【冒険家】を取っていたこともあり、すぐにたどり着いたその先には…

 

「お、お気に入りの魔女帽が…」

 

「わー待つワン、今はこれ以外に着ぐるみないワンー!」

 

 装備が溶けて涙目になってる箒に乗った魔女っ子と、あちこちが破けて中の人が露出しかけてる筋骨隆々とした着ぐるみの男の人?がいた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。