◼︎◇【高位信仰者】雪姫桜
「ちょっ、あなた、大丈夫!?」
気づいたら、私の足がなくなっていた。
いや、なくなっていたというのはおかしいのかもしれない。
正確には私の足が切り離されて近くに転がっている。
なんの前触れもなく、唐突に切り離された足から血が溢れ出ていた。
「………っ、どこから」
周囲を見渡しながら警戒するリーナさんが私に回復薬をかけてくれる。
切れた瞬間から《継続回復》による回復は始まっており、【高位信仰者】のスキルによりHPが回復できれば部位欠損も治るのでこのまま放っておいても大丈夫だ。
《灰を被ったお姫様》での死に方の方がかなり怖いせいか、足が切り離されても随分と落ち着いていられる。
「ちょっと、大丈夫なの!?」
「はい、大丈夫です。それより気をつけてください。まだどこに仕掛けられてるか分かりません」
周囲を見渡しながら言うとリーナさんが頷いてる気配がした。
だが五分、十分待っても次の攻撃が来る気配がない。
待ってる間に足も回復してきて、そういえば足と足くっつけてた方が治りが早いかもしれないと思って切れた足のある方を見るとーー
ーー空中に血が浮いていた。
不思議に思って手を伸ばしてみるとダメージを受けた感触があった。
ダメージがあったところを見てみると、まるで本をめくろうとしてページの端で切ったかのように指先が切れていた。
「もしかして……これ」
「どうかしたの?」
「リーナさん、私に考えがあります」
◼︎◽︎???
始まりは一体の<UBM>と<マスター>の邂逅だった。
鉱物を食べ地中を掘り進むワームの一種である【グランド・ミネラル・ワーム】の<UBM>である【深鉱金富 アルノーツ】 。
彼は鉱物生成能力と鉱物操作能力を持ち、地面からスパイクを出すことでティアンやモンスターを襲う<UBM>だった。
しかしとあるマスター。
鉱物やモンスターのドロップ品を糸や紐に変換できるマスターに目をつけたことでその生活は終わりを告げる。
初撃の奇襲を感知され、攻撃の全てを糸に変えられた彼は必死に命乞いをした。
その<マスター>には、彼を無視して討伐するという手もあったが、彼が逸話級だということを知り、一計を思いつく。
すなわち、その<UBM>の鉱物生成能力を利用してその<UBM>と自身を育てるという計画だ。
彼は初日組ではあるものの、その<エンブリオ>の特性上、他から遅れをとっていることを十分に認識していた。
また、データにも精通していたため、ティアンを通じてではあるが、<UBM>にはランクがあり、ランクが高いほうが得れる特典武具の性能は良くなることも知っていた。
彼の<エンブリオ>には鉱物やモンスターのドロップアイテムを変形させる能力はあったが鉱物生成の能力はなかったため、市場価格の高い金属やモンスターの遺骸や全身骨格に手を出せなかった。
また【アルノーツ】には鉱物生成能力や鉱物強化の能力はあったが、変形は【アルノーツ】の気質からか、大雑把なものが多かったので、彼ら二人は性格的な相性はともかく、能力的な相性は良かった。
それぞれに思惑はあったものの、こうして二人は手を組むことになる。
アルノーツが生み出し、強化した鉱石を<エンブリオ>によって細い糸へと変え、それを編んで作った極細のワイヤーを、<マスター>が【
こうして生み出された広域殺界は、<マスター>やモンスターをことごとく討伐しせしめた。
しかしこの作戦を決行してしばらくも経たないうちに、彼らの作戦には支障が出始める。
生物、非生物を問わず、あらゆるものに強力な【劣化】を付与する< マスター>が現れたことにより、作り出した殺界に穴が空くようになったのだ。
元々、耐久値が低いのが糸やワイヤーといった武器種の特徴である。
いくら<UBM>の スキルにより強化されていても限界はあり、その限界を軽くその<マスター>の<エンブリオ>は上回っていた。
おまけに、その<マスター>が有名になり過ぎてこの狩場に来る<マスター>が激減した。
自分達が有名になって実入りが減るならともかく、突如現れた新参のPKに獲物を掻っ攫われるのが我慢ならなかった<マスター>はその<マスター>の討伐に乗り出す。
しかし討伐しに行こうにも敵はどこにいるかも知れない灰の雪の中。
糸を作るエンブリオと糸を操るジョブでは相性が悪く、また<UBM>を討伐されるような危険を冒すわけにもいかない。
結局、その<マスター>は放置され、虫食いのように空いた穴を埋める作業がその<UBM>と<マスター>には必要になった。
結果、間に合わずに犬や魔女を仕留めれないという事態が発生したりしたが、それでも彼らの優位性は変わらない。
彼らは殺界の中心である安全地帯におり、灰の雪の<マスター>も、そんなに深いところまでは来なかったので、それらを一気に退けて辿り着くような人物はいないはずだった。
そう、いまこの時までは
◼︎◽︎【高位信仰者】雪姫 桜
「あと二分程度行ったら相手がいるわ。向こうから攻撃を仕掛けてくる可能性もあるから注意して」
「はい」
金属の糸を見つけてから、私たちの動きは単純だった。
《灰を被ったお姫様》を使い、金属の糸を破壊し、不完全ではあるものの防御魔法により《灰を被ったお姫様》を防げるリーナさんが回復魔法を連続で使いながらPKを目指す。
この作戦を決行するにあたって私の装備をリーナさんに貸してるので、さっきみたいなトラブルが起きることもない。
自然破壊してるという点では、私たちの方が悪者かもしれないけど、あれが森のあちこちに仕掛けられてるようだったことと、私の知ってさえいれば明らかに危険とわかる一時的なスキル発動と違って、かなり高い隠蔽能力と殺傷能力を持ってるあれは、ティアンまで傷つける可能性があるから早急に倒すか<マスター>に話をつけるかしないといけないらしい。
<マスター>だから倒してしまえばまた三日後に復活して同じことをやられるんじゃないかと思ったけど、相手の名前と顔さえ確認できれば指名手配をちらつかせたり相性のいい<マスター>に依頼を出すこととかができるらしい。
さて、私たちがどうやって敵を捕捉してるのかというと、それはリーナさんの持つ【
このジョブは、下級職で取ってる視覚系のジョブスキルのレベルを上げれるらしく、《透視》と《千里眼》を組み合わせて、今は人口の少なくなった森にいる、二つの反応を探知している。
そして、走ること二分ほど。
そろそろ相手が見えてくるんじゃないかと目を凝らしていたとき。
木の陰から接近してきた二本の鎖が私たちの顔を粉砕しようと迫った。
私は《灰まみれの日々》を発動した手で鎖を掴み,一瞬で【劣化】した鎖がボロボロに崩れて地面に落ちる。
一方リーナさんは,最初に私にやったように紫の光を鎖に纏わせ,鎖の動きを無理やり止めた。
相手は、金縁のモノクルに金髪でファンタジーなのに執事服に身を包んだ<マスター>と、全身に青い岩石を纏った大百足だった。
「一応聞いといてあげるわ。降伏の意思はないわよね」
リーナさんの言葉に対する返礼は、先程と同じ鎖の攻撃と地面から生えてきたスパイクで示された。
「いいわ、それじゃあ相手になるわよPKさん達」
「ええ、こちらもそこの方には恨みがありますので」
そして,木々を抜けて対峙するは三人の<マスター>と一体の<UBM>。
後に“灰塵葬儀”と“視本市”。
そして“人斬り服屋”と呼ばれる者たちの戦いが始まろうとしていた。
捏造ジョブ紹介
【大操糸】
【操糸士】系統上級職。
DEXとSPが中心に伸びる。
基本的には糸やワイヤーなどの一定以下の細さの紐状物体の操作に特化している。
鞭や鎖よりもより細かいコントロールが可能なジョブ。
鞭や鎖などはまた別に特化してるジョブがある。
【高位観測者】
【観測者】系統上級職
【聖騎士】と同様に、基本的にはこれ一つでは真価は発揮出来ず、下級職で覚えたスキルを伸ばす上級職である。
MPがよく伸び、視覚に大きな補正がかかるので、前衛と戦う後衛職には重宝される。
キャラメイク飛ばしちゃったせいで主人公の容姿を描写するタイミング逃したのがずっと気になっていたので、この章終わったら一回キャラ紹介も兼ねて桜とリーナの紹介パート作ります。