アッシュ・レコード   作:道草 いのり

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時間かかってすいませんでした

すいません、強度が抜けてました。


エピローグ

「K,RURURURU」

 

「っつ,まだ動けるの」

 

 右半身を崩してなお,【アルノーツ】は動いていた。

 いや、正確には右半身を崩せていなかった。

 崩したのは【アルノーツ】が纏っていた鎧だけで、本体が中にいるのが見える。

 恐らく、《灰まみれの日々》が適用されたのが鉱石の鎧のみだったのだろう。

 いつもならああいう外皮を纏ったモンスターは、外皮を崩して皮下の本体に触るという方法をとっていたが、上から落ちながら触れただけだったので、本体にまで手が届かなかったのだろう。

 本体に触れようにも、足と左手がなくなっていて右手だけじゃどうしようもない。

 そして,【アルノーツ】が《鉱物操作》で私を仕留めようとしたときーー

 

「《ライトニング・レイン》ッ!」

 

 空から降り注いだ雷が,【アルノーツ】のコアを砕き,そのHPをゼロにした。

 

 

 【<UBM>【深鉱金富 アルノーツ】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【雪姫 桜】がMVPに選出されました】

 【【雪姫 桜】にMVP特典

 【深鉱襟巻 アルノーツ】を贈与します】

 

「はーやったー」

 

 システム的にも戦闘が終わったことを知らされ、ようやく安堵の息をつく。

 なんだかレアアイテムも手に入ったようだけど,確認する気力もない。

 確認しようにも、腕一本しかないし。

 

「まったく,詰めが甘いわね」

 

「あ,リーナさん。ありがとうございます。助かりました」

 

「ところでその体,大丈夫なの?」 

 

「あはは,流石に治るのに三十分以上はかかりそうです」

 

 あ,でも切断した手足をくっつけれればもうちょっと早く治るかもしれない。

 そう思ってリーナさんに手足の捜索をお願いすると,十分くらいしたらとって戻ってきてくれた。

 左手だけは見つからなかったそうだけど,あれだけ傷ついてたら仕方ないだろう。

 

「ところで,どんな特典武具が出たの?」

 

 あ,そうだと思い出してさっき手に入れたアイテムの確認を行う。

 それは【アルノーツ】が身にまとわせていた青い鉱石に似た色合いのストールで,こう書かれていた。

 

【深鉱襟巻 アルノーツ】

 <逸話級武具>

 鉱石を身に纏いし大百足の概念を具現化した逸品。

 装着者の装備を強化すると伴に,決して衰えない効果を与える。

 ※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし

 

 ・装備補正

 MP+10%

 HP+100

 

 ・装備スキル

 《装備品強度強化》

 《装備品回復》

 

 これは,これはもしかして

 

「なんだ,わりと大したことない効果ね」

 

「や,や…」

 

「え,どうし」

 

「やっと服が着れるー!!」

 

 右腕だけで万歳して森中に響き渡った声は、丸裸にされた森によく響き渡るのだった。

 

 

 

 ■◇【高位信仰者】雪姫 桜

 

「それで、あなたこの後どうするの?」

 

 足も治って王都に戻ってる途中で突然,リーナさんにそんな言葉をかけられた。

 というか,どうするもなにも

 

「え,王都に行くんですよね?事情聴取に」

 

 途中でPKに引っかかったから話がややこしくなってたけど,元々そういう話だったはずだ。

 

「違うわよ。あなた,この後も王国に残るのかって聞いてるの。どちらにしろ,狩りの度に森や草原を荒野に変え続けるようなら,目はつけられるでしょうし」

 

「んー,そうですねえ」

 

 言われてみてそれもそうだと思う。

 アルター王国での知り合いといったら【司祭】のお姉さんくらいだし,別にそこまで王国にこだわってるわけじゃない。それならいっそ…

 

「【高位信仰者】のレベルももうすぐカンストですし,ちょっと天地や黄河の方に言ってみようかなって思ってます」

 

 アルター王国周辺の狩り場は森や草原のことが多い。

【シンデレラ】が周囲に影響を与えてしまうと分かった今では、これ以上アルター王国で狩りをし続けるのは難しい。

 そこで灰が落ちてもあまり害を及ぼさないカルディナを跨ぎつつ、素手での武術が学べそうな黄河や天地に行こうということだ。

【シンデレラ】は《灰を被ったお姫様》を使わない限りは素手での近接戦闘がメインになる。

 ステータス上昇スキルである《魔女のお誘い》を覚えたんだし、そっちを伸ばすのもいいだろう。

 【アルノーツ】のような《灰を被ったお姫様》が効かない相手だと《武術》系のスキルを覚えていた方がいいだろうし、私の場合は素手での戦闘職で問題視される近接武器を受けとめられないという点も問題がない。

 相手の武器の防具の強度が相当高くない限りはむしろ相手の武器を失わせながら戦えるので非常に有利になるはずだ。

 黄河や天地に行ってしまえば狩りはしづらくなるかもしれないけど、カルディナ横断の間にはもう一つの上級職もカンストできるだろう。

 下級職のカンストだけなら狩場さえ選べばそこまで時間はかからない。

 

「ふぅん、それじゃあ私も一緒に行こうかしら」

 

「へ?」

 

「あなた、面白そうだし」

 

「え?」 

 

「見てて危なっかしいし」 

 

「えぇ……」

 

 確かに私より合計レベルも到達形態も高いリーナさんなら一緒に来てもらえたら心強いだろうけど

 

「でも、【シンデレラ】の灰が」

 

「新しく魔法作ってなんとかするし」

 

「でも【グリモワール】って外部コストありきの魔法は覚えられないんじゃ……」

 

「【大賢者】の<UBM>討伐や決闘見てたから割と西方の魔法は記録したわよ」

 

「あの、えと、でも…」

 

「なによ、嫌なの?」

 

「い、いや。そういうわけじゃ。うぅ…………分かりました。よろしくお願いします」

 

「それでいいのよ。あと、パーティメンバーなんだから敬語は要らないわ」

 

「は……分かった」

 

 そして,私が生まれて初めて組んだパーティは,そのまま継続して東方に向かうのだった。

 

 

 ■□【高位観測者】リーナ

 

 最初に不安に思ったのは,自分の右足が切断されても平然としているときだった。

 いくらゲームで痛みがないとはいえ,自分の手足が切断されたら動揺するし,慌ててくっつけようとする。

 でも,あの子はそんなことどうでもいいとばかりに,私に警戒を促してきた。

 

 あんな<エンブリオ>を持ってるから,そんなことにはとっくに慣れてしまったのかもしれないし,あるいは,そんな精神性だからこそ,あんな<エンブリオ>が生まれたのかもしれない。

 でも,どちらも正解には近くても,届いていない気がした。

 

 二度目は,そのすぐ後だった。

<UBM>に致命傷を与え,倒れ伏しているところを見て,さらに私の心はざわめいた。

 だって,その時の彼女は四肢のうち三つを欠損していた。

 ろくに動けず,目の前に迫ってくる死だが,ほとんどの<マスター>はこれを経験している。

 私だって何度かデスペナルティになったことはあるし,野良で組んでたパーティで,デスペナルティになるものが出たことだってある。

 その時の彼らの目は,諦めや恐怖,あるいは悔しさなどといった様々なものだった。

 

 でも,彼女の目には,何の感情も浮かんでいなかった。

 世界派の<マスター>のように恐怖や怒りを覚えるのではなく,遊戯派の<マスター>のようにゲームだと割り切って退場していくのでもない。

 ただただ,自分の死に対して何の感慨も抱いていなかった。

 

「それは一つの在り方だとは思うけど」

 

 カルディナの噂はよく聞く。

 金のない者は全てを失い、金のある者だけが成り上がれる…弱肉強食の国だと。

 このまま彼女がどこかに行ってしまった場合、きっとどこかでボロボロになってしまう気がした。

 

「ほんと、似合わないのは分かってるんだけどなー」

 

 少しだけ、口調をリアルにのものに戻した後、ほんの少し口元を緩めて、あの子の元に飛んでいくのだった。

 

 

 

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