「俺が聞きたいよ、
まさかアノ人から
直接呼出しが掛かるなんてさ。」
「アノ人?」
思い当たるのは
どう足掻いてもアノ人なのだが
「山本さんだよ、
スケッチブックを見られたらしい。」
「あっ。」
「して、
君があの軽巡洋艦を造ったのかね?」
どう言う訳か海軍本部へ呼び出され、
1937年も終わる12月暮れ
「は、はい、山本五十六閣下。」
「閣下?まぁ、よい、
貴殿は対米戦争を30年頃から
訴えておったそうだな?」
「・・・どちらでソレを?」
「その山積みの
スケッチブックは何なのだ?」
「ぁ~・・・。」
「もはや避けようがないのだ、
ならば使える物を総動員する以外
なんとすればよいと思う?」
「・・・日・独・伊を維持しつつ、
“南方諸島の解放と擁護”が
我が大日本帝国の
課せられた使命かと。」
考えてる、ん?だよな?
考えているんだよな?
「擁護、これは南方諸島を
守る事と言う意味で良いのかな?」
「え?あ、はい、
侵攻ではなく、戦火から守る目的で、
資源の買い付け、
または供与して貰おうかと・・・。」
「なるほど、極力強制せずに、
協力させる方に話を纏めたいのだな?」
「え、えぇ、
対中国、対米、そして対ソ連も
今後の課題の一つだと思っています。」
「紛い物とは言え、
不可侵条約を結んだばかりだぞ?」
「私の耳にも、
“ヨーロッパ周辺がきな臭い”と入っています、
ドイツ周辺諸国と考えれば、
対ソ連もありうると考えるのが妥当です、
幾ら陸軍国家のドイツと言えど、
“戦争に出れる人間は限りがあります”
イタリアも同様に、
周辺を敵に囲まれています、
双方を守る為にも、
“大西洋を手中に収め”
太平洋に関しては、“迎撃に特化する”しか、
この戦争を
戦い続けるのに道は無いかと・・・。」
「対米は迎撃に特化か。」
「はい、
物量に関して我々の工業力は
どう足掻いても勝てません、
軍人の数も敵いません、
なら、少しずつでもその“意欲を減衰させ”
日米戦争を続けるべきでは無いと、
“米国軍人に刷り込んでいくのです”」
「・・・それは超長期化を孕んでいるな?」
「はい、ですが粘り強さ、質で言えば
我が大日本帝国は
最大の武器になりましょう、
そして、大西洋ルートでの、
イタリア、ドイツの救援が実現すれば、
途中航路で賛同する国を増やし、
寄港地として、港を借り受け、
その国々が抱える“国難”を、
我々大日本帝国が解決する為に動く、
植民地支配を主とする
イギリス、アメリカとは違うと、
世界中に知らしめるのです。」
「・・・貴殿は外交問題も考えられるのか?」
「専門分野は本職の方々にお任せします、
あくまで“提示”は出来ますが、
本職ほどの知識は無いのです。」
「ふむ、貴殿は少佐だったな。」
「暫定です、
正式な軍人では無いので、戦争が終わり次第、
一国民に戻ります。」
「・・・俺が掛け合おう、
少将に抜擢し、
使える物を全て俺にぶつけて来い、
それらを俺が精査し、落とし込んで行く。」
「しょっ!?
んな高級階級は必要ありませんよっ!?
それに構想はあれど、運用に関しては
ド素人と変わらないのですよっ!?」
「どこがだ?
あの“衝雷”空技省が飛び跳ねて
再調整を進めているぞ?
再調整機も先日、俺が乗ってな、
そのまま正式採用したのだ、
これからは
南方諸島の迎撃用水上戦闘機として、
量産体制を確立して行くぞ?」
「い、何時の間に・・・。」
「来年だが、
海軍航空本部長として兼任が決まってな、
正式な発表前だが、貴殿には言っておこう。」
「なっ!?もしや、
岡田大佐からお話しを受けてましたね?」
「ん~、そうだったかの?」
やられた、
せっかく零戦を表に、裏でこそこそやるつもりで
やって来た事が全てご破算だ・・・
「まぁ、今直ぐには変わらんよ、
零戦は出来たばかり、
各艦艇も改装を進めているが、
如何せん時間と資材が足りぬ、
この“地下工場ライン”も、
素晴らしい案件だ、
地下鉄規格を狭軌規格と、
標準軌規格、馬車規格、
この三つに分け、
各支線を地下工場へ直結し、
そこで組み立て生産、
そのまま鉄道を経由して、
各飛行場、港へ搬出、
現地で最終組み立て、試験飛行、正式配備、
既存鉄道の地下化事業も面白い、
極め付けは“植物油による航空機、
艦艇、陸上兵器の燃料代替え”
これは地上で出来る事だ、
我が国は油が無い、
そこをよくわかっている、だが、
専門知識はないから
悪魔で提示のみにしていたのだな?」
「は、はい、
しかし、少将はやり過ぎです、
せめて大佐で留めておいた方が
軍内部の揉め事も少なく済むかと。」
「なんだ、欲があるんだかないんだか、
日本男児足る物、強欲に生きねば!」
「避けられない開戦をタダでは待ちません、
使えるドックを教えてください、
“狩川”級軽巡洋艦を重油燃焼専用缶式で、
もう2隻は艦隊護衛に付けたいのです。」
「あぁ~、すまんな、それも進んでおるのだ。」
は?このおっさんは今、なんて言ったんだ?
「貴官が運用した“狩川”が
丁度ドックに入っておったのを、
耳にしてな、勝手ながら見学したのだ。」
何してくれてんだこのおっさんは~っ!!
「設計図も見たが、
軽巡にもバルバスバウを搭載するとは
素晴らしい事だ、
他の設計図、構想図も拝見してな、
“対空駆逐艦構想”も、
来年の暮れには、“一番艦”が竣工するのだ、
しかし、“重砲撃型重巡洋艦”の構想は
たまげたよ、
55口径30cm3連装主砲3基、
60口径15.5cm3連装2基を搭載、
40口径12.7cm連装高角砲6基、
25mm3連装機関砲座8基、
水上機も“衝雷”で事足りる、
雷装に関しては
艦内スペースの制約もあるから
連装なのは構わん、これも、“一番艦”が、
同じ来年の暮れに竣工する、
して、“巨大空母”の構想はどんな物か、
じっくり話し合おうでは無いか?」
▽
あぁ、あの人、色々ヤバい、
真珠湾攻撃を考えた張本人と知ってはいたけど、
岡田大佐もそうだったけど、
この“別世の大日本帝国軍人”は、
どっか頭のネジ、
外れてんじゃないのかって思う。
「でも、
これで“信濃”を近代型空母にする事が出来る。」
あの後の話で、
“一号艦(後の大和)”“二号艦(後の武蔵)”を
話題に挙げると、驚かれたが、
その船体を流用した、巨大空母構想を話し出すと、
目つきが冗談抜きでヤバくなった。
「まさかなぁ・・・。」
岡田大佐を呼び戻すなんて話も飛び交っているし、
正直、不味い、非常に不味い、
航空戦艦の構想も話して、
つい、
“扶桑型の扶桑・山城”“伊勢型の伊勢・日向”を
口に出してしまったのだ。
「まぁ、全権は山本さんだし、
俺は提示とスケッチブックを提出しただけ、
うん、そう言う事にしておこう。」
書き出しが終わっている物は、
全て山本さんが持って行ってしまったので
「・・・スケッチブック、また買うか。」
次なる構想を書き起こして行く。