ありふれた職業で世界最強~いつか竜に至る者~   作:【ユーマ】

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単なる布石回のつもりが思いのほか短くなったので、他の文章も追加して第一章最終話としてUPしました。


最終話『世界を超える為の旅路』

 刀、それはこのトータスに来た時にカナタと雫が自分の武器に選ぼうと思っていた物だ。けれどトータスに刀は無く、仕方無しに形状が近い剣でガマンしていた。けれど今、カナタの目に映って居るのはまごう事なき刀。柄の底の部分にキツネの尾をイメージした房飾りが付いており、白塗りの鞘に収められている。

 

「何でこんな所に刀が……それにこの道具」

 

 それ自体は見覚えのある鍛冶の道具。けれど、この世界にはまず無いものだ。何せトータスなら、わざわざ金床で金属を叩かなくても、錬成の技能一発で武器を作ることができるからだ。部屋を見渡すと机の上に一冊の日記が目に付いた。被った埃を払い、それを開く。

 

『その日私は不思議な人に出会った。亜人というだけで虐げられる中、私を対等に見てくれた人、種族など関係無しに私の剣の腕を認めてくれた人』

 

 最初はオスカーの日記かと思ったが、どうやら違うらしい。この日記を書いたのは狐人族(こじんぞく)と呼ばれる亜人の女性。亜人とは獣の特徴を持ち合わせた人を指すのだが、共通してるのは魔法への適正が無い事。その為、神の恩恵である魔法を授かれない亜人族は人から虐げられ、奴隷として扱われる事が多い。けれど物事には例外が存在している。この日記の女性も突然変異で魔力を操作できる素養を持っていた。けれど、魔物と同じ素養を持つ存在である彼女は同族にも迷惑を掛けない為に逃走、それ以降は亜人である事を隠しながら冒険者として暮していたそうだ。

 

『彼の話によれば自分はエヒト神によってエドと呼ばれる異世界から飛ばされたそうだ。なるほど、この世界の常識に染まっていない異なる世界の住人なら、亜人を下に見ないのも納得だ。結局、彼に誘われるがまま私は彼と一緒に冒険者として活動する事になった』

 

(エド……江戸? 俺達の前にもトータスに召喚されたやつが居たのか……)

 

 まぁ、ありえなくは無い。エヒトへの信仰もあるが、前例があったからこそ、この世界の人々はカナタ達が異世界の人間だという事をすんなり受け入れてるのだろう。カナタは日記を読み進める、それから暫くはその男と一緒に冒険者として過ごした日々が綴られていた。それが変わったのは日記の真ん中辺りのページ。

 

『今日から新たな戦いが始まる。人々を自分の欲を満たす為の道具としか見ないエヒトを討つ為の戦い。リーダーである彼女は若干、いや、ものすごくウザイところがあるが、それでもみんな良い人たちばかりだ。迫害され放浪しつづけた私はやっと自分の居場所を見つけられた気がする。うん、頑張ろう、みんなの為に、そして神の思いつきと気まぐれで故郷から離れ、この世界へと飛ばされた彼の為にも』

 

 この日記が此処にある時点で予想していたが、彼女もまた解放者の一人。それも歴史的に明かされていない第8の生存者のようだ。それから、解放者として仲間を増やしていく様子、そしてその異世界の男性への惚けの比率が増えている。

 

(日記の女性よ、お前もか……)

 

 その内容に少しだけ目を細めながらも更にページをめくっていく。

 

『帰還の時が近い。良かったと思うと同時に少し寂しくも思う。決して優しい世界ではなかったけどそれでもこのトータスが私の故郷、それを捨てる事になるのだから。けれどそれ以上に彼と、そしてこれから生まれてくるこの子と一緒に、今度こそ穏やかに暮していきたい。生粋とは言えないが曲がりなりにも剣士だった私も随分と丸くなったものだと思う』

 

(やっぱり解放者達なら世界を渡る術を作り出せるわけか)

 

 エヒトの一手により反逆者の汚名を着せられオスカーと共にこの地へ生き延びた彼女達、ある時、この女性が身重である事を知り、もはや進退窮まる状況に彼らを、そして生まれてくる子供まで巻き沿いには出来ないとし、解放者達は彼らを男性の住んでいた世界に逃がした。前例があるなら自分達が出来ない道理はない、今後の方針が決して間違いでないことを知りカナタは自然と口角がつり上がる。そして日記は最後のページを迎える。

 

『私の歩みと、剣士としての証はここに置いていく。彼らが次代に向けてこの迷宮を遺そうとしてる様に、私も私なりに次代に向けて何かを遺したかった。今これを読んでる貴方にとっては見慣れない剣かもしれないけど、あの人と“オルクス”の名を持つ彼の合作だ。何より、実際にこれを振るっていた私がこの剣の強さを保証する』

 

 それは一人の女性が異世界の武士と出会い、絆を紡ぎ、大願の為に戦うもそれを果たせず、けれど最後に小さな幸せを掴む歩みの記録。

 

「そなたのこれからが、自由な意志の元にあらん事を。ユナ・F(フィクセン)・ヤエガシ……ヤエガシ?」

 

 最後に日記を記した女性の名前を口にし、思わず硬直する。

 

(偶然……それとも?)

 

 同姓の人間は居るし、読みは同じでも字が違う事もある。だからこそ単なる偶然と言う可能性の方が高い。けれどカナタの脳裏には彼女の姿が浮ぶ。

 

「真の歴史、竜魂士、そしてこいつ。ホントこの場所は探せば探すほど衝撃の事実が見つかるもんだな……」

 

(もしも会える機会があれば、色々確かめてみるか……)

 

 そして日誌と刀を回収して最後に部屋全体をもう一度見渡した後、カナタはその部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 それから更に一ヶ月が過ぎ、カナタ達はある魔法陣が書かれた部屋に集まっていた。その魔法陣こそ迷宮から地上へと繋がる転移魔法陣。この住居にたどり着いてから二ヶ月、カナタ達はいよいよ他の大迷宮攻略に乗り出そうしていた。

 

「いや~、やっと出発か。この二ヶ月間ホントいろいろあったな。ホントに……」

 

 カナタはそう言いながら、ハジメ達三人にジト目を向ける。ハジメは気まずそうに、ユエは動じる様子も無く、視線を逸らし、香織は苦笑を浮かべている。あのお悩み相談室の後、この3人は正式に恋人同士となった。それまでは良かったのだが……

 

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

『ユエと香織に渡しておくものがある』

 

 ある日、ハジメはユエと香織にそれぞれ指輪とネックレスのセットを贈った。

 

『ハジメ君、これは?』

 

『ああ、神結晶を使って作ったアクセサリーだ』

 

 今から一週間前、神結晶から神水を採取できなくなった。神結晶とは魔力が結晶化したものであり更に結晶に魔力が蓄積し、飽和状態になる事で液体として溢れ出る、この溢れ出た液体が神水だ。つまりは結晶に内包されていた魔力が無くなった事で神水を採取できなくなったわけである。けれど、ハジメは神結晶を破棄せずに結晶の魔力を蓄える事のできる性質に目を付けた。ハジメ以外は3人とも何らかの形で魔力を消耗する。最上級クラスの魔法を連発するユエと竜化や帝竜の闘気で常時魔力を使うカナタは特に消耗が激しい。そんな訳で外付けの魔力の貯蔵庫として神結晶を使った装備を作る事にした。その試作や性能テストにはカナタが協力しており、彼も剣に絡みつく竜の意匠こらした金属細工。その瞳と剣の鍔に神結晶をあしらったモノをチェーン状のネックレスとして胸に掛けている。そしてそのユエと香織の二人にもその完成品を贈った訳だ。ハジメがその性能を説明している中――

 

『……プロポーズ?』

 

『……なんでやねん』

 

 アクセサリーをじっと見つめていたユエが一言そう呟き、香織をハッとした表情でその視線を彼に向けた。

 

『それで魔力枯渇を防げるだろ? 今度はきっと二人を守ってくれるだろうと思ってな』

 

『……やっぱりプロポーズ』

 

『いや、違ぇから。ただの新装備だから』

 

『大丈夫、ちゃんと判ってるよ』

 

『香織……』

 

 そこで香織はニコッ笑顔になった。

 

『ハジメ君は照れ屋さんだもんね。でも大丈夫私達はちゃんと判ってるから、ハジメ君の気持ち』

 

『最近ホントに人の話し聞かないな! お前等っ!!』

 

『……ハジメはベッドの上でも照れ屋』

 

『ふふ、でもこの間はすごい素直にだったよね』

 

『……あの時のハジメは凄かった』

 

『あの、止めてくれます!? そういうのマジで!』

 

『ハジメ……』

 

『はぁ~、何だよ?』

 

『ありがとう……大好き』

 

『私もだよ、ありがとうハジメ君、愛しています』

 

『……おう』

 

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 こうした甘ったるい会話が普通に繰り広げられるぐらい、3人の桃色空間の濃度と空間形成の頻度が増加した。その為、住居内を一人ぶらつく時は気配察知の技能まで使ってたぐらいだ。と言うのも不用意に彼らの居る場所……特に風呂場とハジメの寝室に近づこうものなら、香織かユエの悩ましい声が聞こえてくる事がある(日によっては二人纏めてと言う時もあった)。風呂場はその広い空間ゆえに物凄い声が響くし、寝室だと何かが軋む音もセットで聞こえてくる為、カナタにとってこの2箇所はある意味では危険区域と化していた。

 

(俺達4人だけって時間はこれで終わるし、これからは少しは落ち着くだろう……落ち着くよな?)

 

 そうこれから地上に戻り旅をする以上、色々な人たちと関わる事になる。町や村で寝泊りする事もあるしハジメ達も少しは自重する筈だとカナタは思っている、若干拭えぬ不安はあるが。そんな中、カナタは自身のステータスプレートを取り出す。

 

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竜峰 カナタ  17歳 男 レベル:????

 

 

天職:竜魂士

 

 

筋力:15670

 

体力:10080

 

耐性:9890

 

敏捷:14880

 

魔力:12300

 

耐魔:8870

 

 

技能:竜魂解放[+帝竜の闘気]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪[+飛爪][+三爪][+乱爪]・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・念話・追跡・高速魔力回復・生成魔法・言語理解

 

 

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 新たに明かされた竜魂解放は恐らくは竜変身の事だろう。他にも幾つか前の階層も探索し、初見の魔物が居ないか探ったり(目的は勿論肉)、修錬を行う中で派生技能も増えて、ステータスも遂に平均五桁となった。レベルに関する表示が可笑しくなったのは恐らく魔物肉による強化の所為で本来の自分のスペックの限界を超えた結果だろう。けれどこんな人の域を超えたステータス、これを身分証明書として使う事を考えると表示の操作は必須である。幸い、プライバシーを考慮してか、名前と年齢、天職以外は隠蔽可能だ。天職についてはありふれなさ過ぎる特徴を逆に利用して自分でも判らない、と言う事にすれば良いだろう。

 

「よ、よし。それじゃあお前等、準備は良いか?」

 

 ハジメが少しだけ前に出て3人のほうを振り返る。今のハジメの服装は白のワイシャツに薄手に袖無しのグレーのベスト、それにネクタイをつけており下には黒いズボン。まるでバーデンダーの様な服装の上に黒のロングコートを着ている。熊に斬り飛ばされた腕はハジメ自身が新たに義手を製作して装備し、吹き飛ばされた右目も魔眼石と言う魔力の流れや属性と言った通常の眼では捉えられないモノを視認する事が出来るアーティファクトを義眼代わりに埋め込み、普段は眼帯をつけている。その姿を見たカナタが「モロに厨二だな」と呟き、彼を精神的にノックアウトしたのは別の話だ。

 

 武器の方も改良と製作を重ね、様々な地球の現代兵器を再現した物を使っている。それだけ色々作っても持ち歩き大丈夫なのか?と思うがそれを解決したのが住居に残されていた“宝物庫”と呼ばれる指輪のアーティファクトだった。これは指輪の宝石の中に広大な空間を造り、そこに色々な道具を保存、周囲1メートル以内の範囲で出し入れを可能とする品だ。これによりハジメは普段使う黒い二丁拳銃“ドンナー&シュラーク”を筆頭に歩く武器庫に近い状態となっている。

 

「うん、私はいつでも大丈夫だよ。ハジメ君」

 

 香織も今までのプリーストの様な服装から一変。彼とのペアルックを意識したのか、同じワイシャツにベスト、それにズボンの変わりに黒のスカートとロングブーツ。そしてネクタイの代わりに幅の細いリボンをつけている。装備は最初は杖を作る事をハジメは提案したが、香織自身がそれを却下し、今まで使っていたドンナー・ライトを改良。以前よりも更に威力と重量を増やし、更に銃弾ではなく治癒のエネルギーそのものを圧縮して撃ち出す事で通常の治癒魔法の射程外に居る相手も瞬間的に治癒できるモードを追加した。そんな白銀の銃ドンナー・ライト改め“ナイチンゲール”が香織の新たな武器となった。とは言え、ナイチンゲールでは回天や周天の様な対複数治療や自動治癒の様なシンプルな単体回復魔法以外には対応できない為、そこは銃その物に治癒師の使う魔法の陣も予め刻んである。

 

「……ん、私も大丈夫」

 

 ユエもフリルの着いたドレススカートにハジメと同じデザインで色を白にしたコートを着て、頭には黒いリボンを付けている。また、魔法攻撃メインなためユエに武器は必要ないのだが、彼女にも肩紐のついた巨大な水筒の様な武器が用意されている。これはユエが水魔法を行使する際に、大気中の水分を集めると言う過程を省き、魔力消耗を抑える為のものだ。結果、筒に空いた穴からウォーターレーザーの要領で水が撃ち出される。

 

「いつでもどうぞ。と言うよりさっさと外の空気を吸いたいところだ」

 

 カナタは白いシャツの上に、白いフサフサの襟をした黒のジャケット、同色のズボンに肩掛け式と腰に巻くタイプが一体となった斜めになってるL字型のベルトを巻いている。そのベルトの背中部分には金属の固定具がつけられており、そこに巨大な大剣が固定されている。今までの両刃式と違い、今回は片刃のバスターソード。刃の反対部分に長い立方体の形をした何かが取り付けられている。これの正体は巨大な銃身、グリップとトリガーは折り畳み式で銃身の側面に横向きに取り付けられている。銃弾は炸裂弾頭でサイズも350ml缶並の大きさを誇る超大口径ライフルだ。

 

 その威力はハジメのシュラーゲンを超えるが、装弾は一発一発手動で行わないと行けないのと、剣として振り回す以上、色々取り付けられない事からスコープサイトの様な照準装置の類も取り付けられない為、もっぱら敵の集団や体格の大きい相手など、細かい狙いをつける必要が無い相手に使うことになる。そんな砲撃と剣撃、2種類の攻撃手段を両立させた武器“砲剣・帝ノ顎(みかどのあぎと)”それがカナタの新たな刃である。

 

 

 装いも新たになった彼ら三人を見渡し、ハジメは魔法陣を起動させる。

 

「俺達の武器や力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

 

「ん」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

 

「うん……」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん。世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

 

「今更だろ? そもそもそれ言ったら俺の場合は存在自体がエヒトを崇拝する連中にとっての敵みたいなもんだしな」

 

「それでも、俺達は負けねぇ。俺達4人なら最強だ、全部なぎ倒して、一緒に世界を超えるぞ!」

 

「んっ!」

 

「おう!」

 

「行こう、ハジメ君!」

 

 4人が魔法陣に入ると、その輝きが更に強くなる。これより始まるは誰に強制されるわけでもない、他でも無い彼ら自身の意志と願いの為の道行き。帝竜を継いだ者と、いつか世界最強となるありふれた職業を持つ者、そしてその仲間達の旅路の物語。

 




と言う訳で第一章漸く終了です。そして次回からは第2章、オリ主のヒロイン達も漸く登場し始める……前に、幕間として勇者(笑)サイドの話を一つ挟みます。

因みにカナタの服装はガンブレード使いの彼の服装から獅子っぽい飾りが無くなった様な見た目です。
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