ありふれた職業で世界最強~いつか竜に至る者~   作:【ユーマ】

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第13話『砕き、そして打ち貫くもの』

「死ね」

 

 その一言と共に、オルカンから発射されたミサイルがミレディを直撃。上半身が爆煙に包まれる。

 

「やりましたか!?」

 

「……シア、それはフラグ」

 

 そして、そのフラグの通りに爆煙を腕で振り払い、ミレディが姿を現す。ガードした腕の部分は所々焦げてはいるが、ほぼ無傷だ。

 

『ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~、さぁ、もしかしたら私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~、私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~』

 

「悪いが俺にはさっきの雑魚たちと大差ないように見えるがな」

 

『ほんっとに生意気なやつだなぁ~。いいよ、教えてあげる』

 

 ミレディの眼光が一瞬だけ強く輝くと、彼女の背後に先ほどの甲冑ゴーレムの集団が浮き上がるように現れた

 

『これが私の神代魔法(ちから)、空飛ぶゴーレムは見たことある?』

 

 ミレディはその腕を横に広げ、どこか得意げな雰囲気だ。

 

『これが一気に君達に襲い掛かるわけ。どう? ビビった? 今謝ったら――』

 

 直後に響く流水音と連続する発砲音、そして爆発音によって彼女の言葉は止まった。

 

『……あれ?』

 

「浮いてるだけなら、ただの的……。あと、いちいちうるさい」

 

 ユエのウォーターカッター、カナタの榴弾砲撃。そしてハジメの大型ガトリング砲メツェライが上空の鎧集団を一気に殲滅する。因みにだがカナタの榴弾は甲冑には当っておらず、香織が榴弾を撃ち抜き、起爆させた。

 

「おー怖い怖い、話してる最中だってのに容赦ないな……」

 

 そう言いながらハジメは眼帯をめくり、魔眼石の視界でミレディを見る。人体で言う心臓辺りに魔力の反応がある。そう、ミレディ・ゴーレムの核の反応だ。

 

「なんだ、お前には核があるじゃないか」

 

『な、なんなの君達!? ここって魔法使えないはずなんですけどっ!?』

 

 流石に重火器の類は見た事無いらしくミレディの目にも彼らは魔法を使った様にしか見えず、流石の彼女もうろたえた。

 

「心臓の位置だ。いくぞ、ミレディを破壊する!」

 

「うんっ!」

 

「んっ!」

 

「了解ですぅ!」

 

「あいよ」

 

 直後にカナタ達は再度散開、シアがミレディの背後を取りドリュッケンで殴りかかるが、ミレディはそれをフレイルで迎え撃つ。体格差の通り、パワーはミレディの方が上らしく少しの拮抗の後にシアが跳ね返される。

 

『あれれ、忘れたの? ゴーレムは幾らでも再生できるんだよ』

 

 シアが弾き飛ばされた先、そこに待ち構えて居たかのように甲冑ゴーレムの一体が彼女の背後を取り、剣を振りかぶる。

 

「はっ、忘れてねーよ。安心しなっ!」

 

 が、それはカナタがすれ違い様に真っ二つ。シアはドリュッケンの砲撃の反動を利用し体制を整え、近くのブロックに着地。カナタは跳躍方向に浮いていたブロックの壁を蹴り、三角飛びでミレディの上空を取り、落下の勢いと共に突きを放ち、ミレディが拳で迎え撃つ。ガァン!と金属のぶつかり合う音が響き、カナタの刀身がミレディの拳をひしゃげさせ、僅かに突き刺さると、すかさず引き金に指を掛ける。

 

「砲剣のウリっていえば、やっぱこれだろ!」

 

 剣を突き立ててからの零距離砲撃、直撃を喰らいミレディの拳はかなり軋んできている。

 

「シアッ!」

 

「はいですっ!」

 

 そして爆風の衝撃で離れるカナタと入れ違いに体勢を整えたシアが拳に向かってドリュッケンを振り下ろすと、遂にミレディの拳が砕け散る。

 

『ふぅん。中々、良いコンビネーションだね。でもねぇ……』

 

 砕けた拳付近に他のブロックを引き寄せ、ミレディがそれを砕くと破片が再構成されて拳が再生された。

 

『ごらんの通り、コレぐらいの損傷ならすぐ治しちゃうからねぇ。ドヤァ』

 

 態々、『ドヤァ』と口にするミレディにカナタのこめかみがピクリと揺れるがすぐに、ニィっと笑みを浮かべる。

 

「ドヤッてるとこ悪いが……」

 

 直後のその声はミレディの胸の辺りから聞こえてきた。そこにはワイヤーフックとスパイクで身体を固定し、ミレディの核の位置にシュラーゲンの銃口を突きつけるハジメの姿。

 

『っ!? 何時の間に――」

 

 先ほどまで、シアとカナタが仕掛けていたのはあくまで陽動。ハジメがミレディに肉薄するまでの時間稼ぎだ。

 

「本命はこっちだっ!」

 

 対物ライフルの零距離射撃が刺さる。ハジメは一度ミレディから、離れ他の4人も彼らに合流する。

 

「……どう?」

 

「手応えはあったけどな……」

 

「これで、終わってくれないですかね~」

 

『いやぁ~、ちょっとヒヤッとしたよ』

 

 が、そこにはいまだ健在のミレディの姿。直撃を受けた所の鎧の一部は砕けているが、その内側には更に金属の装甲が見えた。

 

『“アザンチウム鉱石”、この装甲を破らない限り、私は倒せないよ~』

 

 その言葉にハジメが苦虫を噛んだ様な表情を浮かべる。

 

「ハジメ……あれって」

 

「この世界で最も硬い鉱石だ。俺の装備にも幾つか使われてるし、カナタの剣の刀身もそれで出来てる」

 

『さっすがオーちゃんの迷宮攻略者! 知ってて当然だよねぇ』

 

 直後、ミレディの瞳の輝きが強くなる。神代魔法を発動させたようだ。

 

『それじゃあ、第二ラウンド、行ってみようかぁっ!』

 

「ハジメ君っ、上!」

 

「避けろっ!」

 

 その言葉と同時に散開、再び彼らのいた足場が落下してきた何かに破壊される。けれど今度はミレディでは無い。彼らの立ってた足場の上に浮いていた足場だった。二つの足場はぶつかり、共に粉々になる。

 

(今まで浮いてた足場が落ちてきた? 一体のなんの神代魔法だ……?)

 

 ミレディの魔法をハジメが分析していると、今度はハジメの真横から足場が迫ってきて、それを身体を捻り辛うじて避ける。

 

「横からだとっ!?」

 

(ありえねぇ! まるで重力を無視したかの様な……っ!?)

 

 宙を浮くゴーレムや足場、浮いたかと思ったら落ちてきた足場。そしてさっきのまるで横から()()()来たかのような足場。

 

(そうかっ!)

 

「お前等っ! こいつの神代魔法は恐らく重力だ! 動く足場も浮いてるゴーレムもそれで説明がつく!」

 

『おや、意外と早く気がついたね。そう、重力を操れば……』

 

 ミレディは重力で自らをを横に落とす。それにより、フレイルの鎖は伸びきり、メイスの様になった鉄球が彼らに迫る。

 

『こ~んな事もできるんだよぉっ!」

 

「カナタ、シア! 何とか奴の動きを封じてくれ! そうすりゃ、手はある!」

 

「判りました!」

 

「了解だ、任せたからなっ!」

 

 帝竜の闘気を発動させたカナタが剣を盾にして突進してきた鉄球を真正面から受け止める。

 

『帝竜の闘気……アーちゃんの力だね』

 

「ご名答。でも、俺の方ばっかり気にしていて良いのか?」

 

『はっ!?』

 

 カナタが鉄球を受け止めると同時に、シアがフレイル、そしてミレディの腕を伝い、彼女の眼前に現れる。

 

「さっき吹っ飛ばされた、お返しですっ!」

 

 そしてミレディの顔面に向かってフルスイング。完全に不意を突かれたミレディは吹っ飛ばされて後ろのブロックの上に仰向けで倒れる。

 

『や、やるじゃない……けど、そこのウサギさんのハンマーではこのミレディちゃんに傷つける事は――』

 

「そんなのは百も承知ですよ。ユエさん! カオリさんっ!」

 

「いくよッ! ユエ!」

 

「……ん!」

 

『っ!?』

 

 ミレディが視線を横に向けるとそこには予め回り込んでたユエと彼女の肩に手を乗せた香織の姿。

 

「廻聖!」

 

 迷宮を探索してる最中、実は香織の回復魔法を発動させる方法をカナタ達は見つけていた。それは対象に直接触れる事。大気中を介さない零距離の発動ならば魔法の効果が現れる。が、それでも怪我を治すとなれば治癒魔法の効果は外部に現れる為、纏雷同様にその効果は落ちる。

 

「……凍柩!」

 

 ユエの声がトリガーとなり、ミレディゴーレムのボディが氷に閉ざされ始める。

 

『嘘ッ!? どうしてここで上級魔法が使えるのさっ!?』

 

「……カオリのお陰」

 

 そして廻聖の様な魔力を譲渡するだけなら相手に直触れて大気を介させない事により霧散される事無く全ての魔力を譲渡できる。分解作用により消費が増し、魔力不足で発動できない上級魔法もユエの封印を解いた時同様、香織の廻聖で不足分を補ってやれば発動に持っていける。とはいえ、一発の発動で香織もユエも魔昌石シリーズも含めて魔力は空となるが、それでもユエの魔法によってミレディのボディは顔を残して殆どが氷に包まれた。

 

「よくやったぞ。二人とも」

 

「……ん」

 

「うん!」

 

 他の3人も合流し、代表してハジメはミレディの核の位置にシュラーゲンを突きつける。

 

「終わりだ、ミレディ。この状態じゃ、再生も身動きも出来ないだろ」

 

 いつもははしゃぐ様な物言いをしているミレディだったが、ハジメの宣言に対して不気味なぐらい無言だった。

 

「諦めて神代魔法を渡すか、俺にトドメを刺されるか……おい、何だまってやがる?」

 

 その瞬間、ハジメは見た。ミレディの眼光が今までにないぐらい輝いてる事に。

 

「こいつ、まさかっ!?」

 

 こんな状況でもまだ手を用意してあるのか?そう判断し、ハジメはミレディにトドメを刺すべくシュラーゲンをトリガーを引こうとする。

 

「みなさんっ!」

 

 が、それよりも先に青ざめた顔をしたシアが叫んだ

 

「未来が見えました!」

 

 シアの未来視の強制発動。即ちこれから命に関わるレベルの何かが起こる。それを示すように空間全体が振動している

 

『ふふふ、とっておきのお返しだよぉ……』

 

「……降ってきます!」

 

『騎士以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に〝落とす〟だけなら数百単位でいけるからねぇ~、見事凌いで見せてねぇ~』

 

 直後、彼らのいる空間、その天井の全てのブロックが彼ら目掛けて落ちてくる。

 

「ユエ! 香織! 掴まってろ! 絶対に離すなよ!」

 

「んっ」

 

「うんっ!」

 

「シアも早く掴まれ!」

 

「はいですぅっ!」

 

 今回ばかりはシアの能力では自力で回避しきるのは不可能。カナタはシアを自分に掴まらせて、再び帝竜の闘気を発動。ハジメもオルカンを全弾発射し、ブロック群の一部を破壊。次いで瞬光を発動させる。ハジメはブロックの隙間を縫う様にブロック群を回避、カナタは強化された能力で大剣を片手で振り回し、ブロックをなぎ払う。それぞれの方法でブロックの大雨を避け続けるも、その密度は増し続け、遂に5人はブロックに埋もれる形になる。やがてミレディを封じていた氷は砕け、彼女はその巨体を起こす。

 

『ミレディちゃん……ふっか~~つ!』

 

 そして、目の前のカナタ達が埋もれてるブロックの山に目を向ける。

 

『う~ん、流石にちょっとやりすぎちゃったかな?』

 

 ブロックの山に変化は無い。ミレディは圧死したか、良くて重傷で気絶してると判断した。

 

『やっぱり、無理だったかなぁ~、でもこれくらいは何とかできないと、あのクソ野郎共には……えっ?』

 

 その時だ、ブロックの隙間から赤い光が漏れる。それは少しずつ輝きを増して行き――

 

『まだ、終わってないぜっ! ミレディっ!!』

 

 突然、ブロックの山が吹き飛ばされ、それと同時に竜変身したカナタが飛び出してくる。

 

『なぁっ!?』

 

 その勢いのまま、ミレディの腕を掴み、後方のブロックの壁に押し付ける。

 

『そっか……核を受け継いだって事は変身も出来るって事だね……懐かしいなぁ、その姿』

 

 が、それでもミレディの余裕は崩れず、竜化したカナタにかつての戦友の姿を重ね懐かしんでいる。竜魂士を作ったのは自分達、だからこそ彼女もその詳細な性能は熟知している。

 

『これでカイザーブレスをぶっ放されたら流石にやばかったけどねぇ』

 

 流石のアザンチウム鉱石もカイザーブレスの熱には敵わないだろう。けれど今までの戦闘の消費と、この空間の特性を考えればカイザーブレスの使用はおろか、変身も長くは持たない。

 

『熱烈な壁ドンにミレディちゃん、ちょっとだけドキッっとしちゃったけど……フフフ、無駄な足掻きだったね』

 

 カナタの背後にブロックをぶつけようと再び重力を魔法を発動させようとすると、カナタがニィっと牙を見せる。

 

『だったら、もっとドキッとするもん見せてやろうか?』

 

『……へっ?』

 

「ただし――」

 

 直後、カナタの背後からハジメが飛び出してくる。その手には義手に装着するタイプの巨大な杭打ち機、パイルバンカーが装着されている。ハジメの魔力を動力に本体の大筒は赤いスパークを放ち、中に装填されている杭が高速で回り始め、時々大筒と擦れて火花を散らしている。

 

『ちょっ!?』

 

「――心臓(コア)がぶっ壊れるほどの奴だがなぁっ!」

 

 そしてその心臓に向かって杭が打ち込まれる。その一撃は確かにアザンチウムの装甲を破り、突き刺さる。が、それでも、コアには届かない。

 

『ぐぬぬぅぅぅっ!』

 

 続けてもう一撃打ち込もうとした所でミレディが火事場のバカ力で自分を押さえつけるカナタの腕を片方振り払い、ハジメのパイルバンカーを殴り破壊する。

 

『ハ、ハハハ……』

 

 流石のミレディもコレには内心冷や汗を掻いたが、杭はコアには到達していない。尤も、ミレディ自身は知りえないことだが、パイルバンカー射出にも纏雷の電磁加速を用いており、その貫通力は減少していた。フル稼働の状態であれば、今頃コアも打ち砕かれていただろう。

 

『ざんね~ん、あと一歩だったのにねぇ』

 

「何勝ち誇ってやがる?」

 

『えっ?』

 

「……シアっ!」

 

 ハジメとて、それは承知しており一撃で破壊できるとは思っていない。だからこその二段構え。ミレディが気づいた時には既にシアはドリュッケンを振りかぶりこちらに落ちてきている。狙いは勿論、今なおミレディの胸に刺さっている杭。ドリュッケンの砲撃の反動による加速も付けて振り下ろされたハンマーがミレディに突き刺さった杭をさらに深く押し込み――

 

『な、なにぃいいいいいいいっ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ミレディの驚愕の絶叫と共に、そのコアを貫いたのだった。




今回の廻聖による上級魔法のごり押し発動はちょっと無理があるかなぁとは思いましたが、正直そうしないとミレディ戦における香織の活躍の場が他に思いつきませんでした・・・。

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