ありふれた職業で世界最強~いつか竜に至る者~   作:【ユーマ】

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第3話『牙向く悪意』

 オルクス大迷宮。それはトータスの中でも有数の危険地帯とされる7つの大迷宮の一つ。しかし、大迷宮の中では割とメジャーな方で出現するモンスターなどの情報もある程度充実。そのため、冒険者や兵士の訓練によく使われる場所でもある。

 

「剣の振り方が素人のそれじゃないな。地球でも剣を振っていたのか」

 

「……まぁ、ある程度は。ただブランクが長いのでかなり鈍ってますが……」

 

「これで天職が剣士であればと思うと、実に惜しいものだな」

 

 現在は何人かのパーティに分かれて交代で戦っている。が、無能な俺達を入れてくれるパーティなど無く(香織は俺らを誘おうとしたが光輝にやんわりと止められた)、自分達は騎士団員の人と組んで戦闘している。光輝達や他と比べて時間も掛かるし、他の騎士団員の援護を受けながらだが、どうにか殲滅する事に成功した。

 

(気分は組み分けであぶれて、先生と組む事になった生徒って感じだな……)

 

「しかしあの坊主も中々やるものだな。錬成は戦闘向けのスキルじゃないんだが、あんな使い方があるとはな」

 

 現在探索している階層では既に能力不足が目立ち、戦闘に参加することが無くなったハジメだが浅い階層を探索していた時は騎士団員が瀕死にさせたモンスターと戦わせる等して少しでも経験を積ませようとしていた。しかし手負いの獣ほど何をするか判らない。それを知ってか、ハジメは錬成でモンスターを穴に落したり、足周りを固める等、動きを封じて確実にトドメを刺すという戦法を見せ、今まで非戦闘向けの鍛冶技能としか捉えられていなかった錬成の新たな可能性を示したハジメにメルド達は感心していた。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

 

 けれど、そんな活躍など霞んでしまうほどのまばゆい光の斬撃がモンスターを一閃の下に葬る。戦っているのは光輝達、勇者パーティだ。

 

「ふっ、今の敵で最後だ」

 

 と、倒れるモンスターを背に誇らしげに笑みを浮かべているのはご存知勇者光輝である。そんな彼の姿に、クラスの女子達は頬を赤く染め、うっとりとした視線を向けている。

 

「みんな、もう大丈、ぶっ!?」

 

「この馬鹿者が! あんな大技を使って、洞窟が崩落したらどうするんだ!?」

 

「うっ……す、すみません」

 

 言い切る事が出来れば、女子から「キャー」と黄色い声援が挙がっていたであろうそのセリフはメルドさんの拳骨によって中断される。現に斜め上方向に放たれた光の剣はモンスターの後方の天上の一部も切り崩してしまっている。

 

「あれ? なんだろう、宝石。凄くキラキラしてる」

 

 香織がそう言いながら切り崩された天井を指差す。其処には青白い宝石が輝いていた。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 グランツ鉱石は特別な効果や特徴こそ無いが、そのきれいな色合いから主に装飾品に使われており、結婚指輪等の特別なアクセサリーには大抵グランツ鉱石が使われているらしい。それを聞いた香織は「素敵……」と呟くと、こっそりとその視線をハジメへと向ける。

 

「だ、そうだぞ。ハジメ」

 

「いや、なんで僕に振るの?」

 

「ああいうの加工して、きれいなアクセサリー作るのは錬成師の本分だろうが。後は言わんでも判るだろ?」

 

 そんな彼女の視線に気付き、香織の方を指差しながらハジメに声を掛けると香織は慌てて視線を逸らし、顔を赤くし俯き、ハジメも気恥ずかしそうに視線を逸らす。そんな二人の様子をクククと笑いながら、可能であればあの鉱石を譲ってもらおうと考えた俺は、メルドさんにトラップ等の安全の有無を確かめてもらおうと彼に話しかけようとした。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、その前に香織の様子を見た檜山が我先にとグランツ鉱石を回収しようと、壁を登っていく。メルド団長がそれを注意してもお構いなしだ。やがて、檜山はなんの躊躇いも無くグランツ鉱石に触れる。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 次の瞬間、あの教室で見たような魔法陣が部屋一杯に広がり始める。すぐに部屋から出る様にメルド団長が叫ぶも間に合わず、次の瞬間には俺達は大きな橋の上に居た。この階層の入り口付近なのか、橋の両側にはそれぞれ奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 不測の事態にこの階層を探索しようという考えは無くメルドは上階への撤退を指示する。が、直後、橋の両側に魔法陣が現れ、魔物が出現する。階段側には大量の骸骨の魔物“トラウムソルジャー”が、そして通路側には体長10メートルを超えるトリケラトプスの様な魔物が出現した。

 

「まさか……ベヒモス、なのか……?」

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

 メルドの呟きを肯定するかのように、ベヒモスは雄たけびを上げ、その角に炎を灯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例えチート持ちといえど、光輝達はまだ発展途上。将来的なら兎も角、今はベヒモスには敵わない。けれどトラウムソルジャーならば、今の光輝達でも対処できる。ならば自分達の役目は障壁でベヒモスを足止めし、その間に彼らに撤退してもらう、メルドはそう考えていたのだが――

 

「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

 

「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

 が、仲間は決して見捨てないのが勇者、と言う短絡な考えが光輝を今もその場に留まらせ、メルドの全員で生存するための作戦を破綻させていた。

 

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

 そんな中、戦況を冷静に判断した雫はメルドと一緒に撤退を促す。しかし――

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎……ありがとな」

 

 そんな状況にあろう事か光輝の考えを龍太郎が支持、それにより光輝の目には手伝ってくれる仲間が居るなら大丈夫だと不退転の決意が宿ってしまった。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」

 

「雫ちゃん……」

 

「天之河くん!」

 

「おい、天之河! 今すぐクラスのみんなの所に行ってくれ!」

 

「南雲君!?」

 

「か……竜峰君まで、何でこんな所に!?」

 

「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」

 

「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君達がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて二人は……」

 

「ベヒモスよりも先にあっちだろうが!」

 

 そう言ってカナタが指差した先には未だにトラウムソルジャーの群れと乱戦を繰り広げる生徒達の姿。

 

「メルドさん達も光輝達もベヒモスに掛かりっきりになってる事でみんなの統率が乱れてんだよ。お陰で未だ退路の確保ができてないんだ!」

 

 普段どおりに戦えばすぐに殲滅する事も出来た。しかし、不測の事態に加えて指揮をしていた騎士団員がベヒモスを抑える為に手が離せなくなり、場を指揮する人が居なくなった結果、混乱状態の中で戦うことになってしまった。

 

「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 二人の言葉を聞き、光輝がベヒモスとクラスメートたちの方に交互に目を向けた後――

 

「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」

 

「下がれぇーー!」

 

 やっと、後方の援護に向かおうとした光輝だったが、直後にベヒモスが障壁を破り突進してくる。すかさず南雲が石の壁を張り衝撃を殺すも、全員が吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

「やるしかねぇだろ!」

 

「……なんとかしてみるわ!」

 

 光輝が聖剣を構え二人に時間稼ぎを求めた。こうなったら後方に下がるにもベヒモスを討伐するしかない。一か八か自身の出せる最大の技をぶつけるつもりだ。

 

「香織はメルドさん達の治癒を!」

 

「うん!」

 

 カナタは負傷したメルド達を一箇所に纏め、香織が治療をしやすい様にして南雲が石壁を張って守りを固める。とは言え、先ほどの突進の威力からすれば気休めにしかならないが。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」

 

 やがて、今の光輝が出せる最高の一撃。真直ぐに突き出した剣から放たれる光の奔流がベヒモスを直撃する。爆風と衝撃で上がった砂煙がはれた先には――

 

「グルルルルル……」

 

 頭部全体を赤熱化させ、こちらを威嚇するかのようにうなり声を上げるベヒモスが居た。

 

「ボケッとするな! 逃げろ!」

 

 そして、その状態で跳躍し、こちらにヘッドバッドの如く落ちてくる。全く歯が立たない事に呆然としていた光輝達だったが、メルドさんの声を聞いて正気に戻り、間一髪で回避するもその衝撃によるダメージで既に満身創痍。けれど、ベヒモスも橋に頭部がめり込み、動けなくなっている。

 

「坊主ども! 香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」

 

 この状況で全員が生き残るのはもはや不可能。せめて彼らだけでも逃がすべく、自らは血戦を挑むべく武器を構える。けれど、メルドさんを見捨てたくない、と言う気持ちはハジメも同じ。

 

「あの、僕に考えがあります!」

 

 やがてハジメはある作戦を示す。その提示された作戦内容を聞き、メルドはハジメの目をじっと見つめ、やがて一言――

 

「……やれるんだな?」

 

「やれます」

 

 ハッキリとした力強い返事を聞き――

 

「まさか、お前さんに命を預けることになるとはな。……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

 

「はい!」

 

 そして、簡単な攻撃魔法で相手を挑発。その挑発にのったベヒモスはメルドに向かって先ほどのヘッドバッドを放つ。

 

「吹き散らせ――〝風壁〟」

 

 バックステップでかわすと同時に魔法で石片や砂埃を吹き飛ばす。再び頭部をめり込ませ、動きが止まったベヒモスに南雲が肉薄。

 

「錬成!」

 

 引き抜こうとする頭周りの石を修復。更にベヒモスの足元も陥没させ、錬成で固める。頭部と足全てを固められた事でベヒモスの動きが完全に止まる。そうしている間に、メルドと光輝達は撤退を開始する

 

「待って下さい! まだ、南雲くんがっ」

 

「坊主の作戦だ! ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する! もちろん坊主がある程度離脱してからだ! 魔法で足止めしている間に坊主が帰還したら、上階に撤退だ!」

 

「なら私も残ります!」

 

「ダメだ! 撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」

 

「でも!」

 

「坊主の思いを無駄にする気か!」

 

「ッ!」

 

 メルドの言葉を聞き、香織は歯を食い縛りながらも光輝達の治療を開始する。それから数秒後の事だった

 

「くっ、マズい!」

 

「南雲君、後ろっ!!」

 

 彼らとすれ違うかのように数体のトラウムソルジャーがハジメの方に向かう。ただでさえ戦闘能力が無い上に今はベヒモスを食い止めるので精一杯な状況。ハジメはソルジャーの存在に気付くも動けずに居た。

 

「すいません。この人、お願いします!」

 

 負傷してる騎士の一人に肩を貸して撤退を手伝っていたカナタだったが、それに気付くと回復を終えていた騎士にその人を預け、剣を抜いてソルジャーの後追った。

 

「カ、カナタ……待って……」

 

 満身創痍の中、彼を止めようと雫が声を振り絞るも、それは彼の耳に届く事は無く、やがて最後尾に居たソルジャーの背後に剣を叩き込むと、他のソルジャーも身近なところに居た敵に狙いを定めた。

 

「お急ぎのところ悪いが、ちょっと俺と付き合ってもらうぜ。骸骨共!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「坊主共! 準備が出来たぞ!」

 

 それから暫く、合流したメルドと光輝達により階段付近のソルジャーは一掃。メルドさんの声が響くと同時にハジメは最後にもう一度ベヒモスを拘束、ソルジャーの殲滅を終えた後も護衛の為にそばについていたカナタと一緒にその場から全速力で離れ始める

 

「今だ、魔法詠唱準備!」

 

 そして二人の撤退を援護すべく、生徒達は魔法の詠唱を始める。

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 それが目に付いたのはほんの偶然か、もしくは今までの彼の行動が目に余るものだった事から無意識のうちに視線が向いたのだろう。香織から治療を受けながら彼らの様子を見ていた雫だったが、やがてその視線は一人の生徒に釘付けとなる。それはありえなくは無いが、彼の能力を考えればありえない行動。

 

「雫ちゃん? どうし……」

 

 たの?と言う言葉は続かず、香織も雫の視線の先に目を向け、雫と同じ違和感を覚える。彼は何で態々あの魔法を使っている?なんで――こんな状況であんな薄暗い笑みを浮かべている?

 

(まるで、南雲君をいじめている時みたいな――)

 

「今だ! 放てぇっ!」

 

 けれど結論がでる前に、指示と共に様々な属性の魔法がベヒモスに大挙、ダメージこそないがその衝撃にベヒモスが足を止める。うまくいった、後は二人が合流したら急いで撤退。落ち着いたら二人を思いっきり労ってやろう、メルドはそう思っていた。しかし――

 

(なんで?)

 

「ぐっ!?」

 

 突然、火球の一つが軌道を変えて二人の足元に直撃、その衝撃で後方に吹き飛ばされる。そして魔法の攻撃もやみ、ベヒモスは怒りの咆哮を挙げ、二人に向かってヘッドバッドを放つ。どうにか体勢を立て直し、ベヒモスのヘッドバットを避けるも、度重なる橋への衝撃と幾度と無く行われた錬成による構造変化の負荷がたたり、遂に橋その物が崩落し始めた。

 

「カナタっ!」

 

「待つんだ、雫!」

 

「行くんじゃねぇ、八重樫! お前も巻き込まれる!!」

 

「放してっ、放してよ、二人ともっ!!」

 

 崩落に巻き込まれ、ベヒモスと一緒に落ちていく二人。その様子に唖然としてた雫と香織だったが、やがて状況を認識した雫が近くに光輝が居るにも関わらず下の名前で彼の名を呼び、飛び出そうとするも龍太郎と光輝が羽交い絞めにして食い止める。その力は男二人がかりでやっと止められる程で少しでも気を抜けば振りほどかれるほど。もはや自身の身体への負担などお構い無しに雫は二人を振りほどこうともがいている。

 

「二人はもう無理だ! 落ち着くんだ! このままじゃ、雫の体が壊れてしまう!」

 

「ふざけないでっ! 今此処で二人を助けにいかないで、どうするのよ!?」 

 

「ダメだ! これ以上、仲間を無闇に危険に晒すわけにはいかない!!

 

「あの二人だって仲間でしょっ!? それに今此処で見捨てたら――」

 

 それはできる限り雫を気遣っての言葉。けれど、その言葉は雫には逆効果だったらしく――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人はホントに、死んでしまうわよっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――光輝が気遣い、あえて口にしなかった決定的一言を雫が叫ぶ。その叫びは、雫同様状況を把握できず、唖然となっていた香織の耳にも入り、それが急速に香織に現実を理解させていく。

 

(南雲君と竜峰君が落ちていく……? 二人が死んじゃう?)

 

 脳が状況を理解し、それに合わせ手が震え始める。

 

(南雲君が……死ぬっ!?)

 

「い……」

 

 彼女の手から杖が滑り降ち、カランと乾いた音を立てる。

 

「いやぁぁあああああっ!!」

 

 その音が合図と言わんばかりに、悲鳴とも共に香織も崩れていく橋へと向かって飛び出す。それを一人の男子生徒が止めようと手を伸ばすが、その手は空を切り――

 

「香織っ!? 香織ぃーーーーーーっ!!」

 

 一瞬の躊躇いも無く、香織も奈落の其処へと身を投げ出して落ちていく。突然の出来事に雫を抑えながらも光輝が叫び声が響く。親友の行動に一瞬だけ動きを止めた雫だったが、やがて先ほど以上の力で暴れ始めた。

 

「放してっ! 香織まで、私が、私もっ!!」

 

「だから、落ち着けっ! おい、光輝、ボーっとしてんじゃねぇ」

 

「放してっ! 放せぇっ! はなしっ……」

 

 その時、そばに来ていたメルドが雫の首筋に手刀を落とし、彼女の意識を刈り取る。

 

「メルドさん……」

 

「光輝、気持ちは判るが、今は残った全員が無事に生還するのが優先だ……彼女の事、頼めるな」

 

「……はい」

 

 気絶した雫をお姫様抱っこで抱える光輝、だが、その声にはさっきまでの勇者としての覇気は無い。

 

「全員、今は余計な事を考えるな! 今は兎に角生きて脱出することが先決だ! 判ったらさっさと動け!」

 

 普段ならば、彼らに鼓舞するのは光輝の役目。けれど、光輝も香織と言う身近な人物の脱落に意気消沈してしまっており、代わりにメルドが他の生徒達にも指示を飛ばし、それを受け生徒たちもノロノロと動き始める。

 

(すまねぇ、ハジメ……すまねぇ、カナタ)

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 暗い暗い地の底に“それ”は居た。やがて、“それ”は何かを察知したかのようにその目に赤い光が灯る。

 

(イル……)

 

 それは思考し、そして結論する。悠久の時、もはや理由すらも思い出せない、されど確かに訪れの時を待ち続けた存在。

 

(ウケツグモノ……)

 

 長い時を経て、自我も殆ど失われた意識に僅かな歓喜が宿る。その待ち人の名は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(イズレイタルモノ……リュウコンシ)




最後は絶叫祭りになってしまった。

そして、ありそうでなかった、香織も落ちてくケース。次から何話かは一話ごとに一人称視点の対象キャラが色々移り変わるパターンになりそうです。

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