今は収まっているんですが、また始まるので次に再新するのはいつになるかわかりませんが、どうぞよろしくお願いします。
「ふぅ、終わった」
初日の授業も終わり、俺は一息入れていた。転校生が男だから珍しいのだろう。たくさんの女子に質問攻めで参ってしまった。質問に答えている時にかんちゃんの突き刺さる視線があった。嫉妬しているんだとわかっているが、目立つのは嫌だから部屋で何とかしよう。だが、その前にやらなきゃならないことがある。
「更識さん」
「・・・・・・」
「済まないけど、生徒会室ってどこにあるのかな?」
「・・・・・・」
無視ですか。ムスッとした顔でディスプレイを見ている。おそらくISの調整をしているのだろう。プレッシャーがハンパないです。
「あ、黒翼くん。どうしたの?」
クラスメイトの女子が話してかけてきた。
「あぁ、生徒会室はどこにあるのか更識さんに聞いていたところだよ」
「あ!そ、それじゃあさ!私が案内するよ!」
なんだか興奮しながら、言っているが近づきすぎだって!だがなぜか後ろに引っ張られていた。振り向くと制服の端を掴むかんちゃんの姿があった。
「更識さん?」
「私が、案内・・・する」
「で、でも更識さん忙しそうだし、アタシはヒ マで時間があるし!」
「大丈夫・・・。気分転換、したいから・・・。行こ・・・」
誘ってくれた女子に目もくれず俺を引っ張っていく。
「おっとと。ごめんね!」
とりあえず謝ってかんちゃんについていく。
「ここが・・・生徒会室」
かんちゃん言われるがままに歩き、一際は綺麗な部屋の前に着いた。どうやら此処が生徒会室らしい。
「かんちゃん、ありがとな」
「気に、しないで・・・。気分転換、だから・・・」
そういうと来た道を戻っていった。やっぱりまだ、楯無さんに引き目を感じているのかな。でもやっぱり、姉妹なんだからいつかは---といけない!今から暗くなってどうする。このままじゃ、楯無さんに弄り倒される!あの人相手だと、こちらは防戦一方になっちゃうからな。
「あら?斑鳩くん?」
「あ・・・。た、楯無さん。お、お久しぶりです・・・」
目的の楯無さんが現れた。かんちゃんの姉でこのIS学園の生徒会長。おまけにロシアの国家代表でもある、出鱈目な人である。まあ、うちの家族も出鱈目だからな。
「なんか失礼なこと考えてなかった?」
「なぜ、ばれたし!」
千冬さんと同じでNTなのか!?強化された人間なんですか!?
「お姉さんに隠し事は出来ないのよ」
扇子を開き、口元を隠す。扇子には『千里眼』と書かれていた。それは言葉の意味が違うような・・・。
「それにしても久しぶりね。元気にしてた?」
「楯無さんこそ、虚さんに迷惑かけてたんでしょ?」
「・・・さ、中に入ってゆっくり話でもしましょう。お茶もだすわ」
ナチュラルに話をそらしましたね。ということは図星というわけか。
「あら、黒翼様?」
「あ~、くろっちだ~」
この遅い口調と背筋が伸びるような凛とした声を聞き、かんちゃんと同じ幼少期を過ごした二人を思い出す。
「本音に虚さん!お久しぶりです」
「お久しぶりです、黒翼様」
「久しぶり~、くろっちー」
本当に本音は変わらないな。昔もこんな口調でかんちゃんと一緒にいた。その度に虚さんに怒られていたが・・・。
「会長、ここで立ち話もなんですから部屋に入ったらどうです?」
「う~ん、それもそうね。斑鳩くん入りましょ」
さすが虚さん、手慣れている。まあ、何年も楯無さんに付き添っているんだからこれくらいなんともないんだろうけど。そうして、俺は言われるがままに生徒会室に入った。
「ハイ、どうぞ。つまらないものですが」
「あ、すみません」
虚さんが紅茶とクッキーをだしてきた。いい香りが鼻を満たす。
「ああ、美味しいですね」
「でしょ。虚ちゃんが煎れた紅茶は世界一なんだから」
確かにそうかもしれない。こんなに美味しい紅茶は久しぶりに飲んだな。
「そんなことはありませんよ、お嬢様」
「お嬢様じゃないでしょ」
「そうでした、会長」
お辞儀をしながら虚さんは席についた。ちなみに本音はすでに座ってクッキーをバリバリと貪っている。煎餅いじゃないんだから、そんな風に食べるなよ、本音!
「ひさし~ね、くろっち」
「お前も相変わらずだな」
クッキーの食べかすを口のまわりいっぱいに付けている姿は、とてもかんちゃんの専属メイドには見えないな。
「虚さんもかわらずお元気そうで」
「ええ、ところで今日はどのような用件でしょうか?」
「虚さん、そんな堅い口調じゃなくてもいいですよ。小さい頃はよく遊んだ仲なんですから」
いくら俺がかんちゃんの婚約者だからって堅すぎですよ。そういうのは少し寂しく感じる。今は学生で先輩後輩の関係なのだから・・・。
「しかし、そういうわけにはいきませんから・・・。例え今は一学生でも黒翼様は簪様の婚約者。申し訳ございません」
何故か謝られてしまった。そんなつもりで言ったのではないのだが・・・。
「まあ、いいじゃない。ところで今日はどういう用件?」
「まぁ、ただの挨拶ですよ。お義姉さん」
そう、楯無さんに挨拶するためにきたのだ。ただそれだけのために。だって、行かなきゃ何かされるんじゃないかと心配だったんだよ。前例があるんだし・・・。
「あら、義理堅いのね義弟くんは」
にたにたと笑いながら、紅茶を啜る。しかし、カップを置いた後の顔は先程の優雅さはなく、もじもじしていた。
「ところでさ、簪ちゃんは・・・どうしてるかな?」
「姉妹なんだから、自分で本人に聞いたらどうです?」
「き、聞けないから聞いてるんでしょ!」
やっぱりか。本当に姉なんですか?どうしてかんちゃんの事になると、そうしおらしくなるのかな。
「そうですね、なんだかISの調整をしてましたね」
「あー、やっぱり」
なんか心当たりがあるんですか。
「やっぱりってなんか知っているんですか?」
「いやぁ、実は簪ちゃん専用機持ってないのよ」
え?代表候補生なのになぜ?そう思っていた俺に楯無さんは答える。
「だってね、簪ちゃんの専用機の開発元はね・・・倉持技研なの」
「確かそこは---」
「そう、織斑一夏くんの専用機を制作したところな訳で---」
かんちゃんの専用機の開発が打ち切られた訳か。
「でも普通ISはチームで造りますよね。かんちゃんは、一人でやってるみたいでしたけど」
「それに関しては、私が原因ね。私が一人でISを完成させたから」
・・・・・・ハァ?今、何て言ったこの人。一人で?もう一回言おう。・・・・・・ハァ?
「そんな呆れた顔をしない!一人って言っても、七割方出来てたし、残りをね」
「呆れるのに十分なことですよ!」
大体のことはわかった。周りの人は楯無さんの妹のかんちゃんに期待をして、比べられるのが嫌なんだろう。俺もそうだ。兄さんや姉さんたちと比べられ、周りの勝手な期待を受けて失望されて。今のかんちゃんは、昔の俺のように見える。だから俺は自分は自分だと割り切って逃げたのだ。しかし、かんちゃんには、そんな風になってほしくないから手を貸してやりたい。逃げるより、勝たなくてもいいから戦い続けてほしい。
「楯無さん、かんちゃんの専用機の制作って俺にも手伝えることないですかね?」
「フッ」
楯無さんが微笑む。俺は何か変なことでも行ったのか、不安になって思わず聞いてしまった。
「ど、どうしましたか?」
「ううん。簪ちゃんはいい婚約者さんと出会えたなって思っただけよ。いいなー。私もそんな相手が欲しいな」
「なにを言ってるんですか?!こ、これは・・・。そ、そう!幼なじみだからですよ」
「ハイハイ、ごちそうさま」
厭味ったらしい顔をしてつぶやく楯無さんに、俺は反論できなかった。
「と、とにかく俺は?」
「いや、斑鳩くんだったら十分力になるわよ。もしもの時は整備科に協力してもらえば、いいと思うわよ。私もお世話になったし」
「じゃあ、俺もう行きます」
この場から逃げたい感情と逸る気持ちに背を押され、俺は生徒会室を早足で出て行った。
「気が早いのね、斑鳩くん」
「それ程、簪様を大事に思われているのですよ」
「くろっち、カッコイイ~」
「・・・そう言えば、黒翼様は方向音痴じゃあ・・・」
「「あ」」