アルタイル戦記   作:ヤン・ヒューリック

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第一章 プロローグ

西暦2501年。十年にも渡る戦乱の時代の果てに、地球を中心とした地球連邦政府と、木星を中心とした内惑星自由同盟の二つによって支配されていた太陽系がついに統一された。

 

 幾たびかに別れては統一され、再度の独立を巡っての対立の時代が終焉を迎え、幾度目かの統一政権を樹立した人類は、この年をHelios centuryと定め、月面に首都とした太陽系連邦を成立させる。

 

 すでに、光速を超える超光速航法をも実現化させながらも、その技術を戦争という非生産的な行為に注いでいた反省から、太陽系連邦はこの技術を活用させ、戦争の時代から復興、そして、さらなる繁栄の時代を切り開いていく。

 

 十年も続きながら、総人口の四分の一を殺戮しあった時代と決別した人類は、破壊された都市や、これから生まれゆく命の為に使われた力を、同じ十年が経過した中で、戦争の時代であった十年で失った人命以上の出生率に使い、破壊された都市を復興させていった。

 

 そして兵器の生産から生活必需品へと転換したさらに十年後の時代には、戦争の時代があったことを忘れるほどの、黄金期とも言うべき時代の幕が開けた。

 

 太陽系にはまだ居住空間に余裕があり、火星や金星のさらなるテラフォーミングと共に、天王星や海王星のテラフォーミングも順調に進み、人類の居住空間は、生まれ出る人口を養うだけの余裕があり、そしてその余裕とも言うべき生産力と経済力は、衰えを見せることはなかった。

 

 そして、その黄金期から半世紀を経て、ついに人類は太陽系からの進出を計画する。太陽系に一番近い恒星系であるプロキシマ・ケンタウリから、太陽系が属するオリオン腕へと向けての宇宙開発の時代が始まったのであった。

 

 光速を超える技術が生まれてから、すでに一世紀が経過していた中で、一光年を超える旅へと向かったことに皮肉を向ける者もいたが、多数派の人々はそんな皮肉には目を向けず、ついに人類が太陽系外へと進出することを歓迎した。

 

 太陽系の外には未知の世界があり、そしてそこには人類が未だに目にすることがないような光景が広がっていると、多くの人々は夢を見ていた。それは、当時の開拓団に志願した者達のコメントがあまりにも似たり寄ったりで、マスメディアの記者達を辟易させたほどである。

 

 戦争の時代から復興の時代、そして、太陽系を生活基盤にし、余裕があるウチに新たなる居住空間を外に向けた当時の太陽系連邦政府の首脳陣や、科学者達の慧眼さは現在に至るまでも高く評価されている。

 

 しかし、そんな彼らの慧眼さや、正確とされた分析結果があっても、正真正銘の未知なる世界へと突入するとは、当時の人間には予想も付かず、そして、それを未然に察知することは出来なかった。

 

 プロキシマ・ケンタウリにはすでに、太陽系を祖とする人類以外の異星文明による星間国家が進出し、彼らはアルタイル星系を中心にアルデバランやシリウスなどの恒星系にまで手を広げ、広大な星間国家を築き上げていた。

 

 戦争によって他者から奪い取る時代から、未知の世界へと進出して創成していく時代への道は呆気なく、そして無残なまでに平和を築き上げていたはずの人類から平和を奪い、そして、新たなる戦乱の時代へと突き落としたのであった。

 

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