もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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パーティから公聴会へ


第7話

「AR-15、戻りましょうよ」

 

「嫌よ!もうこんな茶番懲り懲りよ!

 私達は兵器よ!どいつもこいつも腑抜けた事ばかり言ってさっさと戻るわよ!」

 

 AR-15がM4を引っ張りながら大声で言う。

 周りを歩く職員や招待客は驚くが目もくれず出口に向かおうとする。

 

「待て!待て!待て!」

 

 すると指揮官が何とか走って追いつきAR-15の前に立ちはだかる。

 

「どいて」

 

「駄目だ、戻れ」

 

「嫌よ」

 

 AR-15は説得を拒否し押しのけて出て行こうとする。

 

「大統領に恥をかかせる気か?」

 

「関係ないわよ、あんな奴知らないわ」

 

「関係あるんだ、ここはアメリカだ」

 

「だから?」

 

「明日の朝のニュースでこの映像が延々と流されるんだぞ」

 

「そんなの大統領が止めれば済む事よ」

 

 AR-15が彼女らの世界のように報道管制を敷けばいいという。

 確かにあの世界ならば都合の悪い事は検閲なりでどうにでもなるだろうがここは違う。

 

「ハハ、面白いジョークだな。

 ここはアメリカ、お前らの世界じゃない。

 この国は民主主義国家だ、報道の自由が憲法で認められた国だ。

 こんなことわざがある、ローマではローマ人らしく、ここはアメリカだ、アメリカ人らしく振舞え」

 

 強い口調で命令する。

 AR-15の言った事はアメリカ人の最も大事にする価値観たる自由と権利を蔑ろにする事と同義だった。

 

「わ、分かったわよ」

 

「それにSOPとM16がいるだろ。

 勝手に帰ったら心配するぞ」

 

「ええ、戻りましょう?」

 

「そうするわ…」

 

 AR-15は二人の説得に応じて会場に戻った。

 だが戻ったところには大統領はいなかった。

 

「大統領、先に行っちまったみたいだな」

 

「ええ、その代わりこの二人は捕まえたけどね」

 

「大丈夫だったか二人共」

 

「お姉ちゃんたち大丈夫?」

 

 いたのは戻ってきたSOPとM16、置いてけぼりにされワインを飲んでたワルサーだけだった。

 M16とSOPはAR-15を心配する。

 

「大丈夫よ、二人共。

 ちょっと混乱しただけだから」

 

「お前らしくないな」

 

「この数日色々起きすぎたの。」

 

「あの、大丈夫でしたか?」

 

 突如AR-15に誰かが声をかけた。

 振り返ると髪の先が赤い銀髪の女性がいた。

 

「あ、はい、大丈夫です。

 ご迷惑おかけしました」

 

「そんな、こちらこそ気に障るようなことを許してしまって本当に申し訳ありません。」

 

「えっと、ところでどちら様でしょうか?」

 

「えっと、私はLWMMG、リンダって呼んでください」

 

「リンダさん?」

 

 リンダと名乗ったLWMMGに指揮官とへリアン、そしてワルサーは聞き覚えがあった。

 

「お、おい。ただの戦術人形じゃないぞ彼女は。

 大統領の娘さんだぞ」

 

「娘?人形なのに?」

 

「知らないから当たり前だと思うけど説明するわ。

 カークマン大統領は12年前に妻をガンで亡くしてるの、その奥さんが亡くなる前に買ったのが彼女。

 奥さんを亡くして子供もいなかった大統領は彼女にリンダって名前を付けて可愛がってるの。」

 

 ワルサーがAR小隊に説明した。

 彼女は大統領には娘のような存在だった。

 

「ありがとうございます、では。

 パーティとアメリカを楽しんで」

 

 LWMMGはそう言って大統領を追いかけて行った。

 

「人形と人間の関係って全く違うのね」

 

「そんなものさ」

 

 AR-15が彼女の後姿を見て呟く。

 彼女の電脳の中で何か納得したようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 公聴会というのは合衆国議会の委員会によって開かれる関係者らを招致して行われる聴取である。

 その大半は証人喚問という形で行われこの場で話されることは法的には証拠として扱われる。

 また場合によってはカメラが入り全米や全世界に生中継もされる。

 

「いいえ、我々の行動はエドワーズ空軍基地の警備の延長線上であり我々の武力行使は全て合衆国領内と基地への不法侵入として対処しています」

 

「アームストロング大佐、質問は以上です。

 ありがとうございました」

 

 共和党の議員が証言台で証言したエドワーズ空軍基地のアームストロングを退席させる。

 合衆国議会議事堂内の一室、両院主催による臨時公聴会がこの日開催されていた。

 議題は異世界での軍事行動の是非だった。

 普段ならば傍聴席は空席が目立つがこの日は違った。

 傍聴席には記者やロビー活動の関係者が集まり注視していた。

 

「続きまして、G&Kセキュリティ社員、ジェームズ・イシザキ」

 

 職員が次の証言者の名前を読み上げる。

 そしてスーツを着た指揮官が現れ一斉に記者がフラッシュを焚いた。

 

「では、宣誓を」

 

 証言台に立つと議長の共和党の上院議員が宣誓を指示する。

 指揮官は証言台に置かれた聖書に手を置く。

 

「宣誓、この場において神と合衆国の名に負いて真実のみを証言することを誓います」

 

「では着席」

 

 宣誓を行うと着席させ静かになった。

 

「では、フレデリカ・シャーマン議員から」

 

「はい。最初に、現地に展開している人員と規模を答えてください」

 

 最初に質問したのは共和党の女性の上院議員、彼女の質問に指揮官は的確に答える。

 

「職員30名、戦術人形30体、物資100トン、トラック3台、乗用車10台です。」

 

「軍の方は?」

 

「戦闘攻撃機18機、ヘリコプター24機、UAV35機、輸送機10機、地対空ミサイル5基、管制システム1セット、レーダー3基。

 兵士職員合計1019名、その他軍属研究者150名、以上です」

 

「では現在までの累積の戦果と損失を」

 

「2月1日までの戦果は各種戦術人形合計234体、国籍不明機12機、戦車3台、自走ミサイル発射機5台。

 損失は軍・PMC合計負傷者3名、ヘリ一機、トラック3台が事故で損失。

 なお負傷者は全員軽傷、ヘリ・トラックも全損ではなくヘリは中破で現在修理中、トラックは現在も修理の上使用中です」

 

「これまでに使用した弾薬の合計はご存知ですか?」

 

「我々の使用したのがえっと、銃弾5万発、擲弾1578発です。

 空軍の方は1084ソーティ、爆弾1221トン、ミサイル340発、銃弾・砲弾6万発と聞いてます」

 

「ありがとうございます、議長、質問は以上です」

 

 シャーマン議員が質疑を終える。

 聞かれた戦果や展開している人員や装備の数を聞かれただけだった。

 

「シャーマン議員、着席願います。

 続いて民主党リー下院議員」

 

「はい、ミスターイシザキ、貴方は現地でのG&Kの責任者で間違いないですか?」

 

 次の質問者は民主党の白人の下院議員だった。

 まず議員は責任者かどうかを確認した。

 

「はい、現地の我が社の一切の行動の責任に関しては私にあります」

 

「では次、貴方の知る範囲であなたやあなたの部下、軍が違法な行為、軍紀違反を犯した事はありますか?」

 

「いいえ。現地政府の法律は知りませんが」

 

「PCAに関しても?」

 

「はい」

 

 PCA、民警団法は連邦法の一つで軍による民間の治安維持を制限した法律で議会の承諾なくして軍は合衆国内で民間人に武力行使できない法律だった。

 

「では現地の居住環境はどうですか?」

 

「悪くないですよ、カリフォルニアとは思えないほど寒い以外は」

 

 冷静にジョークさえ交えて証言する。

 かの世界は法的にはカリフォルニア州エドワーズ空軍基地内であり行政府に移管する際は新たに連邦政府直轄の特別区として仮名称でエドワーズ空軍基地のあるミューロック乾湖の名前を取りミューロックレイク行政区として編入予定であった。

 これらはまだ計画段階でカリフォルニア州政府や国連、計画を主導していたI3Cとの交渉次第では国連の委任統治領としての編入や国際管理地域という可能性も無きにしも非ずだった、勿論この話は米国政府や国連、カリフォルニア州の上層部のみが知りえることだ。

 

「フフ、それ以外に何か、ガスが使えないだとか水が使えないだとかそう言った事はありますか?」

 

「ガスはそもそもないですし水道も死んでましたけど修理されて使用可能です。

 風呂やシャワーも電気で使えますよ、食事もちゃんと食べれますしインターネットも通じます、基地受け取りながら通販も使えます」

 

「訓練等は?」

 

「射撃場とジムが共用で使ってます。

 宿舎もちゃんとありプライバシーも十分守られてます、唯一問題があるとすれば人形を口説こうとたまに兵士が入ろうとするぐらいです」

 

「そうですか、以上です」

 

 リー議員の質疑が終わる。

 公聴会は始まったばかりだった。

 




ドルフロSSだけれど軍事活動は法律によってガチガチに縛られてる現実に即した謎
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ちなみに共和党議員は海軍の軍人、民主党議員は陸軍の軍人が名前のモデル
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