もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第12話

「つまり異世界の軍と?」

 

『そういうことです、ミスタークルーガー』

 

 クルーガーの言葉に画面越しにグッドイナフがうなづく。

 グリフィンと国連軍の接触交渉が開始され早15分、まず一通り互いの基礎情報を交換した。

 クルーガーは彼らが言っている事の内容を吟味し慎重に進める。

 

「で、話し合いという事だがどのような要件か?」

 

『簡単です。我々は近々大規模な軍事作戦を行う予定です。

 その作戦協力をお願いしたい。』

 

 グッドイナフは丁寧にお願いした。

 作戦協力という言葉にクルーガーは反応する。

 鉄血相手の戦争ではどういうわけか軍は乗り気ではない、その点彼ら国連軍はどうも違うようだというのだ。

 

「どのような作戦でしょうか?グッドイナフ大将閣下」

 

『作戦名は神々の怒り、主な作戦目標は貴方方との地上連絡路の確保です。

 現在我々が展開している地域から南西方向に突破、貴社がS-09地区と呼んでいる地区の北東方面まで穴を作り鉄血の一部部隊を包囲殲滅する作戦です。

 なので主にS-09地区の部隊と協力して鉄血を殲滅するのです。

 作戦展開地域の鉄血勢力の詳細や地形はそちらの方が情報が多いでしょうし包囲時に一部分だけ包囲網が弱ければ包囲が失敗するのは明らかです、ですから我々は破城槌をやりますので貴方方にはおろし金をやってもらいたいのです。

 勿論戦力が足らなければ我々が戦力を一部提供します。』

 

 グッドイナフの狙いは近々行われる大規模な作戦「神々の怒り」への作戦協力だ。

 この作戦は鉄血の前線に大穴を開け連絡路を確保すると同時に彼らの軍事力を誇示する狙いもあった。

 その狙いにクルーガーも気がついていた。

 

「そうですか大将閣下。

 我々も検討しましょう」

 

『心より感謝します、ミスタークルーガー』

 

「ところで404小隊とAR小隊はどうでしょうか?」

 

 グッドイナフに質問する。

 彼女らの安全が確保されていなければ作戦協力など夢のまた夢である。

 その問いにはへリアンが答えた。

 

『ご安心を、ミスタークルーガー。

 彼女達は客人として丁重にもてなしております。

 この間はハリウッド観光にも洒落込んだようです』

 

「なら安心だな」

 

 AR小隊や404小隊、彼女らは国連軍とG&Kセキュリティによって丁重に扱われていた。

 基本的に行動は監視付きながら自由で仕事もないのでアメリカ観光と洒落込んだ者や部屋に籠ってゲームとお菓子三昧に耽るもの、一日中寝て迷惑をかけるものなど多種多様だった。

 

『ええ。彼女達も年相応にアメリカを楽しんでくれて合衆国国民としても嬉しい限りです。

 ではミスタークルーガー、もし作戦に参加していただけるのなら最初に404小隊を帰還させ同時に我々の連絡将校など数名を一緒に送ります。

 受諾の際の連絡に関しては明日の同じ時刻に連絡しますのでその時返事を下さい』

 

「いや、ここで決めよう。

 我々は貴方方に協力する」

 

 クルーガーは即決した。

 後ろでへリアンが驚き慌てるが長年戦場にいた彼の勘は相手が只者ではないと理解し警告していた。

 もし彼らを敵に回せば確実に自分達の命はないとも。

 

『おお!心より合衆国と国連を代表して感謝します。

 では明日、貴方方の本部に輸送機で404小隊と連絡将校を送り込みましょう。

 では』

 

 グッドイナフが言うと無線が切られる。

 そして苦虫を潰したような表情のへリアンが横から言う。

 

「クルーガーさん、どうして受けたのですか?

 あんな怪しい連中の依頼を」

 

「怪しい連中だが能力は侮れない。

 自信満々に鉄血中枢に近い地点から約80キロも離れたところまで突破すると言う連中だ。

 恐らく可能なのだろう、それに彼らの服装も今ではすっかり見なくなったかつての最高品質の品々だ。

 只者ではないのは確かだ」

 

 クルーガーの勘は当たっていた。

 彼らは只者ではないのだ。

 

 

 

 

 

「大将、それで連絡要員は誰を?」

 

 クルーガーとの通信が切られるとへリアンがグッドイナフに聞いた。

 

「既に軍側の代表は決定済みだ。

 ロシア空軍のコンスタンティン・ハリトノーヴィチ・アーチポフ少佐だ。

 後もう一人G&Kセキュリティ側で副局長のイシザキ君を送りたい、どうかね?」

 

「ええ、構いません。護衛ですか?」

 

「ああ。軍が護衛をつけると色々と面倒だ。

 アーチポフ少佐は個人でG36とG36Cの戦術人形を保有しているしイシザキ君と彼の部下は民間登録、問題はない」

 

 グッドイナフが連絡要員に選んだのはロシア空軍の将校でアーチポフ大将の息子のアーチポフ少佐、そして指揮官だった。

 理由としては軍というのは文民統制の関係上許可が出ていない地域での作戦行動は難しく何よりできる限り刺激したくないので民間登録の人形を個人で持っているアーチポフ少佐と民間登録であるG&Kは何かと都合がいいのだ。

 人形にも軍・官公庁・民間の登録区分があり色々と面倒なのである。

 

「そうですか、ではそう言う事だイシザキ、頼んだぞ」

 

「え?」

 

 非常に大事な事を一人、蚊帳の外で決められていた。

 

 

 

 

 

『こちらタワー、アタッカー1-4離陸許可、離陸後イーグルとコンタクト』

 

『ラジャー、こちらアタッカー1、離陸する。』

 

『ウィザード31、滑走路09手前で待機。

 アタッカー1-4の離陸後滑走路に進入しホールド』

 

『こちらウィザード31、滑走路09手前で待機、アタッカー1-4離陸後滑走路09に進入しホールド』

 

 翌朝、基地では基地にいた攻撃機と戦闘機が突如全力出撃を開始していた。

 夜明けと共に基地から離陸した攻撃機と戦闘機は編隊を組むと南西方向に飛んでいった。

 離陸した戦闘機の編隊は上昇し雲の上に出ると、上空の早期警戒管制機に連絡する。

 

『こちらアタッカー1、イーグル応答せよ』

 

『こちらイーグル、アタッカーはグリッドエイブル34南西の敵SAM陣地“ネズミの国”に出前を配達してくれ』

 

『了解、ネズミの国に出前だな』

 

『ああ、最優先だ』

 

 警戒管制機からの指示を受けると4機の戦闘機は旋回し急降下する。

 雲を抜け雪が積もった地上が近づくと針葉樹の梢を掠め音の壁を破る轟音を轟かせ雪を吹き飛ばしながら山の尾根を越える。

 超えた先にあったのは全く偽装されていない対空ミサイル陣地だった。

 突如戦闘機が現れ慌てて迎撃しようとする鉄血の人形の頭上を掠めると次々と爆発が起き人形が吹き飛ばされる。

 

『アタッカー1!エンゲージ!』

 

『アタッカー2!SAM一機撃破!』

 

 戦闘機から投下された爆弾やミサイルは寸分違わずミサイル陣地やレーダー、司令部を次々と破壊していく。

 5分後、ミサイル陣地だったところにあったのは燃える鉄屑だけだった。

 

 

 

 

『侵入者、どうですか?状況は』

 

「最悪ですね、今朝全部のミサイル陣地とレーダー基地を破壊されたわ。

 全部あの連中よ」

 

『そうですか、彼らには相応の報いを与えなければなりませんね』

 

「グリフィンの人形たちとは全く違うわ。接近するだけで全て吹き飛ばされるもの」

 

 鉄血の司令部、この地区を指揮するハイエンドモデル「侵入者」はかつてAR小隊にいとも簡単に破壊された代理人に今朝の空襲を報告していた。

 彼女らは真正面から圧倒的火力と武力を誇る国連軍にぶつかり、そしてその損害がうなぎ上りになっていた。

 いくら物量が圧倒的な鉄血と言えど損害が募れば問題となるのだ。

 

 

 

 

 

「えーっと、ズドラーストヴィーチェ?」

 

「英語で結構です、私はコンスタンティン・ハリトノーヴィチ・アーチポフロシア空軍少佐。

 気兼ねなくコーシャと。

 どうせ都歳は近いんですし」

 

「どうもコーシャ、ジェームズ・イシザキだ。

 そっちもジムとかジミーって呼んでくれ。

 でこっちが秘書のWA2000と護衛のSVDだ」

 

 昼過ぎ、基地のエプロンに駐機するロシア空軍の輸送機の前で指揮官はコートを着たロシア空軍将校であるアーチポフ少佐、通称コーシャと握手する。

 指揮官の後ろにはコートを着たワルサーとジャンパーを着たSVDが、コーシャの後ろにはコートを着てベレー帽を被った銀髪の女性と同じくコートを着て毛皮の帽子を被ったブロンドの女性がいた。

 

「よろしく」

 

「よろしく、コンスタンティン・ハリトノーヴィチ少佐」(ロシア語)

 

「よろしく、ドラグノフさん」(ロシア語)

 

 ワルサーとSVDがコーシャと握手する。

 二人と握手していると指揮官が聞いた。

 

「で、そちらのお二人は?」

 

「ああ、紹介が遅れたね、妻のG36と義理の妹のG36Cだ」

 

「グーテンターク、イシザキ様。G36と申します」

 

「G36Cです、よろしくお願いしたしますわ」

 

 G36とG36Cと名のった二人はお辞儀した。

 

「ああ、よろしく」

 

 指揮官は二人と握手するとさらに聞く。

 

「さっき妻って言った?あんたの嫁さんかい?」

 

「ああ。そうだ。今時人形と結婚するのは珍しくないだろ?」

 

「まあそうだが仕事に嫁と義理の妹を連れて行くとはねぇ」

 

 ニヤニヤしながら指揮官が言う。

 それに彼は返す。

 

「単身赴任は寂しいんで、それに」

 

 そう言いながらコーシャはG36の頬にキスする。

 

「離れているより一緒にいる方が愛を育める」

 

「ハハ、いい奴だな気に入ったよ。

 まよろしく頼むよ」

 

「ええ。」

 

 二人は打ち解けると荷物を持ちエンジンが動き出した輸送機に乗り込んだ。




・コンスタンティン・ハリトノーヴィチ・アーチポフ少佐
別作ドールズウィッチーズライン主人公。
とりあえず改めて解説。
ロシア空軍の少佐で父親は空軍大将で兄も空軍大佐でモスクワ勤務。
赤衛軍以来の名門軍人一家の生まれで次男坊。
一族にはジューコフ将軍の血も流れている。
また母親は海軍軍人の一族で叔父はバルト海艦隊の司令長官。
モスクワ生まれのモスクワ育ちのモスクワっ子。
酒飲みでウォッカ党。
歌が好き。
元ヘリパイロット。
G36にゾッコン。結婚して義理の妹のG36C共々一緒に暮らしてる。
年齢は実は30歳。
実はGRUの将校。
愛銃はマカロフのカスタムだが正式装備じゃない旧式銃を使うのは正式装備のGSh-18のマガジンバネが強すぎて装填できない(これ実際にある欠点)かったり薬莢が顔に当たりやすいから旧式だけど信頼性抜群初弾装填したまま使える程安全性も高いマカロフを選んでる。そもそも将校のサイドアームだし。
英語ができる。
愛称はコーシャ。

・G36
コーシャの妻。
コーシャにゾッコン。相思相愛。
家事料理洗濯掃除何でもござれな完璧メイド。
その上戦闘もこなせる。
ドイツ語の他にロシア語と英語ができる。
作者の推しです(ここ重要)

・G36C
義理の妹
保護される側。
おっとりとしていてほわほわしているらしい。目を離したら飛んで行ってるかも。
結構な努力家。
推しです



誰も得しない設定
戦術人形は基本的にIoPタイプで大半のモデルはIoPではなくライセンス生産された他社製。
主力工場はベルギーとドイツとアメリカだがロシアやインドでも生産されてるどころかその技術を利用して独自の人形も作ってる。
鉄血は元々無人兵器メーカーなので戦術人形のコンセプトは「無人兵器の延長線上」、一方IOPは「人型ロボットの延長線上」という設計上のコンセプトの違いがある。
戦闘用AI開発では鉄血が上だったがコストがべらぼうに高くなった上にそれに適合できる素体の開発に手間取った結果一体で輸送機が10機買える値段になってしまったモデルがあり性能は良かったのでロシア軍が購入して特殊部隊に配備中(ウロボロスの事)
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