『続いてのジャンプはロシア代表マキシム・ゴリューノフ。
つい先週のワールドカップで初の表彰台に輝いたロシア期待の新人です。』
「マキシム!頑張れ!」
テレビの中継にSV-98が大声で応援する。
指揮官たちが鉄血を挟んだ向こう側にいた頃、基地ではサンクトペテルブルクオリンピックのスキージャンプの中継を見ながらAR小隊らとM14、SV-98、そして404小隊が話していた。
「今年のスキージャンプはかなり荒れてるね…あのウェーゲナーがK点超えられなかったとか…」
「スキージャンプってルールよく分からないんですけど…」
「大丈夫よ、この中でたぶんちゃんとルール分かってるの9だけだから」
UMP45が言うとバドワイザーを飲む。
テーブルの上にはビールとピザが所狭しと置かれていた。
「SAT8が作るピザ美味しいね!」
「イタリア人の作るピザは格別だな!」
M16とSOPが舌鼓を打つピザは本部から増員された戦術人形で元カラビニエリ…ではなくイタリア財務警察のSAT8が作ったピザだった。
彼女もまた即戦力として送られたのだが元の所属が財務警察という所謂イタリアの国境警備隊(財務警察は金融犯罪調査の他に税関や国境警備隊を兼ねる準軍事組織)でこの先想定される文字通り「がっぷり正規軍同士が4つに組んで戦う大規模野戦」は専門外だ。
「それで、神々の怒り作戦の間私達どうするの?」
「それについてですが、グッドイナフ大将から依頼が」
AR-15が隣でコーク(まだコーラ戦争しているアトランタが本社の方)を飲むM14に聞くと瓶を置くとある依頼を伝えた。
「海兵隊の方に斥候として参加できないか?と依頼が」
「斥候?」
「ええ、へリアンさんは『国連軍に恩を売るチャンス!』とばかりに受けようとしてますがどうします?
私は海兵隊と祖国の為なら大歓迎ですけど」
国連軍の依頼は「第一海兵師団の斥候」だった。
これにへリアンは国連軍に恩を売ろうと仕事を受けようとしていた。
「まあ、私は元陸軍だけどいいの?
陸軍と海兵隊はよく酒場で乱闘してるわよ」
「いいんじゃないんでしょうか?女を殴るようなクソッタレは海兵隊にいませんし。」
「クソッタレって…M14って普段人畜無害な顔してるけど時々滅茶苦茶口悪くならない?」
「というか人畜無害な顔してたんですか?」
「ほんと、頭がキレるわよね…」
そう言うと彼女は瓶に残ったビールを一気飲みした。
テレビ中継は期待のロシアの新星が大跳躍を成し遂げ一気に暫定一位になり色めきだっていた。
「たっだいまー!」
「ただいま帰りました」
「いやぁ、すごい国だな、アメリカは」
「それにしても買い過ぎよ、一体どれだけ買ったのよ」
突如ドアが開くと元気よくSOP(グリフィン)が声を上げる。
グリフィンのAR小隊が帰ってきたのだ。
SOP(グリフィン)は頭に某ネズミのテーマパークのキャラクターのカチューシャをつけM4も新品らしい新しい上物のコートを着ていた。
M16も真新しい最近発売され話題になっている高機能ジャンパーを着ていたしAR-15は大量に買ったお土産を両手に持っていた。
「お帰りー、アメリカはどうだった?」
「すごかったよ!今まで見た事ないぐらい色んなものがあったよ!
グランドキャニオンもすごかったしナイアガラの滝もすごかったし美味しいものもたくさんあった!」
「私たちの世界ではもうとっくの昔に無くなったものがちゃんと残っているってのはすごかったな。」
この2週間、彼女らは国連軍と米政府の誘いでアメリカ中を巡り多くの知見を得ていた。
彼女らが見たのはかつての人類が思い描いていた繁栄を極めた世界だった。
「第一中隊整列!」
「第二中隊は降機後整列、点呼」
「各中隊長は点呼整列完了後大隊司令部に報告!」
粗末な小さな地方空港の駐機場に場違いな程巨大な輸送機が10機も20機も並び中から大勢の完全武装の兵士達が降り整列する。
翌朝、神々の怒り作戦、その事前準備の航空輸送作戦、コードネーム「ゼファー」が開始された。
「オーライ!オーライ!」
兵士が降りた輸送機からは持ち込まれたフォークリフトが荷物を積んだパレットを一枚ずつ降ろしていく。
更に別の輸送機では機内に積まれたロシアングリーンの上に白い冬季迷彩を乱雑に塗りたくった装甲戦闘車が動き出していた。
「前進、一速、ゆっくりだ。
オーケー、その調子、おっと」
砲塔の前に立ちインカムで操縦士に戦車長が指示を出して輸送機からゆっくりと下ろしていく。
輸送機に積まれていたのは他にもあった。
別の輸送機からは最新の無線機器を積載したトラックや移動用の軍用車、また別の機からはパレットに固定された同じくロシアングリーンに白い迷彩が塗られた鉄血のプラウラーを洗練させたような車両や箱詰めされたダイナゲートの改良型のような物も降ろされた。
「ロメオパパ03までを先に下ろす!
これ以上は飛行場のキャパオーバーで入らない!
とりあえず今は輸送機に客と荷物を下ろさせたらとんぼ返りさせてるがそれでも予定の1時間半遅れだ」
古びた管制塔ではコーシャが無線機に噛り付いて指示を出していた。
「あ、あの…もうこの飛行場では捌ききれませんが…」
「捌ききれ!何としても全部降ろすんだ!」
あまりの輸送機の量にもう無理だという飛行場の責任者に大声で怒鳴る。
彼が恐れていたのはこの輸送作戦中かその直後に鉄血が動き出すことだった、そうなれば配置が済んでいない空挺部隊を最前線に投入することになる、そうなれば結果は火を見るより明らかだ。
「い、いや無茶ですよ!」
「ご主人様の言う通りです、これ以上は事故の危険も増大します」
ソフィアと彼女の副官も止めようとする。
だが
「この程度で根を上げてどうする!
114年前のベルリンよりずっとマシだってのにか!?」
「114年前って何の話ですか!」
「何の話ってオペレーションヴィットルズ、かの有名なベルリン大空輸だ!
空軍士官なら誰もがテンペルホーフとテーゲルの4本の滑走路で一日1300本のフライトを処理した話を知ってるぞ。
それに比べればずっとマシさ、滑走路一本でもレーダー管制システムに古いけど自動着陸システムまであるんだ。
一日のフライト数も200程度でたった一日なんだからな!丸一年する訳じゃない」
「ちょっと話に付いて行けません!」
現代でも航空史上最大の空輸作戦と比較してずっとマシだという。
もはや彼女には無茶苦茶であった。
「これが国連軍の本気か」
「そうだと思いますよ、へリアンさん」
次々と着陸し離陸していく輸送機を眺めながらヘリアンは圧倒されていた。
輸送機から出てくる兵員も装備も明らかに彼女らのはるか上、正規軍と比べても正規軍最良の部隊と同等レベルの装備に驚いていた。
「ところであのプラウラーみたいなのはなんだ?」
へリアンが輸送機から降ろされるプラウラー擬きの事を聞いた。
プラウラーと言えば鉄血の機械人形だ、それが何故か降ろされているロシア空挺軍も所有していれば気になる物だ。
「ああ、あれはコサック2だ。
ウランシステムの後継の鉄血製コサック1の改良型だ。」
「そうか、世界が違うと鉄血製品も使ってるのか」
それに元空挺軍所属のSVDが補足説明する。
卸されていたプラウラー擬きはロシア軍の無人戦闘車だった。
50年以上前のウラン-9の後継として生まれた鉄血製の無人戦闘車コサック-1を改良したコサック-2、それの空挺軍仕様だった。
「ああ。潰れたがいい兵器を作ってくれる会社だった。」
空挺軍時代を懐かしむようにSVDは言った。
彼女には今目の前で展開している部隊は文字通り「同志」だった。
「えーと、失礼ですが貴方がグリフィンの担当者か?」
「ん?私か?ああ。上級執行官のへリアントスだ。」
話していると突如へリアンに後ろから声をかけられた。
振り返るとジャンパー風のロシア空挺軍の軍服を着た将校が副官の将校を連れて立っていた。
「ミスへリアントス、私はロシア空挺軍第31親衛空挺旅団旅団長のイヴァン・アレクセーヴィチ・チトフ大佐だ。
お会いできて光栄です」
「よろしく、それで何か用か?」
「いえ、挨拶に来ただけです。
ではこれで、仕事はたんまりありますから」
そう言うと彼は敬礼して去って行った。
外では窓越しに人員が揃った空挺軍の兵士がある歌を歌いながら行進していた。
その歌の一節をSVDは口ずさんだ。
「
ロシア軍歌なので著作権は日本では誰も管理してないのでセーフ。
コサック-2はプラウラーが車輪じゃなく履帯になった版みたいな車両に砲塔がウラン-9になったものと考えてくれれば
・SAT8
ラングドン司法長官が持っている人形とは別の人形。
元イタリア財務警察所属で料理上手なのはマフィアの経営するレストランで潜入調査に従事していた経験から。