もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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感想くれ


第21話

「終わった…」

 

「まさか歌うとは思いませんでした…」

 

 指揮官とソフィアはそう言うと持ち込まれた缶のコーラを飲む。

 演奏を静かに聞こうとしていた二人と人形たちは演奏が始まると第101空挺師団の兵士達が歌ったり拍手したりと大騒ぎしたせいで相当疲れていた。

 

「静かに聞きたいよ、静かに」

 

「そうですね…」

 

「ご主人様の言う通りです」

 

 静かに聞きたい二人にG36(グリフィン)も同調する。

 しかし、それを笑顔で否定する面々がいた。

 

「それは無理だと思うぞ」

 

「ああ、次はアメリカ人以上に歌と音楽を愛する国の番だからな!」

 

「むしろ一緒に思いっきり歌えばいいんですよ!」

 

 それ即ちSVD、コーシャ、SV-98のロシア軍トリオ。

 3人とも勤務時間中だというのにいつの間にか酒を持ち出していた。

 

「ご主人様、今は仕事中ですので酒は控えてください」

 

「今日の仕事は終わった、定時上がりしたんだから酒を飲んでもいいだろ?

 それとも、二人で一緒に飲みたかったか?」

 

「な、ま、まぁ、ご主人様がしたいと言うのであれ…違います!」

 

 止めようとするG36を逆に誘う。

 そうこうしているとアナウンスが聞こえた。

 

『では続きまして、ロシア軍、アレクサンドロフ・アンサンブルによります、軍歌「古い行進曲」特別バージョンでございます!』

 

「おお始まるぞ!」

 

「え?」

 

 いちゃついていたコーシャもSVDに呼ばれるとスピーカーに耳を傾けた。

 スピーカーからは先程は全く違う寂しさのあるメロディーが流れ始めた。

 そして歌詞が始まると大声で歌い始めた。

 

「「Эй, музыканты,(やあ軍楽隊よ)где ваши ноты?(楽譜はどうした?)

  Ждёт вас сегодня много работы.(今日も仕事は沢山あるぞ)

  Вспомним былые славные битвы,(過ぎた栄光の戦を思い出し)

  Марш заиграйте старый, забытый.(忘れられた、古い行進曲を奏でよう)」」

 

 アレクサンドロフ・アンサンブルのソリストの歌に合わせコーシャにSVD、SV-98だけでなくロシア空挺軍の将兵も大声で歌いだした。

 曲は古い行進曲、70年代のソ連時代に作られたそれまでのソ連軍の戦いを讃える軽快なリズムの曲であった。

 

「「Смяты страницы ветром атаки,(突撃の嵐で、ページには皺が寄り)

  Пулей пробиты нотные знаки.(弾丸で、音符には穴が空いた)

  Он против контры шел, наступая,(反革命に向けて、その曲も攻め進んだのだ)

  В кожанке Щорса,(シチョルスの外衣を)в бурке Чапая.(チャパイのマントを纏い)」」

 

 さらに続けるとここで曲調が突如変わった。

 

「「Веди, Будённый,(導けよブジョンヌイ)нас смелее в бой!(勇敢に戦えと!)

  Пусть гром гремит,(雷鳴が轟き)Пускай пожар кругом,(炎に巻かれようとも!)

  Мы беззаветные герои все,(我らは皆、命を捨てた英雄)

  И вся-то наша жизнь есть борьба.(全てを闘争に捧げるのだ)」」

 

 ここで本来なら間奏としてブジョンヌイ行進曲の繰り返し部が入るが今回は特別だった。

 

「「Мы – красные кавалеристы,(我らは赤軍の騎兵隊)

  И про нас(その物語は)

  Былинники речистые(雄弁なる語り部に)

  Ведут рассказ –(語り継がれるだろう)

  О том, как в ночи ясные,(晴れ渡る夜も、)

  О том, как в дни ненастные(暗雲垂れる昼も、)

  Мы смело и гордо в бой идём!(勇敢に誇り高く、我らは戦っている!)」」

 

 本来は繰り返し部だけの所を一番の歌詞を繰り返したのだ。

 だから特別バージョンだった。

 

「「Жил он в окопе,(その曲は塹壕に、)в танке и в Ставке.(戦車に、スタフカに息づいていた)

  Так почему(だがなぜ今は)же теперь он в отставке?(退役してしまっている?)

  Старого марша нам (古い行進曲を我らが)ли стыдиться?(恥じる事などあろうか?)

  Всем,(いざ)что нам свято, будем гордиться.(誇れよ、我らが誇る物みなを)」」

 

 そして3番が続くとまた曲調が変わる。

 

「「В атаку стальными рядами(突撃へ、我らが鉄の隊列が)

  Мы поступью твердой идем.(固く歩調をとり進む)

  Родная столица за нами,(我らが守るは愛する首都)

  Рубеж наш назначен Вождем.(指導者の命の下、我らの防衛線が築かれた)

  Мы не дрогнем в (首都をかけた戦いで)бою за столицу свою,(我らは一歩も退かぬ)

  Нам родная Москва дорога.(かけがえのない、愛するモスクワのために)

  Нерушимой стеной,(鉄の守りで、)обороной стальной(不落の防壁となり)

  Разгромим, уничтожим врага!(敵を撃破し、殲滅する!)

  Нерушимой стеной,(鉄の守りで、)обороной стальной(不落の防壁となり)

  Разгромим, уничтожим врага!(敵を撃破し、殲滅する!)」」

 

 3番に続いたのは伝説的な軍歌、モスクワ防衛軍の歌。

 モスクワ攻防戦の時に生まれ大祖国戦争を代表する軍歌の一つでありロシア軍人の心意気を現した曲だ。

 ましてやモスクワ生まれのモスクワ育ちのモスクワっ子のコーシャには大事な曲だ。

 そしてモスクワ防衛軍の歌が終わると4番の歌詞、曲調が明るくなる。

 

「「Эй, музыканты,(さあ、楽隊よ、) сил не жалейте.(力を惜しむな)

  Радость до края(心をあまねく、)в сердце налейте.(歓喜で満たせよ)

  Пусть подпоёт(助けを借りよ、)нам главный наш маршал,(我らが元帥に)

  Он ведь ровесник старого марша.(古い行進曲と、歳を同じくする者に)」」

 

 ソリストの力強い歌声にロシア兵も合わせる。

 そして曲がまた変わる、その旋律はロシアを代表する曲、スラブ娘の別れだ。

 

「「Этот марш не(駅のホームで)смолкал на перронах(この行進曲は止まることはなかった )

  Когда враг заслонял горизонт.(敵が地平線を覆いつくした時も)

  С ним отцов наших в(我らの父達は客車に乗って) дымных вагонах(この行進曲と共に)

  Поезда увозили на фронт.(列車は前線へと運んで行った)

  Он Москву отстоял в сорок первом,(41年にこの曲はモスクワを守り)

  В сорок пятом шагал на Берлин,(45年にはベルリンへと進んだ)

  Он c солдатом прошёл до Победы(兵士とともに勝利まで)

  По дорогам нелёгких годин.(易しいからざる年月の道を進んできたのだ)

  

 全員がそれまで以上の大声で歌う。

 彼らロシア連邦軍、その勝利の栄光と心意気を表し、彼らの祖国を代表する曲だからだ。

 

「「И если в поход(もしも行進に)

  Страна позовёт,(祖国が我らを呼ぶのなら)

  За край наш родной(我らが故郷の為)

  Мы все пойдём в священный бой!(我らは皆、聖戦に赴く!)」」

  в священный бой! (聖戦へと!)」」

 

 更に最後にもう一度サビを繰り返すとロシア兵たちの士気は最高潮に達していた。

 そしてある空挺軍士官が立ち上がると持っているグラスを掲げた。

 

「自由なる祖国と国民に!」

 

「「Урааааааа!!!(万歳!!!)」」

 

Урааааааа!!!(万歳!!!)

 

 コーシャやSVDらも空挺兵たちと共にグラスを掲げた。




劇中で出た軍歌「古い行進曲」は本来間奏でブジョンヌイ行進曲(別訳で赤軍騎兵の歌って訳もある)やモスクワ防衛軍の歌、スラブ娘の別れを歌う場合があるけど普段はサビだけなので1番を歌わないので特別版。

ブジョンヌイ、チャパイ、シチョルスはロシア内戦中の赤軍の英雄。
特にブジョンヌイは戦後ソ連初の元帥の一人になってるしチャパイことチャパエフはチャパエフ級軽巡洋艦(68号計画艦)の名前になってる。
シチョルスもウクライナの街の名前になってる…んだけどどうも最近スノフスク(Сновск)になったっぽい。


やっと神々の怒り作戦本編に入れる。
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