真夜中、晩冬又は早春ともいえる季節の空に星が浮かび月が照らすだけの静かな夜。
小高い雪原の道路の傍で何かが動いた。
「Здесь птицы не поют,Деревья не растут,
И только мы, к плечу плечо Врастаем в землю тут.」
空挺部隊と共に大昔の砲弾クレーターを拡張して作り淵に土嚢を積み上から白いシーツで偽装した陣地からロシア空挺軍と同じ冬季戦闘服を着たSVDが身を乗り出し双眼鏡で眼下の雪原と森を暗視装置付き双眼鏡で監視しているとある歌の一節を口にした。
「まさにこの状態ですね」
「ああ、嵐の前の静けさだ。
お前ら、一週間で教えられることは最大限教えた。
後は実戦だけだ。」
すると後ろから同じ軍服を着たSV-98が現れた。
後ろにはソフィアの部隊の人形、G36、イングラム、ナガン、スコーピオン、FNCがいた。
全員が同じような迷彩服を着てヘルメットを被り緊張した面持ちだった。
「ええ、楽しみですよ、あいつらを叩き潰せるんですから。」
イングラムが楽しそうな笑顔を見せながら言う。
「分かってると思うがくれぐれも誤射には気をつけろ。
それとアイギスやらニーマムやらが出たらそこの無反動砲を使うぞ」
陣地の一角に置かれたスウェーデン製の無反動砲を指さしてSVDが言う。
陣地内には無線機も置かれいざとなれば砲兵や空軍の支援を受けられる状態だった。
「さてと諸君、連中に戦争を教育する特別講義まであと数時間だ。
寝るのと飯を食うのは今のうちにな、レクチャーが始まればそんなことはできないぞ」
鉄血の反対側では海兵隊の戦車と歩兵戦闘車が整列していた。
その中で米軍の冬季戦装備を身に着けたM14があるいていた。
「M4、準備はどうですか?」
「全員準備できてますよ」
隣を歩くM4に聞く。
二人共冬季装備で戦闘準備は済んでいた。
周りでは戦車に燃料を補給し弾薬を積んでいた。
「グリフィンの方も?」
「ええ、勿論」
M4が答える。
AR小隊(グリフィン)の管理は彼女に任されていた。
「私とAR小隊が一号車で先鋒の斥候役、グリフィンは12号車、殿ですね」
「ええ」
再度確認する。
何度も何度も注意深く確認する、激戦を生き抜いてきた猛者の作戦前のルーティンだ。
これで彼女は何度も戦場を生き抜いてきた。
そしてふと敵の事を思う。
「砲兵火力300門に戦車150台、これがおよそ30キロの戦線に襲い掛かる。
鉄血にとっては悪夢ですね」
「その上制空権もなく電子作戦で外部からの援助も不可能、外の連中は気がつけば魔法のように味方が消える。」
「さながらマジックのように、恋と戦争では何とやら、ですね」
時に2062年3月6日、日付が変わって少しの頃であった。
午前1時前、作戦を指揮する司令部で最終的な準備状況が幹部たちに伝えられていた。
「現在、航空部隊の離陸が完了、目標に侵攻中です。」
「現在、ガーゴイル、ピクシー、メビウス、スケルトン、ワイバーン、ドラグーン、リーパー、ハンター、サンダー、ネイアド、アルテミス、バスカビル、ケルベロス、アリアドネ、ウロボロス、ガイア、ガルム各隊が目標上空に到達、残りのキング、クイーン、ビショップ、プリースト、カーディナル、オーディン、トール、パークス隊が目標に侵攻中、5分以内に上空に到達します」
二人の空軍将校-先に報告したのは上司らしきイギリス空軍の大佐、もう一人は部下のフィンランド空軍の中佐-の報告と共に彼らの前に置かれた画面に航空部隊の位置や高度、コールサイン、機種、任務などが書かれた駒が動く。
画面上の地図には確認された全ての鉄血の基地や攻撃目標が赤く表示され三角や四角、丸などの図形で識別されていた。
それを黙って見つめ何か思案しているグッドイナフに隣に座るアーチポフが言う。
「閣下、航空部隊はいつでもやれますよ。徹底的にね」
「ああ、陸上部隊は?」
「既に全部隊待機済み、準備も十分だ」
陸上部隊の事を聞くと反対側に座るヴェンクが即答する。
「砲兵の準備は」
「十分ですよ。今ならば50キロ先のリンゴを狙えと命令しても全員喜んで照準を始めますよ。
まあ、その筆頭は私ですが」
グッドイナフに砲兵部隊を統括するフランス軍の少将、シャルロット・サン・ピエールが嬉しそうに答える。
彼女ら国連軍内で「大砲マフィア」と呼ばれる戦場の女神に魅せられたバカたちの士気は最高潮であった。
「そうか、では予定通り始めてくれ」
「了解しました、全員、予定通りだ!
電磁シールド起動準備!電子作戦用意!航空部隊に飛行禁止空域通達!」
グッドイナフが言うとヴェンクは手を叩きスタッフに命令する。
オペレーターたちは無線や機器類を操作する。
「こちらスパローネスト、全作戦機に通達、作戦は予定通り開始、繰り返す予定通り開始。
Hアワーは0200、繰り返すHアワーは0200」
通信兵が無線で攻撃部隊に下令する。
別の兵士達はコンソールを操作している。
「1番から12番、電磁シールド起動準備、バッテリー正常、パワーセル正常、起動」
「電磁シールド展開開始、現在出力10%」
「了解、段階的に50%まで引き上げ。
その後は50%を維持」
電子作戦を統括する数少ない米海軍士官が彼らの前の大画面に映される1番から12番の電磁シールド発生装置の情報を見ながら指示を出す。
賽は投げられた。
午前2時、鉄血の基地の真上を飛んでいる米空軍の戦闘機パイロットが時間を確認すると無線で指示を出す。
「メビウス1より各機、時間だ。ありったけの出前を配達するぞ」
『メビウス2了解、連中の好みに合うといいですけどね』
左斜め後ろを飛ぶウィングマンがジョークを飛ばす。
それに反対側を飛ぶパイロットも同調する。
『ペパロニのピッツァだ、激ウマだと思うがな!
そう思うだろ?』
『ブロードウェーの実家のピザ屋の話は聞き飽きました。
あの店の人形は可愛かったけどもう聞き飽きました!』
『パピー、うちのスーパーショーティーに手を出したら殺すぞ?』
「メビウス3、4、喧嘩は地上でやれよ。
全機レーザー誘導装置起動、照準」
ジョークは程々に各機は爆弾倉を開き機体に搭載された爆撃照準装置で地上の目標を確認する。
地上に並べられたマンティコアやアイギス、弾薬集積所、無線通信施設が見える、それらに各機照準する。
「照準完了、リリース!」
次の瞬間、各機から黒い、細長い物体が落下する。
数秒後、地上で次々と爆発が起きる。
一発は並べられたマンティコアの真ん中に落下し纏めて4機吹き飛ばす、また別の爆弾は通信施設を直撃し人形と通信機器をダース単位でスクラップにする、またある爆弾は弾薬を直撃しそのまま炎上弾薬だけでなく周りの物資や燃料を巻き込み大爆発し人形をグロス単位で消し去る、別の爆弾は何もないところに当たり不発かと思いきや数秒後地中で爆発しバンカーを破壊する。
たった1分の攻撃で爆撃された基地は完全に破壊された。
「クソ!一体何が起きてるの!?」
侵入者が叫ぶ、今だ爆撃を受けていない別の基地で彼女は叫んだ。
突如無線妨害が始まり外部との通信が途絶してしばらくすると次々と基地が爆撃され破壊されていっているのだ。
その上通信施設も次々と破壊されこの地区では最も通信施設が充実しているこの基地さえ届くのは悲鳴だけ、指示を出そうにもこの通信だけで通信網はパンク寸前だ。
彼ら国連軍が今回最も中心的に破壊していたのは通信網、即ち通信網を破壊することで敵に指揮能力の飽和を強いるという狙いがあった。
彼らは戦力で絶対的に劣る、ならば敵に
かつて、かの北の熊がまだ赤い服を身に纏っていた頃からのドクトリンだ。
第二次世界大戦で完成され、その後は満州で世間知らずの大陸人を教育して以来抜かれた事のない究極の陸戦戦術がアメリカの最強の空軍の支援の下抜かれようとしていた。
「時間だ、全火砲射撃用意!」
空襲から30分後、砲兵陣地が動き始める。
ロシア人の砲兵部隊指揮官が指示を出すと砲兵たちが弾薬を装填する。
並べられた150ミリを超える巨砲はとっくの昔に照準は完了している、何せ
動かない巨大な物を狙うことなど簡単だ、ましてや技術力でこの世界ではありえないレベルの照準と射撃管制を可能とする射撃管制システムが管制するとなれば。
「よし、全門、TOTで射撃開始!」
「了解!」
砲兵士官が命令を出す、数秒後次々と大砲と自走砲が地鳴りのような音を立て火を噴く。
15センチの高性能爆薬を詰めた円錐形の弾が風切り音を立てて飛んで行った。
そして同じような音は各所から木霊する。
更に続けてブブゼラなどのような音が次々と起こる。
その方向を向けば火を噴いた何かが飛んでいく、ロケット弾だ。
数秒後、敵の陣地-それこそ後方の基地や最前線の陣地問わず―が炎に包まれ煙を上げる。
鉄の暴風は鉄血を襲う、風の吹いた後に何も残さず――
・シャルロット・サン・ピエール
フランス陸軍少将。女性の将軍。
一応アラフィフ。
大砲馬鹿。
フランスは砲兵大国だぞ。
別にパイロットにエースはいないぞ。
作中に出た歌はロシア軍歌求めるのは勝利のみです(ちなみにこの歌は空挺軍を歌ってるのでSVDにはなじみの曲)