もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第24話

「うわああああああああ!!!!!」

 

「止まってくださーい!!!!」

 

「飛ばすなーーー!!!!!!」

 

「キャハハハハハ!!!!楽しい!!!!」

 

 AR小隊が何とか戦車に捕まりながら叫ぶ。

 戦車隊は夜明けの薄暗い中、雪の積もった林道を全速力で突き進んでいた、それこそたまに現れる鉄血人形をひき潰しながら。

 

「フゥーハハハ!!!最高だぜ!!!

 最高のドライブだ!!!」

 

「ちょっと飛ばし過ぎでは?」

 

 車長席で大笑いするブラウンにM14が助言する。

 エンジンデッキ上で震えているAR小隊(グリフィン)に対して彼女らは捕まりながらも平然としていた。

 

「大丈夫さ!」

 

「ん?右3時の方向、何かいるわ!」

 

「ん?マンティコアだ!数5!射撃用意!行進射!」

 

 右側を監視していたAR-15が右側から接近するマンティコアの一団を発見した。

 数秒後砲塔が旋回すると5両の戦車が走りながら発砲、すれ違いざまにマンティコアを一体残らず破壊する。

 

「よし!このまま行くぞ!ロシア人に負けてたまるか!」

 

 戦車隊は更に速度を上げ雪原を突き進んだ。

 

「全車!怪しいところに銃弾をぶち込め!

 速度が最優先だ!」

 

『了解!』

 

 ブラウンが命令を出す、その命令に全ての戦車、歩兵戦闘車、そして兵士が従い道路沿いのあらゆる建物や茂み、窪地、怪しい雪溜まりに銃弾が撃ち込まれる。

 その進軍はかつてフランスを縦断したパットンの戦車隊の進撃のようであった。

 人形たちも例外なく銃を構え怪しいところに鉛弾を撃ち込んでいく。

 

 

 

 

 

 一方海兵隊が進軍する反対側のロシア軍、タマンスカヤ師団も順調に進撃していた。

 

「前方2000敵陣地、撃て!」

 

 横隊を組んだ戦車隊が指揮官の命令と共に一斉に砲撃する。

 砲弾はまっすぐ目の前の陣地を直撃し破壊する。

 その残骸を乗り越え四方八方から銃弾と砲弾が飛び交う中をあらゆる弾を跳ね返しながら進撃する、その後ろからは歩兵戦闘車に乗ったロシア兵と人形がプラウラー擬きことコサックロボットを連れて続く。

 

 

 

 

 

「海兵隊第一波、中間地点突破、進撃中、タマンスカヤ師団、中間地点にて敵予備兵力およそ一個大隊と交戦中。」

 

「予定より早いな」

 

 グッドイナフが画面に映る部隊の動きを見てつぶやいた。

 司令部では逐次変わっていく戦況が伝えられていた。

 両翼では既に予定の半分近くにまで進出、予定よりも数時間早い進出であった。

 

「補給はどうだ?」

 

「今の所は大丈夫なようですが早すぎて補給部隊と残敵掃討が追い付いていません。

 特に左翼側は」

 

 ヴェンクが補給担当の将校に聞くと問題が起きていた、端的に言えば早すぎて追いつかないのだ。

 その上残敵掃討も追いつかずこのままでは最悪突破部隊が突出して孤立する危険も出てきた。

 

「やはり海兵隊が早すぎる。

 一旦待機させるか?」

 

 ヴェンクが提案した、だがそれをグッドイナフは即拒絶する。

 

「駄目だ、今海兵隊を止めれば敵中で孤立する危険がある。

 予定より早いがフェーズ3に切り替えよう、ウォリック大佐とカイト大佐に連絡、第10装甲擲弾兵旅団とウォリック部隊に前線を押しあげさせろ。」

 

「は!」

 

 グッドイナフは予定よりも早く前線の押上げを決定した、この指示は即座に中央部隊の英軍と独軍に伝えられた。

 それと同じくしてアーチポフも後ろに座っていた空軍将校に命令を伝えた。

 

「ここで一気に潰すぞ、A217の破壊を許可する」

 

「は」

 

 命令を受けた将校は立ち上がると内線電話を取る。

 

「攻撃機をアルファ217に。許可が出た。

 確実に破壊しろ」

 

 電話の相手の返事を聞くと将校はアーチポフに伝える。

 

「5分後にワイバーン隊が出ます」

 

「ハラショー、どれだけ凶暴な熊でも頭を切り落とせば死ぬ」

 

 アーチポフは凶悪な笑みを浮かべながらコンソールを眺める。

 彼の眼は攻勢を受けている地区のほぼ中心に位置する敵の司令部らしき基地を見ていた。

 その基地にはA217という識別コードが振られていた。

 

 

 

 

 

「来たぞ!狩りの時間だ!」

 

 その頃、SVD達は陣地に籠って森の中から現れた鉄血人形の一団と交戦していた。

 相手は中隊程度であり他の人形と共に容易に撃退されていた。

 敵の動きは五月雨式で中隊小隊規模の部隊が散発的に現れ撃退されるを繰り返していた。

 この敵もまた簡単に撃退され敵は撤退を始める。

 

「撤退し始めた」

 

「追撃しますか?」

 

 G36が聞く。

 一応彼女はS-09地区基地では最も優秀な人形であり纏め役である。

 

「命令通りだ。ここで籠って突破部隊の受け入れ準備だ。

 中途半端な装備で突撃すれば自滅するだけだ」

 

「ええ。他の空挺部隊も動いてませんし。

 受け入れ予定の海兵隊部隊も既に中間地点を超えて進撃してますよ」

 

 端末で現在の各部隊の動きを確認していたSV-98が状況を説明しようと端末を二人に見せる。

 この「作戦中の部隊の位置をリアルタイムで把握できる上に現在までの作戦状況を正確に伝える端末」というのはグリフィンには無い、戦争の形態が変わってしまったのと「人形にそんな上等な品は不要」という偏見から無いのだが彼女らには極々一般的な装備である、何せ彼女らの戦争は21世紀初めのネットワーク中心の戦いに人形が入る事で更に強化された戦争だからだ。

 人形の存在によりこれまで人間を介することによって生まれていた限界を超越しより高度に作戦ユニット同士がネットワーク化されていた。

 ある意味では鉄血に近いシステムだった。

 

「今、私達がいるのがここ、空挺軍とラッカサンズがここ、海兵隊はまだここ。

 今突っ込めば死にますね」

 

「そう言う事だ。打って出たいのは分からんでもないがそれをやって包囲網を食い破られれば作戦そのものがそこで破綻する。

 一人の勝手な行動で作戦そのものをパーにはしたくない」

 

 二人は冷静に説明する。

 彼女らは現状の自らの立ち位置や戦略的立ち位置をよく理解しその上で行動していた、何せ「戦略的敗北の前の戦術的勝利」などいくらか積み重ねようが戦略的敗北を覆す事など不可能だ。

 

「成程です」

 

「ああ。だから下手に動かな…」

 

 SVDが言いかけた瞬間、頭の上を砲弾が掠め陣地の後ろに着弾する。

 

「クソ!なんだ!」

 

「敵だー!一杯いるー!」

 

 監視していたFNCが叫ぶ。

 SVDが双眼鏡を覗くと数えきれないほどのイェーガーやダイナゲートなどの一団が接近していた。

 

「クソ、小さいユニットばかりだから森林では偵察機に見つからなかったのか」

 

「ど、どうすれば…」

 

 その数にG36も見るからに動揺していた。

 彼女らが今まで見た事もない程の数が接近していたのだ。

 

「恐らく連中突破を図ってきたな。

 半包囲に持ち込まれつつあるのを見て包囲される前に包囲網の片翼に穴をあけるつもりだ。」

 

「そんな事論じてどうするんです?」

 

 イングラムが言い切った。

 そんなこと今はどうでもいいのだ。

 

「策はあるさ、こちらノベンバーアルファ23、敵の大部隊が接近、緊急近接航空支援要請と砲兵による火力支援、大至急だ!」

 

 無線を掴んで司令部に航空支援と砲兵の火力支援を要請する。

 

『こちらCP了解。火力支援を行う』

 

「感謝する、これで大丈夫だ」

 

 支援を取り付ける、その間にも鉄血は接近していた。

 

「あの!射程に入りました!」

 

「射撃待て!火力支援が来る!弾着観測を行う」

 

 撃とうとするM14を止め無線機を掴み鉄血を双眼鏡で観察する。

 そして次の瞬間、頭の上を砲弾が風を切る音が聞こえると鉄血の真上で炸裂する。

 

「弾着確認!修正の必要なし、効力射!効力射!」

 

 無線で砲兵に対して更なる指示を出す、その指示に従い更に砲撃が行われ鉄血が爆発四散していく。

 煙が晴れると残っていたのは鉄血の人形だったものだけだった。




一応作中に出てくる米軍戦車は今の第3.5世代戦車みたいな見た目じゃなくてロシアのT-14寄りの無人砲塔の戦車。
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