もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第25話

『こちらワイバーン01、現在レベル270、ポイントアルファ217手前2マイル。

 目標照準完了』

 

「ワイバーン01、破壊せよ」

 

 画面に映る攻撃機の爆撃照準器を見ながらアーチポフは彼の前に置かれたマイクで指示を出す。

 SVD達が鉄血と遭遇し火力支援を受けていた頃、鉄血の最後のダメ押しとなる航空攻撃が開始された。

 

『ラジャー、破壊する』

 

 パイロットが返事をすると搭載されていた爆弾や地中貫通爆弾、ミサイルが投下、発射される。

 そして数秒後、画面の真ん中が白く光る。

 命中したという証である。

 地中貫通爆弾は地面を貫きバンカー、そして地下にあった司令部――彼らは知らないがその司令部はこの地区を統括する鉄血のボス、侵入者がいた――を完全に破壊する。

 

「破壊完了です」

 

「ああ。これで我らの勝利は確実となった。

 後はリーダーを失った羊を狩り出すだけだ」

 

 オペレーターの言葉にアーチポフが呟く。

 その後の戦況は彼の言う通りとなった。

 

 

 

 

 

 

「あれ?妙ですね」

 

「何かあったのか?」

 

 砲撃が終わり生き残った一握りの鉄血と銃撃戦で圧倒していたSVD達だったが突如一部の鉄血がおかしな動きを始めた事にG36が気がついた。

 

「はい、動きが変です。

 いつもならもっと秩序だった行動を行っているはずなのですが」

 

「確かに、さっきと比べても統制が取れてないですね」

 

 G36にSV-98も同調する。

 どうも動きが変わりつつあった。

 

「そうか、だがそう言う事は我々の範囲外の話だ。

 98、海兵隊はどこまで来てるんだ?」

 

 SVDは興味を持たず海兵隊の位置を聞いた。

 

「そうですね、後12、3キロってとこでしょうか?

 かなり飛ばしてますよ、移動速度の情報で時速67キロって出てるぐらいですし」

 

「67キロ」

 

「アメリカ人、ハイウェーだと思ってるのか?」

 

「さ、さあ?」

 

 あまりの速度に一同は驚くしかなかった。

 

「まあ、そんな近くに来ているのなら連絡を取った方がいいな」

 

 SVDは無線機を手に取り連絡する。

 

「こちらノベンバーアルファ23、海兵隊応答せよ」

 

『こちらマイクチャーリー1、どうぞ』

 

 無線機で連絡を取るとミシシッピ訛りの英語が返ってきた。

 SVDは連絡が取れた事に安堵すると情報を与える。

 

「マイクチャーリー1、今から45分ほど前に鉄血の大部隊の襲撃を受けた。

 砲兵の火力支援で撃退できたが残党がいる可能性がある、注意し可能なら殲滅してくれ」

 

『了解した、そうなると、ちょっと遅れるな、遅くとも一時間半後には到着するだろうが』

 

「了解」

 

 SVDは短く返事をすると無線を切った。

 

 

 

 

 

 その少し前、例の海兵隊はというとフランス戦のロンメル率いる幽霊師団の如く敵後方を荒らしていた。

 

「右イェーガー!」

 

「了解です」

 

 M14の指示にM4(G&K)が銃弾を浴びせる。

 たまたま遭遇した鉄血の予備兵力に彼らは強襲を仕掛けていた。

 戦車と歩兵戦闘車の機関砲がプラウラーやダイナゲート、ドラグーンを吹き飛ばし人形たちを銃撃する。

 戦車からの銃撃だけでなく歩兵戦闘車の銃眼からも弾が飛び満足な反撃もできず殆ど一方的に蹂躙される。

 

「全く戦争は地獄ね!M4!」

 

「ドアガンナーの気持ちが分かりますね!」

 

「ドアガンナーってフルメタルジャケットの?」

 

「多分そうだろうな、おっと」

 

 撃ちながらAR小隊(G&K)は話していた。

 その反対側、車両の左側ではAR小隊(グリフィン)も銃撃する。

 

「なんか、訓練みたいね」

 

「え?」

 

「つまんなーいなぁ」

 

「そういう任務なんだ、仕方ないさ」

 

 彼女らはどこかこの任務に虚無を抱いていた。

 派手な戦闘は殆ど戦車に奪われ仕事は戦車が撃ち漏らした残党狩りという何とも消化不良な任務だからだ。

 

「聞こえてますよーまあ、そういう任務がこれから増えますからねー」

 

 その話はM14に聞こえていた。

 彼女は大きく揺れる戦車の上に立って話しながら撃っていたが平気で200m先のイェーガーをヘッドショットしていた。

 

「それにこれが本来の戦争ですよ、歩兵は戦車の援護で戦車が陸戦を制するのが」

 

 M14が言い切る。

 歩兵なくして戦争は勝てないが歩兵だけでは勝てないのが戦争、そして今や陸戦の王者とは戦車であり歩兵はその支援でしかないのだ。

 鉄血はその犠牲となった、殆ど損害らしい損害も出せずこの鉄血部隊も壊滅した。

 

「ところでブラウン中佐、今ここはどこですか?」

 

「向こうの戦線から直線距離で7.5マイルってところだな。

 まあこの道路だと10マイルぐらいあるが」

 

 彼らの進撃は順調であった、それこそ作戦開始から僅か5時間ほどで味方の戦線まで後もう一息というところまで来ていた、アメリカでは7.5マイルなど距離ではない。

 

「ならもう一押しですね」

 

「ああ、残り一時間程度だ、長くてもな」

 

『こちらノベンバーアルファ23、海兵隊応答せよ』

 

 突如無線が割り込んだ。

 ブラウンはM14との会話から無線でSVDと話し始める。

 

「こちらマイクチャーリー1、どうぞ」

 

『マイクチャーリー1、今から45分ほど前に鉄血の大部隊の襲撃を受けた。

 砲兵の火力支援で撃退できたが残党がいる可能性がある、注意し可能なら殲滅してくれ』

 

「了解した、そうなると、ちょっと遅れるな、遅くとも一時間半後には到着するだろうが」

 

『了解』

 

 SVDから情報を受け取るとM14に伝える。

 

「M14、どうも連中ちょっと前に向こうの陣地を襲撃したらしい。

 かなりの大部隊だったらしく残党がいる可能性がある」

 

「つまり斥候の出番って訳ですね」

 

「そういう事だ、頼むぞ」

 

「了解です!AR小隊!出番ですよ!」

 

「了解です!」

 

「給料分は働くわよ!」

 

「出番か!」

 

「あ!待ってお姉ちゃん!」

 

 SVDから伝えられた鉄血残党の件にM14はAR小隊を引き連れ戦車から飛び降りると雪原を走る。

 戦車隊の音が少しずつ遠くなっていき戦車では通れない針葉樹林の中を戦術人形らしく人間には不可能な速度で進む。

 針葉樹林の中の土手を超えると小川を見つける、その斜面を滑り降り氷の張った小川を渡りまた針葉樹林の中に消える、時々ルートを確認し方向を変える。

 そしてしばらく走ったところで突如目の前に敵のリッパーやイェーガー、ヴェスピドなど10体程度の一団が森林の木の陰に隠れて現れた。

 

「しまった!M4!援護!」

 

「了解!」

 

 なし崩し的に両者は白兵戦となった。

 

「とりゃ!」

 

 M14はライフルでイェーガーの一体を殴り倒すと頭に一発撃ち込み黙らせる。

 すると背後から気配を感じ振り返る。

 

「甘い!」

 

 背後から襲おうとするヴェスピドとリッパーの攻撃を伏せて躱すとリッパーを左手で掴み盾に後ろにいたヴェスピドを右手に持ったライフルで破壊する。

 直後、彼女の視界の端に何かを捉える。

 

「M4!」

 

「分かってます!」

 

 別のイェーガーがM14を狙うが一体が横からM4に撃たれ、もう一体もAR-15に撃たれる。

 更に別のリッパーがM14に撃つがM14は掴んでいたリッパーを盾にして破壊させるとライフルで破壊する。

 破壊するとそのまま腰だめに持ったまま狙ってくるヴェスピド数体を破壊する、だがここで弾が切れる。

 

「クソ、肝心な時に」

 

 するとライフルを放り捨てまだ襲おうとする人形に腰のホルスターからUSPを取り出し撃ち込み破壊する。

 その隙に腰に下げた銃剣をライフルにつける、そして顔をあげると敵のイェーガーが近づいてきた。

 至近距離から殺そうとするイェーガーに彼女は銃剣を突き刺し抉り破壊する。

 続いてきた敵もある者は銃剣で首を刎ね飛ばし、ある者は銃床の一撃で破壊される、その様子はまるで鬼神の様であった。

 気がつけば残っていたのは彼女らと人形だったものだけだった。

 

「ふう、全く時間の浪費でした。行きましょう」

 

 白兵戦が終わりM14が先程までの鬼神染みた覇気に代わっていつものようなどこか女子高生のような声に戻ると先を急ぐ。

 そして先回りして到達した道路が見渡せる小高い丘に辿り着いた。

 

 そこから道路の方を見下ろすと木々で見えにくいものの右往左往して撤退しようとしたり攻撃しようとするあらゆる鉄血ユニットが屯していた。

 その大半は大なり小なり破損していた。

 

「これが恐らくあの残りカスでしょうね」

 

「そうですね、こちらスカウト、ノベンバーアルファ23手前5キロ付近の道路に敵多数発見。

 恐らく敵残存勢力、規模は恐らく3個中隊程度」

 

 無線でM4が伝える。

 

『了解した。強襲するから側面から援護しろ』

 

「了解」

 

「援護って無茶言うわよあの海兵隊」

 

 ブラウンからは強襲を側面から援護せよと命令される。

 その命令にAR-15が毒づく。

 

「大丈夫ですよ、中国ではこの倍の連中とやり合いましたから」

 

「流石フォースリーコンだな」

 

「えへへ、よく言われます」

 

「羊の皮を被ったライオンね…」

 

 AR-15にはこの目の前で人懐っこい笑顔で笑う少女が恐ろしく見えていた。

 そして数分後、鉄血の一団の真ん中で大爆発が起きると聞きなれた金属の擦れる音とエンジン音が近づいてきた。

 

「来ましたよ」

 

 次々と爆発が起き更には機関砲や機関銃の弾も飛び交う、彼女らも銃を構え砲撃から逃げ惑う鉄血を側面から銃撃する。

 思わぬ方向から受けた銃撃に鉄血は更に混乱する、元々針葉樹林という狭い地域での攻撃であった、鉄血は逃げようにも逃げる場所は後ろしかなく、前には国連軍、左右は森林で逃げることなど不可能だった。

 あっという間に蹂躙され残った一握りの鉄血はSVDらの方へ逃げていく。

 それを見ると彼女らは丘の上から立ち上がる。

 

「皆さん!行きましょう!突撃!」

 

 M14が先陣を切る、それに続いてAR小隊も鬨の声をあげながら丘を駆け降りる。

 21世紀に入っても適切な火力援護があれば有効な戦術、つまり銃剣突撃を敢行する彼女らの様子は海兵隊からも見えていた。

 

「ハハ!見ろ!人形たちが銃剣突撃してるぞ!

 お前ら!海兵隊員たるもの後れを取るな!」

 

 彼女らの様子に海兵隊の士気は頂点に達した。

 これまで以上に激しい過剰とも言える攻撃に一瞬でも足を止めた鉄血は次々と討ち取られる。

 

 

 

 

 

 

「うわ…」

 

「どうしたんですか?」

 

 無線を聞いていたSV-98が苦笑いしていると戦闘の合間の小休止にチョコを食べていたFNCが聞いた。

 

「な、何でもないですよ。

 ちょっと鉄血が可哀想に思っただけですから」

 

「可哀想って何やってるんだ。SV-98がドン引きするぐらいって」

 

 双眼鏡で海兵隊が来るのが今か今かと監視していたSVDが漏らす。

 

「どうもM14が銃剣突撃してるようで」

 

「…すまないがもう一度言ってくれないか?聴覚センサーがおかしくなったみたいなんだ」

 

「銃剣突撃」

 

「今年って1914年だったっけ?」

 

「2062年だよ?」

 

「この時代に銃剣突撃?蛮族じゃないかな」

 

「海兵隊ですから」

 

「海兵隊なら仕方ないとはならないぞ」

 

 一部FNCが割り込むが二人にはさっぱり状況が理解できなかった。

 このご時世にイギリス人以外が銃剣突撃するなどありえないのだ、イギリス人は例外だが、この間も銃剣突撃をしたとかどうとか。

 その間にも砲声は少しずつ近づき、銃声も聞こえ始めた。

 

「銃声が近づいてきました」

 

「ん?近くまで来てるってことか!」

 

 G36に呼ばれ持ち場に彼女は戻ると双眼鏡で森から出てくる道路を見る。

 すると森の奥から鉄血が現れるが爆発して全て吹き飛ばされる。

 

「今のは…」

 

「騎兵隊の到着だ!」

 

 SVDが笑顔で叫んだ。

 それと同時に森の奥から戦車が現れる、海兵隊だ。

 

「さあ、行こう。同志たちに挨拶だ」

 

 そう言うとSVDは警戒しながらも仲間を連れて陣地から出る。

 数百メートルはあるが戦車からも数人が降りていた。

 

「アレがSVDの仲間の人形ですか」

 

「どんな子なんだろうね~」

 

「楽しみ~」

 

 楽しそうな声でM14やFNCも近づいて行った。

 そして互いの顔が見えるほどにまで近づくと声をかけられた。

 

「あ!SVDさん!SV-98さん!お疲れ様でーす!」

 

「M14さん!お疲れ様です!」

 

「ああ!仕事終わりだ!一杯やるか?」

 

 声をかけたのはM14だった。

 M14にSVDは飲みに誘う。

 その様子にS-09地区の人形は噂する。

 

「あれってSVDさんの友達なのかなぁ」

 

「そうだと思いますが、あれって…」

 

「私?」

 

 どう見ても隣にいるM14だが明らかに装備が違う、ライフルには銃剣をつけているしヘルメットを被り冬季迷彩だ。

 

「いえいえ、何言ってるんですか、仕事はこれからですよ。

 あのクソッタレな賊共を地獄の果てまで追いかけまわしてぶち殺すんですから」

 

「楽しそうな仕事だな」

 

「私達の仕事はこれで終わりですから」

 

「正義と権利と国家の為戦うのが我らが海兵隊、正義と権利を侵すものがいれば世界中どこへでも戦いに赴きますから。

 ところでそちらは…」

 

 3人仲良く話しているとM14が後ろのグリフィンの人形の事を聞いた。

 

「ああ、S地区の人形たちだ、G36、イングラム、M14、FNCだ。」

 

「初めまして、M14です。よろしくお願いしますね」

 

 SVDが紹介すると自己紹介した。

 そして代表してグリフィンからG36が歩み寄る。

 

「初めまして、G36と申します、以後お見知りおきを」

 

「固い挨拶は抜きにしてください、同じ戦場を戦った友人なんですから」

 

「はぁ」

 

 フレンドリーに接する彼女に戸惑う。

 彼女はG36の手を取り肩を叩く。

 

「折角ですから写真を撮りましょうよ、明日の世界中の一面記事を飾る写真を。

 誰かカメラ持ってます?」

 

「スマホならあるが」

 

「十分ですよ」

 

 M14が提案するとSVDがスマホを取り出す。

 そしてG36と握手しポーズを取る。

 

「じゃあ、はいチーズ」

 

 スマホのシャッター音が鳴る。

 この写真は三日後、世界中の新聞の一面を飾った。

 二つの世界の本格的な出会いを象徴する写真となった。

 

 

 

 この日から一週間後の3月13日、国連軍は神々の怒り作戦の作戦終了を宣言した。

 損害は負傷者24名、戦車中破4両、人形損傷3体のみ。

 対する鉄血の損害は推定自律人形1万3000体、その他兵器1200台とされた。

 

 




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