もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第3章!内政編!新キャラ登場!


第三部:PAX
第26話


Fiat iustitia,(正義はなされよ、)et pereat mundus(よしや世界が滅ぶとも)

     ――フェルディナンド1世(神聖ローマ皇帝)

 

 

「民主主義、自由、権利、経済、安全、インフラ、衛生、通貨、市場、産業、全部です。

 全部を一から作るのです。いわば新たなフロティア、新たな西部開拓時代の幕開けですよ」

     ――ジェームズ・ニコラス(アメリカ合衆国内務省特別代表。ニューヨーク・タイムズの独占取材にて)

 

 

 

 

 

 

 

 神々の怒り作戦から一か月ほど経った4月、春になる段々暖かくなり道は雪から泥、さらに花園に変わりつつある中、S地区全体では新たな動きが起きていた。

 完全武装の警察官とそれを支援する軍部隊、グリフィンやG&Kの人形や人が車列を作り全速力で走っていた。

 

 

 

 

 

 そこから少し離れたところ、スラム街の外れにある一角では人でにぎわっていた。

 この一角は所謂闇市、並んでいるのは普通の食べ物や衣類、日用品だけでなく違法な火器類、弾薬、麻薬、偽札、化学物質、人、人形、そして放射性物質。

 暗黒社会の一角たるこの地区では人の死や殺し合いは日常茶飯事、それは人形にも当てはまった。

 

「う…」

 

「あ…」

 

 ある建物の地下、体中が汚され衣類も殆ど剥ぎ取られ裸同然の3体の戦術人形、M1ガーランド、SuperSASS、Stg44が鎖に繋がれていた。

 彼女らの指揮官に売り飛ばされこの館、所謂娼館に買われ、囚われてからというもの犯され汚され殴られ蹴られ等々想像を絶する日々を過ごしてもなお彼女らは皮肉な事に人形として能力たる高度な演算能力を有し、今が何月の何日の何時何分何秒かまで正確に分かっていた。

 だがそんなことが何の慰めにもならないのは明らかだった。

 

 

 

 

 

「へい、旦那。見ない顔だな?」

 

 地上では闇市の出入り口近い店の親父がショットガンを持ち白いスーツにボルサリーノを被った見慣れない男に声をかけた。

 その男はタバコを咥えたまま聞いた。

 

「ああ。最近越してきたんだ、親父さん、一つ聞きたいがこの市場ってアレか?」

 

「言わなくてもわかるだろ」

 

「ああ、そうだったな」

 

 次の瞬間、ショットガンを上に向け発砲した。

 

「動くな!国連軍だ!」

 

 それを合図に全ての屋根から通りから兵士と警官、人形が現れる。

 

「逃げろ!」

 

「ママ!ママ!」

 

「こっちよ!」

 

 闇市の商人、客は我先にと逃げるがそもそも全ての出入り口を一瞬で封鎖されたため逃げることもできず群集は慌てふためいていた。

 そんな中で一部の人間は警察や兵士に発砲する。

 

「死ね!」

 

 ある店の店先で男が古いアサルトライフルを警察に乱射する。

 警察官や兵士達は隠れる、だが次の瞬間、男が押し倒される。

 

「ぐわ!」

 

「あら?ごめんなさいね、下がよく見えなくて」

 

 振り返ると背中に銃口を突きつけた戦術人形のイサカがいた。

 だが格好はいつもの露出の多い格好ではなくスーツ姿だった。

 

「く…人形風情が…!」

 

「おっと、俺の大事な相棒を風情と言うとはな。

 マリア様に同じこと言いな」

 

 ついさっき、摘発の合法を放った男がその男の頭に持っているショットガン、彼女と同じイサカを突きつける。

 次の瞬間、男の頭はスイカのように破裂した。

 そしてその様子を店の奥から見ていた店主に話しかける。

 

「よう、旦那」

 

「な、なんだお前ら!」

 

「俺らか?国連軍だ。最近になってこの街を統治することになった連中さ。」

 

「し、知るか!さっさと出ていけ!こ、この店を摘発するり、理由はなんだ!」

 

「理由?そうだな…」

 

 男はそう言うと店の奥を歩き、さらに壁をノックする。

 そしてショットガンを構え壁に連射する、すると壁だと思われたものは壁ではなかった。

 木で出来た隠し扉だった。

 隠し扉が破壊されると奥にあったのは綺麗に並べられた銃器、人形、そして麻薬だった。

 

「武器、人形、それにヤクだ。」

 

 2062年4月、国連軍はS地区全体で大規模な浄化作戦、ローマ神話の平和の神の名を取り「パークス作戦」と題された作戦を開始した。

 動員されたのは国連軍合計10万の内の4万と警察組織1万だった、警察組織には全米各地から集められた警官1400人、DBI、FBI、DEA、ATFが各150人、シークレットサービスとTSAが各100人、そしてフランスのジャンダルムリ、イタリアのカラビニエリ、スペインのグアルディア・シビル、ポルトガルの国家警備隊などの各国国家憲兵や準軍事組織合計約8000人。

 支配地域全体の総人口が推定25万、五人に一人の割合というとんでもない比率になってしまった。

 この圧倒的な数にさらに彼らを見くびっていた犯罪組織の方から情報を提供するところもあり僅か一日の摘発で5000人以上の犯罪者が捕らえられた。

 

 こうなったのは神々の怒り作戦後、グリフィンと協定が結ばれS地区の統治はグリフィンからさらに国連軍へと移管されたのだ。

 そしてグリフィンは水面下で開始された政府と国連軍の交渉仲介を担うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

「スタン、無茶苦茶だな」

 

「そんなもんさ。飲むか?ドクターペッパー」

 

「俺は苦手なんだ。」

 

 摘発作戦終了後、闇市で一番立派だった娼館の一階で先程のショットガンの男、DBI捜査官のゲイリー・スタンフォード、通称スタンと指揮官が話していた。

 二人の足元には彼らの仲間に撃たれた娼館の主の血がこびりついていた。

 そんな中でもスタンは悠々とドクターペッパーを飲んでいた。

 

「そうか?んー銃撃戦のスリルの後のこいつは最高だ。

 生きているって実感できる」

 

「ハハ、そうだな…俺の部下は無事でよかったが。」

 

「指揮官、掃討終わりましたー」

 

 話していると奥から作戦に参加していたAR-15が現れた。

 彼女も戦闘の後とは思えない程元気そうであった。

 

「お疲れ様。」

 

「ねえスタン!ちょっとこれ見て!」

 

 するとAR-15がいた部屋の奥からイサカがスタンを呼んだ。

 スタンはすぐに反応する。

 

「イサカ、何かあったか?」

 

「ええ、これ見て」

 

 やってきたイサカは3つの銃を持っていた。

 

「Stg44にガーランド、SuperSASS?」

 

「ええ。しかも烙印加工済み。他の連中がAKとか東側装備の中でこれだけ西側よ」

 

 イサカの話にスタンの目つきが鋭くなる。

 持っているのは極めて珍しい「烙印システム加工済みの銃」だ。

 戦術人形が持つ銃には当たり前にされている烙印システムだが、普通この加工がされた銃は人形とセットで運用されるか売買される、というのもこの加工がされた銃は大概簡単に足がつくのだ、だから裏市場には滅多に出回らない、だって足がつくのだから。

 この事が意味するのはたった一つ。

 

「イサカ、今回救出された人形の中にガーランド、Stg、SASSの人形は?」

 

「いないわ。M1カービンならいたわ」

 

「今すぐ全員集めろ!まだどこかにいるはずだ!」

 

 スタンが大声で叫ぶ。まだこの建物内に誰かいるのだ、それが被害者か犯人か客かは別として。

 その声に建物内で捜査していた捜査官や軍人が急いで集結する。

 

「この建物内にまだ誰かがいるはずだ!捜せ!

 隠し扉か隠し部屋があるはずだ!その中にいるはずだ!」

 

「は!」

 

「チャーリーの班は上から虱潰しで捜せ、タンス、家具の裏、屋根裏、壁、とにかく全部ひっくり返せ。

 残りは一階から上に向かってだ」

 

「「は!」」

 

 スタンがDBIの捜査官の班に上から捜すよう指示を出し残りは一階から捜させる。

 すぐに分かれて上から下へ、下から上へと探し始める。

 タンスをひっくり返し床を引っぺがそうとし壁を叩く。

 しかし一向に見つからない、苛立った指揮官はスタンに言う。

 

「本当見つかるのか?」

 

「絶対に何処かにあるはずだ…ん?」

 

 するとスタンがあることに気がついた。

 

「イサカ!この裏の部屋はどうなってる?」

 

 壁の一面を指して大声で聞いた。

 

「その裏?確か帳簿部屋よ。」

 

「サイズと扉の位置は?」

 

「10フィート×10フィートで向こうのドアが一番端…まさか!」

 

 この裏にある部屋のサイズとドアと角までの長さを思い出した。

 

「ドアからこの角までは18フィートだ!

 集合!この裏だ!帳簿部屋の壁を探せ!」

 

 サイズが合わないのだ。

 18フィート、およそ5m40cmあるが中の部屋のサイズは10フィート、約3m、差の2m40cm分に隠し部屋があると考えられる。

 壁の厚さなどを差し引いても少なくとも2m程度は空間があるはずだ。

 この事実に気がつくと彼は人を集め帳簿部屋に入る。

 中の壁は高い書類ラックで隠されていた。

 

「一番奥の壁のラックだ!それを外せ!」

 

 スタンが命令すると屈強な職員が二つのラックを動かそうとする、だが片方のラックが何かに固定されているようで全く動かない。

 

「スタン!これ動かないぞ!」

 

「この裏だ、恐らく壁と一体になって作られてる。

 一回押してみろ!」

 

 二人の捜査官がスタンに言われた通りに押してみる、すると後ろから金属がぶつかる音がするが動かない。

 

「鍵だ!裏に鍵があるぞ」

 

「右端の書類を全部出せ!」

 

 スタンと捜査官、そしてイサカは急いで丁番のあるであろう左側、ではなく右端の書類を棚から出していく。

 すると上から3段目、高さで言えば1m60センチほどの高さの棚の奥から鍵穴らしきものが現れた。

 

「スタン!ここだ!鍵穴だ!」

 

「イサカ!」

 

「了解!」

 

 イサカが棚に登るとM37を鍵穴に当て撃つ。

 すると鍵が外れたのかゆっくりと回転していった。

 裏からは隠し部屋が見つかった、だがそのサイズは2m×2m程度の狭い部屋だ。

 

「これだけ?」

 

「いや、イサカ、棚を動かせ。」

 

 イサカが棚から降りて棚を動かす、すると回転して90度ほどしか動いた棚の裏に階段があった。

 

「階段だわ」

 

「この奥だ。行くぞ」

 

 スタンはフラッシュライトをつけ拳銃を持ちゆっくりと降りていく、その後ろにイサカ、AR小隊、指揮官、そして捜査官たちが続く。

 




・ゲイリー・スタンフィールド
 人形捜査局捜査官。通称スタン
 カリフォルニア出身。
 DBI創設時からいるベテラン捜査官で元DEA捜査官、45歳。
 両親を麻薬で失いDEAに入りその後DBI創設時に移動となった。
 とかく頭が切れる上に戦闘能力もかなり高い。
 優秀だが孤独を抱え酒と煙草に溺れてる、趣味はゲーム全般。
 相棒のイサカが唯一の心の支え。馬鹿にすると本当にキレる、イサカしか止められないぐらいキレる。
 ドクターペッパー派。
 愛銃はノーマルのイサカM37とS&W M&Pの9ミリパラベラムモデル。
 見た目はレオンのスタン。

・イサカM37
 人形捜査局所属人形。
 スタンと同じく元DEA、過去に訳アリ。
 スタンの女房役にして相棒。実質彼を止められる最後の砦。
 スタンと同棲してほぼ夫婦だが結婚する気はないしそもそも付き合ってすらいない。
 人形らしく身体能力は抜群、近接戦闘能力も高い。
 愛銃のイサカはソードオフ化され近接戦闘特化。
 サブでS&W M52、かなり古い品で製造から100年近く経ち状態もよくその上初期モデルという事から売ればかなりの値段になるらしいが売る気はない。
 実は相当な違法改造が重ねられて本来人形に製造段階から組み込まれてるセーフティが意図的に外されてる他一部に異常な程の酷使の形跡があった(修理済み)



新キャラ、ここから暫く内政やって特異点(をぶっ潰す)
スタン×イサカは唯一のシリアスコンビ。
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