「暗いな…足元に気をつけろ」
左手にフラッシュライトを、右手にS&W M&Pを構えながらスタンが一歩ずつゆっくりと降りていく。
地面は石造りで冷たく天井には埃と蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
「気味が悪いわね」
「ああ。あんな隠し部屋を作るんだ、相当ヤバい代物が隠されてるに違いない」
階段を下っていくと突き当りにぶつかる。
階段の終点の様だ。
スタンが手で合図する。
「イサカ、確認してくれ」
「任せなさい」
イサカはゆっくりと階段の出口に向かう、そして出ようとした瞬間、右側から銃弾が飛び出入り口や床に跳ねる。
「く」
「大丈夫か!?」
スタンが聞くとイサカは平気な顔で答える。
「ええ。バカが一人いるわ。AKを持ってるわよ」
「黙らせられるか?」
「朝飯前よ」
そう言うと銃声がやんだタイミングで階段から飛び出し銃撃する、数秒後にはうめき声と金属が床に落ちる音が響いた。
「もう少し楽しませなさいよ」
「始末したな、クソッタレが。
よし、捜せ。まだ他にもいるかもしれないから最大限注意しろ」
撃っていた男が死んだのを確認すると後続に指示を出す。
捜査官たちは部屋の捜索を始める。
部屋は広くさらにいくつかの部屋に繋がる扉があった。
「スタン」
「ああ。」
イサカとスタンは部屋の奥にあるまるで警察署の留置場のような一角に気がついた。
二人は銃を構えてゆっくりと近づく、そして留置場の一部屋をライトで照らした。
「ん…ん…」
「や…いや…!」
「…ゆ…許してください…!」
そこには汚れみすぼらしい姿になったSuperSASS、Stg44、M1ガーランドの戦術人形がいた。
「怪我人だ!怪我人がいるぞ!人形だ!」
「大丈夫よ、すぐにそこから出してあげるわ」
スタンが大声で仲間を呼ぶ、その間にイサカは銃で檻のカギを吹き飛ばす。
「あ…貴方たち…は…?」
今にも消えそうな声でSASSが聞いた。
するとイサカは彼女の頭を撫でながら答える。
「私達は国連軍よ、私はイサカ、所属は合衆国人形捜査局。
彼は私の相棒のスタン、同じく捜査局の捜査官よ」
「国…連…軍…?」
「だ…誰です…の?」
3人にイサカが話しているとスタンがイサカの後ろに来る。
「詳しい話は後だ。まずは鎖を壊さないとな」
「ええ。」
スタンはショットガンで三人の手と壁を繋いでいた鎖を破壊する。
「立てるかしら?」
「は、はい…」
「だ、大丈夫、おっとっとっと…」
「足を…壊されて…」
Stg44は自力で立ち上がれるようだったがSASSはふらつき自力で立てず、ガーランドに至っては足を壊されていた。
「酷いわね。誰か来て頂戴、SASSさんは私が肩を貸します。
AR-15、丁度いいところに来たわね、ガーランドさんを背負ってあげて」
「分かったわ」
イサカがSASSに肩を貸し、後からきたAR-15がガーランドを背負う。
すると部屋の反対側から大声で誰かが叫んだ。
「チャーリーだ!チャーリーがある!」
「何!?」
チャーリーという単語にイサカもAR-15もスタンを驚く。
「全員退避!全員退避だ!!急げ!!」
「スタン、AR-15!退避だ!」
「ああ。急げ!」
やってきた指揮官の指示にスタンは急いで4人を連れて部屋を出る。
チャーリー、それは史上最も危険な物質と言われる崩壊液、その略称であった。
1時間後、娼館だった建物には軍のNBC防護部隊が集まり建物の中から崩壊液のアンプルが一つずつ運び出され崩壊液中和剤によって無力化されていた。
「貴方たち、大丈夫?」
「は、はい…ありがとうございます…」
近くに置かれたワンボックスカーの中で憔悴しきっている3人にイサカが聞いた。
代表してガーランドが答えると聞いた。
「あの、聞いてもいいでしょうか」
「何かしら?」
「あなた達は一体?」
「さっきも言ったわよ、DBIの捜査官よ」
「で、でもDBIなんて組織ないですよ?」
SASSが聞く。
「そりゃあそうよ、だって異世界の組織よ?
あなた達が何があったかはこれから聞きたいけど恐らくだけどあなた達があの中にいた頃に私達はこっちにやってきた。
そして今はこのS地区の治安維持が仕事、だから話して、一体なんであそこにいて、何があって、何をされたの?」
イサカが優しくなぜあそこにいたのか聞いた。
そして意を決してガーランドが事のあらましを話した。
話し終わるとイサカは優しく抱きしめ背中をさする。
「大変だったわね、でももう大丈夫よ、貴方たちは自由よ。」
イサカの優しさにガーランドは静かに泣き出した。
そしてさらにもう一つ聞いた。
「あの…M1カービンは…」
「M1カービン?」
イサカは首をかしげる、するとStg44が説明した。
「私達と一緒に指揮官に売られた戦術人形ですわ。
一人だけ他の所に…」
「多分大丈夫よ。解放した人形の中にいたはずよ。
でも再会の前に貴方たちをちゃんと直さないとね。」
イサカはとびきりの笑顔で3人を安心させると車から降りた。
その頃、外ではスタンがタバコをふかしながら指揮官、そして崩壊液が見つかったと連絡を受け飛んできたコーシャと話していた。
「まさか崩壊液が見つかるとはな」
「ああ、想定外すぎる。崩壊液は危険すぎる物質だ。
アレを闇で売りさばいていたんだ、もはや警察どころの騒ぎじゃない」
「安全保障の領分に入るからな」
「ミスタースタンフィールド、崩壊液の入手元と売買先を出来る限り調べてくれ。
どんなに些細な手がかりでも構わない、最優先で頼む」
「分かってるよ。人類の為にもね」
コーシャの依頼に二つ返事でスタンは了承した。
その答えを聞くとコーシャは近くに停めた車に向かう。
「ならいい。俺は司令部に戻る。」
「コーシャ、そっちも忙しいのか?」
「ああ、何せ武力を掌握しなくちゃならないからな。」
「暴力の独占って奴か。
軍の連中も忙しいねえ」
コーシャの仕事を察したスタンが言う。
コーシャの今の仕事は「暴力の独占体制の構築」であった。
20世紀前半のドイツの政治学者マックス・ヴェーバーが唱えた国家の定義の一つ、それが軍や警察といった権力を独占する「暴力の独占」である。
これに失敗する事は本質的に国家としての機能を失っていることを意味する、つまるところ暴力の独占は国家に与えらえた特権であり義務であった。
そして無秩序と化していたこのS地区のあらゆる「暴力装置」を「国連軍の統制下に置くか壊滅させる」というのが目下のところの軍の仕事であった。
「だが失敗すればそれは国家じゃない。
じゃあな」
そう言うとコーシャは車に乗り行った。
コーシャの乗った車が行くとずっと待っていたイサカにスタンが話しかける。
「イサカ、彼女達の様子は?」
「落ち着いているわ。
どうも彼女達の指揮官に売られたそうよ」
「売られたか、ってことは元の基地に戻すのは絶対にありえないな」
二人は話しながら彼女らを売り飛ばした下劣な指揮官に対する怒りがこみ上げる。
長年人形関連犯罪と戦ってきた二人には最低最悪のクソッタレとしか思えないのだ。
二人共表情にも口にも出さないが怒り狂っていた。
「それと、後一緒に売られた子も一人いるわ。M1カービンよ」
「あの子か。先に基地に修理と点検で送ったぞ。
再会は基地だな。」
イサカがもう一人、M1カービンの事を伝える。
彼女の事は別の建物で商品として売られそうになっていた所を保護され先に基地に送られていた。
しかし彼にはまだ懸案はある、性的虐待を受けた女性がその後PTSDなどを発症する可能性というのは非常に高い、そしてこれは人形にも当てはまるのだ。
性的暴行の被害者へのアフターケアの重要性は強調してもしきれないほど重要だ、その事をスタンはよく理解している。
仕事柄そういう事件を何度も見てきたのだ。
「イサカ、しばらく忙しくなるぞ」
「ええ。むしろいい事よ?
貴方、忙しくならないとすぐ酒に溺れるでしょう?」
スタンはフィルターまで吸った煙草を地面に捨て靴で踏み潰す。
パークス作戦全体で押収された物資は以下の様であった。
・違法な小火器2097丁
・弾薬95トン
・人形213体
・麻薬130トン
・放射性物質27トン
・崩壊液0.9トン
このうちの最後の記録に国連軍は驚愕した、崩壊液という史上最も危険な物質が大量に市井に流れているという事実に。
暴力の独占ってそもそも国家の定義だからやらないと。
S地区の他のグリフィン基地も全部国連軍の指揮系統に組み込まないと…ここにコラボの可能性が…
ブラックマーケットで大量に崩壊液取引されててどう考えてもヤバかったからこの話になってる。
ブラックマーケット実装でまさかの通貨体制自体が崩壊してたからこれ国連軍がドル持ち込んだらヤバいんじゃねえか…悪貨は良貨を駆逐するし史実でもまるっきり通貨体制が違う世界に違う通貨持ち込んだらインフレ起きた事よくあるし(幕末日本など)