もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第34話

 S-07地区、イタリア軍駐屯地

 この日、この駐屯地に8千人規模の大部隊が到着し整列していた。

 その部隊は特徴的な帽子と装備のアルピーニ、伝統の黒い羽をつけたベルサリエリ、最新鋭戦車を多数装備した戦車部隊、毛並みの違う軍服のサン・マルコ海兵旅団、まさに大部隊だった。

 

「大佐、全部隊到着しました。」

 

「分かった」

 

 この部隊を率いる女性の大佐が部下の陸軍少佐の報告に答える。

 そして振り返るとクロッラランツァに命令した。

 

「現時点でクロッラランツァ任務部隊は我が任務部隊エウジェニオ・ディ・サヴォイアの指揮下に入ってもらう」

 

「了解であります、グラツィアーニ大佐」

 

 クロッラランツァに命令した女の名はアンジェリカ・グラツィアーニ、かのリビアの屠殺者の親族でもある女だ。

 イタリア軍内部でも血気盛んな軍人であり有能な戦略家、机上演習でイタリア全土を3日で制圧した程の有能な軍人だ。

 そんな彼女に近くにいた将校が話しかけた。

 

「壮観な眺めですな、グラツィアーニ大佐」

 

「ここにいる兵士達は皆イタリアの盾であり矛です。

 正義の鉄槌を下すべくやってきた部隊だ」

 

「V部隊の異名に恥じない部隊のようだ」

 

 眺めていたのはコーシャ、国連軍司令部将校として状況の確認に来ていた。

 彼の言ったV部隊はこの部隊の異名である。

 Vが意味するのはヴィンチェレ(勝利)、ヴェンデッタ(復讐)、クソッタレのジェスチャー、イタリアが送り込んだ復讐の為の部隊だった。

 

「イタリア国民の願いは復讐と勝利です。

 我が国の誇りを傷つけた不逞の輩を神の名の下に成敗しなければ」

 

 非常に強い言葉で彼女は主張する。

 イタリア人である彼女も又例の事件に怒りを感じていた者の一人であった。

 すると、コーシャはある重要な情報を彼女に伝えた。

 

「ならばその復讐の機会は早々にやってきますよ。

 実は――」

 

 

 

 

 その数日前

 例の爆破された建物の捜索は佳境を迎えていた。

 

「気を付けて!そう、ゆっくりよ!」

 

「了解!」

 

 慎重に瓦礫を掘り進める重機にイサカが指示を出す。

 指示の通りに瓦礫を持ち上げると下からコンクリートの床が現れた。

 

「ビンゴ。スタン!」

 

「出たか!?」

 

「ビンゴよ!」

 

 イサカがすぐにスタンを呼ぶ。

 イサカの下にすぐ来たスタンは状況を確認すると人を集めた。

 そして作業員と捜査官の前で訓示を出した。

 

「よし、ここから掘り広げろ。

 どこかに扉か何かあるはずだ、見つけた奴には私が後でビールを奢ろう」

 

「それじゃあ、仕事開始よ!」

 

「「了解!」」

 

 イサカが手を叩くと作業を始める。

 それにイサカやスタンも交じりシャベルやツルハシ片手に瓦礫を掘り進める。

 作業はそれから数時間に及び日が落ちると作業用の照明を持ち出し照らしながら進める。

 数時間も作業を続ければ疲労という概念が薄い(一応連続使用制限はあるがそれでも最近は丸3、4日ぶっ通しで使わない限りは引っかからない)人形は兎も角成人男性でも体が堪え、現場の傍に建てられたテントの中で何人かがグロッキー状態になっていた。

 現場の疲労がピークに達し殆ど全員が眠気と疲労に苦しんでいた真夜中の少し前、ある捜査官がシャベルを入れた時、カキーンと金属がぶつかる音がした。

 

「ん?下に何かあるのか?」

 

 金属の残骸だと思い瓦礫を掘ると現れたのは金属製の大きなハンドルだった。

 その正体はすぐに思い至った。

 

「スタン!あったぞ!」

 

 捜査官が大声で叫ぶ、すると全員が作業を止めそちらを見た。

 

「何があった!ジョン!」

 

「ハンドルだ!下にハッチのような物もある!」

 

「分かった!お前ら!この周りだ!見てないで全員手伝え!」

 

 俄かにゴール地点が見えるとグロッキー状態だった捜査官もへとへとになっていた捜査官もやる気が出てきた。

 さっきまでの疲れは何処へやらとハンドルの周りを一斉に掘り始める。

 そして一時間かけて直径1m程のハッチを掘り出した。

 

「やっとだ。

 それじゃあ回すぞ」

 

 スタンの指示で数人の捜査官がハンドルを無理やり回す。

 金属が擦れる不快な音が響きロックが外れると数十キロもするであろうハッチをバールでこじ開け、懐中電灯で中を照らす。

 

「おい、見ろよ」

 

「ええ。宝の山ね」

 

 中にあったのは大量の麻薬と違法火器の数々だった。

 その量は見えるだけでも元DEA捜査官のスタンでさえ数回、それも全部カルテルのアジトを摘発した時ぐらいしかお目にかかれない程の量だった。

 

「ヤクだ。覚醒剤かヘロインか。

 どう思う?」

 

「そうね、これ全部売れば三回は一生遊んで暮らせるぐらいにはなるわ。」

 

「そうか。おい、DEAを呼んできてくれ。

 大量の麻薬が見つかった」

 

 本来人形関連犯罪を担当する彼にはこの量は対処不能だった。

 何せ推定で数トンはくだらない、その上ここにいる捜査官はDBIかFBI、どちらも麻薬犯罪はやらない事もないが専門外だ。

 そしてそこに更にいいニュースを持ってあるFBI捜査官がやってきた。

 

「スタン」

 

「どうした?」

 

「さっきクアンティコから瓦礫から回収した爆弾の破片の解析結果が届いた。」

 

「何?」

 

 捜査官が持って来たのは現場から早期に回収され精密検査の為米本土にあるFBIの研究所に送られた爆弾の破片の情報だった。

 彼はパソコンに届いた情報を見せる。

 それはグリフィンの関与を示唆する内容だった。

 

「ん?爆破装置はグリフィンが使ってる旧型の遠隔爆破装置?

 無線式で誤爆を防ぐためグリフィンのネットワークと連携している。」

 

「ああ、グリフィンのアルカード指揮官にこの爆破装置の事を聞いたら無線式爆破装置のハッキングを昔されたことがあったらしくそれ以来グリフィンのネットワークとリンクさせた無線式爆破装置しか使用しない取り決めになったらしい。

 それ以外の爆破装置も使えない事はないが他の無線式はセキュリティに問題があるから使わないそうだ。」

 

 FBIは事件後早期に現場から幾つかの爆弾の破片を発見、更に犠牲者の遺体や破壊され捻じ曲がった金属の隙間などに挟まっていた微細な爆弾の部品の破片と思しきものも回収され全てFBIの研究所に送られ解析された。

 その中でも注目されたのがいくつかの電子基板の破片、全て大きさは爪の半分かそれ以下という小さな破片だが誰が爆弾を作ったかという重大な証拠になる、多くの場合爆弾製造者は誰が爆弾を作ったか分かるように作っていると言われている。

 その基盤の破片をFBIは彼らが持つ膨大な量の世界中で発見された爆弾のデータベースと比較したが同一のものは一切見つからずCIAなどにも協力を要請してもなお見つからなかった。

 

 そこでFBIは非公式にグリフィンにグリフィンが持つ爆弾の情報を求めた。

 グリフィンは彼らが求める情報を提供、そしてその中に目当ての基盤があった。

 それがグリフィンが一般的に使用している旧式軍用無線式爆破装置だった。

 この爆破装置はグリフィンのシステムと接続されて初めて使用可能になるというかなり特殊だが同時にハッキングやジャミングに対して非常に強い爆破装置だった。

 

「今グリフィンに事件当夜のネットワークの通信記録を提出させてる。

 この記録がグリフィン本部での一括管理だから良かったよ。」

 

「そうか」

 

 スタンはにやりと笑った。

 だがその様子を眺めているドローンには気がつかなかった。

 

 

 

 

「クソ」

 

「で、どうしますか?ボス」

 

「妨害してブツを取り返せ。

 どんな手を使っても構わない、ただし足のつかない方法でな」

 

「分かりました」

 

 その頃、S-07地区の基地内で一人の男が映像を見ながら背後に座るスキンヘッドの男に指示を出す。

 すると男は闇の中へと消えて行った。

 指示を出した男の袖にはグリフィンのマークが付けられていた。




・アンジェリカ・グラツィアーニ
イタリア陸軍大佐。
有能なのだが軍内部でも最も血気盛んな軍人の一人。
グラツィアーニ将軍の親族


設定上人形には疲労という概念が薄いです。
連続使用時間制限って形で疲労はあるけどそれでも数日ぶっ通しで殆ど性能の低下が無く使える。
ついでにその利点として人形に重い対戦車ミサイルやロケット、予備弾役、医薬品、無線機を持たせて歩兵部隊に随伴運用する運用法もある。
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