もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第35話

 コーシャとグラツィアーニが話し合っていた頃、爆破現場ではDEAの捜査官たちが集まり地下室から大量の麻薬を軍用トラックに積み替えていた。

 爆破現場は小さな街の外れであり片側と裏側は建物だったが正面ともう片側は空き地が広がっていた、そのため重機やトラックを簡単に持ち込めたのだ。

 

「ゆっくりだ、落とすなよ」

 

「スタン、こいつぁ久しぶりの大捕り物だな」

 

「ウィリー・プロも見るのは久しぶりか?」

 

「この量となると一昨年のプエルトリコ以来だ」

 

「あの事件か、アレクサンドリアでも話題になったよ。」

 

 スタンの隣に立っているのはDEAを率いるDEAの捜査官ウィリアム・プロヴェンザノ、通称ウィリー・プロ。

 スタンとはDEA時代からの知り合いというベテラン捜査官だ。

 

「だがこいつぁすげぇぞ。

 高品質のヘロインとメタンフェタミン、アンフェタミン、それにデソモルヒネ。

 あの悪名高いクロコダイルまであるぜ、いやぁ恐ろしい恐ろしい。」

 

 見つかった麻薬は一般的なヘロインや覚醒剤だけでなく恐ろしいデソモルヒネまで大量にあった。

 末端価格で天文学的数字になるのは確実な程の量だ。

 

「それで、あの男の逮捕は?」

 

「既にDEAから規制薬物法違反の容疑で逮捕状を請求した。

 明日の朝までにも正式に出される予定だ。

 ついでにFBIもさっき第一級殺人の容疑で逮捕状を請求したよ。

 DBIは?」

 

「人形の違法売買の記録の写しが見つかったが全部統治下に入る前の物ばかりだ。

 どうやら俺達の出番はないらしい。」

 

 スタンが言い切った。

 次の瞬間、開けた側からロケット弾の特徴的な蜂のような音が飛んでくると作業が終わり止められていた重機の傍に着弾し爆発した。

 そして銃撃が始まった。

 

「全員伏せろ!」

 

「クソ!」

 

 捜査官たちはすぐに重機やトラック、瓦礫の穴の中に隠れる。

 スタンとプロは拳銃を取り出し反撃するが全く届かない。

 その代わり警備のイタリア兵たちがアサルトライフルや軽機関銃で反撃し銃撃が弱まる。

 

「スタン!」

 

「イサカ!」

 

「プロ!」

 

「SPR、無事だったか」

 

 その間にイサカがDEA所属の戦術人形のSPRA3Gがやってきた。

 

「スタン、一体何が起きてるの?」

 

「さあな?多分あの男が雇ったクズ共だ。

 ロケット弾まで持ってるんだ相当ヤバい連中だぞ」

 

「プロ何やらかした」

 

「俺は何もしてねえぞ。お前の方じゃないか?」

 

「まあいい、連中に落とし前はつけさせるさ」

 

 SPRはトラックの陰から銃撃があった方を覗く、すると叫んだ。

 

「不味い!伏せろ!RPGだ!」

 

 彼女の叫びにスタンたちが一斉に伏せる。

 次の瞬間背後のトラックにロケット弾が直撃して爆発、積荷の麻薬の粉が小麦粉のようにぶちまけられる。

 

「ペッ!ペッ!おい、大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないみたいだ。

 破片が頭を切った、全く痛みを感じないどころか妙に気分がいいが」

 

 ヘロインと覚醒剤とデソモルヒネの粉まみれになったスタンが聞くと隣にいたプロは頭を破片で切っていた。

 だが全く痛みを感じないどころか幸福感に溢れていた。

 

「大量の麻薬をぶちまけたんだ、俺もお前もラリるさ。

 SPR、イサカ、どうだ?」

 

「私は無事だ。奇跡的に無傷だ。」

 

「無事って言いたいけど、背中に破片が刺さったらしいわ。

 どう?」

 

 SPRとイサカの方を見るとSPRは無事だったがイサカはトラックの破片が背中に刺さっていた。

 イサカはスタンに背中を見せて傷を確認させた。

 

「ああ、大丈夫そうだ。

 皮膚パーツの下のケブラーで止まってる。」

 

「大丈夫か?嬢ちゃん?」

 

「女の子の裸を見たいのかしら?」

 

「あっち行け、プロ。」

 

「分かってる」

 

 プロを追い払うとスタンは背中に刺さった破片を強引に抜く。

 戦術人形の体はこの世界と違いイサカたちの世界では表面の生体皮膚パーツの下にポリエチレン繊維とセラミックによる防弾構造になっており人間と違い内部に防弾構造を仕込めるためライフル弾にも耐えられる程の防弾になっている。

 そのためトラックの破片程度ではさしたる損害は出ないのだ。

 

「一体どこの差し金だ?」

 

「あの男じゃないかしら?で、どうする?

 護衛のイタリア軍に任せる?」

 

「いや、いつも通りでやろう」

 

「了解」

 

 拳銃を構えるスタンにイサカは何をしたいか理解した。

 二人はイタリア兵たちに叫んだ。

 

「援護できるか!?」(イタリア語)

 

「前進するのか!?」(イタリア語)

 

「ああ!」(イタリア語)

 

「分かった、連中を火力で制圧する!

 俺の指示で前進しな!」(イタリア語)

 

 イタリア兵を率いる准尉はイタリア語で兵士達に指示を出す。

 するとある兵士が離れると無反動砲を持って来た。

 

「撃て!」

 

 無反動砲をぶっ放す、砲弾は襲撃者のいるあたりに着弾する。

 そこにイタリア兵たちは火力を集中、更に面食らったものの体勢を立て直したDBI、FBI、DEA捜査官たちも急いで装備のアサルトライフルを持ってくるとイタリア兵たちを援護する。

 突然の猛烈な反撃に敵は狼狽する。

 

「よし、今だ!前進!」

 

 その隙にイタリア兵たちが遮蔽物から飛び出し銃撃しながら前進する。

 それに続いてスタンとイサカも進む。

 突然のこの行動に敵は遂に崩壊し一部は武器を捨てて逃げ始める。

 

「逃げるな!」

 

「動くな!武器を捨てろ!」

 

 ヤリギン拳銃を取り出して逃げようとする男を撃とうとした男にスタンが拳銃を突きつける。

 そして銃を向けようとし、次の瞬間スタンが撃ち片手を吹き飛ばす。

 

「く」

 

「さあ、俺に従え。頭を吹き飛ばされたくなかったらな」

 

 拳銃を突きつけて脅す。

 周りの男たちも次々とイタリア兵と捜査官に銃を突きつけられて武器を捨て投降した。

 イタリア軍と連邦捜査機関はこの日13名の捕虜と25丁の未登録のアサルトライフル、5丁の拳銃、3丁のショットガン、5個のRPG、35個の手榴弾を捕獲した。

 

 

 

 

「それで、俺をどうするつもりだ?」

 

「どうするか?決まってるだろ?取り調べて、裁判所が訴追して、裁判やってムショだ。」

 

 数時間後、スタンが撃った男――襲撃した民兵たちのリーダー格らしい男――をスタンは基地内の取調室で取り調べていた。

 彼の容疑は人形及び連邦職員に対する第一級殺人未遂、即ち計画性を持ち他の犯罪の過程として人を故意に殺害しようとした容疑であった。

 

「拷問とかしねえのか?」

 

「はっ、拷問?俺達はアメリカ人だ、野蛮人じゃないぜ?

 アメリカって国は法治主義だ、さっき見せたミランダ警告もそうだ、何事も法律の範囲内でやる、それだけだ」

 

 スタンが返すと男は面食らったようだった。

 

「なら、政府にも…」

 

「犯罪人引き渡し条約が無いから引き渡さないさ。

 その代わりにこっち(アメリカ)の刑務所に服役してもらうが」

 

「なら、全部話そう。あんたらに恨みはないからな」

 

 向こうの政府に引き渡されず、そして拷問もされないと確認した男は突然素直になり自供を始めた。

 

「俺がお前らを襲撃したのはあそこに保管されてた麻薬を取り返すか滅却するよう指示を出されたからな」

 

「誰から?」

 

「直接じゃないがS-07のアンドラーシュって男だ。

 サーラシ・アンドラーシュ、知ってるだろ?」

 

「ああ」

 

「あいつから何とかして取り返すか全部破壊しろって、あの男の後方幕僚のオーレリアン・バタノイユって男が俺達を雇った。」

 

「オーレリアン・バタノイユ?」

 

 ある男の名前を出した。

 その名前に聞き覚えはなかった。

 

「後方幕僚のルーマニア人だ。スキンヘッドの男で日取りルーマニア訛りの英語を話す。

 こういう裏稼業は大体あいつが仕切ってる」

 

「そうか、ありがとう。

 だがいいのか?こんなに全部話して」

 

「どうせいいさ。あいつらはここにいる限り俺を殺せないだろ?」

 

「そうだ」

 

「なら恐れる物はないさ、アメリカに行けば俺は消えたも同然だし」

 

「そうか」

 

 それだけ言うと事情聴取は終わった。

 聴取室から出るとスタンはFBIに連絡した。

 

「アトウッド、俺だ。

 至急オーレリアン・バタノイユの逮捕状を請求してくれ。

 罪状は連邦職員及び人形に対する第一級殺人未遂。

 え?明日?分かった」

 

 そう言うと電話を切った。




・ウィリアム・プロヴェンザノ
DEA捜査官。通称ウィリー・プロ。
ベテランでスタンとは旧知の仲。
相棒はSPRA3G。
名前のモデルはジェノヴェーゼ一家の幹部だったアントニー・“トニー・プロ”・プロヴェンザノ

・オーレリアン・バタノイユ
S-07地区後方幕僚。スキンヘッド
ルーマニア人


真面目に人形って機械なんだから多少の防弾装備は内蔵できるよね?
外側防水にしたら中にケブラー仕込めるしケブラーとかポリエチレン繊維程度でも拳銃弾とかナイフぐらいなら防げるし。
次ぐらいでこの章終わる
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