もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

4 / 100
本編

世界観について色々書かれます。


第一部:二つの世界
第1話


「我々に与えられた選択肢は3つです、静観しかの世界の人類が滅びるのを観察するか、穴を閉じ完全に見捨てるか、そして我々が全力で以てかの世界の人々を救助するか。

 かの世界にとって、我々は最後の希望なのです。

 この場にいる良識ある議員の皆様がまさかその希望を踏みにじり打ち捨てるなどという事をするわけがないと私は確信している。

 かつてチャーチル首相は『新世界が旧世界をその全力で以て救助するその日まで』と演説しました、かの世界はその日を待ち望み、等々その日が来たのです。」

 

――イギリス首相パトリック・ジャーヴィス

  (2062年2月15日英国下院臨時議会席上にて)

 

 

 

 

 

 

 

 アメリカで最も有名な建物といえば恐らく自由の女神だろう。

 しかしながら、自由の女神はただの銅像だ、最も有名な“家”となればそれは恐らくワシントンD.C.のもっとも有名な建物、白亜の外観と特徴的な見た目のホワイトハウスだ。

 

「大統領閣下、エドワーズ空軍基地からです。」

 

「分かった、私だ」

 

 その中で最も有名な“部屋”と言えばウェストウィング一階のオーバルオフィス、大統領執務室だ。

 その部屋の主たる合衆国大統領ピーター・カークマンは側近から伝えられ電話を取る。

 

『大統領閣下、アームストロング大佐です。』

 

「アームストロング空軍大佐、急な連絡だ、何かあったのか?」

 

 電話の相手の空軍大佐にカークマンは問いかける。

 

『はい、その…』

 

 電話の相手、アームストロングの言葉を聞くと表情を変える。

 

「分かった、明日、特使を送る、では」

 

 そう言って電話を切るとある所に電話をかける。

 

「私だ、今すぐ安全保障担当補佐官と国務長官を呼び出してくれ。

 大至急だ」

 

 

 

 

 

 

「は?M4、本当か?」

 

『本当です、何か問題でも?』

 

「大有りだ。今頃DCは大騒動だぞ」

 

 その頃、エドワーズ空軍基地内―――のはずなのだが何故か外はカリフォルニア州の砂漠のど真ん中の基地とは全く思えない雪景色―――では一人の()()()()()()()()男がテレビ電話越しにM4と会話していた。

 

『別に政府の役人は使い潰してもいいでしょ』

 

「15、役人は人形じゃないぞ。

 気楽に言わないでくれ、それに俺の親父が下院の軍事委員会のメンバーだって忘れてるのか」

 

『あら、そうだったわね』

 

 男の名はG&Kセキュリティの社員ジェームズ・イシザキ、アメリカ空軍と契約してエドワーズ空軍基地の“警備”を担当している指揮官だ。

 だが彼は今自分の置かれている状況が歴史に関わる程の状況だと気がついていた。

 

「切るぞ、無事帰って来いよ」

 

 一言言って返答を待たずに切るとかけているメガネを外し顔を拭い溜息をつく。

 

「ふぅ…」

 

「大変な事が起きたようね」

 

 ため息をつく彼の前にコーヒーの入ったカップが置かれる。

 見上げるとサイドテールの女が立っていた。

 

「ああ、最悪の時にこっちに来たなワルサー」

 

「どうせホノルルに帰っても暇なだけよ。

 スプリングとママはマウナケアに籠ってるし、パパはDCよ」

 

「今年は中間選挙だぞ」

 

「猶更行く気ないわよ、選挙権が無いのに選挙運動にかかわってもむなしいだけよ」

 

 彼と親しげに話すのは戦術人形のワルサーWA2000だ。

 彼女は戦術人形だがG&K所属ではない、彼の私物である。

 戦術人形というのはそれなりの値段はするがかなり一般に普及している、最新の統計データによると米国民のおよそ35%が何らかの形で戦術人形を保有している。

 今の時代3人に1人は戦術人形を持っているのだ。

 

「あの、ワルサーさん?私の仕事を取らないでくれませんか?」

 

「え?ああ、悪かったわねM14。

 あなたも飲む?土産のコナコーヒー」

 

 突如ワルサーは後ろから声をかけられる。

 振り返るとセーラー服にカーディガンを着て首元には特徴的な勲章をつけたツインテールの戦術人形、M14が立っていた。

 

「お構いなく、海兵隊時代に散々飲みましたから。

 で、指揮官、どうしますか?」

 

「どうって言われてもねぇ…元海兵隊員で中国で名誉ある勲章を頂いた英雄殿の見解を聞こうかな?」

 

 指揮官は副官のM14の意見を聞いた。

 その返事は単純明快だった。

 

「そうですね、このままでいいのではないでしょうか?」

 

「その所は?」

 

「所詮は私達は軍と契約した民間企業の社員です。

 海兵隊時代のように軍人ではないので、それに下手に見捨てれば叩かれますよ。

 ただでさえPMCという存在は微妙なのですから」

 

「イラク戦争が激化したのもPMCがやらかした件があるからな。

 下手に動けばメディアに叩かれる」

 

 かつて、PMC勃興期のイラク戦争でアメリカのPMC、ブラックウォーター社が民間人の殺傷や激化の原因を作った例があった、その例を踏みたくない、言い方を変えれば何事につけても事なかれ主義が理想である彼らは下手に動きたくなかった。

 

 

 

 

 

「司令部に連絡も終わりました。」

 

「そ、であんた達は一体どこの誰で何者?まさか鉄血のコピー人形じゃないわよね?」

 

 基地から離れた針葉樹林上空を飛ぶヘリの機内で司令部に連絡したM4に向かいに座るもう一人のAR-15が棘のある言い方で聞いた。

 

「違うわよ。ものすごーく簡単にバカでもわかる説明をするとね…

 

 

 

 

 異世界の人形よ」

 

 AR-15が言い放った。

 その答えにもう1人のM4達は絶句する。

 

「それ…本当ですか?」

 

「本当だよ、もう1人のお姉ちゃん」

 

「本当だ。この場で神に誓ってもいい」

 

 M4の疑問にM16とM4SOPMOD2が断言する。

 

「まあ物証は私達自身なのだけれど。

 異世界というわけで色々歴史も違うのよ。

 この世界みたいに世界中に崩壊液ばら撒くなんて馬鹿な自殺行為はしてないし」

 

「なんだと…?それじゃあ白蘭島事件は…」

 

 AR-15の言葉にM16が聞いた。

 この世界で世界中に崩壊液が撒かれた事件と言えば白蘭島事件である。

 

「いえ、それは起きました。でも多分事件の内容が全然違うと思います。

 私達の知る歴史では中学生の一団が侵入、拘束されてこれがきっかけになり全ての遺跡と崩壊液研究施設の管理体制が見直された事件です、あなた達の世界はどうですか?」

 

 M4が彼女の知っている白蘭島事件を説明する。

 彼女の知るこの事件は崩壊液の開発管理体制見直しと国際的枠組み構築のきっかけとなった事件である。

 

「最悪だ。遺跡が爆破され崩壊液が拡散…それで…」

 

「10億人が死んだ。スティザムシミュレーションと同じ結果ね。」

 

 AR-15の呟きにM16が頷く。

 AR-15はあの事件の後イギリスの物理学者が発表した崩壊液拡散時のシミュレーションを思い出す。

 そのシミュレーションの中では最悪で人類の半分が死に絶え太平洋沿岸一帯が壊滅するという結果が出ていた。

 最も軽微な計算で10億人が死ぬと計算されていた。

 

「それで?私達の世界だと大きな出来事といえば45年に中国で香港と台湾の独立運動がきっかけで中国政府が分裂した中国内戦が51年まで続いたけど」

 

「その時期に第三次世界大戦です。」

 

「世界中で核兵器が使われたわ」

 

 AR-15とM4が第三次世界大戦のことを話す。

 不思議な事に二つの世界では全く同じ時期に大きな戦争が起きていた。

 一方の世界では中国で大規模な内戦が、もう一方の世界では第三次世界大戦だった。

 

「ワォ、終末後の世界ならどうせ行くならマッドマックスが良かったわ。

 正直ゾンビ物は苦手よ」

 

「ねえ、鉄血はいないの?」

 

 するともう一人のSOPが聞いてきた。

 

「いるよ、会社が潰れて色々大変みたいだけど。ハンターお姉ちゃんたち何処にいるんだろ?」

 

「ハンターなら上海で現地警察の訓練に当たってるそうだ。

 この間侵入者から聞いた。

 侵入者は侵入者で蝶事件の犯人追うので忙しくてモスクワから離れられないそうだ」

 

「蝶事件も起きたのか?」

 

 もう一人のM16が聞いた。

 

「そっちも起きたのか?

 こっちも起きた、去年蝶を名乗るクラッカーがロシアと中国の合弁の軍需企業鉄血のシステムに侵入、システムをハッキングして一部を暴走させた挙句機密資料をネット上に大量に流出させた事件だ。

 それで累計500人以上の軍人や民間人が死亡、自律人形も600体以上が破壊されたらしい。

 流出した情報の中にロシア政府上層部や軍の汚職に関わる物やかつての非人道的研究、ロシア軍の機密に関する情報も含まれて鉄血は破産、倒産した。

 研究施設や製造施設はロシアのコングロマリットのペテロ社が買収したが。」

 

「全く違うな、こちらは鉄血の管制AIエリザが暴走して全ての鉄血人形が暴走した事件だ。」

 

 二人のM16の話す蝶事件の顛末は全く違っていた。

 一方はクラッカーによる事件、もう一方はシステムの暴走事件だった。

 

「ねえ、ROは?」

 

「言われてみればROいないわね」

 

 突如SOPが聞いた。

 目の前にいるAR小隊は4人、一応本来はAR小隊は5人編成なのだ。

 もう一人サブマシンガンの人形、RO635がいるはずだ。

 

「RO?誰ですか?」

 

「聞いたことないわ」

 

「AR小隊は4人編成だ」

 

 だが彼女に心当たりはないようでM4とAR-15が説明する。

 

「RO、正式にはRO635というサブマシンガンの戦術人形がいて、彼女が5人目の正式なメンバーなんです。」

 

「殆ど幽霊隊員だけどね、DEAからFBI、今はシークレットサービスだっけ。

 私達が軍事畑なら向こうは警察畑よ」

 

 5人目のAR小隊、RO635は一応所属、なのだが色々な事情があり殆ど別行動が多かった。

 これについては元々配備が遅れたのと本人の性格的な問題があった。

 ここでふとAR-15が窓の外を見た。

 気がつけば外の針葉樹の梢がかなり近くなっていた。

 

「あら、そろそろ到着ね。」

 

「え、もうか」

 

 この世界のAR小隊は想像以上に早い到着に驚いていた。

 機体はホバリングを始めゆっくりと降下する。

 窓の外の景色はどんどん低くなり代わりに格納庫と滑走路、管制塔、周りに並ぶ見慣れない飛行機たちが現れる。

 そしてドスンという衝撃が襲い両側のドアが開けられ冷たい空気が一気に入り込んだ。

 

「こいつらがお客さんだな!M4!」

 

「そうです!丁重にお願いします!」

 

「分かった!検疫班!来い!」

 

 左側のドアを開けた黒人の兵士が大声でM4と会話する。

 そして合図すると兵士達がやってきた。

 するとAR-15が向かいに座るAR小隊に向かって言う。

 

「ようこそアメリカへ、自由の国へ」

 

 




・SOP
いい子、加虐趣味は一切ない。いい子。
誰とでも仲良くなれるいい子。虫も殺せない。(けど人は殺せる)

・RO
AR小隊なのに所属はシークレットサービス。
その前はFBIとDEA(麻薬取締局)所属。
ほぼ別行動

・M14
副官。元海兵隊所属。強い。
英雄。戦場帰り。

・WA2000
殺しの為に生まれたのに登録は関係ない民間人保有。
指揮官と付き合い長い。

・ハンター
鉄血は明確に敵じゃないので敵じゃない(色々複雑な事情)
上海にいる

・侵入者
鉄血は明確に敵じゃ(略)
モスクワにいる。ハッカー仲間


登場人物の名前は色んな作品から取ってたり…(カークマン大統領はその典型)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。