「航空日誌は…飛行時間がトータル1312時間、整備状態は良好。
収支報告は?」
「そうですね…読んだ感じ問題はないですね。」
コーシャとRoは航空日誌と収支報告書を読み込みながら確認していた、今の所は何も問題はなくこのままならば完全なシロである。
その隣で指揮官は火器リストを確認する。
「火器リストだが、なんでエイブラムスが?
撃って楽しむのか?時々戦車持ってる民間人いるが」
「その…戦闘用です」
指揮官が火器のリストに載っているエイブラムス戦車の事を聞きユノが答える。
「劣化ウラン製の棺桶?」
「もうちょっと他に言い方あるでしょ」
「リフォージャーに参加してた戦車だぞ?」
「骨董品じゃない」
当たり前だがエイブラムスはこの時代なら本来は骨董品の様な戦車だ、何せ菱形戦車で湾岸戦争に参加するのと同じようなものだ。
それほど古いのだ。そしてそれを実戦で使うなどまさに棺桶でしかない。
「リフォージャー?」
「知らないのか?安全保障にかかわるんだから少しは勉強したらどうだ?」
「冷戦期にNATOがドイツでやっていた大規模演習よ。
リフォージャー演習を知らないユノに二人が解説する。
「知りませんでした」
「歴史と戦史は勉強しておいた方がいい、戦争は古代のトロイ戦争から今まで本質は何一つ変わってない。
ザマとカンネーのハンニバルとスキピオは今でも有効だ」
書類を確認しながらコーシャがアドバイスする、彼はこの中では唯一の職業軍人であり高度な軍事作戦の教育を受けているからこそ過去を知ることの重要性を知っていた。
「本当に何もないわね、これやる意味あったのかしら?」
「念には念をですよ、石橋は叩きすぎる方がいいんですよ」
「分かってるわよそのぐらい、臆病も一つの才能だって」
AR-15とM4は基地の外周を回っていたが特に何もなく平和そのものだった。
「それにしても何で農地が?」
「ラバウルの日本軍でしょうか?」
「随分古い例を引き合いに出すわね、ここってコロラドだったかしら。」
「カリフォルニア、かどうかも怪しい」
「その先は入らないでください!」
隣に広がる農地を眺めながら歩いていると大声で注意された。
「え?ああ、畑ね」
「すいません」
「その先は休耕地ですので気を付けてください。
えっと、AR小隊…ではないですよね?」
「半分当たってるわ。異世界のAR小隊よ。
AR-15とM4よ」
「P‐38です、よろしくお願いしますね。
一応スリーピースって言うグループでアイドル活動もしているのでぜひ今度聞きに来てください」
「機会があったら行ってみるわ、よろしく」
注意してきた人形のP‐38とM4が握手すると畑の事を聞いた。
「この畑は貴方たちが?」
「はい、私達みんなで育ててるんです!」
「へぇ、何育ててるの?」
「小麦とか野菜とかお米とかですね」
「この世界だと食料事情厳しいものね。
こっちの世界じゃ農業技術が進みすぎて世界中で供給過多になり価格崩壊起こしてるし」
「やはり、違うんですね」
「ええ、農業の知識はあまりないですけどね」
M4達の世界では一時期農業生産技術が需要を超過してしまい世界中で穀物を筆頭に農作物の供給過多、それから始まる価格崩壊、穀物メジャーが次々と倒産する異常事態が起きていた。
世界中のインフラ自体も一緒に進化したためもはや飢饉なんてものは過去の遺物となったのだが逆に世界中で人口を抑えていたキャップが外れ発展途上国、特に新興国を中心に人口爆発が始まりつつあったがそれでもまだ世界的に食料が余っていた、その量は推計でアメリカ国民全員を一年養える程の量である。
そのため農業界は食料の放出先を求め、一方のこちらの世界では食料は常に不足、ここに目をつけた農業界はアメリカ政府に対して早急に在庫穀物等の売却を要求しロビー活動が始まっていた。
「20年前は小麦1ブッシェル6ドルだったらしいけど今や小麦1ブッシェル2ドル半でこんなに下落したら先物取引で儲けられない~ってうちの後方幕僚のカリーナって言うのが愚痴ってたわよ。」
「カリーナさんもいるんですか?」
AR-15はつい最近まで小麦の先物取引に悩まされていた後方幕僚の話を出した。
その名前をP‐38は知っていた。
「いますよ、ここにもいるんですか?」
「はい、色々手伝ってもらってます」
「私達のところのカリーナさんはまあ、投資家?なんですかね?」
「拝金主義者だと思うわよ、あいつ」
「まあ、そんな人です」
「そこは変わらないんですね」
この世界のカリーナも守銭奴の拝金主義者だというところには変化がなかった。
「全く、勝利の日だっていうのになぜ仕事なんだ」
「全くですよね、海軍時代なら海の上でもどんちゃん騒ぎしたんですけど」
「空挺軍は基地内でも大騒ぎだ」
「8月2日を基地内で再現してるんですか?」
「そんなに嫌いか?あの日」
「その日にウラジオストクに上陸してて海軍兵と空挺兵の乱闘に巻き込まれたことがあるんですよ。
何で毎年毎年酔った空挺兵が所かまわず噴水に飛び込んで大暴れしてるんですか」
98がSVDに毎年毎年大暴れして全ロシアの全警察官を憂鬱にさせる日である8月2日の空挺軍の日の事を愚痴りながら基地内を歩いていた。
二人共ロシア出身、5月9日を派手に祝うタイプの人形でついでにSVDは8月2日も派手に祝う空挺軍出身だ。
「そんなこと言われてもなぁ、ん?」
ふと、何故か質素ながら協会があることに気がついた。
「教会ですね、宗派はどこなのでしょうか?」
「まあ覗いてみるか、正教会なら一回祈ればいい。
それ以外なら見学だけだ」
そこにどんな危険人物がいるかなど考えず二人は教会のドアを開いた。
覗けば真ん中に祭壇のある極普通の、手入れが行き届いている割にはやや質素な教会だった。
「教会だな」
「ですね」
二人は中に入り見回す。
「宗派はどこなんだろうか?
イコンと至聖所が無いから正教会じゃないのは確かだが」
「司祭に聞いてみれば?」
「それがいいな」
二人は正教会で特徴的なイコンや至聖所を探したらそれらしきものはなく全体的にはカトリックやプロテスタントの様式、華美な装飾もなくどちらかといえばプロテスタント系の様式に近かった。
「どちら様ですか?」
「ここの教会の人か?」
突然入り口の方から呼ばれ振り返ると戦術人形のG3がいた。
「はい、管理してますG3と申します。見慣れない顔ですが…」
「仕事でこの基地に来た。ひとつ聞きたいがこの教会の宗派は?」
「宗派?神に祈るのに宗派など必要ですか?」
「必要も何も元からあるじゃないか、な」
「正教会、カトリック、プロテスタント、再洗礼派、東方典礼教会、非カルケドン派、ネストリウス派、ルーテル教会、福音派、クェーカー、カルバン派、国教会、色々ありますよ?」
「なんの話でしょうか?それはこの教会の神ではありませんよ。
お二人は信者ではありませんね?」
「そもそもどこの教会だ?正教会ではないのは確かだし私たちは正教徒だ。」
なぜか二人共話がかみ合わない、一方は一般的なキリスト教の話なのは分かるがもう一方は明らかに様子がおかしかった。
「つまり異教徒ですね?」
「異教徒って…十字軍の頃じゃないんですから、ね?」
「もう21世紀に入って60年だからな。
あんまりこのことで揉めるのも癪だ、邪魔したね」
話を切り上げて教会から出て行こうとする、するとG3が98の肩を叩く。
「聞かないのですか?」
「な、何をですか?」
「
「い、一応今仕事中なので失礼します!」
この瞬間、二人はこの戦術人形が人形どうこう以前に本能的な恐怖を感じ、慌てて走って逃げだした。
「あら、行ってしまいましたね」
なぜかG3は残念そうな表情をする。
一方の逃げ出した二人は少し離れてから教会を見た。
「恐ろしいな…」
「はい…真冬のベーリング海より怖いのがありましたよ…」
「私もだ…高度一万メートルから降下するより怖かった」
「あの、お二人何サボってるんですか?」
恐怖に震えていると偶々通りかかったM14に声をかけられた。
「M14!?サボってなんかない、あの教会の人にカルトに勧誘されかけた」
「それで逃げたんです」
「はぁ?」
「そんなことあるんですか?」
「本当だ、ところでそっちこそどうなんだ?仕事は」
必死で二人に事情を説明する。
二人とも半信半疑だが人形は嘘をつかないし二人の事はよく知っている以上恐らく本当なのだろう。
SVDはM14の方の状況も聞く。
「一通り回りましたけど問題なし、一度生意気な人形たちに絡まれましたけど全員叩き潰しましたよ?
マリンコ相手に喧嘩を売るなんて身の程知らずですよ。」
サラッと中々重要な事を言う。
この少し前、射撃場を通りかかった二人に生意気にも訓練中の人形数体が挑発、射撃競争になったのだが圧勝した、そしてそのまま今度は腕っぷし勝負になり30秒で全員を叩きのめしたのだ、それも一人で。
「可哀そうに…」
心の中で喧嘩を売ったバカに祈りをささげる。君らに恨みはないがこの人形は可愛い犬のぬいぐるみの皮を被った狼なのだ喧嘩を売った時点で君らの命運は尽きたのだ、恨むなら自らのバカさ加減を恨んでくれ、と。
KLINとかCZ75とかがM14に喧嘩を売り自爆してます。
M14は今作では個人戦闘技術では最強なんだ、ARも404も反逆も絶対に勝てないんだ悪かったな。
G3、明らかなカルトでキリスト教徒人形を恐怖させる(ロシア軍では武器に従軍司祭が洗礼することがよくあるのでその延長)
農業技術が需要を超えて進化したせいで農業市場が価格崩壊を起こしてます。
なのでドルフロ世界はいわば過剰生産した農作物を放出できるいい市場。