もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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第2話
そろそろ年表公開すべきでは…?


第2話

「は…?冗談だろ大統領」

 

 それがM4が聞いた彼の第一声だった。

 食堂に置かれたテレビを見ながら言ったその言葉は信じられない物を見たような様子だった。

 

 

 

 

 

 基地に到着して数時間後、AR小隊はなぜか検疫と検査を受けた後装備を返却され待合室にいた。

 だがどういうわけかAR-15とM16の検査が長引き全員が揃った頃には日が沈み時計の針は6時ごろを指していた。

 

「やっと終わったわ…」

 

「長かった…」

 

「何かあったのですか?」

 

「大有りよ」

 

 M4がAR-15とM16に聞いているともう一人の異世界のAR-15が結果を持った書類を持ってやってきた。

 書類はM4に渡され読むと見慣れない言葉が書かれていた。

 

「えっと…傘ウイルス?」

 

 M4はこの単語に聞き覚えはなかった。

 そこでAR-15が説明した。

 

「ええ、知らない?

 コンピューターウイルスの一種で自律人形のシステムのコントロールを奪うシステム。

 鉄血がロシア軍向けに開発して蝶事件の頃には殆ど完成してたけど事件で会社は倒産、こいつの情報もインターネット上にばら撒かれて一時大流行。

 今は全自律人形メーカーが対策パッチを実装したから被害は一切ないんだけどあんた達全員その対策パッチが入ってないから試作モデルの傘ウイルスに感染してたわけ。

 まあ勝手にどっかのバカがこれを元に改造してるからいたちごっこは終わらないんだけれど」

 

「そうなんですか」

 

「こいつは相当面倒なウイルスよ。

 ただこの試作モデルはまだ洗練されてないから結構楽に対策できるわよ。

 時間があればあなた達のシステムに追加パッチいれるそうよ」

 

 AR-15が説明する。

 二人は知らぬ前にコンピューターウイルスに感染していたのだ。

 ただ既に知られていたウイルスであったため処理は簡単だった。

 

「ありがとうございます。」

 

「セキュリティの一環だから礼はいらないわよ。」

 

 突如待合室のドアがノックされドアが開く。

 

「あなた達がもう一人のAR小隊ね」

 

 入ってきたのは茶髪のツインテールにセーラーの人形、即ちM14だった。

 

「はい、そうですが」

 

「私は副官のM14よ。よろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

「ねぇ指揮官は?」

 

 M14とM4が挨拶しているとAR-15が指揮官のことを聞いた。

 

「えっと、まあそのなんて言いますか…

 お仕事中、なんですかね」

 

 何やら迂遠な言い回しをする。

 

「またサボって…違うな。アレ見てる?」

 

 時計を確認したAR-15が聞くと頷いた。

 

「まあ仕方ない。この時期の季節行事みたいな物だし」

 

「アレって何?」

 

「SOP!」

 

 突然黙って聞いていたSOPが聞いた。

 それにAR-15がさも当然の如く返す。

 

「何って、一般教書演説よ。

 丁度今日の今の時間帯やっているわよ」

 

「「一般教書演説?」」

 

 全員が口をそろえた。

 

「え?マジで知らないの?新聞読んでる?ニュース観てる?

 国際ニュースの定番ネタよ、この演説で世界最強の国の方針が話されるのよ。」

 

「そもそも国家なんてものの権威が失墜してるんだが」

 

「は?ちょっとまって、この世界無政府状態なの?

 国連どうしたの?」

 

「国連も殆ど役立たずよ」

 

「何か想像以上にヤバい世界ね。

 近いうちに国連が動くわこれは」

 

 AR-15が驚く。

 国家というものが失墜し国連は役立たず、事実上の無政府状態という恐ろしい状態だった。

 もはや彼女らがどうこうできる話ではなくどう考えても上の、米軍とかの更に上、即ち国連に掛け合い多国籍軍の結成さえ視野に入れないといけない状態という事が理解できた。

 

「これは大変ですね…ところで指揮官に挨拶しますか?」

 

 M14が突然聞いた。

 

「はい、できれば」

 

「分かりました、私について来てください」

 

 M4が返事をするとAR小隊を連れ指揮官のいる食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 そして話は冒頭に戻る。

 

「指揮官、どうしましたか?」

 

「見ろ、大統領が言っちまった」

 

 指揮官らしきアジア人的な要素のある男が目の前のテレビを指さす。

 

「まさか…」

 

「ああ。シュワルツシルト計画の事をな」

 

『議員、そして親愛なる合衆国民の皆様、我々はとうとう次元の壁を打ち破ることに成功したのです。

 国連と世界で最も優秀な科学者たちの知能を結集した結果、さる昨年12月15日、ついに我々は異世界への穴を作り上げたのです!

 現在その穴の先では軍と軍と契約した職員合計1000名が作戦を展開中です。』

 

 テレビからは50代後半らしきスーツを着た男が星条旗の旗を背景に演説する様子が流れていた。

 この男こそが合衆国大統領ピーター・カークマンだった。

 

『恐らくこの件の事をなぜ今まで黙っていた、はたまた戦争権限法違反でないかという声もあるかもしれない。

 しかしながら、我々は偉業を達成することに成功したのです!

 人類史上初の試みを成功させたのです。

 そしてそれ以上に喜ばしい報告があります、先程、展開していた部隊の指揮官より異世界の人々との接触に成功したと報告がありました。

 我々は次元を超えた友情を築ける時なのです!』

 

「なんてことだ…」

 

「私はあんたの私物扱いで入れたけどこれから大変な事になりそうね」

 

 指揮官と隣に座る戦術人形のワルサーWA2000が話す。

 指揮官は顔をこわばらせワルサーの方は溜息をついていた。

 

「ワルサー、家に帰るのはしばらく無理だぞ」

 

「分かってるわよ。下手するとDCかも」

 

「公聴会は嫌だ、議会で親父に会いたくない」

 

「そう祈っとくわ」

 

「あの指揮官、お連れしましたよ」

 

 M14が割り込みAR小隊を紹介する。

 

「ああ、よろしく。指揮官のジェームズ・イシザキだ。よろしく」

 

「AR小隊、小隊長、M4です。」

 

「AR-15よ」

 

「私はM4SOPMOD2!よろしくね指揮官」

 

「M16だ、よろしく頼む」

 

「あいよ、あと空軍の指揮官でエドワード・アームストロング大佐ってのがいるんだが今は仕事で忙しい。

 明日お客が来るからな」

 

 挨拶に指揮官は毛だるげに返事する。

 もう一人空軍の将校としてエドワード・アームストロング大佐がいるが仕事で手が離せなかった。

 

「ところで、そちらの戦術人形は?」

 

「ん?私はワルサーWA2000。一応彼の指揮下にある人形じゃなくて彼の私物だからよろしく」

 

 ワルサーも挨拶する。

 

「色々話は聞きたいがここではなんだ、オフィスに来てくれないか?」

 

「分かりました」

 

 指揮官は立ち上がるとAR小隊を連れ基地内のオフィスに向かった。

 指揮官が去った後、食堂のテレビからはカークマンの演説が続いていた。

 

『だがしかし!かの世界の実情は我々の想像をはるかに超える程悪い状況なのです!

 世界中に崩壊液が撒かれ、鉄血人形が暴れ、人類は滅亡の危機に瀕している。

 私はこれが神がかの世界を救済するために与えたもうたチャンスだと考えている。

 かの世界の人々を救済できるのは我々だけなのです!

 かつてある映画でこんなセリフがありました「大いなる力には大いなる責任が伴う」と。

 かの世界を救済するのは我が国、そして我が世界の責務なのです!

 私はここに、国連、そして両院対して国連憲章第42条に基づく国連軍派遣とその許可を要請する!』

 

 カークマンの演説の続きにテレビの周りがざわつき始めた。

 米国史上前例のない米国の要請に基づく国連軍派遣、そして史上初の異世界への国連軍派遣という事が実際に起きようとしていた。

 

 

 

 

 

「まだ見つからないのか?」

 

「はい、クルーガーさん。

 M4達からのデータが送られたのはいいですが7割程送信されたところで途絶しました。」

 

 100キロ以上離れたある司令部、グリフィン&クルーガー社の本部の指揮所でモノクルをかけた女性とガタイのいい大男が話していた。

 

「連絡は取れたのか?」

 

「いえ…作戦地域一帯で大規模な通信妨害が行われているようで無線も使えません」

 

 話しているのは突如失踪したAR小隊の件だった。

 セーフハウスからデータを送信中に通信が途絶、行方不明になり捜索が行われていた。

 

「撤退してきた部隊からの情報もないのか」

 

「はい。あるのは空軍機が作戦行動をしていたことだけです」

 

「空軍機?珍しいな。今度礼を言わないとな」

 

 撤退してきた部隊からの目撃情報は空軍機が爆撃を行いその援護で無事に撤退できたことだけだった。

 翌日、クルーガーは空軍に問い合わせるとその日、その場所では空軍は戦闘機はおろか無人偵察機の一機も飛ばしていない事を知ることになる…

 

 

 

 

 

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