もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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何故か戦闘回


第42話

 真夜中になればどの基地も同じように兵士たちの殆どは勤務から外れ思い思いに過ごすものだ。

 国連軍司令部のあるS-09基地も同じようにこの日もまた深夜0時前になれば殆どの兵士は寝るか、あるものは最近できた近くの街の歓楽街や少し離れてはいるが規模で言えば最寄りもやや大きいガーデンと言う街に飲みに行っている。

 

「まだかな…」

 

 それは外部軍事支援局所属のコチェットコフも同じだった。

 誰かと待ち合わせてるのかしきりに腕時計やスマホで時間を確認していた。

 スマホの画面を操作して電話をかけようとし、ふと顔を上げると相手がいたようで手を振った。

 

「こっちだ!」

 

「ああ、コチェットコフ大尉!探しましたよ!」

 

「済まない、わかりにくかったかな?Ro」

 

「いえ、仕事が少し長引いてしまって」

 

「構わないさ。俺も今日仕事が一つ一段落したところさ。

 それじゃあいこうか」

 

 待っていた相手は黒い髪に白いメッシュが特徴的でスタイルのいい女性、Roだった。

 二人は何やら親しげに話しながら飲み屋街へと向かって歩き始めた。

 この日は金曜ということで街は仕事終わりの人で賑わい、飲み屋街の通りの角を曲がれば所狭しと仕事終わりに飲みに来た兵士や労働者で溢れていた。

 この通りは数ヶ月前まで闇市だった通りだ。

 

「うわ、すっかり賑わってますね」

 

「おおう、そうだな。数ヶ月前まで闇市だったとは信じられないぐらいだ。」

 

 人混みに圧倒されながら二人は歩いている、すると後ろから来た誰かとRoの肩が当たり彼女がふらつき倒れかけた。

 

「うわ!」

 

「ああ、大丈夫ですか」

 

 咄嗟にコチェットコフは彼女を支える、すると抱きかかえるような体制にになってしまった。

 二人の顔と顔が数センチの距離にまで近づきRoは顔を赤くする。

 

「だ、大丈夫です」

 

「そうか、なら良かった」

 

「ええ。第一私は人形で…ん?」

 

 言葉を続けようとしたが彼女はポッケの中に何か知らないものが入ってるのに気がついた。

 

「どうした?」

 

「何かポッケに…」

 

 取り出すとそれは手紙だった。

 

「手紙?」

 

「えっと…何々…

 『カーターはアーノルドだ。ウェストポイントがイギリスに渡らないようにしろ。LSZH19901114』

 どういう意味でしょうか?」

 

「さあ?」

 

 この謎の手紙に二人は首をかしげる。

 その二人から少し離れたところでは

 

「アンジェリカ、任務完了よ。

 ええ、それじゃあ戻るわね。

 行くわよ、94」

 

「了解だ、AK-12」

 

 銀髪で目を閉じた女と銀髪で少し小柄な女が動いていた。

 

 

 

 

 

 

 コチェットコフとRoが謎の手紙を受け取っていた頃、司令部の作戦室の画面にはある鉄血の基地が映し出され、別の画面には地図が映し出され緊張感が漂っていた。

 

『こちらスカウト1、目標異常なし。接近には気がついてない模様』

 

「了解。カーター将軍、そちらの部隊は?」

 

 ある部隊からの報告を聞いたグッドイナフは隣の画面に映るカーターに状況を聞いた。

 

『既に所定の位置についている。

 そちらの状況は?』

 

「予定通りだ。突入部隊はホールディングエリア1に到達。

 敵も気がついてない。一気にやる」

 

『了解だ、では予定通りだな』

 

「そうだ。鷲の巣より各隊、鷲は舞い降りた、繰り返す鷲は舞い降りた」

 

 カーターとの会話が終わると無線で命令を出した。

 すぐに各部隊から返事が届いた。

 

『こちらイーグル、鷲は舞い降りた、了解』

 

「一気に押せ、捕虜に傷一つつけさせるな」

 

『わかってます』

 

 ヘリに乗った米陸軍特殊部隊からの返事は力強く自身に満ち溢れていた。

 国連軍と正規軍の初の合同軍事作戦、高い城の女作戦の開始であった。

 

 

 

 

 コールサインイーグル、米陸軍特殊部隊を載せた数機のヘリはレーダーを回避するため山岳地帯の山肌スレスレを超低空で高速飛行しながら進んでいた。

 その機内で特殊部隊の隊長は隊内無線を使う。

 

「予定通りだ!行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

 各自の元気のいい返事に安心する。

 コックピット越しに前方を見ると少し先を高速でロシア軍の戦闘ヘリが編隊を組んでいた。

 

「隊長殿、そろそろ時間だ、音楽をかけても?」

 

「そのつもりじゃなかったのか?」

 

 ヘリの機長でヘリ部隊の隊長のパイロットが振り返って聞いた。

 隊長が返事をするとスイッチを入れ、音楽が外から聞こえ始めた。

 その音楽は誰もが知っていた。

 

「ワルキューレの騎行とは、時代錯誤じゃないか?」

 

「73イースティングでも第1騎兵師団は宣伝部隊のハンヴィーに流させてたらしいぜ。

 ついでにこれなら士気は上がるだろ?」

 

「全くそうだな。バレないか?」

 

「大丈夫さ、今頃オリョール隊が襲い始めた頃さ」

 

 パイロットの言葉の直後、遠くから遠雷のような音が響き始めた。

 音の先にあった小さな盆地の中にあった基地は爆発が繰り返し、夜の闇を切り裂いてロケット弾と曳光弾が飛び交い火災の炎と共に昼間のような明るさになっていた。

 その上を数機のロシア軍の戦闘ヘリが飛び地上を逃げ惑う鉄血を攻撃していた。

 

『オリョール2、西側クリア』

 

『オリョール4、北側クリア』

 

『オリョール6、南西方向クリア。

 突入可能』

 

「こちらイーグル。了解、これより突入する。

 ご搭乗の皆様、座席を元の位置に戻しシートベルトをお締めください」

 

 先行するロシア機からの連絡を受けた機長が特殊部隊に命令する。

 北は鋭く右に旋回すると炎上する鉄血の基地とそれを空から襲うドラゴンのような戦闘ヘリが現れた。

 下から反撃はあるようだが奇襲でしかも闇夜、実質的には蟷螂の斧であった。

 機内では両側のドアが開けられ乗員がドアガンのガトリング砲を構える。

 そして基地に接近すると両側から一斉に地上の鉄血に向けて撃ち始める。

 

「撃て!撃て!撃て!」

 

「左舷!鉄血集団!」

 

 ヘリは降下しながらドアガンを乱射する。

 着陸しようとする場所にいた鉄血は彼らが来る前にロシア機によってスクラップになり近づいてくる連中もドアガンの乱射で尽く破壊されていた。

 

「着陸するぞ、戦闘用意!」

 

 高度計の自動音声読み上げが鳴るコックピット内でパイロットが振り返って言う。

 数秒後ドスンという衝撃が走ると兵士たちはヘリから飛び降りる。

 周りでは同じように他のヘリも着陸し中から多数の兵士が飛び降りて走っていた。

 

「動け!動け!動け!撃たれたくなかったら動け!」

 

「援護しろ!」

 

 兵士たちはヘリの支援を受けながら遮蔽物に隠れ近づいてくる鉄血を攻撃、航空支援もあり圧倒していた。

 鉄血はみるみるうちに後退していき基地の中央部にあった司令部まで退く。

 

「よし、あそこだ!

 チャーリー、援護しろ!」

 

「了解!援護だ!」

 

 司令部までたどり着いた兵士たちの一団が援護を受けて司令部の壁に取り付く。

 そしてドアに爆薬を仕掛け爆破すると突入した。

 

「行くぞ!」

 

 内部に侵入すると電気が落とされ真っ暗な司令部内を進む。

 突然目の前に動くものが現れるが即座にそれを鉄血と判断し撃ち倒す。

 

「クリア」

 

 倒した鉄血人形を確認すると更に先に進む。

 そして目当ての場所に到達した。

 

「こちらブラボー、目標地点に到達。

 モスバーグ、ぶっ飛ばせ」

 

「私に任せて~」

 

 目当ての場所にあったドアの鍵を戦術人形のM500が吹き飛ばす。

 そして蹴破ると中には牢獄があった。

 

「ひっ…」

 

「やっぱりな、こちらブラボー、イナゴを発見した。

 ヴィランは確認できず」

 

 中には捕らえられたグリフィンの人形たちがいた。

 

「大丈夫だ、俺達は国連軍だ。君たちを助けに来た。

 もうしばらくそこで待っていてくれ」

 

 隊長の兵士が言う。

 そしてハンドサインで部下に指示を出した。

 

 

 

 

 

 

「我々の情報の通りだな」

 

 グッドイナフは現場からリアルタイムで送られる映像を確認しながら呟く。

 この高い城の女作戦の狙いは鉄血に囚われた人形たちの解放であった。

 鉄血に対して国連軍はシギント、即ち通信傍受とNSC主導でコンピューターウイルスの拡散で情報収集を行っていた。

 特に後者は通信を行うだけで次々と感染させ各種情報を勝手に吐き出される特殊なコンピューターウイルス、通称「ムーンシャイン」というウイルスを拡散させたためかなり正確な情報が毎日大量に送られていた。

 もはや鉄血は丸裸であった。

 

「イーグル、アルケミストは確認できたか?」

 

『まだです、現在捜索中です。

 ここにいない可能性もあるのでは?』

 

「その可能性は低い、ムーンシャイン情報によれば攻撃開始直前までそこにいることを確認できた。

 警戒しろ」

 

『了解』

 

 この基地を管理しているという鉄血のハイエンド、アルケミストは情報ではまだこの基地にいるはずであった。

 技術格差が3世代ほどあってもハイエンドモデルは接近戦では危険な存在であった。

 

 

 

 

 

 目標の人形たちを救出後もまだ基地では激しい戦闘が続いていた。

 上空のヘリ部隊の火力支援、さらに第二波として5機のティルトローター機が現れ増援部隊を派遣しただけでなく上空から今度は戦闘攻撃機の空襲も開始され益々不利になっていた。

 

「いいぞ!もうひと押しだ!」

 

 小隊長が叫ぶ。

 航空支援というアドヴァンテージで鉄血は圧倒されもはや総崩れに近かった。

 鉄血を追い立てる戦闘では特殊部隊の人形と兵士たちが鉄血と撃ち合っていた。

 だがどちらも爆炎と闇夜でよく見えず半分盲撃ち状態であった。

 

「ブレイザー!なにか見えるか?」

 

 先頭の兵士が無線で上空のヘリに乗っているライフルの戦術人形ブレイザーR93に連絡する。

 

『そうね、ん?気をつけて!』

 

 突然R93が叫ぶ。

 次の瞬間、爆発が起き煙の中から人影が現れた。

 

「お前ら、楽に死ねると思うなよ?

 グリフィンの人形ばかりで退屈していたところだ」

 

「アルケミストだ!火力支援!」

 

 その長い白い髪の女を見た瞬間、兵士が叫んだ。

 それは鉄血のハイエンド、アルケミストだった。

 そして彼女を先頭に残存の鉄血部隊の逆襲が始まる…

 

 

 

 

 はずだった。

 

 次の瞬間、先程の爆発以上の大爆発が起き、土煙に覆われる。

 さらに攻撃ヘリの30ミリ機関砲、それも単発火力が高く発射速度の高いロシア軍独特の航空機関砲のガスト式の絶え間ない連射とありったけのナパーム弾のロケット、対戦車ミサイル、ドアガンが撃ち込まれた。

 

「ペ!クソ、空軍の連中敵と50メートルも離れてねえっていうのに2000ポンドぶち込みやがった…」

 

『ハッフ!大丈夫!?』

 

「ブレイザー、なんとか生きてる…基地に帰ったら連中に一発食らわせてやる…」

 

 アルケミストの逆襲は航空支援の機の砲火に30秒で潰えた。

 最後の残存戦力の最後の抵抗はこうして潰え、高い城の女作戦のフェーズ1は終了。

 夜が明ける前に正規軍のヘリ部隊と国連軍各軍の輸送ヘリとVTOL輸送機が到着、捕虜の人形と特殊部隊員を載せ脱出、夜が明けた頃には基地に残ったのは燃えて捻じ曲がった金属の破片、溶けたアルミニウム、焼け焦げたケーブル、燃料の鼻をつんざく匂いと硝煙の煙だけであった。




・ブレイザーR93
米陸軍特殊部隊所属のマークスマンライフル人形。(なお本来は競技用)



高い城の女作戦の由来はもちろん名作高い城の男
捕虜の人形をイナゴって言ったのは作中のキーアイテム「イナゴ身重く横たえる」

コチェットコフの気になる相手はまさかのRO


さー、これからどうなるんでしょうねー



Qところでアルケミストどうなった?
A3発の2000ポンド航空爆弾と数十発のロケット弾と数え切れないほどの機関砲の弾でスクラップになった。
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