もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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日常やサイドストーリー中心章
まずはサクッと鉄血を滅ぼす

ちなみに回はサブタイトル付

ちなみに章の名前はシェイクスピアの「テンペスト」から


第五部:テンペスト―驚きの島々―
第58話:END of WAR


「こわがることはないよ、この島はいつも音で一杯だ、音楽や気持ちの良い歌の調べが聞こえてきて、それが俺たちを浮き浮きさせてくれる、何ともありはしない、時には数え切れないほどの楽器が一度に揺れ動くように鳴り出して でも、それが耳の傍でかすかに響くだけだ、時には歌声がまじる、それを聴いていると、長いことぐっすり眠った後でも、またぞろ眠くなってくる、そうして、夢を見る、雲が二つに割れて、そこから宝物がどっさり落ちてきそうな気になって、そこで目が醒めてしまい、もう一度夢が見たくて泣いたこともあったっけ。」

  ――シェイクスピア作「テンペスト」より

 

 

 

 

 

 2062年10月13日

 

 

 遠くから遠雷のような爆発音が聞こえる中、エージェントは僅かな部下のハイエンドモデル数体と敬愛するご主人様、エリザを連れて廃墟の中を走っていた。

 数時間前始まった国連軍の総攻撃は数ヶ月に渡る空襲と砲撃と包囲で疲弊しきった鉄血を赤子の手を捻るが如く捻り潰した。

 もはや彼女が把握する戦力は今目に見える範囲にあるもののみだ、それ以外は全くわからない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 息苦しさを感じながらも必死で走る。

 だが突如、止まり手を上げて制した。

 彼女の目の隅に何かを捉えたからだ。

 

「何者ですか?そこにいるのは分かってます」

 

「クックックッ、腐っても私と同じハイエンドだな」

 

 その声に彼女たちは聞き覚えがあった。

 廃墟の暗闇から迷彩服にヘルメットなど完全装備の集団が現れ全員が彼女たちに銃を向けていた。

 

「Здравствуйте、反逆者たち。

 今日は君らに死と正義の鉄槌を下しに来た、安心したまえ、苦しまずに逝かせてやる」

 

「ウロボロス…」

 

 それは鉄血が生み出したはずの最強の戦術人形の一角、ウロボロスだった。

 だが彼女はロシア連邦軍の装備をつけ、そしてロシア軍の特殊部隊を引き連れていた。

 

「おお!私の名を知っているとはな!そうとも!我が名はウロボロス!

 鉄血が生み出した究極の戦闘用戦術人形にしてロシア連邦軍アルファ部隊分遣チームレヴィアタ隊長だ。

 リヴァイアサンの如く君らを食い散らかしてあげよう!」

 

 このウロボロスは彼女達の知っている者ではなかった、ロシア連邦軍内部でも最強と謳われている大統領直卒の特殊部隊アルファ部隊の分遣チーム「レヴィアタ」であった。

 海を支配する悪魔の名を持つ彼らの今日の任務は逃亡する鉄血首脳部の捕捉と完全なる殲滅だった。

 エージェントはエリザの前に立ちスカートの下の武器を向ける。

 

「エリザ様には指一本触れさせません、人間ごときにも貴方にも」

 

「よろしい、Hunt for ELISAの終わりなのだからそうこなくてはな!」

 

 一方のウロボロスは意気揚々と楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 僅か10分後、そこには鼻歌を歌いながらスクラップとなった鉄血の人形たちだったものに腰をかけたウロボロスがいた。

 

Эй! И в поход, и в поход!(いざ、航海へ!航海へ!)

 Нас волна(海の波が) морская ждёт не дождётся.(我らを待ちわび)~♪

 Нас зовёт морская даль(海の彼方が、寄せ来る波が)~♪

 И прибой!(我らを呼んでいる!)~♪」

 

 周囲を警戒する部下を尻目に一人大声で歌っていた。

 一見すれば自殺行為のような行動だがこれが彼女だ、名実ともに世界最強の王者の余裕だ。

 そんな彼女の歌を無線が邪魔をする。

 

『レヴィアタ、状況を報告せよ』

 

「こちらウロボロス。敵は全て始末した。」

 

 さも当然のように答える。

 彼女達は先程、5分足らずで鉄血首脳部を完全に殲滅した。

 一方の損害はゼロ、圧勝だ。

 ほぼ同時刻、米空軍の戦略爆撃機B-21が新型地中貫通爆弾MOPⅣを中央官制コンピュータに投下、完全に破壊した。

 こうして鉄血は壊滅した。

 

 

 

 

 

 

『大統領として本日、国民の皆様に嬉しいお知らせがあります。

 先程、国連軍は鉄血の完全殲滅に成功しました。

 つまり勝利です。

 ですがこの勝利は終わりではありません、始まりの終わりに過ぎません。

 まだ我々がすべき事は山積みです。』

 

「合衆国の勝利を祝って!」

 

「「乾杯!!」」

 

 テレビから大統領の演説が流れる中、基地は文字通りお祭り騒ぎとなっていた。

 G&Kセキュリティでも同じくどんちゃん騒ぎであった。

 皆で酒の入ったグラスを酌み交わす。

 

「指揮官、もっと酒をくれ!」

 

「M16、飲みすぎるなよ?」

 

 ウィスキーをボトル単位で飲むM16に指揮官は心配になる。

 少なくとも数回は彼女は酔って拘置所に放り込まれてる事を知っている指揮官は不安になる。

 だが彼女はそんな不安を少しも感じていないのか酔って馬鹿になってるかのどちらかのような返事をする。

 

「分かってるさ!ちゃんと節制するつもりだ」

 

「そう言っていつも完全に酔いつぶれてるのはどこの誰ですか?」

 

「う」

 

 そこにバドワイザーを飲みながらM4が痛い一言を言う。

 

「ええ。いつも二人でお守りしてるのよ?」

 

「う」

 

「お酒臭いお姉ちゃん嫌い」

 

「う…やめてくれ…それ以上は…」

 

 AR-15とSOPも追い討ちをかけ心をへし折った。

 そんな光景に笑っていると突如肩に手を置かれ目の前に酒の入ったグラスが出された。

 

「指揮官、それ、飲め飲め」

 

「もっと飲みましょ飲みましょ!」

 

「二人共やめろ!誰かこの飲んだくれを止めろ!」

 

 それは酔っ払ったSVDとSV-98だった。

 二人共いつものように酔っていた。元来酒に強い人形で一緒に飲めば確実に酔い潰される。

 

「はて、飲んだくれとは誰だろうな?」

 

「さあ?私達まだウォッカ3本しか開けてませんよ?」

 

「指揮官~一緒に飲もうぜ!」

 

「マスターも一緒にどう?」

 

「おい!この愉悦部もだ!」

 

 さらに基地内の愉悦部として名高いXM8やケチのPx4も絡み始めた。

 益々面倒になったと判断すると即座に逃亡を始めた。

 

「酔っぱらい達も大変ねぇ」

 

「は、はぁ…」

 

「全く、はしたないですわね」

 

「アハハ、大変だね」

 

「大丈夫かな、指揮官」

 

 その様子を宴会場の隅でワルサー、Stg44、SuperSASS、M1カービンとガーランドが酒を傾けながら呆れて見ていた。

 ふとワルサーはワインのグラスを持ったままガーランドの肩を叩いた。

 

「ん?なんですか、ワルサーさん」

 

「ちょっと」

 

 手招きして少し離れるとワルサーが切り出した。

 

「これからはあんたがあいつのお守りしてよね」

 

「え、どこか行くんですか?」

 

 ワルサーの突然の話にガーランドは驚く。

 彼女は続けて説明した。

 

「ホノルルに戻るのよ。働いてるホテルの改修が終わって11月15日から通常営業開始なの。

 ここの仕事はただレイオフ期間中のバイトよ」

 

「そうだったんですか、知りませんでした」

 

 ワルサーの本業は一応ホノルルのホテルのスタッフだ、ここにいるのは単にそのホテルが約一年改装工事で閉鎖されている間のレイオフ期間を利用したバイトなのだ。

 そのホテルが感謝祭連休に合わせて工事が終了して再開するので彼女は戻るのだ。

 

「ホノルルに来たらサービスしてあげるわよ。

 でもホノルルに戻る前に一回はっきりさせたいことがあってね」

 

「なんでしょうか?」

 

「気持ちの整理はついたの?」

 

「…」

 

 ワルサーがガーランドの恋の話を切り出した。

 彼女は黙るが気にせず相手の方の事を言う。

 

「あいつは本気よ?

 悪いやつじゃないし、独身で彼女の一つもいないの気にしてる質だし。」

 

「その、いいんでしょうか?私みたいなのと一緒になんて…」

 

 こちらの世界観で未だ凝り固まっているところのある彼女はまだ尻込みしていた。

 ワルサーはそんな彼女を後押ししたいのだ。

 

「無いよりはマシでしょ?

 人形にも幸福追求権はあるの、あいつとは15の時からの付き合いだから私は恋愛感情持てないしどうしても親目線になるの。隣に立つつもりなんて無いわ。

 でも、あんたは立てるわよ、美男美女、とは言えないけど中々悪くないと思うわ」

 

「でも…」

 

 それでもまだ決心できない彼女に更に押しをかけた。

 

「ああもう!動かないと取られるわよ?それでいいの?」

 

「よ、良くないです!」

 

「なら動きなさい、GO FOR BROKEよ。

 それに噂をすれば…」

 

 二人話しているとそこへ酔っ払いの絡み酒から逃げてきた

 

「ああ、ワルサー、ガーランド、助けてくれ~酔っ払いが絡んでくるんだ。」

 

「災難ね。」

 

「全くだよ、酔っぱらいの相手なんて公聴会の次に不愉快極まりないぞ。

 そう思うだろ?ガーランド」

 

 二人に愚痴をぶちまける。

 するとガーランドは持っていたビール瓶のビールを一気飲みした。

 

「お、おいどうした?」

 

「指揮官」

 

 アルコールで顔を真っ赤にして焦点の合わない目でガーランドは指揮官に迫った。

 だが急な行動に彼は混乱するばかりだ。

 

「な、何だ?誰か水を持ってきてくれ」

 

「水なんていりません」

 

 指揮官を遮って深呼吸するとガーランドは意を決して言った。

 

「好きです、愛してます誰よりも。

 人形なんかでいいのなら私も愛してください」

 

 そう言うと、彼女は崩れ落ちるように倒れた。

 

「お、おい!」

 

 指揮官が支えると彼女は幸せそうな顔で寝息を立てていた。

 

 

 

 

 

「…んん…は!」

 

 翌朝、ガーランドは自分の知らない部屋で目が覚めた。

 見回せばそこは極々普通の寝室だ。

 そして気がついた、昨日の夜何をやったかを。

 

「あああ!!!私!!!」

 

 恥ずかしさ顔を真っ赤にして手で顔を覆う。

 

「なんてことを…すぐに指揮官に謝りに行かないと…」

 

 そんな事を言ってるとドアが開けられた。

 

「お、起きたか?」

 

「し、指揮官!?え!?じゃ?」

 

 入ってきたのは私服のTシャツにジーンズ姿の指揮官だった。

 そしてそこで始めてここが彼の部屋だと気がついた。

 

「俺の部屋だぞ、ここ。

 そんなに慌てなくてもいいんだぞ?朝食作ったから一緒にどうだ?」

 

「そんな構わなくても!すぐに部屋に帰りますから!」

 

「何言ってるんだ?今日からここがお前の家だぞ。

 言ったじゃないか、愛してくださいって」

 

「え?え?え?ええええええ!!!!」

 

 彼女はまた気を失った。

 

「ショックが強すぎたのか?」

 

「さあ?」

 

 その様子を見ながら指揮官とワルサーは呟いた。




テンペストは彼らによって起こされた各種の騒動を、驚きの島々は彼らの世界の意味もある



・ウロボロス
始めて明確に鉄血キャラ登場
鉄血が作り出したロシアの技術の粋を集めた究極の戦闘用戦術人形。
そのお値段1体でロシア海軍の主力駆逐艦一隻買えるほど。
あまりにも高性能すぎるのだが同時にコストも財務官僚が憤死するレベルだったので1体が試作されただけで終わったがその技術は今の戦術人形の技術に活かされている。
傲慢とも思えるほどの自信家だがそれは能力に裏打ちされた自身に過ぎない。
部下に対する面倒見もいい。音楽が好きで戦闘中も鼻歌を歌うほど。
その能力が飛び抜けすぎているのでロシア軍は新たにアルファ部隊内に専用の特殊部隊としてレヴィアタ(リヴァイアサンの意)という特殊部隊を新設、文字通りの精鋭の兵士と人形のみが入隊を許されたロシア大統領直属の特殊部隊。ロシア版SEALS Team6。
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