もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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ネタが浮かばない(マジ)
とりあえずまた勝手にどっかに介入しようかな…
というかネタをください。


第68話:見本市

「テクノロジーは常に進化し続ける。

 20年前最初に人形が登場した時、我々の誰もがこれほどまでに進化するとは夢にも思わなかっただろう。

 この20年でもはや人形は我々には欠かせない物になった。

 そして20年後、どうなるかなんて誰にもわからない」

  ――オットー・シュナウファー(ヨーロピアン・ドールズ・テクノロジーCEO)

 

 

「そこでグリフィンは『古くて旧式な人形を大切に末永く使いましょう計画』を、IOPは『古い人形を末永く大切に使えるようにしよう計画』発動したのです。」

  ――某動画投稿サイト解説動画「名人形で行こう:異世界人形レビュー:グリフィン&クルーガー社とIOP」より

 

 

 

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛!!やっと着いた…

 遠い…」

 

 2063年1月某日、大阪府南部にある関西国際空港の到着ゲートで一人の女性、不思議なことにケモミミを生やした不健康そうに見えるほど白い肌の女が女性が出してはいけないような声を出しながら英語で話していた。

 彼女の名はペルシカリア、通称ペルシカだ。

 IOPの主席研究員で第2世代戦術人形の産みの親と言っていい天才技術者なのだが今回、大阪で開かれる東アジア国際人形技術見本市にIOP(ソ連)が招待されたので主席研究員たる彼女も招待された、のだが大阪は遠かった。

 なんせまず彼女が普段根城にして引きこもってる研究所から引きずり出しヘリに放り込んで近くの飛行場に連行し、そこから特別に手配されたビジネスジェットで1時間かけてモハーベゲートに連れて行かれ、そこで米国への入国審査と各種手続きと日本政府の特別ビザの発給手続きを行い米国に入国、モハーベから車で揺られること1時間半でロサンゼルスに到着しそこで一晩を明かして翌日、ロサンゼルスから東京へと向かう旅客機に乗り十数時間飛行機に閉じ込められ、日本に到着、羽田で飛行機から降りるとそのまま関空行きの飛行機に乗り継ぎ1時間、移動だけで合計30時間近い旅を経てやっと到着したのだ。

 何が辛いか、この女超絶インドア人間であり生きているのが不思議なレベルの偏食生活に運動しない人間、かなり辛い。

 

「ペルシカ、まだ何も始まってないぞ?」

 

「そうだ。仕事はこれからだぞ」

 

 その後ろから来たのはグリフィンのヘリアンとクルーガー、2人も同じくグリフィン&クルーガー社として見本市ということで取引も兼ねてやってきたのだ。

 人形関連技術に関しては圧倒的に劣っており大規模な人形のアップグレードをする必要があったのだ。

 彼らの言う通り、まだ本格的な仕事は何も始まってないのだ。

 

 

 

 

 

「最新モデルでは従来型の3倍の精度での運用が可能です」

 

「調達価格は?」

 

「予定では1万ドルです。」

 

 

「凄いな…」

 

「ですね…」

 

 数日後、大阪市内の展示場で開催された東アジア国際人形技術見本市の会場内は熱気に包まれメディアやバイヤーでごった返しその熱気にクルーガーとヘリアンは圧倒されていた。

 至るところにブースがありその中では人形に関連する技術や製品が展示されていた。

 二人はその中の一角、EDTと書かれたブースに入った。

 

「戦術人形のメーカーのようだな。」

 

「ええ。G36やXM8、Kar98kなどのメーカーのようですね」

 

「弊社の製品をお探しですか?」

 

 このブースの会社の社員らしい男性がドイツ訛りの英語で話しかけてきた。

 

「いや、どんなものかと見てみようと」

 

「そうですか、では紹介しましょう。」

 

 すると彼は二人に側にあったテレビ画面を見せる。

 テレビ画面にはPVが流れていた。

 

「弊社は2040年創業の人形製造企業では第3位の老舗です。

 御存知の通り弊社の人形製品の特徴はまず元々優れたドイツ製を筆頭とした優秀で高性能な銃器を装備、そしてG36を筆頭に優れたデザイナーたちによる上品で高貴な人形デザイン、特にデザインという観点では弊社は世界一と自負しています。

 その証拠にニューヨーカー誌が選出した最も美しい見た目の戦術人形のランキングでは弊社のKar98kが一位、二位にはG36とこのデザインの優美さは世界的に評価されております。」

 

 社員はEDTの人形技術の長所を力説する。

 元々優れたドイツ製銃器、というだけでなくこの会社の強みは人形デザインであった。

 市場、特に全体的な性能より見た目を重視する民間市場ではこの強みはEDTの武器だった。

 

「御存知の通り、個人が人形を購入する際の決めてになる最大の要素はデザイン、即ち見た目です。

 汚い言い方をすれば股間で選ぶのですよ。

 その点では弊社は他を圧倒しています」

 

 人形市場というのは9割民間向けなのだ。

 官公庁向けの市場も一応あるのだが規模としてはやはり民間向けが圧倒的、民間市場では消費者は人形を選ぶ際に見た目で選ぶことが多いのだ。

 

 

「だが、性能は?」

 

「性能ですか、珍しいですね、多くの場合人形はデザインと性格で選びますから。

 一応全て世界最高レベルの性能です、ああもちろん民間市場向けで。

 特に今回初出品した戦術人形『VP70-300』は従来型のVP70に対して無補給稼働時間では20%の向上、全体的なパフォーマンスでは30%の向上を図ってますが値段は15%の伸び率で抑えて一体1万5000ドルです。

 また現在開発中の『G36ネクスト・ジェネレーション』と『G36Cネクスト・ジェネレーション』は従来型のパフォーマンスより最大45%向上させたモデルとなります。

 また既存人形をネクスト・ジェネレーション相当に改修する改造パッケージ『EDT・ネクスト・ジェネレーションアップグレードパッケージ』を今回ローンチを発表しました。

 実際の販売開始は65年を見込んで今回から予約発注を開始してます」

 

「アップグレートパッケージ?」

 

「ええ、既存の人形を改造するパッケージですよ。

 ほぼ部品とっかえひっかえなんてレベルもありますがね」

 

 聞き慣れないアップグレートパッケージについて質問する。

 人形なんて半分使い捨てとも言える彼らと違いこの世界は人形は基本旧式でも段階的にアップグレードすることで長く使い続けるのだ。

 ふとクルーガーが尋ねた。

 

「ふむ、ところでソ連のIOP向け、のようなものはあるのかね?」

 

「ああ、あのIOPのモンキーモデルですか?

 もしやソ連の人?言っておきますがここで作ってるアップグレードモデルは全部純正品ですよ、欲しかったらモンキーモデル製造メーカーかIDIにでも頼んだらどうです?」

 

 担当者は半分小馬鹿にしたように言う。

 彼の言う通り、ソ連のIOPの人形の質は彼らからすれば「モンキーモデル」程度だった。

 だがそれはその「モンキーモデル」が標準で最高品質と考えていた二人には衝撃だった。

 

「そんなに性能差があったのか?」

 

「ええ、知らないんです?

 エネルギー効率も、運動性能も、防御性能、品質、エレクトロニクス、光学機器、音響機器、全部が全部20年前のレベルですよ。

 はっきり言ってスクラップか骨董品ですよ。

 アップグレードするよりメンタルモデルだけ取り出して新品の素体に移した方が安いぐらいです。

 そのための素体ぐらいなら提供可能ですよ?」

 

 担当者の提案に二人は驚きへリアンが確認する。

 

「規格は合うのか?」

 

「一応そのあたりは大丈夫です。

 実際弊社の研究所がメンタルモデルの移行テストをしましたが問題はありませんでした。

 数については特別発注生産枠を使って生産可能です」

 

 クルーガーはその提案を興味深く聞いていた。

 

「ふむ、価格は?」

 

「カタログ価格で素体一体が凡そ9000ユーロ、移行費用も合わせれば一体1万2千ユーロから1万5千ユーロ。

 もちろん数が増えれば増えるほどこの一体あたりの価格は下がりますよ?」

 

「対応している機種は?」

 

「弊社のカタログに乗っている人形全てに決まってるでしょう?

 これがカタログです」

 

 担当者は二人に分厚いEDTのカタログを一部渡した。

 すぐに二人はその中身の対応している人形の数に驚くのだった。

 

 

 

 

 

 一方IOP(ソ連)のブースはというと文字通り閑古鳥が鳴いていた。

 一応どんなものかと客が一通り見るのだが787やA350が並ぶ航空ショーに707を持ってくるようなレベルの代物であるため誰もが「ふーん」で終わっていた。

 一応副社長のハーヴェルには各社の社長がやって来てはいるのだが全員揃いも揃って「IOPを現地での提携企業として共同出資したい」という実質IOPの買収提案を持ち出す始末だった。

 現状のこの会社の価値は「向こうの世界での取引窓口」ぐらいの価値しか無かった。

 だがそれ以上に傷ついていたのがペルシカだった。

 

「はぁ…所詮私の技術はここじゃ三流か…」

 

 一応当代一の人形技術者と自負していた彼女だがここでは全ての面で遅れていた。

 何せあらゆる技術、今彼女が手に持っている休憩所の自販機で売っているコーラ一つとってもレベルが違うのだ。

 

「どうすればいいんだろうなぁ…」

 

 半分鬱になりながら自棄になってコーラを飲む。

 何を飲んでもいいのならコーラなんかじゃなく呑めないのに酒のほうがいい。

 

「ここがIOPねぇ…」

 

「やはり技術レベルは段違いだな。全てこっちでは枯れたどころか化石の技術だよ」

 

「化石は言いすぎかもしれないが枯れた技術は使いやすいよ?

 枯れた技術の水平思考ってのは電子機器開発の基礎みたいなものじゃないか」

 

「任天堂か?」

 

「信頼性の高い製品を作る時は大体任天堂と同じ思考になるさ」

 

 ブースに入ってきた二人の男女、その声にペルシカは聞き覚えがあった。

 顔を上げれば身なりが整ってケモミミもない自分そっくりな女と死んだはずの昔の仲間がいた。

 

「しかし、噂じゃこのレベルに持ち込むのに一人の技術者が完成させたらしい」

 

「これを一人で?ハッ、ダ・ヴィンチかアインシュタインじゃないんだから。

 私もあんたと同じで当代一の人形屋を自負してるけど技術は一人の天才じゃなくて数百人の凡人が作るもんだよ。人形の歴史だってそうだろ?」

 

「そのアインシュタインは意外と近くにいたりするもんだよ?」

 

 話していた二人に後ろから話しかけた、二人は驚いて振り返り男が尋ねた。

 

「君がこれを作ったのかい?」

 

「まあ正確にはダミーリンクやエッチング技術だけどね。」

 

「あの2つを?

 すごい。ダミーリンクはこっちじゃDARPAの資金提供でIOPの技術者と米軍が共同開発、エッチング技術はポズナン工業大学のアンジェイ・カチンスキ博士の功績だよ」

 

 女がその2つの技術の開発者の話をする。

 どちらもこの世界ではそれぞれ別の、ダミーリンクはIOPの技術者達が、エッチング技術に至ってはIOPとは一切無関係なポーランドの化学者が開発に成功していた。

 特に後者はその後ノーベル化学賞の受賞対象となった程だ。

 二人共当代一の人形技術者だと自負しているが新技術を開発するほどではなくむしろ技術の発展向上に注力しているタイプだ。

 だから二人共新技術を一から開発となると驚くほかなかった。

 この世界の人形開発は一人の天才ではなく数百人の凡人たちの努力によって作られたものだ。

 

「凄いな君は、私はIOP技術研究所のアントニー・リコリス、よろしく」

 

「IOP技研の主席研究員のフレデリカ・ペルシカリアだ。よろしく、私のそっくりさん」

 

「どうも、私はペルシカリア、よろしくね。

 ところで君たちは猫が好きかい?」

 

 彼女は二人にいつものような人を小馬鹿にしたような自信気な表情で笑った。

 その後彼女がIOP技術研究所に一時派遣され最先端技術を学びIOPなどから引き抜きが舞い込み始めるのはそう遠くない未来のことだった。




・アントニー・リコリス
この世界のリコリス
元鉄血社員で破産前にIOPに引き抜かれた。
専門はAI研究。
ちなみにイギリス人

・フレデリカ・ペルシカリア
この世界のペルシカ
生え抜きのIOP技術者。
専門は人形の構造工学、基本的な構造デザイン担当
ちなみにこっちはドイツ人



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