もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

80 / 100
大学始まって書く時間無い

パラデウス登場するのでこっちでも動かす(まだ書きたい部分あるから予告程度の回)


第70話:とある新たな敵の序章?

「われわれも宗教を欲するが、それは、最も神にふさわしく、最もわれわれのためにつくられた宗教である。

 一言にしていえば、われわれは神と人間に仕えたいのである。」

 ――ヴォルテール

 

 

「人間は聖書から残虐性や強奪、殺人を学んだ。

 残虐な神への信仰は、残虐な人間を創る。」

 ――トマス・ペイン

 

 

「宗教のために行われる罪でなければ、人間はあれほど完全に楽しそうに悪事を行わない」

 ――ブレーズ・パスカル

 

 

「宗教があろうとなかろうと、善い人は善い行いを、悪い人は悪い行いをする。

 しかし宗教によって善い人も悪い行いをする」

 ――スティーブン・ワインバーグ

 

 

 

 

「クソ!どれもこれも“アイツら”のせいで…

 俺の研究が!!」

 

 その男は暗い部屋の中で怒り狂っていた。

 彼の前のテーブルの上には彼の“研究”に関する書類が散乱していた。

 だが、その書類には「ELID」、「崩壊液」などと物騒な言葉が並ぶ。

 

「密輸ルートは次々と閉められ採集しようにも除染でアンプル確保も不可能、クソ!

 奴らを実力で止めるしかない…」

 

 その男はある物騒な策に思い至った。

 

 

 

 

 2063年2月、ソ連領ソ連空軍スモレンスク北飛行場の滑走路から一機のグレーの大型機が離陸した。

 

「ギアアップ」

 

「ギアアップ、ポジティブクライム、ポジティブレート確保。」

 

「オートパイロットオン、高度350にセット。

 フラップ格納、離陸後チェックリスト完了」

 

 パイロット達はアラビア語訛りの英語で離陸後のチェックリストを実行する。

 この機はカタール空軍が派遣したカタール空軍の空中給油機エアバスA350MRTT、コールサインリマーエコー880だった。

 登録記号は民間機で所属も国営航空会社のカタール航空所属だが空軍がリースという形で運用している機材だ。

 この機が離陸したスモレンスク北飛行場は軍用空港であり本来はソ連空軍の基地で国連軍は展開しないのだがフールズメイト作戦での反乱未遂後ソ連軍はほぼ自分達の過失を国連軍に尻拭いしてもらった事とそれ以後の関係の悪化を食い止めるため無償で各地の基地を貸与し、その貸与された基地の一つがロシア中部のスモレンスクの北にあるこの基地だった。

 国連軍はこの基地を拠点の一つとして「ドゥルーグ作戦」を続けていた。

 ドゥルーグ作戦は他の任務と違い空中給油機とそれを支援する要員さえいれば行える作戦ということでアラブ諸国のような冬季作戦なんて出来ない軍隊や大部隊を送れる程体力のない中小国は積極的に参加していた。

 その一カ国がカタールで空中給油機3機とその運用要員を派遣し各地で崩壊液除染任務に従事していた。

 

「ああ、雪だな」

 

「ですね。」

 

「こんなところでコイツを飛ばすなんて少し前じゃ考えられないよ」

 

 二人は外を舞う小雪を見ながら喋る。

 二人ともカタール人であり当然の如くカタールは雪なんて物と無縁の国だ。

 この日の任務は昨日と同じ、エストニアの方に飛び崩壊液中和剤を空中散布する、それだけだ。

 難しいことなど殆どない、精々雪の中での離着陸ぐらいだが二人は軍人である前にプロのパイロット、雪の中での離着陸などよくあることだ。

 だが次の瞬間、突如爆発音が響き警報が鳴り響いた。

 

「何だ!?」

 

「なにか爆発したぞ!?」

 

 機体は突如危険なほど右に傾き機首が下がり始めた。

 二人のパイロットは必死になってエアバス社特有のサイドスティックを引いて立て直そうとする。

 

「クソ!イーカムアクション!」

 

「ヨーダンパー下側損傷!右12度で固定!

 右水平尾翼損傷!ラダートリム-2度で固定!

 油圧装置損傷!」

 

「アッラーフの他に神はなし、ムハンマドは神の使徒なり。御慈悲を!」

 

 副操縦士が電子モニターに映るエラーを伝える。

 そこには機体後方の操縦系統が次々と損傷していく様子があった。

 機長はサイドスティックを引きながら必死で祈りの言葉を口にする。

 一体何が起きたかはさっぱり分からないが緊急事態であることは確かだ。

 

「メーデーメーデーメーデー!リマーエコー880!

 爆発が発生し損傷!空港に引き返す!」

 

『リマーエコー了解!

 方位076に右旋回!』

 

「了解!076」

 

 機体は一旦機首が持ち上がり右に40度近く傾きながら体勢を立て直す。

 機長は必死に補助翼を使い水平に戻そうと戦う。

 

『リマーエコー880、先程何かがそちらに向かって飛翔し爆発したと報告があった。』

 

「了解、クソ、ミサイルだ。」

 

 一体何が起きたか管制塔からの報告で分かった。

 地対空ミサイルで狙われたのだ。

 爆発音も全てが合点がいった。

 

「機長、スロットルは?」

 

「右を上げろ、速度を上げて右を持ち上げる!」

 

 副操縦士が右のスロットルを上げて水平に戻そうとする。

 機体はゆっくりと水平に戻った。

 

「ふぅ、ふぅ、高度は」

 

「6000です」

 

 深呼吸しながら機長が副操縦士に高度を聞く。

 機体は気がつけば危険なほど低空を飛行していた。

 

「戻りますか?」

 

「ああ、だが…」

 

「南は?」

 

「滑走路が足りるか?」

 

「…全然、足りないでしょうね…」

 

 戻ることには納得していたが撃墜されかけた空港に引き返すのは危険だが他の飛行場では滑走路が足りない。

 何せ離陸直後、燃料も中和剤も大量に載せたまま、最大着陸重量を超過している。

 どうすればいいのか思案しているとまた爆発がした。

 

「畜生!」

 

「右エンジン損傷!火災発生!」

 

 副操縦士が叫ぶ。

 今度は操縦系統だけじゃない、エンジンも破壊された。

 機体は急激に右へと傾き始め警報が鳴り響く

 

「「バンクアングル!バンクアングル!バンクアングル!」」

 

「「テレイン!テレイン!プルアップ!テレイン!テレイン!プルアップ!」」

 

「上がれ!上がれ!頼むから上がってくれえええええ!!!!」

 

「ぁああああああ!!!!アッラーフ・アクバル!!!アッラーフ・アクバル!!!!」

 

「もうダメだ!!!うぁあああああああ!!!!!」

 

 機内では機体が危険なほど傾いてると伝える警告と今すぐ上昇しろを意味する警告が鳴り響く。

 二人のパイロットは叫び祈りの言葉を口にし、必死で上昇させようと操縦桿を引き戦うが、無駄だった。

 数秒後、スモレンスクの北東19キロ付近の丘に墜落し粉砕された。

 

 

 

 

 

 

 カタール空軍機撃墜の報告は即座に司令部に伝えられた。

 

「撃墜だと?墜落じゃないのか?」

 

「現地の管制官がミサイルらしきものを目撃してます。

 恐らくミサイルです」

 

「携帯式地対空ミサイルだろうな。

 そんなのに狙われたら殆ど自衛装備のない空中給油機じゃどうしようもない」

 

 現地からの報告にグッドイナフとアーチポフは二人揃って驚いていた。

 何せ「撃墜」だ、墜落とは訳が違う。

 

「誰が撃った」

 

「現在、ソ連軍が調査中です」

 

「これは犯罪行為だぞ!

 しかも我々に対する!攻撃と言ってもいい!」

 

 アーチポフが机を叩きながら激昂する。

 軍用機の撃墜となれば国際問題どころではない、一歩間違えれば戦争に発展する自体だ。

 

「一体どこの誰が撃ち込んだ。

 全力で調べて、責任者を見つけ出して、法の裁きを与えろ。

 決して逃すな、テロリストは例え一匹でも悪さをする。全員見つけ出して、全員牢に繋ぐか神に挨拶させろ」

 

 グッドイナフが強い口調で命令する。

 

 

 

 

「閣下」

 

「長官、ざっと今集まっている情報をくれ」

 

 その頃、ホワイトハウス地下、危機管理ルームでは経済関連のミーティング中に呼び出され大統領が集まった軍幹部や各省庁の長官たちを前に軍人の敬礼も待たずにCIA長官に情報を聞いた。

 

「は、事件が起きたのは現地時間の午前10時30分から40分頃。

 まず34分に最初のミサイルがスモレンスク近郊のスモレンスク北を離陸したカタール空軍の空中給油機に北飛行場の西北西10キロ付近で地対空ミサイルを発射し着弾、機体は急降下しパイロットは飛行場に機体を戻そうと格闘している最中の39分頃、空港の北西18キロにある丘に墜落。

 生存者はいません。死者は5名。全員がカタール空軍軍人です」

 

「分かった。まずカタールのハリーファ首長に哀悼の意を表すと共に合衆国はこの攻撃に対する刑事事件の調査を全力で行うと伝える。

 国務省は至急この事件の調査にFBIとCIAが参加できるようソ連政府と交渉してくれ」

 

「了解しました」

 

 CIA長官の説明に即座に国務長官に指示を出す。

 彼は即座に電話を取り国務省に伝える。

 

「FBIは即座に犯罪捜査を開始してもらいたい。

 これはテロ事件だ」

 

「分かっております。

 現在NTSBと共に捜査チームを組織しています」

 

 FBIにも捜査を行うよう伝える。

 これは場合によっては米国への攻撃として解釈できる案件だからだ。

 そして再度CIA長官へと変わる。

 

「ケンネック長官」

 

「は」

 

「撃墜を行った可能性のあるテロ集団は分かっているのか?」

 

「現状ソ連領内におけるテロ活動に関する情報は不足しています。

 ですがある程度目星はあります」

 

 CIA長官のケンネックは既にある程度目星をつけていた。

 

「どのような目星だ?」

 

「昨年よりミューロックレイク地区では崩壊液の密輸事案などが少なくとも報告されただけで134件発生しています。

 この崩壊液ですがその発注元や購入者に関する調査の結果、Pという組織が共通していることが分かりました。」

 

「P?」

 

「ええ。撃墜されたカタール空軍機は崩壊液除染任務についていた機で予定ではタリン周辺部での除染に当たる予定でした。」

 

「そのPとやらは一体全体なんだ?」

 

「逮捕した取引関係者によるといわゆるカルトでこう呼ばれているそうです

 

 

 …パラデウス、と。」

 

 ケンネック長官が伝えた新興宗教、と書けば聞こえがいいが実態は単なるカルトと言っていい組織「パラデウス」。

 この組織がその後どのような影響与えるか、本当に彼らが手を下したのか、それはまだ誰にもわからない。

 ただ、危険なことだけは分かっている。危険なことだけは

 

 




・ケンネック
本名ホランド・ケンネック
CIA長官



パラデウスにとっちゃ「崩壊液?とにかく除染して徹底管理だ!無許可で扱ったり輸入すれば漏れなくブタ箱をプレゼント!」なスタンスの国連軍・アメリカは敵なんてレベルじゃない敵だろうな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。