もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

84 / 100
新シーズン
ざっくり説明するとパラデウスが除染作業の妨害をしてテロリスト認定受けてフルボッコにされて全員グアンタナモでCIAのおじさんとOHANASHIする話です(酷い)

裏テーマはテロと宗教


第六部:Deus vult(神がそれを望まれる)
第74話


「さる先日、スモレンスクでシャリーアの国の勇者を殺したものを死刑とする。

 これはアッラーの意思である」

  ――アル・ハンジュル(カタールファトワー評議会議長。2063年2月のファトワー)

 

 

 

 

「もし神が悪を妨げる意思はあっても力が無いなら全能ではない。

 力はあるが意思が無いなら邪神である。力も意思もあるなら悪はどこから来るのだろう。

 力も意思もないなら、なぜ神と呼べるのだろう」

  ――エピクロス

 

 

 

 

「宗教のことを一般人は真実とみなしており、賢者は偽りとみなしており、支配者は便利とみなしている」

  ――エドワード・ギボン

 

 

 

 

 

 

 カタール空軍機撃墜事件から一ヶ月後の3月10日、国連軍司令部のあるS-09地区では雪が残る中で神々の怒り作戦から一周年を祝う記念式典が行われていた。

 綺麗に整列した軍楽隊と各国軍将兵、更にはグリフィンの人形や指揮官達が街の中心の広場で整列していた。

 一帯は緊張感が漂い装備と服装が整い一目で高い練度と規律正しさが見て取れる軍に対して、グリフィンはバラバラの服装で背格好もバラバラ、練度や規律の乱れが見て取れた。

 一方、彼らの前には演台が作られそこにはグッドイナフら国連軍の幹部たち、クルーガーやハーヴェルなどのグリフィン・IOP等の関係者、正規軍幹部が居並んでいた。

 

『受閲部隊、分列行進開始』

 

 アナウンスが響くと軍楽隊が勇壮な軍歌を演奏し始めた。

 それを皮切りに国連軍旗と参加各国軍旗を持った兵士が鼓笛隊と共に行進し始めた。

 それに演台の将官たちは一斉に敬礼を向けた。

 行進は見るからに高い練度を見せつける装備の整った国連軍とバラバラ感の否めないグリフィンの非対称な光景となった。

 

 

 

 

 一方全く同じ時刻、S地区では動きがあった。

 FBI、DBI、DEA、ATF、更には軍の一部部隊がお祝いムードの各町の通りを抜けてある建物の前に集まっていた。

 FBIと背中に黄色い文字で書かれたジャンパーを着た男がその建物のドアをノックした。

 するとドアの奥から声が聞こえた。

 

「はいはい、今行きます。」

 

 ドアが開けられて一人の老人が現れるとFBIの男が一枚の書類を突きつけた。

 

「何でございましょうか?」

 

「FBIだ。崩壊液管理法、薬物管理法、組織犯罪規制法、銃器の不法所持、3件の暴行、2件の第一級殺人の容疑で家宅捜索を行う。

 かかれ!」

 

 捜査官が突きつけたのは裁判所から出された家宅捜索許可証であった。

 鳩が豆鉄砲を食らったような表情をする老人を押しのけて防護服姿の兵士達が入って来た。

 

「一体何なんですか、我々はただの教会で…」

 

 慌てる老人だが兵士や捜査官は一切を無視する。

 そこへ遮るように先に入った兵士が報告した

 

「反応あり、チャーリー、活性状態です」

 

「了解、崩壊液管理法違反の容疑で現行犯逮捕する」

 

 兵士から崩壊液の反応を確認したと言われると即座にその老人の手に捜査官は手錠をかけた。

 続いて防護服を着て携帯式の水圧洗浄機のような物を持った兵士がやってくると建物内に噴霧し始める。

 これは崩壊液中和剤であった。

 彼らは建物中に中和剤をばら撒きながら建物中をひっくり返して捜索を開始した。

 

「キャー!!何するの!」

 

「FBIだ。家宅捜索だ」

 

「何も絶対に触るな!全員我々の指示に従ってもらう」

 

 他の人々もFBIは屋外に連れ出すと建物中をひっくり返していく。

 外に連れ出された人々は通りの反対側に集められて不安そうに建物を見ていた。

 屋内では捜索が続き屋根裏や地下室にまで捜索の手が伸びる。

 すると次々と色々なものが見つかってきた。

 

「見つけました!銃です!フルオートで発砲可能なAKです!」

 

 ある部屋からはフルオートで発砲可能な多数の銃が。

 これらの銃はアメリカでは規制対象だ。

 また別の部屋ではある捜査官がタンスを開けると中から袋詰された怪しい白い粉が見つかった。

 その粉を同僚の人形のUMP40が少し取って口に含んだ。

 

「うーん、これ多分ヘロインかなー」

 

「罪状追加だな」

 

 中身は薬物のヘロインだった。

 勿論2063年現在でもヘロインは規制薬物であり取締は続いているし押収量でも比較的多い方の薬物だ。

 見つかったものはそれだけでなかった。

 一階では隠し扉を発見し捜査官がその中を開けるとそこには怪しく緑色に光るアンプルが大量に置かれていた。

 

「チャーリーだ!」

 

 捜査官は即座に叫んだ。

 すぐに高圧洗浄機を持った兵士が捜査官と交代して隠し部屋内に中和剤を散布した。

 見つかったのは違法な薬物・銃器・崩壊液だけではなかった。

 2階ではある部屋に置かれていたパソコンの中の情報を確認した捜査官があるメッセージに気がついた。

 それは匿名性が高いメッセージソフトで比較的一般的な物だったが彼らはよく犯罪者がこういうソフトを使用して情報交換していることをよく知っている、何せFBIは組織犯罪相手が仕事だ。

 そのメッセージを確認しているとそこにはロシア語で恐ろしい記述があった。

 

「ジーザス・クライスト」

 

「狂ってる…こんなキチガイが我々の足元にいたとは…」

 

 その内容にベテランの捜査官ですら驚き、信じられないようだった。

 この日の摘発は国連軍内部では「オペレーション・フューリングフェスト(春祭)」と題されていた。

 春の幕開けは物騒な摘発からだった。

 

 

 

 

 

 

 数日後、司法省の記者会見室は大変な賑わいを見せていた。

 

「ラングドン長官!」

 

「例の件は事実なのですか!?」

 

「宗教弾圧を隠す体の良い隠れ蓑ではないのですか!?」

 

「フェイクなのでは!?」

 

「ラングドン長官!一言お願いします!」

 

 記者会見室に集まった記者たちはやって来たラングドンにものすごい量の質問を浴びせカメラのフラッシュを炊く。

 彼らが集まったのは今朝のニュースであった。

 この日の早朝、ロサンゼルの日刊紙ロサンゼルス・スター紙が朝刊で「国連軍が宗教団体を摘発!宗教団体が崩壊液の人体実験を実施!カタール空軍機撃墜にも関与か!」という一面記事を出したのだ。

 このニュースに世界中の報道機関はひっくり返って大騒ぎであった。

 特にロサンゼルスが地元のロサンゼルス・タイムズなどは格下のスター紙に記事を取られて逆襲を図ろうとしていた。

 

「落ち着いてください!」

 

 騒ぐ記者を秘書のSAT8が袖から制する。

 すると演台に立ったラングドンも続けて言う。

 

「そうだよ、うちの娘が言ってるじゃないか。」

 

「だから娘じゃありませんって!」

 

 ラングドンのジョークとSAT8のツッコミに会場はどっと笑いに包まれた。

 会場が静になるとラングドンは記者会見を始めた。

 

「えー、まあ細かい説明はいいだろう。

 今朝、ロサンゼルス・スター紙が報道したミューロックレイク特別行政区に存在した宗教団体が崩壊液の人体実験を行い、そしてカタール空軍機撃墜に関与した、という報道であるが、去る3月10日FBI、DEA、ATF、DBI、国連軍が合同で宗教団体パラデウスの関係施設24施設を家宅捜索したのは事実である。

 その際、崩壊液12トン他違法薬物3トン、違法な火器89丁が押収されこれらの容疑で関係者198名を拘束している。これらは適切な司法手続きの元実施されている。

 詳細については現在捜査中であるため、公表は差し控えたい。」

 

 ラングドンはユタ訛りの英語で慎重に言葉を選んで数日前の摘発を公表した。

 だが記者たちは皆それが全てだとは一ミリも思っていない。

 

「この摘発作戦のカタール空軍機撃墜との関連性は!?」

 

「詳細についてはコメントできない」

 

「テロ組織認定の見通しはありますか!?」

 

「現在検討中だ」

 

「鉄血の次はパラデウスと戦争ですか?」

 

「この先の見通しは不明だ」

 

「人体実験の報道は事実でしょうか!?」

 

「目下調査中だ。一体どこからそんなニュースが」

 

 記者たちの質問にラングドンは一つ一つ的確にそして政治家らしく言を濁しながら話していた。

 とかくその情報はありえないことばかりでありメディアも世論も大いに混乱していた。

 その真実を知るものは目下司法関係者と政治家と軍人だけだ。




・UMP40
DDで死んだのとは一切関係ない
FBIの人形。FBI用なので改造されて舌が内蔵式麻薬検知装置になってる。

人形なんだからこーいう高精度な機械を内蔵できたら便利だよね!って考えて積んでみた
実際デカイパソコンぐらいの大きさの機械が人形とセットで人間の舌ぐらいのサイズだったら便利だと思う。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。