もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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ここ数週間でこの作品の出来事の斜め上をいく事が世界中で起きててめまいがしてくる


第76話

 さて、パラデウスが摘発され、さらにその二週間後の3月半ばにはリークされた情報が実際に行われていたと公表、時を同じくしてソ連政府も正式な発表を行ったその頃、ミンスクは比較的平穏であった。

 

 ミンスクという街はかつてはベラルーシの首都であった。

 今ではソ連領ベラルーシの中核を成す都市であり、同時に国連軍も大きな拠点を置く都市であった。

 スモレンスクの一件以降、国連軍は除染作業を行う航空戦力の大半をベラルーシに移転していた。

 その中でも最も大きな拠点がミンスクのミンスク国際空港でありミンスクだった。

 

 ドゥルーグ作戦司令部はソ連政府との協力の関係上元の基地からミンスク中心部のホテルを借り受け移転、新たに選任の指揮官として台湾空軍から派遣された王猛洋少将が派遣、参謀長としても航空自衛隊小沢慶彦一等空佐が任命され傘下には各国から派遣された空中給油機43機、運用人員700人以上を有する航空集団とソ連軍から派遣された空中給油機13機と200人の要員を統括する指揮系統が形作られていた。

 

 その結果、必然的にその運用拠点はベラルーシ内でもミンスク周辺に集中していた。

 そのため少し前まで閑古鳥が鳴いていたミンスク国際空港は毎日空中給油機とそれらへの物資を輸送する国連軍輸送機や旅客機を裁くため久しぶりに2本の滑走路をフルで使って大盛況だった。

 それは春になり雪解けが始まったこの4月上旬の夕刻も同じだった。

 西に見える綺麗な夕焼けは雪に映え空港は夕闇に照らされて不思議な雰囲気を醸し出していた。

 その中の滑走路の一本の端で1機のボーイング797が離陸待機していた。

 それはつい2ヶ月前始動した米露合弁の航空会社トランスアエロ・ワールドワイドの旅客機だった。

 

「トランスアエロ334、管制承認を求める」

 

『トランスアエロ334、出発後フライトレベル340に上昇し右旋回方位204、バブルイスク、マズィル、ジトーミル、チェルノフツィVORを経由しシエラナイナーVORに』

 

「トランスアエロ334、了解。出発後340に上昇し右旋回方位204、バブルイスク、マズィル、ジトーミル、チェルノフツィVORを経由しシエラナイナーVORに。

 離陸準備完了まで待機願う」

 

『トランスアエロ334、了解した。完了後報告せよ』

 

 飛行ルートの許可を得ると彼らは離陸準備を進める。

 この前に離陸するはずだったベトナム空軍の空中給油機が離陸直前にトラブルが発生し引き返したため急遽彼らが離陸順位一位となったのだが離陸準備がまだ終わっていなかったのだ。

 

「フラップ」

 

「15、セット」

 

「重心」

 

「8、確認」

 

「アンチスキッド」

 

「オフ」

 

「アンチアイス」

 

「オン」

 

 コックピットの二人は的確に準備を進めていた。

 この先何が起きるかも知らずに。

 

 

 

 

 

 一方、そこから数キロ離れたミンスク空港に向かう幹線道路を3台の国連軍車両が走っていた。

 国連軍車両と言っても2台は軍用の乗用車、残りは日本製のごくごく普通の黒塗りのスポーツセダンだ。

 

「しかし一佐、ミンスクは落ち着いてるな」

 

「ええ。やはりシエラナイナーは大変ですか大佐?」

 

「大変なら可愛いモノだよ。

 上から下まで大騒ぎさ、アーチポフ中佐は毎日ソ連との調整で胃潰瘍で病院送りだぞ」

 

 車に乗っているのは参謀長の小沢一佐とS9地区から来ていた韓国空軍のイ・ヨンチョル大佐、そして二人の部下の64式自動小銃とK5が助手席と運転席に座っていた。

 二人は珍しく流暢な日本語で話していた。

 二人の話題は最近の上層部の動きだった。

 

「ソ連からの情報で敵の拠点がエストニアにあると聞いてソ連空軍と国連軍の合同作戦の計画中だ。

 作戦名はポラリスだと」

 

「北極星作戦ですか。具体的には?」

 

「まずは航空偵察で敵の拠点を炙り出すのが先だろうな。

 米本土の偵察UAV部隊が駆り出される予定って話だ。

 ソ連軍の方も偵察機の準備を進めているそうだ、忙しいのは発見後の対処だろうな」

 

「やはりソ連領域での軍事作戦ですからね。

 外交上の問題も」

 

「それだよな、今回のミンスク出張の仕事は王少将に内密な書類とこちらの現状把握だからな。

 エストニアでの我々主導の軍事作戦だ、いい顔はしないだろう」

 

「ドゥルーグ作戦すら連中は『なぜ貧民如きの為にする必要があるんだ』とばかりな態度と聞いてる。

 ソ連政府の思考回路は理解不能だよ」

 

「こっちもソ連政府との折半は大変か?」

 

「ああ。大変だよ。いい加減日本に戻りたい。」

 

「俺もだよ、夏コミ行けるかな」

 

「冬コミも去年の夏コミも行けなかったからな…

 今年こそはちゃんとした夏休みを取りたいよ…こんな仕事してるのが言うのもなんだがな」

 

 二人は愚痴りながらふと右側の席に座っていたイは外を見る。

 ミンスク空港に向かう幹線道路だが窓の外は長閑な田園風景が広がっていた。

 空港の周りが大概市街地な韓国では珍しい光景に大陸国家の広さを感じながら眺めているとふと田舎道に一台のバンが止まっているのが目についた。

 それだけならば大して珍しくもない光景だ、だがその周りの人影に何か違和感を感じた。

 

「ん?」

 

 次の瞬間、二人の頭の上を旅客機が通過した。直後、バンのすぐ傍から何かが空めがけて飛翔した。

 ミサイルだ。

 

「クソ!3時の方向!バンだ!」

 

 イは右手でホルスターの拳銃を取り出すと運転手の64式自に命じる。

 数秒後大きな爆発音が聞こえ火の玉が振ってくるのが見える。

 何が起きたかは明らかだ。

 

「え!?何てことを!」

 

 驚いた彼女だったが振り返って窓越しに見えた火の玉と爆発音で全てを察した。

 彼女はハンドルを右に切って一気に幹線道路から無理矢理下道に出た。

 降りた先の田舎の農道をアクセル全開の全速力で突っ走る。

 イとK5は窓を開けて拳銃を構える。

 一方小沢は運転席の座席に手をかけて様子を伺う。

 右手にはしっかりと拳銃が握られていた。

 

「おい!動くな!国連軍だ!」

 

 イは大声で叫んだ。

 彼らの乗る車の後ろには鈍重な装甲車二台が全速力で田舎道を突っ走っていた。

 バンの周りにいた人影は慌てて車を出して逃げだした。

 

「クソ!逃がさないわよ!」

 

 64式自はエンジンを駆り立てさらに車載無線に手を伸ばす。

 

「こちらコマンド3、ミンスク空港北3キロ不審車両発見!現在追跡中至急応援求む!」

 

『コマンド3了解した、至急ヘリを送る』

 

「了解!」

 

「64式自!奴を逃がすな!」

 

「言われなくても分かってるわよ!

 舌噛まないよう気をつけなさい!!」

 

 小沢の叫びに彼女は更にスピードを上げる。

 バンは農道を走り続け、少し幅が広くなった田舎道に出ると右に曲がり北へ全速力でかっ飛ばし始めた。

 路上に出ればいくら乗用車とはいえ大きく鈍重なバンと軽快で品質でも性能でもこの世界では最上級車よりさらに上なスポーツセダンでは相手にならずあっという間にすぐ後ろにまで追いついた。その後ろにはいつの間にか置いて行かれた装甲車2台が50メートル程遅れて追跡する。

 確実に狙える距離にまで届くとK5とイは拳銃を撃ち始めた。

 バンに当たり跳ねかえった弾の閃光が光、何発かは穴を開け始めた。

 だがすぐに、弾が切れリロードするため銃撃をやめる。

 

「弾切れだ!」

 

「こっちもよ」

 

 するとバンの後ろのドアが開いた。

 開くと黒い、腰から巨大な機関砲のようなものをぶら下げた人影があった。

 その人影がこちらを狙っていることに気がついた64式自は一気にアクセルを踏み込み左にハンドルを切った。車があったところには巨大な土煙が上がった。

 さらに流れ弾が一発装甲車に直撃しフロントバンパーを吹き飛ばした。

 

「今のはなんだ!?」

 

「ありゃ一体なんだ!?」

 

 装甲車のフロントバンパーを吹き飛ばした攻撃にイと小沢は驚いて顔を見合わせる。

 

「分からないわよ!彼奴何!?機関砲ぶっ放したわよ!

 プレデターでもミニガンよ!」

 

「どうやら私達はとんでもない相手と戦う事になるのね。

 ツイてないわね」

 

 すると車にドン!という衝撃が走る。

 横を見ればバンが体当たりしてきた。

 

「小癪な…K5、前に出るからドライバーぶっ殺して」

 

 そこへ無線が割り込む。

 

『コマンド3、射撃開始する退避せよ』

 

 それは追いかけている装甲車からの指示だった。

 64式自はハンドルを切ってバンから離れる。

 それを見た追いかけていた装甲車は一斉に搭載しているM2とミニガンを撃ち始めた。

 50口径の飛行機すら破壊する銃撃と7.62ミリの弾幕は正確にバンを制圧する。

 だが銃撃を一旦止めるとバンは穴だらけのはずなのに普通に動き、しかも人影は撃ち返してきた。

 そして一発が一台の装甲車のフロントガラスを直撃した。

 装甲車はよろめいて道路から外れスタックした。

 

「一体何なんだあれは!」

 

「キャリバー50も効かないって…」

 

 一部始終を見ていた小沢とK5は驚き恐怖する。

 歩兵用火器としては最強の50口径弾と制圧射撃では右に出る者はいないミニガンが効かないのだ。

 何とか撃たれないように並走しながら横から拳銃を撃ち続けるが全く効きそうにない。

 そこへ力強いプロペラの音が聞こえてきた。

 その音にイが叫んだ。

 

「は!騎兵隊の到着だ!」

 

 車の上を高速で二機の戦闘ヘリが通過した。

 一機には拡声器が付けられているようだった。

 

『高速走行中のバンに警告する、直ちに停車し武装解除せよ、繰り返す武装解除せよ。

 指示に従わない場合攻撃する、繰り返す攻撃を行う』

 

 ヘリから警告の音声が聞こえる。車は停車せず全速力で走る。

 すると二機のヘリは一斉にバルカン砲を発射した。

 バンは数秒で穴だらけになり停止した。




・小沢慶彦
航空自衛隊の一等空佐
参謀将校で防衛大学校卒。オタク

・イ・ヨンチョル
韓国空軍大佐
小沢一佐とは旧知の間柄。オタク

・64式自
航空自衛隊の戦術人形
小沢一佐の専属ドライバー

・K5
イ大佐の部下の人形、韓国空軍所属。



この作品じゃ第三次世界大戦擬きは中国が香港でやらかすのがきっかけだからな、それ今やらかされたら困るわ

どーでもいいけどこの世界ではポリコレは2020年代初めにBLMでやらかしすぎて死にました
「映画・書籍内の全ての表現を理由として流通販売出版の制限を行う事を禁止する行為」は独占禁止法に相当するという判例も出て、それを確実化するための法律もできて表現の自由は厳しく守られます。
後韓国は米韓合作映画がアチョン法に引っかかりハリウッドの大物監督やスター、プロデューサー、更には韓国映画界との中継役だった元駐韓大使達が逮捕され米韓関係が急激に悪化して最終的に米国主導で韓国軍がクーデター起こして親米保守政権化。
ちなみに財閥は中国内戦後、北朝鮮抱えたせいで大不景気が襲い掛かって結果的には弱体化して中小企業や非財閥系大手企業が一杯生まれてます。
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