もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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久しぶりにユノ指揮官が出る、というか初めての事に困惑するグリフィン担当者っていう役回りに向きすぎてる。


第79話

 ヴェンク達参謀部の将校は情報収集と並行して作戦立案に当たっていた。

 そして最初の発見から3週間もかけて立案された。

 その頃にはもう時は春から初夏の5月も半ばに差し掛かっていた。

 

「お配りしている資料は作戦の簡単な説明書です」

 

「ポラリス作戦の名前は変わらないのだな。」

 

 ブリーフィングルームでヴェンクの部下の人形が居並ぶ各国軍将官に作戦書類を配る。

 その作戦名にアーチポフが訊ねた。

 

「ですが、作戦は大幅に変更しています。

 3つのフェーズからなる作戦です。

 作戦の目的はただ一つ、連中の策源地の完全なる制圧。その一点に尽きます。

 航空攻撃と除染だけでは完全制圧は不可能、そこで後詰めとして空挺部隊を投入し空から強襲空挺降下を行い制圧します。」

 

 攻撃作戦は時間をかけた分、より攻撃的な作戦に変化していた。

 空襲だけから除染と空挺部隊による制圧という要素が追加され確実な殲滅を狙った作戦となった。

 

「フェーズ1、航空攻撃です。

 偵察の結果、策源地周辺には難民キャンプ、謎の花畑、格納庫・倉庫群、各種建物多数、未確認の白い二足歩行ロボットのような物多数、防空陣地、滑走路とヘリポートらしきものなどが確認されました。」

 

 作戦の説明が始まると画面には航空偵察と更にシギントで判明した敵施設の情報が航空写真上に写される。

 写真偵察の情報だけでも各種施設が発見されていたが更にシギントで発見した防空レーダーなどの隠蔽された施設の情報、航空機搭載型ミリ波パッシブ撮像装置の画像から判断された隠蔽施設、地下施設の情報も正確に映し出されていた。

 その数は膨大であり地上施設だけでざっと200は存在していた。

 更に地下施設も多数存在し近隣には謎の花畑や難民キャンプもあった。

 

「このうち攻撃対象とするのは難民キャンプ以外全てです。

 この花畑はソ連政府に問い合わせたところ崩壊液を取り込む性質があるという事、危険なので最初のフェーズでナパームで焼き払います。

 ベトナムでやった手です。

 残りは巡航ミサイルで破壊、破壊後第一フェーズ第二段階として戦爆連合による直接空襲を行います。

 これで破壊を免れた施設群及びロボット群を撃破します。」

 

 第一段階はこれらの施設の内、難民キャンプを除く全てを破壊することであった。

 それも第一波の巡航ミサイル攻撃に始まり第二波では絨毯爆撃を敢行するという徹底ぶりだ。

 第二波ではさらに地中貫通爆弾による地下施設破壊も含まれていた。

 崩壊液も全て焼き尽くしてしまおうという算段だ。

 

「フェーズ2は除染。

 戦爆連合による空襲後除染航空部隊が中和剤を空中散布。

 さらに除染爆弾を使用します。」

 

 第二段階は空中給油機と戦闘地域における崩壊液除染作戦の為開発されその後は一定数生産されているが演習以外では倉庫に死蔵されていた中和剤を詰めた除染爆弾を使用するのだ。

 総力を結集しての除染作業である。

 勿論これは第三波の空挺兵の安全確保という重要な目的だからだ。

 

「除染範囲は施設群の周囲半径20キロ圏全域。

 徹底して除染します」

 

 空挺兵の空挺地域や事故などで逸れた際に備えて除染範囲は周囲40キロ1256平方キロメートルの範囲を除染するのだ。

 とにかく兵士の安全が優先であった。

 

「除染中に敵の対空攻撃があった場合、即座に中止し再度空襲を実施します。

 除染中に敵の動きを発見した場合も同様です」

 

 さらに除染時の敵の反撃に対しては即座に除染を中止して再度空襲を行うという

 

「最後のフェーズ3、空挺部隊による空挺降下。

 降下ポイントは主要目標の南の平原地帯です。

 直線距離で約5キロ付近、南から航空支援の下強襲します。

 また空挺戦車部隊、装甲車部隊も投入し直接火力支援を行います」

 

 降下させるのは空挺兵だけでなく戦車、装甲車、更に大砲も降下予定であった。

 画面には降下地点と各部隊の降下予定地点が明記され投入部隊一覧が映し出された。

 

「主力は米陸軍第82空挺師団オールアメリカンが担いますが支援としてフランス軍、ドイツ軍、ロシア軍が参加します。

 降下後は敵施設群の3つのセクションを制圧、飛行場を制圧し難民の脱出を行い脱出後空路で撤退します。

 空輸には各国軍が参加します。」

 

 降下後は敵の陣地を三つのセクションに分類しそれぞれ制圧、制圧後難民を空輸して救出するというのだ。

 するとグッドイナフが質問した。

 

「ところで、降下支援や事前偵察を行うのか?」

 

「勿論、現場は危険地帯ですので投入するのは人形ですが。

 AR小隊は陸軍予備役、404も投入可能ですよね?

 グリフィンとも可能なら兵員を出させます」

 

 空挺作戦では事前の敵情をより詳しく知ることが重要である。

 そこでヴェンクは人形部隊を事前に空挺降下させるという策を使うつもりだ。

 ただこのような任務を人形のみに遂行させるというのは大きな問題があった、それは人形の運用方法だ。

 特殊部隊であっても人形は基本的に人間とミックスしての運用であり割合は大きくても50%前後が殆どであった。

 そのためグリフィンからも人形を融通して頭数を合わせる必要があった。

 

「この兵員の脱出はそのように?」

 

「作戦失敗した場合は南東のペイプス湖方面に逃走させます。

 作戦に成功した場合は地上でミサイルと爆撃機の終末誘導支援を実施、その後空挺部隊の降下地点制圧を行います。後はポラリス作戦と同様に」

 

「分かった、こちらのは作戦名があるのか?」

 

「ええ、仮名称としてサザンクロス作戦と」

 

「ポラリス作戦とサザンクロス作戦の両方の作戦を承認しよう。

 今後、国連安保理とホワイトハウスの許可を得次第作戦準備を開始せよ」

 

「了解しました。」

 

 事前偵察と攻撃支援を兼ねた作戦、サザンクロス作戦とポラリス作戦が承認された。

 ヴェンクはグッドイナフに敬礼する。

 ここにパラデウス追討の作戦が用意された。

 

 

 

 

 

 

 空挺降下にはいくつか種類が存在している。

 そもそも空挺降下自体が特殊技能であるがその中でも更に特殊なものがいくつか存在している。

 主に知られているのが高高度降下低高度解傘通称HALOと高高度降下高高度解傘通称HOHOである。

 どちらも危険極まりなくその上特殊装備が必要だが特殊作戦や潜入作戦ではよく使用されている、そのためこういった作戦に従事する兵士達はこの訓練が必要不可欠だった。

 S地区の国連軍演習場近くを飛行するC-77グレートディッパーの今日の目的もHALO降下訓練の為だった。

 機体下部のキャビンではAR小隊がHALO降下の装備を身に着けて座っていた。

 AR-15が降下用の手袋を嵌めながら呟く。

 

「久しぶりの空挺降下ね」

 

「皆さん、装備チェックはちゃんとお願いしますね」

 

「りょーかーい!」

 

「酸素マスクも準備OKだ」

 

 手際よく降下の為の装備や安全装備を確認するAR小隊だが向かいに座るグリフィンの方のAR小隊は緊張して慣れない手つきで注意深く装備を確認する。

 

「えっと、酸素マスク、よし」

 

「手袋と後ゴーグル」

 

 M4とAR-15が慣れない手つきで手袋とゴーグル、そして酸素マスクを確認する。

 高度1万数千メートルから降下するとなると生身では非常に危険だ、なので人形でも、というよりは人間用の規定を新たに規定を設けると煩雑になると理由でそのまま人形に当てはめているのでこういった装備が必要だった。

 

「パラシュートはちゃんと繋がってるよね?RO」

 

「繋がってますよ、SOP」

 

「足に発煙筒付けたか?」

 

 パラシュートや発煙筒といった装備も確認する。

 暫くすると周りにいた乗組員が酸素マスクを着用し始めた。

 それを見てAR小隊も酸素マスクをつけて手袋をはめてゴーグルをつける。

 AR小隊も酸素マスクをつけてゴーグルをつけた事を確認した乗員が親指を立てて合図をすると一人が機内電話を取る。

 それから一分ほどした後、機内にブザーが鳴り響いた。

 そしてゆっくりと後部の扉が開いて雲海と紺碧の空が覗いた。

 AR小隊は立ち上がると二列に並ぶ。

 そしてもう一度ブザーが鳴り響いた。

 次の瞬間、AR小隊は機体の外へと飛び出した。

 

 

 

 

 地上の演習場ではグリフィンとG&K関係者に演習支援の人員が不安そうに空を見上げていた。

 

「大丈夫かな…」

 

「お主は心配し過ぎじゃ、きっと大丈夫に決まっておろう」

 

 AR小隊が現在配備されているS-09P基地のユノとナガンが不安そうに見上げていると横で空挺軍出身者であるG&KのSVDが双眼鏡で空を見ながら言った。

 

「ところで、HALOの降下時の最大速度は300キロとも言われてるらしいぞ」

 

「さ、300!?」

 

「空挺軍出身とはいえHALOはやったことないがかなり危険な降下だ。

 その分色々とメリットもあるんだが」

 

 SVDがユノを怖がらせる。

 その横では数人の将校たちが無線機に噛り付いて状況を確認していた。

 

「ゴスホークより連絡、降下完了とのこと」

 

「了解した、そろそろ見えてくるはずだぞ」

 

 通信手からの連絡に空を見上げる。

 空には小さく輸送機が見えるがそれ以外は何も見えない。

 しかし数秒後、小さな赤い煙が現れ、それが段々近づく。

 

「アレだ、1時の方向」

 

「大丈夫そうだな」

 

 将校とSVDが双眼鏡で様子を確認する。

 そして更に暫くして黒い四角形のパラシュートが開いた。

 パラシュートは段々近づいてくると傍にあった着地予定の広場に次々と着地していった。

 降下したAR小隊は即座にパラシュートを切り離して降下装備を脱ぎ下に着こんでいた歩兵戦闘装備を身に着けて銃を構える。

 

「左クリア!」

 

「右クリア!」

 

「前方クリア!」

 

「後方クリア、各自異常なし、前進します」

 

 膝立ち姿勢で周囲を確認したAR小隊4人はM4のハンドサインで予定された遮蔽物へと向かう。

 一方グリフィンの方のAR小隊は…

 

「うわああ!!飛ばされる!」

 

「M4!待て!」

 

 着地したM4は風に飛ばされM16が慌てて追いかける。

 その横ではROにパラシュートの紐が絡まり縛り付けられたようになっていた。

 

「SOP!これ一体どうなってるんですか!?」

 

「私もこれどうなってるの!?」

 

 ROが助けを呼んだSOPもSOPで腕にロープが絡んでいた。

 一方AR-15は降下地点からやや逸れて近くの森の中に降下して木から降りようと絡まったパラシュートと悪戦苦闘していた。

 

「この…!外れなさい…!キャ!」

 

「あんまり暴れるなよ!今降ろしてやる!」

 

 AR-15を助けようと数人の兵士が木に登る。

 このようにグリフィンの方は経験が不足していたが米軍の支援による訓練が行われ練度は急激に向上し、作戦投入が可能な段階まで向上した。

 

 作戦開始の期日は近づきつつあった。




作戦名は北極星と南十字星、ご存知の通りどちらも昔から方位や位置を知るのによく使われた星座。
北極星は北の星だが南十字星は南の星なので北方の作戦をカモフラージュするのに向いてる…と言いつつ原作の作戦名が角砂糖とかキューブとかクソダサい作戦名ばっかでこういう詩的でカッコいい作戦名用意しろよというアンチテーゼ

パラデウス、初っ端で2回焼かれて冷やされた後更に焼かれる事確定
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