もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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華麗なるワシントンDC


第6話

「あの…本当にいいんでしょうか…?」

 

「違和感しかないわね、こんな物に招待されるなんて」

 

 7時過ぎ、ホワイトハウスの中央の建物、通称レジデンスの一階の東の部屋、通称イーストルームには大勢人が集まっていた。

 その中にシックな黒いドレスに身を包んだAR小隊も混ざっていたがこのような場に出ること自体初めての彼女らは知っている顔が一切ないこの部屋の片隅で困惑していた。

 唯一SOPは部屋の調度品や家具など今まで見た事ないような豪華絢爛な物の数々を目を丸くして見ていた。

 

「うわああ~綺麗~」

 

「あんまりはしゃぐなよ」

 

 M16には下手に騒動を起こしては大変だと思い子供のように歩き回るSOPを追いかけていた。

 一方部屋の反対側では指揮官一家とM14がいた。

 

「おお、英雄様じゃないか」

 

「グッドイナフ海兵大将、お久しぶりです」

 

 M14に海兵隊のブルードレスを着た将軍が敬礼するとM14が返礼する。

 M14はいつもの格好のままだったが首にはいつもと違う勲章、即ち名誉勲章がかけられていた。

 

「サーグッドイナフ、現在M14の上司のジェームズ・イシザキです」

 

「ミスターイシザキ、特殊作戦軍司令官のレナード・グッドイナフだ。」

 

 スーツ姿の指揮官がグッドイナフに敬礼する。

 グッドイナフは返礼すると副官の将校と共に離れていった。

 

「なんというか、大変ね」

 

「ああ。この手の奴には慣れてるんじゃないのか?」

 

 失礼のないよう気を使っている指揮官がワルサーに言う。

 ワルサーはいつもと違うシックなドレスを着てクールビューティーなキャリアウーマンのようだった。

 

「いつもはもてなす側よ。ところでAR小隊の面々と会ったの?」

 

「いや、探してるんだがな。この辺にはいないから反対側じゃないか?」

 

 二人はAR小隊の面々を探していたが全く見つからなかった。

 ホテルに着いてからはチェックインすると慌ただしく着替えて化粧直ししたりしてから手配された車に乗り込んでホワイトハウスに向かったので彼女らと会う機会などなかった。

 

「ジェームズ」

 

「なんだ親父?」

 

「紹介しよう、司法長官のトム・ラングドンだ」

 

 父親はと言うと慣れたように政権幹部などと話し60代か50代後半らしい杖を持った男とその後ろで動く黄色い毛玉のような女性を紹介する。

 指揮官はと言うと突然司法長官という腐っても内閣の一員を突然さも古い友人を紹介するように紹介され顔には出さないが驚いていた。

 

「君が息子かね?司法長官のラングドンだ。

 この子は私の娘だ」

 

「違いますよ、トムさん。

 戦術人形のSAT8です、よろしくお願いしますね」

 

「は、初めまして、司法長官閣下、ジェームズ・イシザキです」

 

「そんなかしこまらなくてもいい、フランクにトムって呼んでくれて構わない。

 じゃあパット、失礼するよ」

 

「トム、また後でな」

 

 ラングドン司法長官とSAT8は指揮官たちと別れ人ごみに消える。

 突然閣僚を紹介され二人は神経を擦り減らす。

 

「ジェームズ、紹介するわ、NASAのシェパード長官と教育長官のショアよ」

 

「ジェームズ・イシザキです」

 

「シェパードだ。よろしく」

 

「ショアよ」

 

 司法長官に続き今度は母親がドイツ系の50代のNASA長官とヒスパニック系の女性の教育長官を紹介する。

 母親と二人は親しく会話しているが指揮官とワルサーはうなづくだけの文字通り人形として空間に精一杯溶け込む。

 そして隙を見ると二人から離れ人ごみをかき分けて進む。

 

「クソ!なんて人だ!」

 

「ええ、一体何人いるのよ」

 

「おい!ジェームズ!」

 

「ん?ゲ!」

 

「何がゲ!だ!上司に向かってその口の利き方はなんだ!」

 

 突然呼ばれ振り返る、そこにはあの片メガネの銀髪の女性、G&Kセキュリティ最高執行責任者、へリアンがいた。

 まさかの場で上司に会うとは思わず固まる。

 

「いや、その、まさかDCに来ているとは…」

 

「公聴会に呼ばれたんだ。

 で、君らは何をしている?」

 

「大方へリアンさんと同じです。

 それでAR小隊を探してて…」

 

「さっき向こうの方で見たぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

「お!おい!」

 

 AR小隊のいる場所を聞くと指揮官はワルサーを連れて向かった。

 そしてしばらく人ごみをかき分けるとやっと特徴的なピンクの髪を見つけた。

 

「AR!」

 

「指揮官!?」

 

「来てたんですか?」

 

「ああ、親父とママ共々招待されたんだ」

 

 まさか来ていると思っていなかったM4とAR‐15は声をかけられて驚いていた。

 

「SOPMODとM16は?」

 

「多分どっかをほっつき歩いてるわよ」

 

「そ」

 

「おい!ジェームズ!」

 

 すると後ろから人ごみの合間を縫ってへリアンが追いかけてきた。

 へリアンまで登場したことにM4達はさらに驚く。

 

「へリアンさん!?」

 

「どうしてここに!?」

 

「私も招待されたからな。」

 

「M4、紹介しよう、G&KセキュリティのCOOのへリアントスだ。

 みんなへリアンって呼んでる」

 

 指揮官がへリアンを紹介するがM4達は彼女をよく知っていた。

 同時にへリアンも彼からの報告でM4達の事も把握していた。

 

「君たちが異世界のAR小隊か、初めましてへリアンだ。

 ようこそアメリカへ」

 

「えーっと、初めまして」

 

「初めまして」

 

 M4とAR-15がへリアンと握手すると彼女が聞いた。

 

「ところで、君達の目から見てこの世界はどう思う?

 正直な意見を言ってくれ」

 

「そうですね、何というか不思議な世界です」

 

「不思議?」

 

「はい、戦術人形が兵器ではなく人として扱われていたり家族の一員のように接する人が多かったり」

 

 M4が率直に答えた。

 彼女らの目にはこの世界の戦術人形と人間の関係は不思議に見えた。

 

「そうだろうな、君らの世界では戦術人形は軍が使う兵器だと聞く。

 だがこの世界では少しばかり事情が異なる。

 君らの世界のように人的資源の枯渇は起きていない、だからわざわざ兵士を機械に置き換える必要もない。

 むしろIoP系の人形の場合、人間と極めてよく似ているという特性や能力だけならば特殊部隊員に匹敵する面を生かして警察や民間の方が人気が高い。

 この部屋だけでもシークレットサービスのが5体ぐらいいるはずだ」

 

 へリアンが説明する。

 戦術人形はこの世界では軍の特殊部隊や警察、民間用という側面が強い。

 民間用は所謂修正第二条の延長線上としてアメリカでは人気で戦術人形ならば各地の銃規制を回避できるという側面もあり戦術人形の普及にはNRAなどの銃器関連団体の存在もあるのだ。

 そして警察では優秀でありながら人に威圧感を与えない容姿を利用する場合が多かった。

 

「えっと、もしかして?」

 

 M4が近くの窓の傍で周囲を監視するシークレットサービスの人を指さす。

 その姿がロングの銀髪で身長が180センチ近いという中々特徴的な姿だった。

 

「あれもだろう。恐らくファイブセブンだ。

 他にも向こうの出入り口傍のはたぶんG36C、向こうの給仕はG36だ」

 

 さらにへリアンは出入り口傍の片眼が隠れたシークレットサービスやメイド姿で替えのドリンクを運ぶ女性を指さす。

 その二人もよく見れば戦術人形だった。

 

「意外といるのね」

 

「まあな」

 

 AR-15と話していると会場の照明が突然暗くなり部屋の反対側が騒がしくなり始めた。

 そしてスポットライトが付いた。

 

「何!?」

 

「おー、どうやら主催者が来たらしい」

 

「主催者?」

 

「合衆国大統領よ、AR-15」

 

 混乱するM4とAR-15にWA2000が言う。

 その言葉通り反対側のドアから通路をシークレットサービスが作ると50代らしき壮年の男、即ちカークマン大統領が銀髪のツインテールの女性を連れて手を振りながら現れ中央の演台に登る。

 だが指揮官たちがいるところからは演台に一人で現れるまで一切見えなかった。

 大統領が演台に登り真ん中に置かれたマイクを手に取る。

 

「レディースエンドジェントルメン、それと人形の皆さん、この度私のパーティに来てくださり本当にありがとうございます。」

 

「大統領の祝辞が始まったぞ」

 

 指揮官がよく知らないM4達に言う。

 演台の周りでは記者らが動いていた。

 

「今回のパーティは特別です。

 何せこの部屋の中に異世界の人形であるM4A1、M16、AR-15、M4SOPMOD2を招いていますから。」

 

 部屋中にどよめきが広がる。

 大統領は更に話を続ける。

 

「異世界の状況は相当悪いと聞いている。

 国というものが破綻し、民間企業が幅を利かせ、崩壊液によって人類は滅亡寸前。

 だからこそ、我々が彼らに手を差し伸べるのです。」

 

 温和な口調で言う。

 カークマンは世間一般でも誠実で真面目な正直者、というのが世間一般の評判、その評判に違わない演説だった。

 

「この問題は色々あるでしょうが、我々はかつて1944年のように自由の使者として異世界の地を踏みしめなければならないでしょう。

 そして同時にこの世界の平和と繁栄を我々が享受できる裏には今もこの時間、世界中で日夜平和を守っている人々がいるという事を忘れないでください。

 皆さん、この平和を享受できることに感謝し平和を守っている人々に感謝を。

 神がアメリカと国民を守りますように」

 

 そう言うと演説を終える。

 会場は拍手に包まれ指揮官とWA2000、へリアンも拍手する。

 

「流石我らが大統領だ。

 民主党支持者だがカークマンは好きだよ」

 

「はぁ」

 

「それは嬉しいね」

 

 突如聞きなれた声に話しかけられ振り返る。

 振り返るとそこにはシークレットサービスを連れた大統領がいた。

 

「ミ、ミスタープレジデント!」

 

「確かイシザキ議員の息子さんのジェームズだったかい?」

 

「は、はい。ジェームズ・イシザキです!」

 

「よろしく、ジェームズ君。

 そちらの妙齢のレディーは?」

 

「戦術人形のワルサーWA2000です、大統領」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 二人は緊張しながら大統領と握手する。

 大統領は優しそうな笑みを浮かべていた。

 

「それで君たちが確か異世界の人形だったね。

 はじめまして、大統領のピーター・カークマンだ」

 

「M4A1、です」

 

「AR-15よ」

 

「よろしく、M4、AR-15。

 M4は私の父がイラクで使っていた銃だ、どうも他人とは思えないよ」

 

「は、はあ」

 

 大統領とM4、そしてAR-15が握手する。

 二人は困惑していると突如フラッシュが焚かれた。

 気がつくと記者に囲まれていた。

 

「大統領!一枚お願いします!」

 

「こっちにもお願いします!」

 

「分かった分かった、すまないが少し付き合ってくれるかな?」

 

「えっと、何をですか?」

 

「簡単だ、少しポーズを取ってくれるだけでいい」

 

 小さな声でお願いする。

 AR-15とM4が並び大統領と握手するポーズを一分ほど取る。

 その間絶え間なく写真撮影がされる。

 

「M4、一体何なのこの時間」

 

「さ、さあ」

 

 二人は困惑していた。

 そして写真撮影が終わると記者が質問してきた。

 

「大統領!一言お願いします!」

 

「そうだね、例え世界が変わろうとも人形も変わらない、彼女らも又我々の知る人形と何一つ変わらない事が確信できた。

 どうぞアメリカを楽しんでください」

 

「ではそちらの人形の方も一言お願いします!」

 

「えっと、あの…」

 

 記者にコメントを求められ大統領は慣れたように言うがこの手の話が苦手なM4は困惑する。

 元々気が弱く目立つことが苦手だった。

 

「あのね、こんな時間に何の意味があるのよ」

 

「え?」

 

「おい」

 

 突如苛立ったAR-15が声を荒げた。

 パーティはいいとして突然囲まれて写真を撮影されその上コメントを求められる、あまりの横暴(AR-15視点)に苛立ったのだ。

 後ろに立っていた指揮官が注意するが一切聞く耳を持たない。

 

「第一私達は人形よ、兵器よ、こんな事に何の意味があるのよ!

 行くわよ、M4!」

 

「え、AR-15…!」

 

 AR-15は強引にM4を連れて会場を出て行ってしまった。

 記者達は唖然とし互いに顔を見合わせ大統領を見る。

 

「失礼、どうやら彼女はショックを受けているらしい。

 君らのフラッシュが強すぎたんじゃないかな?」

 

 大統領は記者達にジョークを飛ばす。

 記者達が大笑いする横で指揮官はAR-15を追いかけた。

 




(設定)
・トム・ラングドン
作者のドルフロ別作「ドールズウィッチーズライン」で出した後方幕僚のアメリカ人。
この世界ではカークマン政権の司法長官
やっぱり糖尿病でSAT8連れてる。

・レナード・グッドイナフ
海兵隊対象で特殊作戦軍の司令官。
M14の元上官

・へリアン
合コン負け女ではない
独身だけどクソ忙しいだけ。
ドルフロ本編より出世してCOO。


一応この世界戦術人形の主な顧客は個人・警察・軍の特殊部隊・一部のPMCだけで軍の主体は人間のままだしマンティコアとかアイギス、ダイナゲートみたいな連中はいない。

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