もしも白蘭島事件が起きなかったら   作:ロンメルマムート

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実はちょっとエロいの書き始めてる


第82話

 司令部の画面が一瞬全て真っ白になった。

 そして元に戻ると原爆のようなキノコ雲が映し出され映像を撮影していたUAVが大きく揺れた。

 

「よし!やったぞ!」

 

「弾薬庫破壊成功!」

 

 映し出された残骸に将校たちから歓声が上がる。

 破壊されたのは中心部にあった倉庫、それは事前偵察で弾薬庫と思われ分析の結果、地下にもありそれが地下で周囲の弾薬庫の幾つかと連結した大規模な弾薬庫と判明した。

 そこで国連軍は第一波でこの弾薬庫の破壊を狙い、成功した。

 唯一誤算だったのはそこに集積されていた火薬の量を見誤った事である。

 それに気がついたのはインド軍から来た工兵科の参謀将校であった。

 

「待て、なんだか…」

 

「ん?あ…まさかとは思うが火薬の推定量を間違えたか?」

 

 そう、彼らはこの弾薬庫の推定貯蔵弾薬の量を過少に計算していたのだ。

 僻地なので最低限の量しか備蓄していないという先入観により全体で精々100トン程度と見積もっていたが実際はどう見てもその30倍近くはありそうな爆発であった。

 何せ倉庫のあった場所が爆炎が晴れると200メートル近いクレーターが出来ているのだから。

 よく見れば倉庫の周辺の建物は根こそぎ吹き飛ばされており少なくともこの爆発だけで基地の施設の3割は完全に跡形もなくなり残りも半分は確実に全壊判定であった。

 

「少々やり過ぎたようだな、さてどうするかな?

 第二波に目標が残ってるだろうか」

 

 キッティンジャーは頭を掻きながら言った。

 どう見てもこれはやりすぎだった。

 

 

 

 

 イヤホンをつけたアンジェリカが何か連絡を受ける。

 

「了解」

 

 オペラの第一幕が終わるとホールの廊下を護衛に連れられてアーチポフ父子たちが走っていた。

 彼女は二人に最新の情報を与えた。

 

「第一波攻撃で敵の弾薬庫の破壊に成功したそうです」

 

「やったな」

 

「しかし、備蓄していた火薬の量が想定以上だったらしく基地がほぼ壊滅したそうです」

 

「ベイルートかハリファックスのようになったのか?」

 

「そのようです。専門家曰く備蓄していた火薬量は概算で3000トンから4000トン程度との事」

 

「やり過ぎだ。」

 

「ええ。なんでもタリンは火山のようになっているそうです」

 

 アンジェリカの報告に二人は現地の惨状を察した。

 恐らく現場は悲惨な状態だと。

 話している間に車止めに到着すると用意された黒塗りの高級車に乗り込んだ。

 

「出してくれ」

 

 全員が乗り込むと急いで発進する。

 前後にはすぐに特殊部隊員を乗せた乗用車とパトカーが追随した。

 

 

 

 

 

「こちらハリファックス、目標まで5分」

 

『了解、作戦を続行せよ』

 

「了解」

 

 戦闘爆撃機隊の隊長が返答する。

 第二波となる重爆撃機と戦闘爆撃機の編隊は闇夜の中でもはっきりとわかるキノコ雲に向かって飛行していた。

 数分後、編隊は目標付近に到達するが彼らは暗視装置で目標を探すが

 

「こちらハリファックス、目標が殆ど破壊されている。

 繰り返す、殆ど破壊されている」

 

『了解した、ならば残骸を爆撃せよ』

 

「了解、各機、残骸をぶっ飛ばせ」

 

 数秒後、各機から爆弾が投下され燃え盛る残骸を次々と吹き飛ばした。

 また数発のナパームは近くの花畑に着弾し焼き払う。

 続けて重爆編隊がやってくると腹に抱えた合計数百トンの爆弾が一斉に投下され地面を焼き尽くす。

 更にはその中に中和剤を詰めたものも多数存在しそれらも地上から離れた空中で一斉に炸裂した。

 

「こちらハリファックス、任務完了。

 敵基地は火山みたいだ」

 

『了解、帰還せよ』

 

 燃え盛る地上を見ながらパイロットは無線で呟いた。

 地上はさながら地獄か火山のように赤く不気味に照らし出されていた。

 

 

 

 

 

 これらの爆撃編隊は実に夜明けまでに更に2回訪れた。

 夜明け頃、もはや完全に破壊しつくされたエストニアの上空に空中給油機の編隊が現れ中和剤を散布した後、比較的低空を輸送機の編隊が現れた。

 

「降下まであと五分!

 装具を確認!」

 

 輸送機の機内で降下作戦を指揮する米陸軍のトム・ウォーキンレック大佐が叫ぶ。

 輸送機内で隊列を組んでいる部下の空挺兵たちが互いの装備を確認する。

 一度輸送機から出ればこれが命綱である。

 

「確認し終わったな!それが無いと神の御許に直送だ!」

 

 そして機体側面のドアが開けられた。

 眼下には湖、ぺイプス湖が見えた。

 

「全く、戦争なんてありゃしねえみたいだ」

 

 朝日に輝く湖を見ているとすぐに綺麗な水面から醜い地面へと変わった。

 タイミングが近いという事だ。

 

「よーし!降下用意!」

 

 叫ぶと、ドアの取っ手を掴んで構える。

 そして数秒目を閉じる、ベテラン空挺兵の彼の降下前のルーティンだ。

 

「降下!」

 

 ドアから飛び出した。

 彼に続けて数百人の空挺兵も後に続く、数秒してパラシュートを広げて見上げれば後ろには小さくなった輸送機たちとそこから飛び降りる数百のパラシュートと人影。

 下を見ればスラム、廃墟のタリン、眼下で燻り続けている建物がある。

 煙の匂いと人が焼ける匂いはここまで漂ってくる。

 たっぷり一分間その空気を堪能すると地面に転がる。

 即座にパラシュートを切り離して武器を取り出して周りを見る。

 降りた場所は予定通りの荒野であり周りには降下した仲間が次々と地面に降り立ちパラシュートを切り離していた。

 

「お前ら!そのデカいケツを上げろ!各隊整列!

 モタモタするな!俺がボケるまでここにいるつもりか!

 SCWはどこだ!」

 

 早速大声で叫ぶ。

 風に舞って膨らむパラシュートの森の中、空挺兵たちはグループを作っていく。

 彼の元にも部下が合間を縫って集まる。

 SCWも無線機を背負って走ってやってきた。

 

「はい、大佐」

 

「司令部に連絡、鷲は舞い降りた。

 これより静かの海の捜索を開始する」

 

「了解」

 

 彼女は無線機で司令部に連絡する。

 手際よく動く部下たちを見て彼は疑問を口にした。

 

「おい!敵はどこだ!?」

 

「破壊されたものなら発見できてますが」

 

 部下の大尉が答える。

 

「空襲だけで全部が死んだわけじゃないだろ、害虫駆除してもゴキブリが出てくるんだ。

 どっかに生き残りか何かがいるはずだ!探せ!」

 

「探してどうするんですか?」

 

「見つけ次第破壊しろ、連中にはあのキエフで俺達を襲ったサイボーグもいるんだ。

 最大限注意して始末しろ」

 

「はっ」

 

 大尉は敬礼するとすぐに部下の隊長たちに伝令しに向かうと彼は思い出したかのように呼び止めた。

 

「待て」

 

「はっ」

 

「司令部にできそうな場所を探せ、ここじゃ七面鳥と同じだ」

 

「了解しました」

 

 司令部に使えそうな場所を探させて彼は首から下げていた双眼鏡で周囲を見回した。

 

 

 

 

 

「酷いわね」

 

「何も残ってないね、私達がやり過ぎたのよ」

 

「敵を叩き潰すのにやり過ぎって言葉はないと思うわよ?」

 

 廃墟の中、UMP45と416は空挺部隊との合流の為周囲を警戒しながら進む。

 とは言っても警戒しようにも警戒する物は全て吹き飛んだ瓦礫である。

 一応残りは他の場所で警戒態勢で待機としてもしも何か見つければ連絡するように伝えてはいるが今の所他に何も見つかってはいない。

 

「これって、敵兵よね?」

 

「ええ、その宇宙飛行士みたいなの」

 

 二人の足元には吹き飛んだ敵兵の死体があった。

 それはまるで宇宙飛行士のような装具を身に着けた奇妙な兵士だった。

 

「いつも気になっていたけれどこの兵士の正体は何なのかしら?」

 

 416はうつ伏せで死んでいる敵兵を蹴り上げて表を向かせる、そして驚いて引き下がった。

 

「これって…!」

 

「ELID…」

 

 それは人間のELIDだった。

 死んでいるので害はないがこの基地にいた兵士やガンダムのような何かや宇宙人のような何かもまさか…という考えが頭を過る。

 ELIDとのガチの戦闘など彼ら彼女らは何一つ想定していない。

 何せそんなのは攻撃前に中和剤で死に絶えている前提だ。

 だが、もしも遭遇したならば…

 

「もしも遭遇したら…」

 

「一巻の終わりで済めばマシな方ね。

 幸いなのはほぼ空襲で駆除出来たところが精々ね」

 

 二人はその死体をその場に放置して先へと進んだ。

 死体には人間のように蠅が寄り付く気配はなかった。

 

 

 

 

「よし、スラムの制圧が完了したな。

 飛行場は?」

 

「既に制圧済み、0830に第一便が来る予定です」

 

『こちらシェルビー、敵基地の東側制圧完了。

 戦闘無し、確認死体39』

 

「了解、引き続き制圧を続けろ。」

 

 それからしばらくして、空挺部隊は順調に制圧していた。

 司令部は破壊された敵SAM陣地の一つを臨時司令部とし、破壊されたSAMに無線アンテナを括り付けて作戦指揮を執っていた。

 今の所事前空襲で殆どの施設が吹き飛び、殆どが死んでいるようで戦闘らしい戦闘は何一つ起きていない。

 

「どうやら楽な任務になりそうだね、大佐」

 

 SCWがレーションのチョコバーを差し出しながら言う。

 だがウォーキンレックの表情は険しい。

 

「ああ、そうなることを神に祈ってるよ。

 答えてくれるかは知らんが」

 

 チョコバーを齧る。

 彼からすれば今の所作戦が()()()()()()()()()()

 あまりにも首尾が良すぎると感じていた。

 普通、ただA地点からB地点に移動するだけでも何かしら問題が起きたりイレギュラーが起きるのにそれが今回は殆どない。

 

「何事もなさ過ぎて不気味、気色悪い感覚だ」

 

「?」

 

「まるで、一年で宝くじに当たって、スーパーボウルの席を手に入れて、メジャーで地元チームが優勝しているみたいな感覚だ。

 なんだかツキが良すぎて気味が悪い。」

 

 その得体のしれない不安に彼は呑まれていた。その不安が杞憂になることも願っていた。

 そして大概、こういう不安は嫌な形で実現してしまうとも考えていた。

 

 

 

 

 

「こちらチャッピー、西部地区制圧開始。

 AR小隊と合流成功」

 

 破壊された基地の西側では空挺部隊がAR小隊と合流して制圧行動を開始していた。

 彼らの後ろには支援の空挺戦車が付き適時火力支援が可能な体制を整えていた。

 瓦礫の中を上や下や右や左を確認しながら慎重に進む。

 かつてスターリングラードではこのがれきの下にソ連兵は潜り込んでいた、それを忘れてはおらず彼らは慎重だった。

 その彼らの目の前で瓦礫の向こうで何かが動いた。

 

「ん?」

 

 最初に気がついたのはM4だった。

 彼女はハンドサインで何かがいると伝える。

 それを見た空挺兵は即座に持って来た小型偵察UAVを離陸させ、数秒後発砲音と共に空中で爆散した。

 

「敵襲!」

 

「手榴弾!瓦礫の向こうに!」

 

 分隊長が叫び即座に数人の兵士が手榴弾を瓦礫の反対側に投げる。

 それを皮切りに突如瓦礫の陰から白い兵士とそれを従える黒い女が現れ、攻撃が開始された。

 

「お父様がくださった私達の花園を踏みにじるのは許さない」

 

 黒い影は瓦礫の上から空挺兵を見下ろして呟いた。

 

 

 




Q、なんで見誤ったの?
A、キッティンジャー「まさかあんなところにあれだけの火薬を持ち込めるとは思わなかった」
ヴェンク「まさか一ヶ所に周辺の火薬庫の安全設備を吹き飛ばすだけの火薬があるとは思わなかった」

・トム・ウォーキンレック
第101空挺師団の大佐
現場指揮官で現場主義の男

・SCW
第101空挺師団所属の人形
兵科は通信
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