ギャルゲーの友人キャラに転生したら主人公が女だった。 作:4kibou
――それは、別たれた結末に。
寒さは意外なほど、肌をさしていた。
◇◆◇
「……広那」
「うん。なに」
「そこに、いるかい」
「いるよ。ちゃんといる」
「そっか」
「…………、」
「…………、」
「……いまは、何月だっけ」
「十一月。もうちょっとで、冬本番かな」
「そっか。……もう、そんなになるのか」
「そんなになるよ。落ち葉もなくなって。ほら、枯れ木ばっかり」
「……ん。それは、見られたら良かったんだけどね」
「……だね」
「…………、」
「…………、」
「……もう、五年になるのかあ」
「そうだね……もう、五年」
「意外と早かったね。本当、そんなに、経つのか」
「私も、それは同じ。早かった。……きっと、クロトと一緒だったからかな」
「そう言ってもらえると、俺は嬉しいものだけど……」
「ううん。絶対そう。クロトがいたから、私はここまで来れたんだよ」
「……嘘だろう。ここまで生きていくぐらいなら、別に、君だけでも」
「長さじゃないって。もう。……私の、気持ちの問題」
「……そっか」
「……そうなの」
「…………、」
「…………、」
「――ねえ、広那」
「……うん、なに」
「ひとつだけ、訊きたいことがある」
「だから、なに?」
「………………君は、幸せだったかな」
「――――――、」
「あ、いや……深い意味は、ないん、だけど……」
「……もう、クロトってば。そんなことも、知らないでいたの?」
「……そりゃあ、だって俺は……」
「幸せだったよ。クロトが居るんだもん。ずっと、ずっと、幸せだった」
「――っ……そっ、かぁ……」
「…………、」
「幸せ、だったのか……」
「…………うん」
「………………、」
「………………、」
「…………………………、」
「…………クロト?」
「…………あ、うん。……どうか、した?」
「…………いや、ごめん。なんでも、ない」
「……広那」
「違うから。本当、に……なんでも、なくて……っ」
「謝るのは、俺のほうなんだから……」
「ちがっ……クロト、は……っ……だってっ……」
「ごめん。これは、仕方ないんだ。……頑張ってはみたけど、そもそも、元からね」
「……っ」
「そこまで長くは、なかった、みたい……」
「そん、なの……っ」
「だから、広那……。一度、掴んだ感覚は……それだけは、忘れないでいて。俺のことは……どうでも、いいけどさ……」
「くっ、クロトはっ……どうでも、よくなんか……!」
「――……いいんだ。幸せだって、君が、笑えたら。きっと、ぜんぶ。……だから、忘れないで。ちゃんと、君が、笑えてたって、いうこと」
「…………っ……」
「広那は、ちゃんと、綺麗に笑えるんだっていうこと」
「……わすれ、ないって……そん、なの……」
「……そっか。なら、良いのかなあ……」
「……う、ん……っ」
「……………………、」
「……………………っ」
「…………広那」
「…………うん。な、なに? クロト」
「眠いから、すこしだけ、寝るよ。最近、ねむりが……よく、無かったんだけど。いまなら、ゆっくり眠れそうだ」
「…………うん。じゃあ、ゆっくり……っ。……寝たら、いいよ」
「そう、させてもらうかな。……うん。よかった……本当、俺には、それが……いい……ゆめ、で…………――」
「…………、」
「………………、」
「…………クロト?」
「…………、」
「…………、」
「……、」
「…………ごめんね。ありがとう。
……おやすみ、クロト。どうか、いい夢を、見てね――――」
果たして先が短いと知りながら、なにも知らない他人に任せるのと。
先が短いと知りながら、それでも一緒に居たいとワガママを通すのは。
一体どちらが、正しい選択肢なのだろう――?