ギャルゲーの友人キャラに転生したら主人公が女だった。   作:4kibou

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そういえば狭乎さん疑ってる人が多いけど(キャラ的に)いい人だから安心していいですよ。(良い人とは言ってない)


そんなトオサカ邸

 

 目を開けると、玄斗の顔が目の前にあった。

 

「(え――)」

 

 思わずピタリ、と真墨は固まる。外からはチュンチュンとよく聞く名前がなんなのかも知らない鳥の鳴き声。なるほど朝チュンとはこのコトか、なんて思考を逸らしている場合ではない。そっと、自分の服装を見つめ直す。

 

「…………、」

 

 乱れては、ない。

 

「(なーんだ……)」

 

 じゃあ頭を動かす必要もないな、とそのまま真墨は力を抜いた。ぐったりとベッドに体重をあずける。ワンチャンいけたか、と一瞬でも思ってしまったのになんともアレだ。そも兄が手を出すということ自体絶望的なので、彼女の悲願は成就されるワケもないのだが。

 

「(でも、まあ……さんざん言っちゃったし)」

 

 十坂真墨は十坂玄斗のことが好きである。大好きである。それはもう愛しているといっても過言ではない。というか玄斗以外の人間を愛せない。ので、まあ、おさまる範囲としては妹というのは非常に心地よかった。なにせ未来永劫どう足掻いたって、十坂玄斗の『妹』という立ち位置は真墨以外に現れない。……両親がハッスルしてしまわなければ。

 

「(結婚はできないし、恋人にもなれないけどね……でも、最初からお兄と切っても切れない関係があるってのは、すっごい嬉しいし)」

 

 こればっかりは普段キモいことばっかり言っている父親に感謝しなくもない。なにせ産んでくれたのは両親だ。いや母親か。ならば母親に感謝すべきか。そのほうが真墨にとっては嫌な気分にならなくて済んだ。

 

「(……なーんでだろ。本当、気付いたら好きだったし。まあ最初は、その? 露骨な欲望でしたけど……ああ、うん。仕方ないや。こればっかりは)」

 

 そも、恋だの愛だのを理屈で考えることが馬鹿らしい。くすりと笑って、目の前で横になる玄斗の顔を見る。とても綺麗な寝顔。子供みたいにふにゃりと笑って、とんでもなく緊張を解いた自然体。――ドクン、と魔が差した。

 

「……ね、お兄」

 

 耳元でささやきかける。反応はない。眠っているのだろう。だからいまがチャンスだと、真墨は心底から思った。

 

「だいすき。……ずっと、一緒に居てね」

 

 ――そっと、その鼻先に口付ける。玄斗はどこかむず痒そうに身体をよじって、それからすうすうと小さな寝息を続かせた。起きてはこない。どこまでも幼い少年みたいだ。ぐっすりと、まだまだ足りないとばかりに眠り続けている。

 

「……そういう可愛いところもすき。あたし、お兄のことぜんぶすき。だから、ね……」

 

 言おうかどうか迷って、構うものかと口を開いた。だって相手は眠っている。ならばなにを我慢しようというのか。所詮ただの自己満足。ただ自分だけが良い気分になればいい。そんな押し付けだった。

 

「たくさん傷付いてよ。折れてもいいよ。むしろ、そのほうがあたしは嬉しいんだから。でも、お兄は嫌がるんだろうね。それも分かってる。だから、いっぱい傷付いて、いっぱい悩んで、お兄の答え、見つけるといいよ。あたしはその隙を、ずっと狙ってるから」

 

 あんがいすんなりと言葉は出てきた。そっと玄斗の頭を撫でると、やっぱりどこか不機嫌そうに身体を揺らす。それにもう一度微笑んで、薄いブランケットをかけながらそっと部屋を出る。残されたのは彼ひとり。眠っているはずの彼はすうと……息を吸って、細く、細く、慎重に吐ききった。

 

「……これは、特別だからね。真墨……」

 

 きゅっとタオルを握って、触れたはずの鼻先(・・)まで持っていく。ほんのりと残った熱がなんともくすぐったい。以前までの彼にとってはどうであれ、いまの玄斗からしてみればキスをされるという意味を勘違うほど脳みそが死んでもいない。そも思い違うもなにもないのは、きちんと台詞(・・)を聞いていれば分かる話だった。なので、

 

「……寝てるときに言うのは、反則だ……」

 

 あんな優しい言葉をかけてくる妹に、ほんのすこしだけ、心を震わせてしまったのである。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 五時になると、珍しく父親が帰ってきた。

 

「ただいま」

「あ、お帰り。……早いね?」

「……まあな。これからはすこし、早く帰ろうと思う」

「へえ……」

「え、なにー? お父さん早く帰ってくんの? え? なんの心変わり?」

 

 ソファーでスナック菓子を食べていた真墨が、振り返りながらリビングへ入ってきた父へ一太刀浴びせた。いつもなら「ふぐうっ」とか言って心臓をおさえるのだが、今日はそうでもないらしい。ちらり、とこちらを見て恥ずかしそうに頬をかく。

 

「……まあ、色々とな」

 

 それで、ああ、と玄斗は気付いてしまった。

 

「別に、気を遣わなくてもいいのに」

「そんなもの遣うか。……俺がしたいからするんだ」

「……そっか」

 

 くすりと笑うと、父親もつられるように笑った。それを真墨が不思議そうな表情で見つめている。まさか気付くわけもない。正真正銘、男ふたり同士の秘密の言葉だった。

 

「え? なに? なんなのあんたら」

「真墨には分かるまいな。俺と玄斗のことだ」

「そうだね。ぼくとお父さんのこと」

「ふはっ……らしいぞ?」

「なーにがらしいぞ? ですか。調子のんなくそ親父」

 

 咄嗟に父親が胸をおさえていた。効かないフリをしていても体は正直らしい。いくら反抗期とはいえ玄斗にとってもちょっと複雑な言葉のナイフである。あの父親があんな少女の声でズタズタに切り裂かれていると思うと――――まあ、ちょっと、正直面白かった。

 

「ふふふ……そう言っていられるのもいまのうちだ。――言っておくが、玄斗はおまえにやらんからな」

「――――なん、だと……?」

「え?」

 

 急に真面目な声を出したと思ったら、内容がとてつもなく意味不明だった。玄斗は反応を示した真墨と父親を交互に見る。さきほどの妹とは真逆な状況が完成していた。

 

「おいそれはどういうことだ」

「俺がなにも知らないと思っていたなら大間違いだ。この前までならまあそれでも幸せならオーケーかとも思っていたが……もしそうなら駄目だな。家族会議だ。いいかお兄ちゃんは絶対お前にやらんぞ」

「ふざけんなそういうのはあたしの相手に対して使うもんでしょーがっ!?」

「いや、おまえは正直どこに出しても恥ずかしくない子だと思っている」

「ならお兄ちゃんでもいいじゃん!」

「駄目だ。兄は駄目だ。おまえ程度では玄斗は任せられん。家族会議だ」

「ふっざけんなよ!?」

 

 がばっとソファーから真墨が立ち上がる。父親は頑として首をふっていた。この間にはきっとマリアナ海溝ほどのミゾが出来ている。その原因が自分にあるあたり、玄斗はちょっと理解したくなかった。というか半ば理解を放棄している。なるほどこれが因果応報……なんて思ったりもした。たぶん因果は関係ないが。

 

「玄斗にはもっと普通の幸せを体感してもらいたい。いきなり兄妹の禁断の恋とか……いやでも零無が……玄斗。正直そのへんどうだ?」

「お兄っ!」

 

 真墨がキラキラとした目を向けてくる。彼はそれにこくりとうなずいた。ぱあっと真墨が花開くような笑顔を向けてくる。

 

「……僕はあんまり、そういうのは賛成じゃないかな」

 

 そして容赦なく絶望へ叩き落としていた。

 

「お兄っ!?」

「ほら見たコトか。駄目だな真墨。いいか、玄斗はもっと似合う相手を見つけるぞ。……まあ俺の面接を抜けなければ結婚など許さんが」

「うっわあなんだこの親父……息子の結婚に口出すとかマジかよこの親父……」

「ちなみにメシが不味かったり掃除が適当だったらいびり倒す」

「小姑か!」

 

 みみっちいなと愚痴る真墨に、テーブルへ座った父親がドンと威厳あるように構える。具体的には落ちこんだときにもしていた某総司令のポーズだった。それ好きなのかな、と玄斗が考えたのも束の間、彼は重苦しい声音をリビングに響かせる。

 

「――家族会議だ。着け、まずはそれからだろう」

「……あの、父さん……?」

「着け、玄斗。俺はおまえと妹の関係など認めん」

「……ああ、いいよ。まずはその腐った思想をぶち殺す――!」

「真墨……!?」

 

 対面に着席する真墨と、さも自然といった様子で父親の横へ座る母。残された玄斗の席は真墨の隣しかない。なぜだか家族全員が好戦的なオーラを出している以上、引くわけにもいかなかった。そりゃあ引いたら酷くなるのが目に見えているからである。

 

「議題は決まっているな。それで言ってやろう。――出直せ小娘。おまえが我が子と結ばれようなどと、十六年早い」

「愛に歳月なんて関係ないんだっつーの。そんなんも分かんないかなあうちの父親は」

「玄斗ー? 今日のお夕飯何が食べたいー?」

「……カレー」

「分かったー。じゃあ牛丼ね……」

「なんで聞いたの母さん……?」

 

 形はどうあれ、家族団らんの日常。それに仄かな幸せを感じながら、玄斗はこの場をしずめるために動くことを決意する。どうせ自分がまいたタネだ。せめてすこしでも和らげるのがするべきことだろうと、思いながら。





書いてていちばん早く感じた章でした。あと二話です。とりあえずやりたいことやれたのであとはほんのり歩いて終わりですかね……






あああああああああオリ主系転生者散々いじめ抜いて絶望の淵に叩き落としながら殺してやりてええええええええ!!!(発作)

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