ギャルゲーの友人キャラに転生したら主人公が女だった。   作:4kibou

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キャパ超えると大体こんな感じ。透明くんだった経験持ってるコイツでこれなのでまあ相当だよという。


ああ、なんて懐かしい――

 

 とんでもなく気分が悪い。翌日、ベッドから起き上がった玄斗は、まずそんな自分の状態を把握した。まるで頭のなかに鉛でも流されたみたいな鈍痛。全身を走る血管が猛毒なんじゃないかという刺激。おまけに、ふらふらしてまともに歩けそうもない。

 

「(いや……これは、酷すぎるぞ……!)」

 

 かつてならあり得ないほどの体調不良は、それでも明透零無と比べれば軽症とも言えた。体はブレるし、頭もぼんやりとしているが、それでも立てないほどではない。気を付けていれば痛みが全身をついても歩ける。それは偏に、玄斗自身の慣れの問題だ。……他人がそんな状況でどうなるかなんて、すこし考えれば分かるところだった。

 

「(不便だ……やっぱり、健康が一番かな……)」

 

 思いながら、制服に着替えて部屋を出る。壁に手を付けば倒れることもなかった。この体になってから経験した貧血だのなんだのもある。おそらくは肉体こそ同じでも、その作り方が違っていた。よく食べて、よく動いて、よく寝る。単純だがそのくり返しをしていた玄斗は、人並み以上にまともな体ができていた。けれどもこの身体はそうでもないらしい。そこまで食べないがかなり動いて、それでいて睡眠も削っていたはずだ。

 

「(ああ、もう……体は本当、資本なんだぞ……っ、僕……!)」

 

 頭が痛い。手足が痛い。全身が痛い。内側が痛い。自分の体がそうじゃないみたいな違和感に苛まれている。けれど、動けなくなるほどでもない。なにせ、()()()()なら慣れたもの。玄斗にとって、体調が万全でない状態で動くのはあまりにも簡単だ。

 

「おはよう……」

「おお、はっやいねーお兄。……っと、今日はまた一段と顔色悪いねー……」

「うん……最悪だ……」

「……なんか、ここ最近多くない? 前のお兄、めったに体調崩さなかったのに。メンタルはよくボコボコにされてきてたけど」

「そうだね……」

 

 リビングに足を踏み入れて、真墨と言葉を交わしながらテーブルまで歩いていく。一歩進むたびに足が悲鳴をあげた。こんなにも酷いのは初めてだ。大抵、たしかに弱くなったと思う身体だが、それでもわりと酷くはないもので――

 

「(あっ)」

 

 考え事をしながら椅子に手をかけようとして、空気を掴んだ。ふわっという浮遊感が上半身を襲う。完全に油断した。受け身も取れないまま、ぐらりと傾いた体がするりと落ちていって。がったーん! と凄まじい音をたてながら玄斗は崩れ落ちた。

 

「うおっ!? 大丈夫かお兄!?」

「……うん……大丈夫。大丈夫……」

「いや血! 血出てるから! うわあもうなにやってんの! ちょっと待って救急箱持ってくるからっ」

「いいよ、自分で……」

「うっさい動くな! 大人しくしてろ!?」

「……ごめん……」

 

 どたどたと駆けていく真墨に謝って、ひとつ息を吐いた。まったくままならない。軽症に感じてはいるが、それこそ一般的に見るなら重症だ。そんなことにも気が付かなかった。わりと、十坂玄斗の怪我に対する考えは致命的にずれている。――ならば、なにかのためにここまで体を傷付けることができたのだろうか。

 

「(……ご飯も食べないで、()()()真似して、会長職だのなんだので動き回って……なに考えてるんだ、俺は。生き急ぐにしても、ほどが――)」

 

 不意に、喉の奥から這い上がってきた。げほっ、と体をびくつかせながら咳きこむ。遅れて、なんとも言えない味が口内に広がってきた。度重なる自傷行為。度を超えた日々の行動。すくなすぎるぐらいの食事。それらが改善されたのは、真実玄斗が変わってからの一月足らずだ。ならば、すでに終わっていることで。

 

「(……おお……! 久々に吐血した……! まじか! 凄いな俺! 完全に明透零無だ……! 懐かしいなあ……)」

 

 口元をぬぐった手を見て、ちょっとテンションが上がった。健康になってからはそんなコトも無かったせいで、本当に十何年ぶりの吐血だった。だからといってハイテンションになるのは、まあ、出来上がった玄斗特有のモノだろうが。

 

「(とか言ってる場合じゃないよ……うわ、もう、どうしよう……黒いマスクとかしていけば、血が飛んでもばれないか……?)」

「お兄救急箱持ってき――ってえぇ!? 血吐いてる!? うそ! お兄の朝はコーヒーだよ!? トマトジュースじゃないよ!?」

「ごめん真墨……ハンカチ持ってきて」

「声かっすかすじゃねえか! まじで大丈夫かお兄!? もう休もう! 学校休もう! あたしも休む! 看病するわこれ看病するしかねえわ!」

「いや真墨はちゃんと……けふっ」

「うわーーー!!??」

 

 二度目の吐血に妹が盛大な反応を返してくる。そう言えば昔は特技がこれだったな、と思い出して玄斗は苦笑した。

 

「いやなに笑ってんだ! もう病院! 病院行こう! ええと保険証と、あとは……!」

「大丈夫だから。いいから、平気だから。……病院っていうのは、体が動かなくなってやっと行くものだよ?」

「馬鹿か!?」

「まあ今のは冗談にしても。わりとそうなるまでは結構なんとかなる。ほら、この、ぐらい――」

 

 と、玄斗はどうにか体を動かして立ち上がる。せり上がってくるような違和感は否めないが、血を吐いたところで人間は意外となんとかなるものだ。すぐにばたんきゅーと逝くわけではない。言ってしまえばアラートみたいなもので、これはまずいよと体が警告しているのである。手遅れなコトさえ分かっていればなんてことはない現象だ。

 

「……ね、なんてことも……ないだろう?」

「いや生まれたての子鹿みたいになってるじゃん。かわいいかよ。大人しく座ってろ」

「平気、へっちゃら、怖くない。大丈夫大丈夫……」

「……ていっ」

「あっ」

 

 スパンッ、と容赦なく足を払われて玄斗の体は宙に浮いた。そのままふわり、と横抱きに受け止められる。体勢的に逆ではないかと思わなくもないポーズだった。猫のように体を丸めた玄斗が、真墨の腕のなかでおさまっている。

 

「よーしよし。お兄は今日一日ベッドでおねんねしようね。無理したらぶっ飛ばすから」

「……でも」

「口答えするならガムテ貼るよ?」

「いや病人……」

「はい病人って自分で認めましたねー? 良い子ですねー。うん。良い子ちゃんだからさっさと寝ましょうねー」

「しまった……っ!」

 

 真墨に抱えられたまま、玄斗は自分の部屋まで連れて行かれる。悔しいことにこの体勢ではなにもできない。暴れ回れば逃げられるだろうが、さすがに真墨へ危害を加えるのはお兄ちゃん的にノーだった。ので、大人しく借りてきた猫状態で運ばれるしかなくなる。

 

「お兄軽いねー。前はもっとあったよ?」

「……だいぶ、弱いみたい。だから、こうなってるのかも」

「そか。じゃあ無理は駄目だね。お兄が元気なら、あたしも容赦しないんだけどなー」

「……容赦して」

「おっけ。じゃ、ゆっくりしてなよ。お昼はおかゆ作るから。欲しいものとかある? お水?」

「……ご飯がいっぱい食べたい……」

「いや食欲はあるんだ……流石だなおい」

 

 そりゃあそうである。この体の持ち主ならまだしも、玄斗からしてみれば小食なんてのがありえない。ご飯は美味しいのでいっぱい食べるべきだ。体調を崩していても食欲がなくなるというコトはあまりない。もしかすると健康の秘訣はそこだろうか、と考える玄斗だった。

 

「わかった。用意してくる。リクエストあったら聞くけど」

「……最低でも」

「うん」

「五品……」

「ええ…………、」

 

 いつもより食うじゃねえか、と真墨は冷めた目で兄を見た。体はガタガタなのにその部分だけに関しては元気いっぱいである。こう見えてあんがい本質が男の子しているのは玄斗を知る人しか知らない事実だった。

 

「――ま、いっぱい食べる君が好きってね。あたしは元気なお兄が好きですよー? なんで、ちゃんと休んでしっかりするように」

「うん……そうだね。真墨に嫌われたくないから、そうする」

「うんうん。ついでにあたしのことも好きになってねー」

「もとからそうだけど」

「意味が違うんだよこの野郎」

 

 軽口を交わし合いながら、そっと自室のベッドにおろされる。今日はなんとも良くない日だ。たまたまにせよ妹に心配をかけるのは申し訳ないと、玄斗はゆったり瞼を閉じた。我慢していた疲れがどばっと出て一気に襲ってくる。――そのまま、沈むように眠りに落ちた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 四月二十一日 くもり

 

 今回も長くないらしい。まあ気にするコトでもないので、そこはなるようになる。二度目なのだから気落ちもしていないのかもしれない。意外と、慣れっていうのは良いものだな。

 

 






なんかハッピーエンド至上主義者自称してるくせに幸せなルート書いたら正気を疑われる作者がいるそうですよ。酷いものですね(目逸らし)





ボロッボロの体は過去のことだけだと思った? 残念取り返しがつかないよ! ということでした。これでも結構“俺“主人公に優しくしてるよ本当だよ。初期案が欠損キャラだったからすごいまともだよ良かったね!


>吐血で興奮する玄斗
■■■■のキャラ紹介をどこかに置いているはずなので見てもらえれば分かるアレ。

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