機械仕掛けの半神 作:覇王樹
部活とか勉強とかとか色々あって気づけば一話目投稿から結構な日数が、、、時間からは気を付けますが基本的に作者の気分次第で投稿するのでご了承下さいな。それと言い忘れていたことが。これ原作より6年程前の話です。
耳の近くに聞こえるゴソゴソと曇った音に久しぶりの意識を取り戻した。しかし瞼は重い。それに背中を包む初めての感触。それは冷たい石の感触でも鞭の感触でもない、まるで分厚過ぎる衣服の様な、、。背中にあるものが何なのか考えているうちに瞼は軽くなってきた。そしてゆっくりと瞼を開いた。
すると視界に映る知らない光景。これは天井、だが自分が見慣れた馬小屋の天井でも牢の天井でもない。
「ここは?」
「ん?すまない、起こしてしまったようだな」
耳元で聞こえる落ち着いた女性の声。
「あなたは?新しいご主人様ですか?」
少年の台詞に少し複雑な表情を浮かべた目の前の女性。女性は少年の首元の焼印や手首や足首についた鎖の跡、背中の鞭による傷痕から彼が奴隷だったと推測していたがそれが今の少年の台詞で真実へと変わった。
「すまない。私は新しいご主人様ではないし君の主人はもういない。これから君は自由になる」
「私はリヴェリア。リヴェリア・リヨス・アールヴ。よければ君の名を教えてほしい」
「僕に、名前はないです。好きなのように呼んで下さい」
「そうか。それなら君に名前をつけなければな。どんな名前がいいか?」
「名前、ですか?そんなもの、僕には、、、」
「これから君は自由になって奴隷じゃなくなるって言っただろう?それなら名前は必要だ。しかし直ぐに名前を決めると言うのも難しいか。希望があればいつでも言ってくれ。私も考えておこう」
その時少年は何かを思い出して焦ったように身体を覆う毛布をめくり自分の腕を見た。そこにあるのは肘から先のない両腕。
再び複雑な表情を浮かべる女性。
「君の腕だが今腕の良い職人に頼んで急ぎで義手を作ってもらっている。もし落とされた腕が有ればつけることは出来たかもしれず、団員達が辺りをよく探したのだが見つけられなかった。すまない」
そう言って頭を下げるリヴェリア。
「いえ、、僕は腕を切り落とされてから走って逃げたのでないのは当たり前です。こんなに手間とお金をかけていただいて、、すみません」
そして沈黙が訪れる。しかしその沈黙をリヴェリアが破った。
「そういえば君は二振りの極東風の剣、刀?といったか。それみたいな武器を持っていたが戦えるのか?」
「はい。僕の役目は戦争が起こった時の傭兵、若しくは護衛等ですので」
戦闘用の奴隷。それは物心ついた時から武器に触れ、徹底的に戦いを仕込まれるから下級冒険者くらいなら軽く凌いでしまうほど強いという。
「そうか。なら団長と主神から君にと預かった提案がある」
「?」
「もし良ければこのファミリアに入団しないか?」
「入団、、、?」
「ああ。このファミリアに入団してここで生活しながら冒険者として暮らす。悪くないだろう?もし行くあてがあるなら無理強いはしないが。いつもなら団員の一人と模擬戦を行なって実力を把握してから面接をして最終的に入団可能かどうかを決めるのだが、君はある程度戦えるとみなして人柄においても問題なしとして試験を通過したことにしよう。ただ少しこのファミリアの主神と団長と話してもらうが」
行くあてのない少年は諦めて入団したいと素直に頷いた。するとリヴェリアは団長と主神を呼んでくると言って席を外した。
改めて見回してみると設備が整った場所だ。見知らぬ怪我人にも提供できる数のベットと部屋があり部屋には箪笥やランプなど必要なものが全て揃っている。そして木の箪笥に掛けられている見慣れた武器を見つけた。あの時、あの戦いで二振りとも落としたと思っていたがどういうわけかそれは自分の腰の鞘に差さっていたらしい。装飾は極めて少なくただ斬ることだけを目的としたその刃は寧ろ装飾が有るものよりも綺麗に見えてくる。
そうして部屋を眺めているうちに部屋の扉が開いた。入ってきたのはリヴェリアと赤髪で糸目の女性、金髪の小人族の男性だった。
糸目の女性と金髪の男性は僕に近付いて笑みを浮かべた。
「やぁ。僕はフィン・ディムナ。このファミリアの団長さ。よろしく」
「ウチはロキ。このファミリアの主神や。よろしくな」
「よろしくお願いします」
初対面の二人との軽い挨拶が終わると二人は少年に向いて椅子に座り話しかけた。
「怪我の具合はどうだい?最初は失血が酷くて身体も冷たかったから正直駄目かと思ったけどこうして話せるまで回復できたのは本当に良かったよ。取り敢えず君について少し教えてほしい」
「僕について、ですか?」
「せやな。何歳だとかどこ出身だとかそういうのを言ってくれへんか」
「名前はありません。年齢は、分かりません。出身地もわかりません。特技は戦闘全般です。あと少しだけ医学を学んでいたので怪我の治療等は出来ます。これでいいでしょうか」
「ああ。大丈夫だよ」
フィンは羊皮紙に羽のペンでメモをしていく。そして次の質問を投げた。
「ファミリアに入ったらしたいこととかはあるかい?ざっくりしたものでもいいよ」
少年は考える。なにしろファミリアの入団を決めたのは今さっきだ。それも確かな意思が有ったわけでもなく。
「すみません。まだありません」
「まぁ仕方ないわな」
ロキからのフォローを受けてフィンは苦笑いする。そして最後にと言いながら質問を投げた。
「君はこれから自由の身になる。といっても他の人と同じになるということだけどね。どう生きていきたい?」
「それも、僕には分かりません。まだ、自由を得た実感すらありませんから。ただ今までの経験を使って自分に出来ることをします」
「うん。良いね」
フィンは羊皮紙に書き終えると立ち上がって、優しく肩を叩いた。
「ようこそ。ロキ・ファミリアへ」
「これは早く名前をつけなければな」
少年はフィン達に向かって頭を深く下げる。それは極東の国でみた忠誠の合図らしい。
「これから丁度夕飯の時間だ。君も来てくれ。新入団者ということで簡単な自己紹介を頼む」
「はい」
「それとその長い髪だがずっとおろしっぱなしというのも何処か引っ掛けてしまいそうだし、私が纏めてやろう」
ガヤガヤと賑やかなロキ・ファミリアの食堂の扉が開く。後ろで一つに太く編まれた長い白髪がその少年の歩く振動で揺れる。150少しの身長にその可愛らしい顔立ちと花のような匂いがする綺麗な髪がそれの美しさを際立てている。
「アイツは誰だ?」
「この間の腕のない子でしょ?リヴェリアがなんか入団させるかもっていってたし」
「うそー?うわー綺麗ー」
狼人の青年とアマゾネスの少女達がゆっくりと前へと歩くそれを見てそう溢す。
演台へと向かう少年。その姿を全ての団員がしっかりと観ていた。