機械仕掛けの半神 作:覇王樹
少年がロキファミリアに入団して5日が経った日のことだった。少年は入団したら直ぐにダンジョンへ行けると言うわけではなく自分の腕の到着を待ちながらリヴェリアと勉強漬けの日々が続いた。その日も丁度リヴェリアと勉強をしていると図書室の扉が開いた。
「おーい、リヴェリアいるー?それとシロもいるー?」
声を抑えつつリヴェリアと少年を呼ぶ声。全身が白いからシロ。そう決まった仮の名前を呼ばれ、シロとリヴェリアは声の方向を見た。
「ティオナか。どうしたんだ?」
「お客さんが来てるよ?灰色の髪のシロよりちょっと歳上くらいのお兄さんのと丸刈りのおじさん?スミスさん?って人」
スミスという名前を聞いてリヴェリアは心当たりがあるようで、少年の勉強の教科書を閉じた。
「私が君の義手を頼んだ方だな。一週間程で出来上がると言ってたから届けに来てくれたんだろう。行くぞ」
頷いたシロは立ち上がってリヴェリアの後ろを歩く。
「こちらが義手になります。私が作製しました。沢山の細かな部品により本物の腕や手と同様の動きが出来ます。また、お身体の成長に合わせて義手も長くするための部品ももう作っていますのでお好きな時に工房までお越し頂ければ交換致します。勿論、お代金は不要です」
灰色の青年がシロの顔を見ながらそういい、金属の箱に入った義手を取り出した。
「申し遅れました、私エウリピデス・ゲウス・ブラキウムと申します」
エウリピデスは礼儀正しくそう名乗ると机の上に出した自分の上腕に銀の腕を取り付け始めた。腕は驚く程に直ぐに着き、久しぶりの重さに少し驚く。
「それではまず動かしてみて下さい。動かし方は特にありません。感覚です」
説明になっていないそれにシロは首を傾げた。しかし言う通りに腕がついていた時と同じようになにも意識せずに腕を動かすと義手は自分の感覚に倣って動いた。
「動いた、、、」
そう呟くシロ。驚いたリヴェリアがエウリピデスに感覚で動く理由を尋ねたがそれは秘密らしい。
「お代はそうですね。1000ヴァリス頂きましょうか」
明らかに格安すぎる価格に再度驚く。
「1000ヴァリス下さい。それだけいただけると嬉しいです。あとはいりません」
いらないと言われてしまえばそれ以上を渡すことも出来ない。リヴェリアがエウリピデスに1000ヴァリスを支払いスミスとエウリピデスと握手をした。
「感謝する」
礼をするリヴェリアと同じくシロも礼をする。そしてホームを出て行く2人を見送ったシロは、自分の剣を取り鞘を腰に差した。
「リヴェリア、動かしてみたい」
「ああ。そうだな。君の実力もみたい。これから模擬戦をしないか?」
リヴェリアの提案にシロは興味がある様子で目を向けた。その様子に微笑みを浮かべたリヴェリアがシロの頭を撫でた。
ホームの中庭でシロは腰の錆び付いた鉛色の鞘を輝く銀の手で撫でる。シロの目の前には装備をした沢山の下級冒険者。リヴェリアが模擬戦に参加する人を募ったら思ったより集まってしまったらしく結果この模擬戦自体が多対一になってしまった。しかしどれだけの人数を倒したかという明確な数字として強さが分かるからいいのだろう。審判はリヴェリア。中庭の様子を参加していない冒険者やロキやフィンが見守っている。
「それでは全員用意!!」
リヴェリアの声で各々が武器を構える。シロも鉛色の大小の鞘から刃を引き抜いた。
「あれは、、、相当な業物だな」
フィンが遠くからでも分かるほどのオーラを放つその武器を見つめる。
「第一級武器に劣らないくらいか」
華やかな装飾はない。ただ斬るためだけにあるその二振り。しかしその白銀の刃がどんな装飾よりも美しかった。
「始め!!」
再び響くリヴェリアの声。それと同時に50の下級冒険者は焦り出した。
「消えた?」
嘘や冗談とは違う。確かに目の前から白い少年は消えたのだ。震える手で剣を握りしめる冒険者達に聞こえる悲鳴。それは丁度真後ろから聞こえていた。
振り返ると気絶している弓使いと魔法使い。
「しまった!!」
弓使いと魔法使いが軒並みやられては作戦が成り立たない。ざわつく中庭。少年が消えたのはなにか魔法があるわけでもない。ただ、疾いのだ。
「弓使いと魔法使いは前衛に近寄れ!!」
残った弓使い魔法使いは中庭の中央部に集まり、それを包み込むように前衛の冒険者が当たりを見回す。
「どこにいやがる!!お前ら瞬きはするなよ!一瞬の隙を見せるな!」
「隠れてはない。ずっと近くにいたさ」
耳元で聞こえる冷たい声。恐いほど怖いほど美しい声。叫びを必死に堪えた彼は目の前をみる。つい一瞬前は耳元で声が聞こえたはずなのに白い少年は自分の目の前にいた。
「弓使い!蜂の巣にしてやれ!」
弓使い達はシロに正対する前衛達の後方から弦を引き絞り、シロに狙いをつけ矢を放った。しかしそれがシロの身体に触れる事はなく、銀の刃が矢を切り落とした。
「馬鹿な!くそっ!前衛共!攻めるぞ!魔法使いは援護だ!」
だが前衛達が動き出す前にそれは動き出した。先ずは厄介な盾使いと槍使いから。刃を振るって倒す。斬る事は出来ないから逆さにした刃で、確実に倒せるように頭を狙って。自分を目掛けて飛んでくる火球を避けながら数を減らしていく。
そこにいるのは明らかに人ではない。圧倒的な数の冒険者を前に二つの刃を振るって倒すその姿はまるで鬼だ。
それからほんの少ししたら、あれほどの数の冒険者は倒れ、地面には沢山の武器が落ちている。そして今、最後の一人が倒れた。その場に立ち尽くすシロ。多くの観客がいるはずなのにそこは静まり返っていた。その戦い方はひどく残忍だったのにみんな美しいと感じてしまったのだ。誰か一人が拍手をし始めた。それに続いて一人、二人と拍手する人は増え、最後は中庭を拍手が覆っていた。
その夜、シロはロキに呼ばれて主神の部屋へと向かっていた。
ノックをするシロ、すると扉は直ぐに開いた。
「おー。待ったったで。ほら入りぃ」
礼をしてシロはロキの部屋の中へ入る。
「腕もゲットしたことやし恩恵を刻もうとおもてな。準備があるから待っとる間上だけ脱いどき」
言われた通りに上着を脱ぐ。暫くしてロキが準備を終えたといい、言われる通りにベッドにうつ伏せになった。その上にロキが乗る。
ロキの目の前にある傷だらけの背中にロキは顔を歪めながら背中に血を出した指を当てた。しかし、その指がいきなり弾かれた。
「は?」
驚くロキ。そしてシロの背中が赤黒く光った。ロキはその背中に恐る恐る指を近づける。全身に感じる圧。そして指先から垂れた血が背中に吸い込まれていった。血を受けて更に光りを強くして、眩い光を放ってそれは消えた。
驚きながらシロの背中を確認するロキ。しかしそこにはなんの変哲もないステータスが書かれていた。スキル魔法なしのオールIの0。ロキはしばらく背中を観察したがなんの異変も探せず遂には諦めてシロを帰したのだった。