機械仕掛けの半神   作:覇王樹

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心得る

 薄暗い部屋でロキは考える。あの時感じた指を弾かれる感覚と身体を押さえつけるような重圧。あれはなんだったのだろう。ロキはステイタスの書かれた羊皮紙を見た。やはり普通だ、、いやこれはなんだ?

 

「種族、不明、、、、?」

 

 

 

 

 

 楽器の不思議な音色に包まれる。目の前には髪の長い女性。微笑みを浮かべているのは分かったが顔は見えない。そしてその額から生えた二本の反り返った角が目に焼き付いて消えなかった。

 午前5時頃、起床時間より前シロは目覚め目を擦る。今のはなんだったんだろうか。シロは暫く考えてみるがなにも浮かばず博識なリヴェリアやフィンに聞くことにして寝台から降りて、寝癖でぼさぼさな髪のまま、部屋を出る。

 

「やぁ、やはり早いな」

 

 廊下ですれ違うリヴェリアに頷く。そしてそのまま通り過ぎようとしたがリヴェリアが腕を引いた。

 

「髪がボサボサじゃないか。整えてやるからついて来い」

 

 リヴェリアに手を引かれたまま、シロはリヴェリアの部屋の中へ入る。

 

「リヴェリア、今日なんか懐かしい景色みたいなの見えたの。あれなんていうの?」

 

「懐かしい景色?いつ見たんだ?」

 

「寝ている間、なのかな」

 

「ああ、それはな夢って言うんだ」

 

「夢?」

 

「そうだ。しかし懐かしい景色か。どこか行ったことがある大事な場所なんだろうな。どんな景色だったんだ?」

 

「思い、、出せない、、」

 

「ハハハ。夢というのはそういうものだよ」

 

そう話しているうちに髪が真っ直ぐになっていく。男子なのにこの長い髪型だがこれはこれで似合っている。実際ロキは髪を編んで整えたシロを見て鼻血を出して涎を垂らしていた。

 

「よし、髪は梳かし終わった。あとは編んでやろう」

 

 そうして髪を編もうとするとシロの両腰にあの錆びた鉛色の鞘が差さっているのが目に入った。

 

「今日は鍛錬場に行くのか?」

 

「うん」

 

「そうか。その武器、どこで手に入れたんだ?」

 

リヴェリアがそう尋ねるとシロは自分の記憶を遡るが刃に関する記憶はない。ずっと昔から自分の腰に差さっている。

 

「分からない。気づいた時にはあった」

 

「そうか」

 

リヴェリアはもう何度もシロの髪を編んでいるからか、長い髪でもすぐに綺麗に編み終えた。

 

「よし出来たぞ」

 

「ありがとう」

 

リヴェリアはほんの僅かだがシロの表情が変化したように感じた。それはシロがリヴェリアに心を許し始めている証だった。

 

 

 

 

 

 リヴェリアの部屋を出たシロは鍛錬場へと入り、そして剣を振ろうとした時だった。金髪の少女が自分の元へと寄ってきた。

 

「ねぇ。あなたはどうしてそんなに強いの?なにをしたら強くなれたの?教えて」

 

「分かりません、、、」

 

「私は強くなりたい。強くならなきゃ、いけない」

 

 そう言いながら彼女は細剣を構えた。戦おうという合図なのか構えたままこちらをじっと見てくる。シロはそれに答えるように刃を構える。持つのは一振り。そしてシロが構えると同時に少女は細剣を振るい出した。圧倒的な技量、しかしその技のどれもが力がこもり過ぎている。

 

「あなたのように戦いたい。あなたのような強さが欲しい!!」

 

シロは細剣の連撃を捌く。モンスターにも他の冒険者にも通じたその剣技が通じなかったことに焦りを覚え少女の剣技はどんどん剣技とは程遠いものへと変わっていく。

 

「違い、、、ます。それは、、、違い、、ます」

 

「違う?」

 

 シロは少女の細剣に瞬発的な衝撃を与えた。急な衝撃に少女の手は剣を握りきれず、細剣は宙を舞った。剣を飛ばしたままの形で静止するシロの腕と刃が日光を反射して光る。

 

「私、強くなるためにたくさんモンスターを倒して、沢山剣を振って、、、。」

 

シロはかける言葉が思い浮かばなくて悩む。しかしさっきの剣技が、少女の強さへの執念が違うとだけ思ったのだ。

 

「どう、言えばいいのかは分かりません」

 

思ったことを相手にぶつける。リヴェリアから教えてもらった人との会話。辿々しい言葉を紡いでいく。

 

「そんな強さを欲しがると、いつか壊れます」

 

 負けのショックで地面に座り込む少女に向けてシロは言う。

 

「正しく強くならないと、駄目です」

 

「正しく、強く?」

 

少女は首をかしげる。シロはリヴェリアのように話せないことを悔やみながら辿々しい言葉をまた紡ぐ。

 

「僕もまだ正しく強くなれてない、から、一緒に強くなろう」

 

 少女の紅い顔が自分を向く。少女の驚く程綺麗な金の目がシロの雪のような銀の目と合わさる。シロはこのファミリアに来た時に気付いていたことがある。それは目が嫌ではないことだ。この少女の目もずっと見ていられるほど綺麗だ。

 

「私、アイズっていうの。あなたはなんていうの?」

 

「好きに呼んでいい」

 

「わかった」

 

シロは刃を鞘にしまうと地面に座り込んだアイズに手を差し出した。アイズはシロの手を掴んで立ち上がる。その様子をリヴェリア達は遠くから見つめていた。

 

 

 

 

 

 食事の鐘が響き、シロは食堂の椅子に座る。いつも通り右にはリヴェリア、そしていつもと違って左にアイズ。

 

「アイズとシロが一緒にご飯食べてるー。いつ仲良くなったんだろ。いーなー。私ももっとシロとアイズと仲良くなりたいー!」

 

 ティオネに向かってそう言うティオナ。呆れたように返事をするティアナ。愉快な空間。しかしそこに不釣り合いな少年がいた。

 

「気にくわねぇ」

 

 少年が睨むのは自分と同じくらいの白い少年。そして少年は立ち上がり歩き出す。向かうは少年の所。後ろから手を上げて、頭に振り下ろした、、、はずだった。しかし振り下ろしたはずの手は銀の手に握られていた。

 

「、、、」

 

振り返らずに手を掴まれたことに驚きを隠せない少年。しかしそれ以上に憤りを感じていた。白い少年は無言で振り返らないまま掴んだ手を押し返すように離した。

 

「テメェ!!」

 

「ベート、、止めるんだ」

 

隣にいるリヴェリアがそう言ったがベートは無視して少年の座っている椅子を蹴った。しかし転びもしない。

 

「この野郎!俺と勝負しやがれ!」

 

ベートの怒号で静まり返った部屋に少年の歩き出す音だけが響いた。

 

 

 

 

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