機械仕掛けの半神 作:覇王樹
「お前、どこ行きやがる!!」
ベートは席を立って歩き出したシロを睨んで言う。シロは振り返る。思えば自分にシロが振り向いたのはこれが初めてだ。そもそも相手にされていなかったと知りベートはさらに怒る。しかしベートは振り向いたシロの顔に冷や汗をかいた。作り物のように恐ろしく冷たい顔。しかしそれ程度で竦むようなら自分は冒険者の名を二度と名乗れない。シロはまた正面を向き直り歩いていき食堂の扉を開けた。ベートは拳を握りしめてシロの後を追う。
食堂の扉を蹴って開けたベート。すると食堂を抜けた所の一本の長い廊下の向こうにこちらを見ているシロが居た。まるで自分を待っていたのかのようなシロはベートの姿をみると更に進んでいく。そしてそれをベートが追う。そうこうしているうちに本拠内でも余り人が通らない一本の長い廊下にたどり着いた。そこでシロは腰に差した鞘を抜き、壁に立てかけると拳を構えた。
「面白え!」
ベートは廊下を走り、シロに蹴りかかる。シロはベートの蹴りを避けて続く二撃目も重ねた腕で防ぐ。防がれてもベートは止まらない。俊敏な動きで得意の蹴りを浴びせていく。
「躱すしかできねぇのか!?」
ベートのその言葉に答えるようにシロは放たれた足を足首でしっかりと掴んだ。驚くベート。シロはその隙を突く。
互いの力が拮抗し両者どちらとも傷を負っていく。しかしどちらも止まらない。シロとベートは組み合い、シロはベートの頭にガンガンと頭を打ち付けた。二人の血が飛び散り、シロの白い髪を濡らした。
遂にベートはその場に倒れる。
「くっそがぁ、、、!!」
そう叫ぶベート。シロはベートと同じだけ傷を負って血を流したはずなのに両足でしっかりと立っていた。ベートの負け。ベートはその事実に更に叫ぶ。
「いつか覚えていやがれよ!絶対!絶対勝つからな!!」
倒れたままベートはそう言う。シロは倒れたベートに目を向け、声をかけた。
「なぜ、なぜそこまであなたは勝ちにこだわるのですか?」
「強くねぇと何もできねぇ。何も守れねぇ」
そう言うベート。シロは無言でベートの隣に座った。
「何も、、守れない」
弱いから奴隷に堕ちた。弱いから腕を失った。確かにそうだ。だから強くあろうとこのベートという少年はもがいている。シロの目にベートは眩しく映った。
「なぁお前、痛くねぇのか?」
考え込むシロにベートはそう言った。無数の傷を負って頭から沢山の血を流しているというのにシロは平然としている。
「痛いというものが僕は分からないんです」
痛いけど我慢して動けるというものなら痛いということは自覚できているわけだから重症ではない。しかし分からないというなら話が別だ。どれだけ痛くても分からないから自分の身体の異常を分からない。
「手、貸せ」
そう言われてシロはベートに手を差し出す。ベートはシロの銀の腕をしっかりと掴んで立ち上がった。
「っ痛ぇ。その、、な。悪かったよ。いきなり殴ってよ」
照れたようにそういうベート。シロはいきなりベートの手をつかんで上下に振った。
「な、何してんだ!?」
「リヴェリアとガレスから仲直りはこうしろと聞いたの。間違ってる?」
「ったくあのジジババは、、、」
ベートは改めて力強くシロの腕を振った。
「お前、シロ以外に呼び方ねぇのかよ。シロって仮の名前なんだろ?」
「うん。ない」
「そうか、早く決まるといいな」
壁に寄りかかりながらそう話していると廊下をリヴェリアが見た。
「二人ともそこに居たのか!」
自分達に近寄るなりリヴェリアは2人の傷跡に驚く。
「なにが有ったんだ!取り敢えず2人とも手当てするぞ!」
シロは壁の刃を腰に差してベートとリヴェリアに後ろからついていくのだった。