機械仕掛けの半神   作:覇王樹

6 / 10
冒険者

 日差しが眩しい今日のオラリオ、白亜の塔の下にシロは来ていた。腕も得て恩恵も刻んだ。武器だってある。それにベートとアイズという仲間も出来た。それならすることはもう決まっている。そう冒険だ。

 数多くの冒険者が夢を抱き飛び込んでいく迷宮。そこに入る為にリヴェリアと手続きをしに来ていた。列が消化されていき遂に順番は自分に回ってくる。次の人を呼ぶ受付嬢の声に案内されてシロとリヴェリアは窓口に向かった。

 

「冒険者登録の方はこちらの紙に記入をお願いします。ってリヴェリアさん!?」

 

「やぁエイナ。最近オラリオに来たっていうのを風の噂で聞いていたよ」

 

リヴェリアと知り合いのそのエイナという受付嬢の言う通りに紙の記入を終わらせる。

 

「名前の所、書き忘れてますよ」

 

「すみません。実はまだ名前が無いんですよ」

 

「は?」

 

リヴェリアがエイナとの間に割って入って説明をする。エイナは納得したようで取り敢えず仮名で登録すると言うことになった。

 

「それと専属アドバイザーは付けますか?リヴェリアさんもいますしロキファミリア所属ならつける必要は無いと思いますが、、、」

 

「いや。付けてくれ。こいつには色んな人と関わってほしいんだ」

 

「そうですか。わかりました」

 

そう言うとエイナはシロに向き直った。

 

「では。貴方の専属を務めさせていただきますエイナ・チュールと申します。よろしくお願いします」

 

「君が専属アドバイザーを務めてくれるのなら安心だな」

 

とリヴェリア。冒険者の心得などは腕がない期間に仕込まれ18階層リヴィラの街までのマップ及び出現モンスターとその弱点、性質を完璧に覚えていたシロは説明が必要ないと判断され装備の確認を一通りした後いよいよ冒険開始となった。

 全てを終えたシロがベートとアイズの所へ向かう。まちくたびれたような2人がシロの手を引いてダンジョンに入る様子をリヴェリアが微笑みながら静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 思っていたよりも明るいダンジョン、シロは二振りの刃を振りながら怪物を刻んでいく。ベート、アイズともにシロよりランクは上だが戦いぶりはそう違いはない。シロは初めてだからという理由で二階層までと制限をかけられている為雑魚しか相手出来ない。地に落ちた魔石を拾いながら物足りなそうな表情を浮かべるシロ。すると地面が振動した。

 振動。そして耳を劈く咆哮。アイズとベートは唐突のそれに耳を塞いだ。シロは自分達の背後に大きな気配と殺気を感じて刃を構えた。再び咆哮。それはまるで幾つかの声を乱雑に集めて無理矢理繋ぎ止めたような咆哮。心臓が圧迫される。シロ達の目の前にいるのは大きな牛頭の怪人。

 

「ミノタウロス、、、?」

 

アイズがそう呟いた。通常ダンジョン二回層にそれが現れることはない。しかしダンジョンにイレギュラーはつきものでこういう時は逃げろとリヴェリアは言っていた。教えを守ろうとしたシロは咆哮に耳をやられたアイズを抱え、辛うじて動けるベートの手を引いて駆け出そうとした時だった。目の前で崩れ落ちる岩。この時、三人の逃げ場は失われた。進めばミノタウロス。戻ることは出来ない。それなら腹を決めよう。銀の腕の接合部を今一度確認。そして刃を抜く。

 三度目の咆哮が鳴り響いた。他のモンスターとはどこか違う咆哮。耳を通りそれは脳を震わす。シロは咆哮を軽くあしらい斬りかかる。ミノタウロスはニタリと気色の悪い笑みを浮かべた。真っ直ぐに振るわれる白銀の刃。しかしミノタウロスは一向に防ぐ動作を見せない。刹那の間に刃はミノタウロスの肉を絶たんとするもそれは火花を散らしながら弾かれた。分厚い鎧の上から刃を振るった感覚。これは筋肉か。それとも他の何かか。そしてミノタウロスはシロの首を大きな手で掴んで乱暴に投げた。リヴェリアから聞いていたミノタウロスと殆ど全てが違う。そもそもその鉛色の外見から様子の違いを表していたが、刃を振るった感じなど違いだらけだ。

 首を一気に力強く掴まれ意識を失いかけたシロはすんだのところで我に返って壁で受け身を取った。そしてアイズ、ベートが立ち上がった。

 

「こいつは普通のミノタウロスじゃねぇ!変異種だ!」

 

どのように変異しているのか分からないと弱点も掴めない。取り敢えずは目の前の相手を調べないといけない。シロも2人に続いて再び駆け出して刃を振るう。やはり全身が硬質化している。それこそ鎧のように。戦斧を振り回すミノタウロスから一度距離を取る。

 

「鎧なら、、、」

 

試しにシロはミノタウロスの腕の関節部を攻撃した。すると丸太のように太い腕に刃がのめり込み硬い物質にぶつかった。

 

「関節部を狙って攻撃して!刃がが通る!」

 

いくら鎧とは言え関節部まで覆ってしまうと動けない。弱点が見えたこと、そして細かく狙える細剣を使えるアイズがいること。討伐の光明が見え始める。

 アイズは細剣でミノタウロスの関節を突き、ベートはただひたすら頭を殴って蹴る。シロは2人のサポートをしながら刃でミノタウロスの骨を断つ。三人の攻撃が漸く通じ、ミノタウロスは壁に追い込まれる。この時を待っていた。アイズの細剣は硬質化したミノタウロスの腹筋の間を割きながら壁ごと貫き、拳になけぞるミノタウロスの首をそらして露わにするベート。

 

「今だ!斬れ!」

 

駆け出すシロ。そしてミノタウロスの前で大きく手を振って飛び上がる。地面の反発を受け取ったベートの身体はバネのように跳ね上がる。そして空中で鞘に手を掛ける。後はただ無心に刃を抜けばいい。

 気付いたらシロは地面に着地していた。数秒経ってから落ちるミノタウロスの首。暫く場を沈黙が支配した。そして三人は息を吐きながら地面に座り込んだ。下手すれば死んでいたかも知れない。しかし勝った。

 まるで戦い終わるのを待っていたかのように道を塞ぐ岩が崩れて道が出来た。

 ミノタウロスだった黒い灰から出てくる大きな魔石と禍々しく黒い角。

シロはミノタウロスの突進を受けて怪我をしているアイズを抱える。

 

「、、、帰ろう」

 

「ああ」

 

みんな傷を負って掴んだ生と勝利。喜びよりも疲れが勝るが、それでもお互いに労いながら薄暗い道を歩いた。出口はもう目の前だ。明るい光が自分達を祝福するように照らした。

 

 

 




多分原作通りだと6年前にはまだエイナはギルドに就職していないんですけど関係を持たす為にエイナだけ一年早めさせていただきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。