機械仕掛けの半神 作:覇王樹
ー我こそ神の血族なり。力を我に。維持の神よー
あぁ。愛しき我が子よ。
はぁはぁと荒い息を吐きながら目覚めた。時刻はまだ朝日が昇りかけている時刻3時。夢の中に出てきた艶かしい声と不思議な一文。まるで何かの呪文のような一文。しかし思い出そうとしても思い出せない。あの艶かしい声が何を言っていたのかも思い出せない。諦めたコルは地に足を着けた。寝汗がすごい。着替えなどの諸々を持ったコルは風呂場へと静かに歩き出した。
湯船に浸かりながらコルはまた考える。あの声、聞き覚えがある。記憶を辿ってみるがしかし、まるで思い出すなと言っているかのように雷撃の如く頭痛が走った。コルの視界の半分を占める輝く物体。あぁ、またかと力なく倒れるように上を向いた。すると扉の開く音がした。
「ああ。コル。君か。しかし早いね」
コルの半分の視界に映る金髪の小人族、我が団長。
「フィン、、、。フィンも早い。訓練?」
「や、仕事で今日は徹夜なんだ。徹夜明けは少し熱めのお湯に浴びておくと一日楽になるんだ」
「仕事、、お疲れ様です」
「いやいや、やるべきことだからね。コル、眠そうだね。どうしてこんな時間に起きたんだい?」
「変な夢を見て目が覚めた」
夢と言うとフィンは何かを思い出すように考え始めた。そして口を開く。
「いつかリヴェリアからもそんなことを聞いた気がするよ。君が変な夢を見たたと」
コルは頷いた。確かに以前リヴェリアに夢について話した。
「このファミリアに入って余裕ができて、そうしたら夢を見るようになった。奴隷だった頃はそんなことを考えている暇なんて無くて戦いの為に寝る時間さえ削っていた」
フィンは何年か前のことを思い出す。オラリオなんて関係もない程遥か遠くの国同士の大きな大きな戦争。しかしそれは関係がないオラリオにまで報せが届くほど惨くて長く続いた戦争だったらしい。コルも戦ったのだろうか。兵士として痛みを感じないというのは好都合だろう。ましてやそれが戦争に使われる捨て駒の奴隷なら。
「余裕が出来たのは良いことだよ」
フィンはそう言いながらコルを見る。何かが食い込んだような傷の残る首。傷口は開きかけて今にも血が出そうだった。
「その傷はいつ出来たんだい?」
「首のはこの間ミノタウロスと戦った時。首を掴まれた時に爪が刺さった」
「そうか。コル、痛みが感じない君にとっては大変で難しいことかもしれない。けど傷が出来たら知らせて欲しい。痛くなくても痛いと言って知らせて欲しい」
「うん。分かった」
そういうとコルは立ち上がり、湯船から出た。傷跡だらけの背中が露わになる。
「先、上がる」
「うん」
フィンは余り見ないようにとコルの背中から目を逸らした。鞭の傷痕や武器による切り傷。殺さないと殺される状況に置かれ続け、戦争が終わっても尚殺戮から解放されなかった彼。恩恵なしでも格上の冒険者を淘汰し、しかもいきなり変異種のミノタウロスと数の利も有ったといえ渡り合ったということは当たり前のことなのかもしれない。その強さをなんと呼べばいいのだろう。呪いか恩恵か。湯気の向こうに消えていく彼をみながらフィンはそう思うのだった。
そしていつも通りの朝食の鐘が響く。プレートの上に載せた朝食を自分の席のテーブルへ置くと隣にアイズもプレートを置いた。
「アイズ、果物いる?」
「うん。ありがとう」
「コル。お前またアイズに食い物やってんのかよ。食わねぇと強くなれねぇぞ」
「む、、、。ベートは食べすぎ、、」
ついこの間まで独りだった三人それぞれが集まってそれは楽しそうに過ごしている。フィンとリヴェリアとガレス、そしてロキがその光景を嬉しそうに見つめている。
「コルー!なんか楽しそうだね!私も混ぜてよー!」
「おい!うっせぇぞ!糞アマゾネス!俺が今コルと喋ってんだよ」
「なんだとー!!」
「コル。食べ終わったら戦おう」
「コル。あんたも大変ね。ティオナ、うるさい」
喧騒を抜け出したコルは自分の部屋に入る。そして壁に掛けた武器を横にして置いた。
「なにするの?」
隣でアイズが興味深そうに見つめる。
「武器の手入れする」
大小二つの鞘から刃を引き抜く。
「綺麗、、、」
アイズがそう呟いた。光を受けて輝くその姿。間違いなくこの2つの武器は一級品だ。神威に似た覇気を感じてアイズは少し退けぞる。
「この武器の名前は?」
「分からない、、、」
コルが気づいた時にはこの武器を持っていた。しかし名前は知らなかった。ただ使っていけば使っていくほど刃は輝きを得て、錆びついた鞘も綺麗になっていっている気がする。
「一回振ってみていい?」
そう言ったアイズに頷く。しかしアイズは柄を握ったが、すぐに手から離した。
「どうしたの?」
「なんか身体を縛られる感じ、、、。息が出来なくなったし離そうと思ってなかったのに手から離れた」
コルは首を傾げる。アイズと同じように刃を握って振ってみたらするが異常はない。アイズは刃が発する神威のようなものが更に大きくなったように感じた。
「コル、、、。明日からまた一緒にダンジョンに行ける?」
「うん。行ける」
アイズの顔が心なしか晴れたような気がした。