機械仕掛けの半神   作:覇王樹

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激動

 それは突然の出来事だった。

 

「アイズがいない!!」

 

 コルはつい先程までアイズとダンジョンに潜っていて一緒に帰ってきた。ファミリアの門番も二人で門を通った様子を見ていた。しかしファミリア中のどこを探し回ってもアイズは見つからない。コルは不穏な空気を感じて仮面のような表情をさらに冷たくして本拠を出た。こうなったら外にいる可能性もかなり大きい。歩き出したコルの前にいるのはフィンとガレス。今宵、激戦が繰り広げられるとはこの時の三人は知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 三人が最初に向かったのはギルドだった。ダンジョンに潜っている可能性があるし、それなら直ぐに探して見つけ出さなければいけない。コルは受付に見慣れた受付嬢の姿を見つけて駆け寄って行った。

 

「あ。コルくん。どうしたの?」

 

「ねぇ、アイズがダンジョンの中に潜っていない?」

 

「ヴァレンシュタイン氏は来てないよ」

 

「そう。ありがと」

 

そして振り返って駆け出そうとしたコルの腕をエイナが掴む。

 

「待って。何が有ったの?そんなに焦って。コルくんらしくないよ?」

 

「実は、、、」

 

事情を説明するとエイナは驚きつつも納得した様子で言った。

 

「取り敢えずギルドの上の方に説明しておくね。あとアストレアファミリアにも話を通しておいて良いかしら?」

 

「アストレアファミリア?」

 

「うん。オラリオの治安を守ってるファミリアだよ」

 

「一回フィンに許可取ってく、、」

 

「アストレアファミリアの応援があるなら心強い。お願いしたいね」

 

フィンはずっと背後にいたらしい。エイナは声を上げて驚いた。

 

「う、承りました、、、」

 

「ハハハ。驚かせちゃったね」

 

そして四人はギルドを後にした。後は自分達が知っている場所に聞いていくしかない。考えるにしても材料が少なすぎる。

 

 

 

 

 

 次に向かったのはロキファミリアがよく使う酒場、豊饒の女主人だ。

四人は扉を開けて入る。中では沢山の冒険者が赤い顔をしながら酒を飲んでいる。フィンが事情を話している間、何かを頼まないわけにもいかず、コルはアイスコーヒーを頼む。その時、背後に不快な視線を感じて振り返った。視線の方向には武器を腰に差したアマゾネスがいた。

 

「イシュタルファミリアか」

 

 コルの視線の先を見てガレスが言う。

 

「イシュタルファミリア?それはどんはファミリアなの?」

 

念のために小声で話す。するとガレスは困って言葉を詰まらせながら言う。

 

「その、、なんじゃ、、、男がいい気分になれることをするファミリアじゃよ」

 

コルは首を傾げる。

 

「それって娼婦のこと?」

 

「お、、、お前知っとったのか」

 

「戦場に沢山いた」

 

ガレスはなんとも言えない表情を浮かべる。アイスコーヒーを飲み切ったコルは耳を澄ます。様々な雑音、話し声、笑い声を掻き分けてあのアマゾネス達の声を捉える。

 

「気付かれたのはもう仕方ないね」

 

「ああ。でももう準備は終わってるだろうし大丈夫じゃないかい?」

 

「フリュネのやつ。面談事増やしやがって」

 

「あの人形姫にご執心だったのは前からだけどな」

 

「今は薬で眠らせてるから大丈夫だけど起きたらどうするつもりなんだかね。前と違って奴も強くなってるんだしね」

 

人形姫。アイズのことだ。そういえば戦場では容姿の良い少女をさらって性奴隷にするのはよくあることだった。コルの脳裏に浮かぶ薬漬けにされて虚な目で笑い続ける少女達。

 

「ガレス。フリュネって、、、」

 

「イシュタルファミリアのやつじゃな。それがどうしたんじゃ?」

 

「フリュネとアイズって繋がりとか、、ある、」

 

「繋がりも何も前にアイズがフリュネのやつに殺されかけたことがあってな、、、まさかコル!?なにかわかったのか!?」

 

 コルは頷く。恐らくアイズはイシュタルファミリアにいる。薬で眠らされて。早く助けなければ。手遅れになる前に。

 丁度戻ってきたフィンとガレスにコルは事情を話す。

 

「なに!?今すぐにいくぞ」

 

「コル。よくやったね。早く行こう!」

 

 

 

 

 

 夜のオラリオを三人の風が駆け抜ける。目指すは歓楽街のイシュタルファミリアの本拠。途中で合流したベートにギルドとアストレアファミリアにアイズについて伝えるように頼んで、走る。コルは不思議な感覚に身体を動かされていた。頭の中が熱い。冷静に考えることは困難そうだ。しかし爆発的なパワーを得ている。熱い頭の中に浮かぶのはアイズの顔とフリュネとかいう名前。アイズの顔が浮かぶたびにフリュネとかいう名前の奴を殺したいと思うようになっていく。その爆発的なパワーに押されるがままに走ると気づけば歓楽街の中、イシュタルファミリアの前に着いていた。

 

「僕が行こう。ガレス、見張りを頼む。コル、君は付いて来てくれ」

 

そして扉を押す。鍵は掛かっていないようで、本拠の中には誰もいないようだった。

 

「コル。頼む」

 

「うん」

 

そう言われるとコルは靴の踵を軽く地面にぶつける。カンという音が建物の中に響く。

 

「四人。全員女。それと五人目が上からくる」

 

「ハハハ。すごいね」

 

そう言いながらフィンは上から武器を構えながら降りてきたアマゾネスの攻撃を華奢なナイフで受け止めた。

 

「来ると思ったわ」

 

「君に興味はない。フリュネとアイズの場所を言うんだ」

 

「それは言えないね」

 

 フィンとアマゾネスが会話している中、割って入るようにコルは四つの身体をアマゾネスの前に投げた。

 

「これでも言えない?」

 

本拠の中にいたアマゾネス。その全てが縄で縛られ、目隠しをされている。フィンにここからは僕に任せてというと目隠しをしたアマゾネスの首に刃を当てる。

 

「やめてぇ!私は何もしらない!」

 

一人が叫ぶと他の三人も叫ぶ。

 

「フリュネ一人と仲間三人と君自身。どっちが大事?」

 

「フリュネの居場所を言えばこの三人は解放してあげるし君には何もしない。でも言わなければ三人と君を殺す。戦争遊戯でイシュタルファミリアそのものを消すかもしれない。どうする?」

 

「っっ!糞!フリュネの居場所を吐けば良いのね」

 

「ここには居ない。歓楽街の東側にレンガの建物の中にアイツはいる」

 

「そう。ありがと」

 

 そう言うと同時にコルは目の前のアマゾネスの腹を殴った。

 

「!?!?なんっ、、で」

 

「悪く思わないで」

 

蹲るアマゾネスの手を縄で結ぶ。

 

「背後を狙われたらたまったものじゃない」

 

足も同じようにして結ぶとコルはその場を後にした。向かうは歓楽街の西側。コルとフィンは静かな怒りを携えて歩き出す。

 

 

 

 

 

 「はぁっはぁつ」

 

フリュネとは互角に戦った。しかし一瞬の気の緩みを疲れて剣が身体を掠った。掠ったくらいでは大したダメージにもならないと思って剣を構え直した時、急に脚に力が入らなくなって、気づいたらここにいた。手を鎖で縛られ、鎖は壁につけられている。全身に力が入らなくて、頭がぼーっとして身体が熱い。上手く働かない頭に浮かぶのは白い少年。

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン。やはり綺麗よ。汚したくなるほど綺麗」

 

まるでカエルの様におぞましいそいつは下卑た笑みを浮かべながら私の身体を触る。コルに会いたい。ここから連れ出してもらいたい。目の前のこいつを倒して私を助けて欲しい。

 すると突如轟音が響いた。

 

「フリュネの居場所はここか」

 

 もう聴き慣れた大好きな声。しかしその声はいつものように優しげなものではなく冷たく重い刃のような声だった。

 

「誰だ!?」

 

ぼんやりとした視界に映り込むフリュネと長くて白い髪の少年。しかし少年の額にはおぞましい突起が生えていた。聞こえるフリュネの怒声。それと同時にフリュネは手を上げ、殴りつけた、がそれがコルに当たることはなく、コルはまるで転移したかのようにフリュネの背後にいた。

 

「死ね」

 

そしてそう呟くと刃で斬りつける。鮮血が飛び散り、立ったまま後ろを振り向いたフリュネをコルは無造作に蹴飛ばして倒すと私のところへ向かってきた。

 

「待たせた」

 

 コルは刃で私の鎖を切った。

 

「歩ける?」

 

「身体に、、、、力が、、、」 

 

「そう。無理しなくていいよ」

 

コルは私の身体を抱えて歩き出す。しかし、背後からまたあの気色の悪い声が聞こえた。

 

「逃がさない」

 

「はやく死んでおけば終わったものを」 

 

「少し待っててくれ」

 

コルは私の身体を慎重に下ろすと二つの刃を抜いた。

 

「その角。そうか。お前がアイツの言ってた奴隷か」

 

フリュネの豪腕をかわす。

 

「軽い。その程度か」

 

「生意気なガキが!」

 

コルは少しずつ攻撃を加え、まるでフリュネを弄んでいるようにみえる。

 

「教えてあげよう。ロキファミリアのメンバーをさらうと言うことがどれだけの罪か。神の子に刃を向けるということがどれだけの罪か」

 

その時コルははっきりそう言った。神の子だとそう言ったのだ。

 

「この身に宿すは神の血」

 

そう言った瞬間、コルの身体の全ての血管が赤く光った。

 

「混沌を沈め、世界をを維持するもの」

 

これまでもコルには他の人と違った何かを感じていた。今はその違和感をさらに強く感じる。まるでそこに神がいるかのような。

 

「血よ目覚め

 

「我こそ神の血族なり」

 

「力を我に。維持の神よ」

 

光を纏い、炎の輪を掲げるコル。フリュネは恐れ慄きおぞましい顔を歪めている。私はその光をただ綺麗だと思った。

 

「案ずるな。殺しはしない」

 

「スダルシャナ、、チャクラ」

 

コルから放たれた大きな輪はフリュネの身体に直撃した。

 

「熱いっ熱い熱い熱い!!」

 

フリュネは火達磨になり、転がる。コルはそれに目もくれずに私のもとへ駆け寄ってきた。気づけばコルの額の突起は無くなっている。

 

「行こう。アイズ」

 

突起は無くなっていたが声は変わらない。昨日までの途切れ途切れの話し方とは違い、まるで子供が一気に成長を遂げたかのように流暢に話している。そしてその話し方に私は安心感を感じて、朦朧とした中で御伽噺の英雄のように現れたコルに助けられ抱えられている状況に少しの喜びを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて事態は収束した。コルがフリュネで戦っている最中、他のイシュタルファミリアのアマゾネス達による暴動、それに便乗した闇派閥達のせいで歓楽街は一時的に混沌に陥ったらしい。フィンとガレスがそれを鎮めたらしいが。

 今、コルは横になっているアイズの横にいる。

 

「コル。頭がぼーっとする。怖い」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

そう言いながらコルはアイズの頭を撫でる。コルは前にリヴェリアにこれをしてもらったことがあり、物凄く安心したのを覚えてる。

 

「、、、コル。一瞬に寝て」

 

予想外の提案にコルは驚いて少しだけその冷たい仮面を崩した。そしてコルは顔を紅くしながらアイズの隣に横になる。アイズはコルの胸に頭を押し付けてコルの背に腕を回した。コルの匂いがアイズを落ち着かせ、身体の焼けるような疼きを鎮めた。

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