やはり相良軍曹のいる俺の青春ラブコメはまちがっている。   作:Deetwo

3 / 6
◆超ひねくれまくりのダークヒーローと比企谷八幡と、純粋真っ直ぐの凄腕軍曹、相良宗介の心暖まる死闘? ◆総武高校を舞台にいよいよ始まるサバゲー大会。◆ご一読いただければ幸いです。


The Unstoppable Serjeant. そして彼(比企谷八幡)は彼(相良宗介)を見誤り、誰も彼を止めることができない。

「――つまり、休日の学校を利用して盛大なサバイバルゲームをやりたいと言うのだな?」

 

 職員室の自分の席で、平塚先生がトントンと煙草の葉を詰める作業をやめて確認した。

 

「はぁ……まぁ、そういうことになります……かね」

 

「君は本気で言っているのか?」

 

「こんなこと冗談で先生に言うほど、俺は命を粗末にしちゃいませんよ」

 

 こんなふざけた話、他のどの先生に言ってもあなたにだけは言いたくないです。ファーストとセカンドを飛び越えて、いきなり『最後の弾丸』が飛んできそうですから……。

 

「呆れたな、君は」

 

 睨まれるかと思いきや、意外にも微苦笑を浮かべている先生。

 

「いや、むしろ感心したというべきか」

 

「俺だってわざわざ休みの日にエアガンなんて撃ち合いたくないですよ」

 

 休日は家でだらだらTV。だらだら読書。だらだら寝る……が俺のモットーだ。

 なにを好き好んで休みの日にまで学校の連中と交わらなければならないんだよ。誰か特殊なスカウターで俺の『……トホホ感』測ってみろよ。きっとボンッ! って破裂しちゃうぜ……。

 

「でも先生の依頼をこなすにはこれしか手がないんですよ。正攻法でやっていたら成果が出る前に相良はよくて退学、悪くすれば刑務所行きです」

 

 そこで俺はチラッと横に立っている雪ノ下を見やった。

 雪ノ下はいつもの冷静な表情で俺と先生のやりとりを聞いている。

 正攻法――とは、相良に対する雪ノ下のアプローチ方法だ。

 じっくり腹を割って話し合い、お互いを理解し、説明し、信頼関係を築いていく。

 俺はその方法を否定したわけだが……不快げな様子はなかったのでとりあえずホッとして先を続ける。

 

 ちなみに職員室に来ているのは俺と雪ノ下だけだ。

 話の内容が内容だけに相良がいないのは当然だが、由比ヶ浜も来ていない。

 相良だけを部室に残すのはハブってる感が半端ないので、由比ヶ浜には残ってもらったのだ。

 なんの説明もしなかったが、空気を読むことにかけては俺に次ぐ実力を持つ由比ヶ浜はすぐに察してくれた(空気を読むことにかけて俺は過敏。由比ヶ浜は敏感。つまりは俺が上)。

 

 俺は自分がハブられても他人をハブったりはしない。

 たとえ毒蛇のハブでもハブったりはしない。うそ、冗談。あれは速効でハブく。座布団一枚。

 

 俺は小さく息を吸うと、説明を続けた。

 

「相良があそこまで過剰で過激な行動をとるのは、この学校があいつにとっての常態じゃないからです。危険な地域で育った人間がいきなり平和な国に連れてこられたら、それは平和な国で育った人間がいきなり危険な地域に連れていかれるのと同じでしょう」

 

 野生動物が保護された直後、近づくすべての存在に牙を剥くのと同じだ。

 たとえそれが自分に害意を持たない、自分を保護してくれる味方だったとしても。

 

「この学校を相良の育った国のようにすることはできませんが、あいつの周りにいる人間をそうすることは可能です」

「相良の周りにいる人間――というのは要するに君たちのことか?」

「ええ、誰かさんのお陰で成り行き上……」

 

 そして肩をすくめる。

 

「この学校に通う生徒――せめて俺と雪ノ下と由比ヶ浜が相良の『眼鏡にかなう人間』だと証明できれば、あいつも俺たちの話を聞くでしょう。正攻法はそれからです」

 

「まずは環境を整える……か。それこそ正攻法だともいえるな」

 

 平塚先生が珍しく母性的な包容力のある微笑みを浮かべた。

 妙に落ち着かない気分になって視線をそらす……。

 

「中二病でもなんでも、ああいう思い込みは否定したらダメってだけですよ。まずは相手の世界観を認めて付き合ってやることから始めないと……」

 

「『痛みを知るが故に人の痛みを知る』。存外、君はカウンセラーに向いているかしれないな」

 

 よしてください……自分の悩みだけで充分すぎるほど鬱なのに。鬱の鬱乗なんて怖ろしすぎる。

 

「しかし問題もあるぞ。そのサバイバルゲーム――君曰くロール・プレイング・ゲームだったか――で、相良に勝てるのか? もし負ければそれ見たことかと逆に彼の思い込みを強めてしまうぞ?」

 

「それは、やってみなければ……」

 

 言葉を濁した俺を、意外なことに雪ノ下が援護射撃をした。

 

「先生、比企谷くんがここまでいうからには、おそらく彼にしか思い付かない卑劣極まる策謀があるのだと思います。対テロリストのスペシャリストを自認する相良くんの相手がつとまるのは、常に予想の斜め下をいく比企谷くんでなければ無理でしょう。ここは彼を信じるべきです。とても非常に身の毛もよだつほどに激しく不本意ですが」

 

 援護しつつ、俺にもダメージを与えてくる。さすがだ雪ノ下……お前はそうでなくちゃな。

 

「『毒をもって毒を制す』――か。わかった。校長にはわたしから事情を説明し、許可を取ろう。君たちの思うようにやりたまえ」

 

「ありがとうございます」

 

 雪ノ下が頭を下げる。

 俺はもう礼をいう気力もないほどゲッソリしてしまっていた。

 

「君たちには迷惑な話だろうがどうかよろしく頼む。相良の行動は確かに困ったものだが彼にも同情すべき点は多いのだ」

 

「よろしければ、その辺りの事情をお話いただけませんか? 相良くんがこの国に馴染めるよう手助けをするにしても、わたしたちは彼について何も知りません」

 

「本来ならこれは個人情報であり、わたしにも気安く話せるものではないのだが……事情が事情だからな。わかった。話そう。しかし由比ヶ浜以外には他言無用で頼む」

 

 うなずく雪ノ下。

 平塚先生は事務机の鍵付きの引き出しを解錠すると、中からファイルを取り出してめくった。

 

「前の学校で担任をしていた先生に電話でも確認をとったが、相良がアフガンやレバノンなどの危険な紛争地域で育ってきたのは本当らしい」

 

「それってやっぱり親の仕事の関係とかでですか?」

 

 これは俺。

 商社とか、あるいは報道関係とか。そーゆーの。

 

「いや……相良の両親は彼が幼い頃にソ連領内での事故でなくなったそうだ。場所が場所だけに事故についての詳しい状況は不明だが、書類上では彼だけが生き残りその後ソビエト人の養父に引き取られたとある」

 

 いきなり言葉を失う俺と雪ノ下。

 冷戦真っ直中のこの時代、ソ連といえば悪の代名詞だ。

 そんな国で両親を亡くした揚げ句、引き取られるとは……思ってはいけないとわかってはいても浮かんでしまう『悲惨』の二文字。

 

「それからはそのソビエト人の養父とアフガンやレバノンなどで生活していたようだな。養父の仕事はいちおう報道関係となっている」

 

 いちおう……か。

 やっぱり戦場ジャーナリストとかなのだろうか。

 

「前の学校ではゴミ係をしていたらしい」

 

 あ、それはあれだ。誰も他にやる奴がいなかったので押しつけられたパターン。

 ぼっち=ゴミ係の法則。ソースは俺。

 

「生徒会にも所属していたようだな。役職は安全保障問題担当・生徒会長補佐官となっている」

 

「……なんですか、それは?」

 

 聞いたことのない生徒会の役職に雪ノ下が眉根を潜めた。一瞬ふざけているのかと思ったのだろう。

 

「前の学校の担任――神楽坂恵里先生とおっしゃるのだが、その神楽坂先生によると相良の所属していたクラスの学級委員が面倒見の良い性格で、なにかと彼の面倒を見ていたらしい。その学級委員が生徒会の副会長もやっていたらしく、生徒会長と相談のうえ相良のために特別に新たな役職を設けて彼を任命したそうだ」

 

「いちおう前の学校でも相良くんのために環境を整えてはいたのですね……」

 

 形の良い顎に手を当てて、何かを思案している様子の雪ノ下。

 書記だの会計だのではなく、わざわざ安全保障問題担当……とういう怪しげな役職を作って任命したのも、それなら相良でも理解し馴染めると判断したのだろう。

 

「彼は彼なりに熱心に職務を遂行していたようだ」

 

「その結果は推して知るべし……ですね」

 

 雪ノ下は同情のこもった嘆息を漏らした。

 相良が真面目に職務に励むほど、日々吹き飛ばされる靴箱。鳴り渡る銃声。そして逃げ惑う生徒たち。

 それはさぞ、フルメタル・パニック! な毎日だっただろう……。

 

「だが、それについては相良を弁護したくもなる事情があるのだよ――相良が前にいた学校は『都立陣代高等学校』というのだが、この校名に聞き覚えはないか?」

 

『都立陣代高等学校』だと? 確かに聞き覚えがある。最近確かに聞いた名だ。あれ、どこで聞いたんだっけ?

 喉まで出掛かっているのに思い出せない、このもどかしさ。

 しかし、思い出せたときの爽快感もまたひとしおである。

 待ってろ、すぐに思い出して一時の悦楽を味わってやる。

 

「確か3ヶ月前に修学旅行中にハイジャック事件に遭遇した学校ですよね」

 

 俺が思い出すよりも早く、雪ノ下がさらりと答えた。

 

 くっ……おのれ雪ノ下。俺のささやかな楽しみをよくも……。

 

 都立陣代高校――今年の4月。沖縄への修学旅行中にハイジャックされた揚げ句、北朝鮮に連れて行かれてしまった、とんでもなく運が悪い学校だ。

 俺も連日ニュースにかじり付いていたのでよく覚えている。学校名が出てこなかったのはたまたまだ。ほんとだよ。うそじゃないよ。

 

「相良は転入早々その事件に遭遇してしまってな。平和だ、安全だと言われていた国に来た途端未曽有のテロ事件に巻き込まれてしまったのだよ」

 

「彼は逆の意味で確信してしまったのですね……世界には安全な国などないと」

 

「神楽坂先生の話では事件以降、相良の暴走はますます激しくなったらしい。好意的に解釈するなら彼なりに学校や友人たちを守ろうと必死だったのだろうな……真面目で誠実な少年ではあるのだよ」

 

「それは……理解しているつもりです」

 

 雪ノ下は平塚先生の言葉に珍しく感慨めいた表情を浮かべていた。

 

「他に何かありませんか? なんでもいいです」

 

 雪ノ下に代わって訊ねる。

 相良についての情報は多ければ多い方ほどいい。

 

 平塚先生がファイルをめくる。

 

「趣味は釣りと読書。特技は偵察に爆破、およびAS(アーム・スレイブ)の操縦――まあ、この辺りは日本で育った少年が特技はゲームと答えるのと一緒だろう」

 

 先生はさらっと流してしまったが、何気に凄いことを聞いてしまった……。

 相良の中二病は想像していた以上に根が深い……。

 通常の中二病は空想に基づいたものだが、やつのは自らが見聞きした実体験に基づいている……。

 あの半端ない軍事オタクぶりもうなずける……。

 

 つーか、やっぱりこれって無理ゲーじゃね……。

 

「相良くんは筋金入りの中二病ね……あなたの友だちが可愛く見えるわ」

 

「誤解される言い方を重ねるのはよせ。材木座は俺の友だちじゃないし、どこからどう見ても可愛くは見えない」

 

 雪ノ下の中では、中二病=材木座義輝なのである。

 

「わたしは彼のことだとは一言もいってないけれど」

 

 ……わからいでか。

 

「比企谷、念のために聞いておくが具体的な策はあるのだろうな? 相良は手強いぞ。返り討ちにあって大掛かりなリハビリテーションがただのレクリエーションに終わっただなんて願い下げだぞ」

 

 いつもの癖で上手いこと言ったつもりか……と思ったが、平塚先生にそんなつもりはないらしい。真面目な顔で俺を見つめている。

 

「取りあえず人手を集めますよ。質には量で対抗します。戦いは数ですよ、兄貴」

「うむ! 腐った目をした比企谷にしては正論だ! 最終的に質では数の不利を覆せないのが戦術の常識だからな!」

 

 目は関係ないでしょう……っていうか変なスイッチ押しちゃったよ。俺の分まで目を輝かせてくれてありがとうございます。

 

「そんじゃ、準備もあるんでひとまずそういうことで」

 

 これ以上相良についての情報は得られそうになかったので退散することにする。

 

 背を向けた俺に、平塚先生が声を掛けた。

 

「比企谷……頼むぞ」

 

 生徒を思う教師の真剣な眼差しがそこにあった。

 

「……うっす」

 

 職員室を出ると、ふぅ……とため息を吐いた。

 部室に戻りながら、これからの計画を練る。

 

(……まずは人集めか。ったく、いきなり俺の苦手な作業じゃん。取りあえず頼みを訊いてくれそうな人間をリストアップして……)

 

「……」

 

 その時になって、ようやく雪ノ下が俺を見つめていることに気づいた。

 

「な、なに?」

「意外ね。あなたが奉仕部の依頼にこんなに熱心に動くなんて」

「別に熱心でもねえよ。相良がどうなろうと知ったことじゃねえし」

 

 そう言って再び部室に向けて歩き出す。そしてそれは本心だ。

 熱心ではない。

 相良がどうなろうと知ったことではない。

 

 ただ……。

 

「ただ……人と少し違うからって追い出しにかかるこの空気が、大嫌いなんだよ」

 

 

           ×     ×     ×           

 

 そして土曜。

 特別棟4階の奉仕部の部室に、俺たちは集まっていた。

 

 俺(比企谷八幡)

 雪ノ下雪乃

 由比ヶ浜結衣

 戸塚彩加

 比企谷小町

 葉山隼人

 材木座義輝

 

 そして、

 

 平塚静……先生。

 

 ……なに、この微妙すぎるラインナップ?

 

 戸塚まではいいとして、そこからの人選が……我ながら、どーしてこうなった?

 

「小町……なぜお前がここにいる?」

「だって、だって、小町! お兄ちゃんが命懸けで戦うのに家で震えてなんていられない! だから小町も戦うの! テヘ☆ 今の小町的にポイント高かった?」

 

 コツン、と拳でおでこを叩いて小さな舌を出す小町。

 我が妹ながら……なんというあざと可愛さ。

 

「小町的にはサバゲー? っていうの一度やってみたかんだよね。それに相良さんってどういう人なのか興味あったし」

 

 それか……目的は。

 相良……今日この学校が貴様の墓標となる。

 

「なんだか俺だけ場違いじゃないかな……」

 

 居並ぶ面々に、葉山隼人がいささか居心地悪げな様子で呟いた。

 つい先日クラスに出回ったチェーンメール騒ぎを解決した借りを返せと、半ば強要して引っ張ってきたのだ。……だって他に戦力になりそうな知り合いがいないんだもん。

 

「情けないことよの、葉山某! 男とは常に常在戦場! その心構えなくして地に着ける足なし!」

 

 ゲームシナリオライター志望のくせに重言に気づかない材木座は、もちろん弾よけの肉壁として使用する。

 

「先生……ずいぶん気合い入った格好ですね」

 

 俺は材木座から、その隣の平塚先生に視線を移した。

 

 エアガンを含むサバゲーの装備一式は、すべて相良が調達してくることになっている。

 なんでも懇意にしているサバゲー屋? がいるらしい。

 なので全員が制服で集まっている(戸塚だけジャージー)……先生を除いて。

 

 

「は、ははは……そうか? いや、ペイント弾を使用すると聞いたのでな。汚れてもいいような服できたのだよ」

 

 パンツスーツにトレードマークの白衣という、いつもの姿ではない。

 迷彩のブーニーハットに、迷彩服の上下。ワーカーウエストベルトにダンプポーチ。手にはタクティカルグローブを嵌めて、ちゃっかりマイ・エアガンまで持ってきている。

 混ぜて……ほしかったんだろうなぁ。

 可愛いなぁ……ほんともう誰かもらってやれよ。

 

「先生はてっきり審判できてくれるものだとばかり思っていました」

 

 雪ノ下が困惑を隠さない声で言った。

 

「ま、まぁよいではないか。君たちだけで相良に対抗するのは難しいと判断したうえでの参加だ。わたしはこれでもサバゲーについては少々心得があってな。た、頼りにしてくれていいぞ」

 

 シューティンググラスの下で目がキョドっている。

 

 だが確かに平塚先生の参加は非常に心強い。

 これまで戦力として数えることができたのは、雪ノ下と葉山の2人だけだからな。

 あとは……どうしてこうなった。

 

「八幡、エアガンとかは全部相良くんが持ってきてくれるんだよね?」

 

 戸塚が落ち着かない様子で話しかけてきた。

 

「ああ、そういうことになっている」

「僕、サバゲーって初めてなんだ。うまくできるかなぁ」

「ま、まぁ、大丈夫だろう。いざとなれば戸塚にピッタリの役があるし」

「僕にピッタリの役?」

 

 俺的人質役候補、その①

 なんといっても、テロリストとしてモチベーションが上がる。いろいろと妄想も膨らむ。

 小町もいいのだが、あいつの性格からして絶対におとなしくしていない。

 っていうか、人質役なんて絶対にOKしない。

 

「サガラン遅いね――ヒッキー、なにか連絡きてる?」

 

 俺的人質役候補、その②

 由比ヶ浜が俺に訊ねた。

 由比ヶ浜を人質役にする理由、フレンドリー・ファイアを避けられる。これに尽きる。

 

「連絡もなにもID交換してねえよ……」

「えっ!? うそ! それじゃいざってとき、どうやって連絡とるの?」

「どうやってと言われても……」

 

 まだ知り合って1週間も経ってないんだぞ……ID交換してなんて言えないだろ……絶対。

 

「まぁ、あたしもゆきのんも知ってるから大丈夫かぁ」

「……え? お前ら相良とID交換したの?」

 

「うん」

「ええ。当然でしょ」

 

 由比ヶ浜はまだしも雪ノ下まで……ちょっとショックを隠せない俺。

 相良、あいつ意外と行動派? いや、間違いなく行動派だけどさ。……そういう意味でも行動派だったとは。

 裏切られた気分がした……。

 

 その時、部室のドアが開いて相良が入ってきた。

 

()()()()()

 

 相良の挨拶に由比ヶ浜を除く全員が固まった。

 

「あ、サガラン、やっはろ~♪」

「うむ、やっはろー」

 

 あ、あのムッツリ顔で『やっはろー』だと……?

 こいつのっけからいいパンチ打ってくんな……。

 

「由比ヶ浜さん……あなた、また妙なことを相良くんに教えたわね」

 

『頭痛が痛い』のポーズを取る、雪ノ下。

 

「い、いやだな、ゆきのん。今流行の挨拶を教えただけで妙なことなんて教えてないよ」

 

 たはは……と笑って誤魔化す由比ヶ浜。

 どこで流行ってるんだよ。お前のあのお馬鹿な挨拶を拾ってきた捨て犬に芸を仕込むように相良に教えるな……。

 

「遅くなった。装備を調達してきた――入ってくれ、北野」

 

 そんな俺たちのやり取りを聞き流して相良が廊下に向かっていった。

 

「は~い」

 

 ガラガラと台車を押して1人の女が部室に入ってくる。

 無造作に束ねた髪。黒縁眼鏡にジーンズ姿の女子大生くらいの若い女だ。

 

「彼女は吉祥寺の専門店のインストラクターでな。前に住んでいた街で世話になったことがある」

「こんにちは。初めまして北野一美です」

 

 柔和な笑顔を浮かべて、北野と名乗る女性が頭を下げた。

 そして部室にいる全員を見渡し、怪訝そうな表情をした。

 

「……」

 

「どうした、北野?」

 

「あ、ごめん。今日はあの娘いないんだと思って」

「あの娘?」

「ほら、前に一緒に試合した髪の長い……」

 

((((((((……あの娘? 髪の長い?))))))))

 

 相良と北野さんを除く全員が、ピクッと聞き耳を立てた。

 

「いや彼女は…………今日はいない」

「そ、そうなんだ。ごめん、てっきり彼女もいるものだとばかり思ってたから……ほんとにごめん」

「…………問題ない」

 

 相良は一瞬寂しげな顔をしたが、すぐに表情を戻して北野さんに頼んだ。

 

「北野、女子の着替えを手伝ってやってくれ」

「了解」

 

(相良さんって凄いね! 年上の女の人を呼び捨てで、それが全然自然で)

(お、おう、そうだな)

 

 小町が耳元で囁く。

 どうやら相良の小町への第一印象は良いようだ。

 絶対に殺す。今日ここで殺す。

 

 つーか、なんで年上の女の人を呼び捨てにできるんだよ?

 ありえないだろう、礼儀的にも日本の風習的にも。

 しかし、その『ありえない』のが相良宗介という人間なので、これはもう思うだけ無駄というものだ。

 

「奉仕部顧問の平塚です。着替えにはとなりの教室を使ってくれて構いません」

 

 平塚先生が北野さんに申し出る。

 2人は一目でお互いを同好の士と認め合ったようだ。

 

「ありがとうございます。それじゃ女子の方は着いてきてください」

 

「平塚先生。先生はここで比企谷くんが覗きその他の破廉恥な犯罪行為を行わないように見張っていてください」

 

 雪ノ下が俺に冷たい視線を送った。

 

 おい、なんで俺限定なんだよ。

 だいたい俺に覗きなんてそんな度胸のいる行為ができるわけないだろうが。

 

 雪ノ下を先頭に、由比ヶ浜と小町が部室を出て行く。

 

「あなたも一緒に」

 

 北野さんが戸塚に微笑む。

 そして様式美のやりとりが展開される。

 

「あの僕、男の子……なんです」

「え? え? え?」

 

 まぁ、それが普通の反応だよな。

 

 女子が全員出て行くと、相良が言った。

 

「よし、俺たちの着替えるぞ」

 

 北野さんが台車で運んできた段ボールからめいめい自分のコスチュームを取り出して着替える。

 コスチュームは透明なビニール袋で梱包されていて、俺たちの名札が付けられていた。

 参加者のサイズは前もって相良に伝えてあるので問題ないはず。

 

 平塚先生はマイ・エアガンのM16を手に、部室の前を行ったり来たりの歩哨任務に就いている。

 先生、気分出し過ぎです。そんなことしなくても覗きになんていきませんよ……。

 

 相良だけは自前のコスチュームを持っているらしく、まるで『あしたのジョー』が使っているような大きなズタ袋から都市迷彩服を出して着替え始めた。

 

 相良が無造作に制服のYシャツとその下のタンクトップを脱ぎ捨てたとき、全員がギョッとその身体に釘付けになった。

 

 おめー、体脂肪率何%なんだよ!? 5%ないだろ! ぐらいに引き締まりに引き締った身体。

 それも単に引き締まってるだけでなく、全身にわたりガッチガチに鍛え上げられた筋肉群。とくに大胸筋から僧帽筋、背筋、首回りの逞しさが目立つ。もちろん腹筋はシックスパックに割れている。

 

 サッカー部でトレーニングされた身体には見慣れているはずの葉山ですら息を飲んでいた。

 

 そして筋肉と同じくらい、あるいはそれ以上に目を引くのが全身に刻まれた大小無数の傷跡だ。

 古いもの、新しいもの、とくに左の脇腹の傷は一際大きい上にまだ生々しく、ピンクの瘢瘡を残している。

 

 相良は固唾を呑んでいる俺たちの前で、テキパキと手慣れた様子で装備を身につけていく。

 

「? なんだ、まだ着替えてないのか。迷彩服そのものは普通の服と同じ要領で着替えられるはずだが」

 

 あっという間に着替えを終えた相良が振り返った。

 

「ず、ずいんぶんと似合うね、相良くん……」

 

「さ、左様、まるで『白血球さん』のようなストイックでプロフェッショナルな圧力を感じるぞ……」

 

 葉山がゴクリと唾を飲み、自分が雑菌だという自覚があるのか材木座が解る人間にしかわからない表現で後ずさる。細菌、ウィルス、出て来いや!

 

 戸塚に至っては完全にホールド・パーソン状態で、声を上げることすらできない。

 

「? 白血球が迷彩服を着るのか? 何かの暗号か、それは?」

 

 当然、相良には材木座のいうことがわからない。

 

 しかし、不覚にも俺にはわかってしまった。

 もし相良を本気で怒らせるようなことになったら、俺たちは白血球の前の雑菌のようにこいつに駆逐されてしまうのではないか……そんな細胞レベルでの怖れを抱いてしまうのだ。

 

 それほど相良には、迷彩柄の戦闘服が似合っていた。

 

「俺にしてみれば学校の制服よりもこっちの方がよほど着慣れているからな」

 

 気負うでもなく口にする言葉が逆に迫力がある。

 

「お、おう、そうか……それは何より……」

 

 って、なにが何よりなんだよ……。

 試合する前から、しかも人数の多いこっちが呑まれてどうすんだよ……。

 

「それよりも早く着替えてくれ。銃器その他のレクチャーをする時間がなくなってしまう」

 

 相良のその言葉に、ようやく金縛りが解けたように動き始める俺たち。

 

(俺はもしかして、とんでもない奴をとんでもないゲームに誘い込んでしまったんじゃ……)

 

 ギクシャクした動作で着替えながら、俺はマジでこの案件に首を突っ込んだことを後悔した……。

 

 

           ×     ×     ×           

 

 

 やがて着替えを終えた女子たちが、部室に戻ってきた。

 平塚先生と北野さんも一緒だ。

 

「「「「「……」」」」」」

 

 やはりというか、当然というか、全員の目が相良に釘付けになる。

 

「久しぶりに見たけど、相変わらず似合うわね、相良くんの迷彩服姿」

 

 ハッと我に返った北野さんが、取り繕うような笑みを浮かべた。

 

「相良さん、格好いい!」

 

 おい、小町! そっちか!? そっちなのか!

 

「す、凄い、サガラン! 馬子にも衣装だよ!」

 

 お前は相変わらずでホッとするぜ、由比ヶ浜。

 

「そ、そうね、少なくとも制服よりは似合っているわね……」

 

 雪ノ下がバツ悪げに相づちを打つ。

 少し顔が赤いのは夏の暑さのせいということにしてやろう。

 

 平塚先生に至っては、グッと拳を握りしめて『わたしの目に狂いはなかった!』的な、力の籠もった満足げな顔をしている。先生、ほんと好きなんですね、こういうの。でも手段のために目的を選ばず……は駄目ですよ。

 

 まぁ、相良を除く他の男子が似合わないことこの上ないからな……。

 唯一まともに着こなしてるように見える葉山も相良と並べばその不自然さは一目瞭然で、一言で言えば戦闘服のコスプレなのだ。

 あの葉山でさえそうなのだから、俺や材木座や戸塚などは推して知るべし。

 3人並べば、貧弱、ビヤ樽、百合の花。ヘッポコ三等兵トリオの誕生だ。戦争映画では誰1人生き残れない、序盤・中盤・終盤とそれぞれ戦場の露と消える名脇役たち。

 

 葉山的(コスプレ)な意味でいえば、女子の方がよっぽど似合っている。

 

「君たちも似合ってるね」

 

 さすが葉山。如才ない。さりげなく『似合ってる』を口にできる男。リア充。爆発しろ。

 

「えへへ、お兄ちゃん、どう?」

 

 小町が迷彩の上下にミリタリーキャップという出で立ちで、俺の前でくるりと回ってみせた。

 

「おまえ、本当にあのオヤジとお袋の子供か? 遺伝情報間違ってるだろ?」

 

 どうすればあの両親からこんな可愛い娘が生まれるだよ? 生命の神秘で片付けていいのか、これって?

 

「お兄ちゃん! 実は小町、お兄ちゃんの本当の妹じゃないの! だからお兄ちゃんと結婚だってできるんだよ!」

 

「なん……だと!?」

 

 しら~っ……。

 

「「……」」

 

 雪ノ下と由比ヶ浜が、しら~っ……とした目で見ている。

 

「……こ、小町、この話は二人きりの時にじっくりしよう」

「らじゃー」

 

「な、なにか?」

「ど、どう、ヒッキー。似合ってる……かな?」

 

 小町と同様、ミリタリーキャップに迷彩服姿の由比ヶ浜が恥ずかしげに訊ねた。

 

「お、おう」

「おう……じゃなくて」

「お、おう(小さくサムズアップ)」

「えへへ……ありがと」

 

 なんだよ……可愛いじゃねえか……こん畜生。

 

「……」

 

 戦闘服姿の雪ノ下があらわれた!

 

 雪ノ下は、なにかいいたそうにこっちを見ている!

 

「な、なんでしょう、Ma’am」

 

 八幡は思わず答えた!

 

「……Ma’amですって?」

「い、いや、お前のその姿を見てたらそうとしか言いようがない……」

 

 つーか、こいつ何を着てもマジ絵になるな。

 まさか清楚系だけでなく、こういうワイルド系まで似合うとは……。

 迷彩服美少女なんて誰得だよ? 俺得だよ。

 

「つまり、本能的にわたしを上位者だと思ったわけね。あなたにしては懸命な判断だわ」

「……そうまでして俺の上に立ちたいのですか」

「それが自然の摂理だからよ。わたしは不自然なものは嫌いなの」

「……」

 

「ねー、写真撮ろー!」

 

 由比ヶ浜が言い出し、急きょコスプレ撮影会開催の運びとなってしまう。

 

「遊んでいる時間はないのだが……」

 

 困惑顔の相良を、不敵に笑ってこれでもかと挑発。

 

「まぁ、いいじゃないか、相良。しょせんゲームなんだからよ。これが日本の普通の高校生だぜ」

 

(こ、怖え……マジで怖え……心臓とまりそうだぜ……)

 

 顔は不敵、心は涙。

 

 だが……いいぞ。

 怒れ、滾れ、そして苛立て!

 そのすべての感情が、お前に隙を作るのだ、相良! これぞ二天バカボンド流兵法の極意!

 

 しばらく携帯でパシャ!パシャ!と撮影が続いた。

 得に小町と由比ヶ浜が執拗に雪ノ下を撮影しまくっていた。まぁ、2人とも雪ノ下の大ファンだからな。

 雪ノ下はコスプレ撮影というものがよく分かってないらしく、2人に言われるがままに困惑顔で色々ポーズを取っている。ある意味こいつも相良と同類だ。

 

(それにしても……ミリタリールックな雪ノ下。実にいいですね……ええ)

 

「はぁ、はぁ……!」

 

(……お前が隣ではぁ、はぁ、してなければ最高なんだけどな……材木座)

 

 

           ×     ×     ×           

 

 

「どうした、相良。君も彼女らと一緒に撮影会に参加したらどうだ?」

「平塚先生……いえ、自分は」

「わからないか、ああいったものの楽しみ方が」

「……申しわけありません」

「謝らなくていい。別に責めているわけではないのだから。ただ世の中にはああいう娯楽もあるということを心の片隅にとどめておいてほしい。そうすればあるときふっと君にも興味が湧くときがくるかもしれないからな」

「……自分にはそうは思えません」

「正直な男だな、君は。でも人の心なんてどう変わるかわからないものだよ。昨日まで嫌いだった物が今日は好きになっていた。そんな経験が君にはないか?」

「……」

「ん? なんだね?」

「…………カレー」

「カレー?」

「……自分はこれまでカレーにはナンが一番だと思っていました。ずっと食べ慣れてきた食材なので。ですが今はご飯で無性に食べたいのです……そういうことでしょうか?」

「ああ、そういうことだ。その言葉を聞いてすっかり安心したよ、相良。君も彼ら、彼女らと何も変わらない生徒だとわかって」

「……」

「どうやら撮影会が終わったようだな。さあ、行きたまえ。皆が待っている」

 

 

           ×     ×     ×           

 

 

 突発的な撮影会が終わると、それからしばらく相良による銃器や戦術に関するごく初歩的なレクチャーが始まった。

 インストラクターの北野さんは、『本格的なことは相良くんの方が全然詳しいから』と自分はエアガンのテクニカルな部分のみ受け持った。

 

 相良のレクチャーは非常に的確でわかりやすかった。

 なにより忍耐強い。

 素人で不器用な由比ヶ浜や戸塚にも、決して苛立つことなく丁寧に教えていく。

 

 その真剣さが乗り移ったように、いつの間にか全員が相良と同様の表情になってエアガンを構え、奴の話に聞き入っている。

 

「挟撃は非常に有効な戦術だが互いに火線が重ならないポジショニングをすることが絶対条件だ。標的の向こうに味方がいる――そんな位置取りは絶対にするな。味方を殺すことになる」

 

 相良が黒板に学校の見取り図を書いてチョークで叩きながらいちいち説明する。

 話を聞くうちに気づいたのは、相良のレクチャーがすべて今回の俺たちに向けられていることだった。

 複数人数で立てこもり、突入してくる単独の敵を迎え撃つ。

 そんな現実に発生する可能性の低い状況を想定して説明している。

 

 

 ……とんでもなく物騒な話をしているはずなのに、どこまでも純粋で誠実。

 ……この国ではほとんど役に立たないことだというのに、それでも懸命に教え伝えようとする滑稽なほどの生真面目さ。

 ……上辺だけでない、いや上辺がない存在。

 

 ……そんな人間がこの世にいるのか……?

 

 ……なんなんだ? あいつを見てると感じる、この物悲しい涙が零れそうになる感覚は……?

 

 ……人が人にこんな感情を抱くなんて……傲岸で不遜だ。許されない想いだ。

 ……それでも……俺は確かにあいつに……心を揺さぶられている……感動している……。

 

 ……俺は今……あいつに……相良に魅入られているのか……?

 

 

「最後に銃のセーフティーは必ずかけろ。特に人に手渡すときには絶対だ。これは玩具でも徹底しろ。実銃なら暴発して死人出すからな。素人はむしろそういう時が危ない。肝に銘じて絶対に忘れるな。いいか絶対にだぞ」

 

 相良にくどいほど念を押されて、全員が北野さんに教えられたとおり自分のエアガンの安全装置を確かめている。

 

「俺からは以上だ――比企谷、あとを頼む」

 

「……」

 

「比企谷」

 

「お、おう」

 

「あとを頼む」

 

「りょ、了解だ」

 

 相良が引っ込み、代わって俺がみんなの前に立つ。

 相良の落ち着きぶりにくらべて、俺のキョドりぶりの天晴れなことと言ったらない。

 見事なほどの対比、コントラスト。もうね、葬式の垂れ幕ぐらいの差。あれ、もしかして今、死亡フラグ立てちまったか?

 

「そ、それじゃ今回のゲームのルールを発表する」

 

「今回のゲームの設定はこうだ。相良を除く全員がテロリスト役になって、人質をとって学校に立て籠もる。そして相良が1人でその人質を救出する」

 

 単純明快。

 なにも難しいことはない。

 

「相良が死ねばもちろんそこでゲームオーバー。テロリスト側の勝利。テロリスト側が全滅するか、人質を救出されて2人で校舎脱出したら相良の勝利。テロリストを全滅させるにせよ、脱出するにせよ、2人が生き残るのが相良の条件だ。カミカゼ・アタックは認めない」

 

「了解だ」

 

「そして肝心の人質役だが、これが由比ヶ浜にやってもらう」

「えーっ!? せっかく着替えたのに! ヒッキー、あたしもテッポー撃ちたいよ!」

「いや、だってお前『フレンドリー・ファイア』しそうだから……」

「フレンドリー・ファイア? なにそれ? キャンプ・ファイアーみたいで楽しそう!」

「……いや、味方を背中から撃つ間抜け野郎のことだから、それ」

「なんだし!」

「人質は可愛い女の子って相場が決まってるんだよ。他に適任者がいないんだ。引き受けてくれ」

 

 殺し文句。わかってはいたが俺も卑劣だ。

 でも実際問題として、雪ノ下はこちらの切り札的存在だし、小町は性格的に絶対ジッとしていない。下手したら武器を奪ってテロリストに襲い掛かってくる。

 ルックス的に戸塚は最高だが、あいつのプライドを考えるとこれもボツ。

 平塚先生は……考えるだけでミスキャスト。

 北野さんはレフェリー役を務めてもらうからこれもまた除外。

 となると、残るのはやっぱり由比ヶ浜しかいない。

 

「か、可愛いだなんて……そんなことないよ……でもヒッキーがそこまでいうなら……うん、いいよ……」

 

 すまん、由比ヶ浜。

 でも人質役は、どうしてもお前じゃなくちゃダメなんだ。

 

「オーケー、それじゃ相良。悪いがいったん学校の敷地内から出てくれないか。こっちの準備が整ったら由比ヶ浜から救助要請を入れさせる。それがゲーム開始の合図だ」

 

「了解した」

 

 相良は自分の装備を担ぐと、由比ヶ浜を見た。

 

「由比ヶ浜。人質は辛い。だが決して諦めるな。騙すな、騙されるな。隙ではなく気迫をみせろ」

「う、うん、わかった」

 

 そして相良は部室を出て行った。

 

「……なんて言うか、格好いいね、彼」

 

 リア充の中のリア充。イケメンの中のイケメン。葉山隼人をしてそう言わしめたか、相良宗介……。

 

「それでいい。奴はこのゲームにおいて正義のヒーローだ――さあ、それではヒールの諸君。奴を血祭りにあげる我が作戦を説明しよう!」

 

 

           ×     ×     ×           

 

 

 そしてゲームが始まった。

 開始3分。早くも廊下の向こうに相良の姿が見えた。早い。流石だ。

 テロリストたちが机で作ったバリケードの隙間からエアガンの銃口を向ける。

 

 と、相良が渡り廊下の陰から何かを放った。

 

「「「「「「「……え?」」」」」」」

 

 炸裂するスタングレネード。

 

 目も眩む閃光と、耳をつんざく轟音。

 

 キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!

 

 全員が目を回してひっくり返る。

 

 間髪入れず、相良が突入してくる。

 軽々と机を乗り越え、悶絶している俺たちの頭と胴に、冷静に2発ずつ撃ち込む。

 

「クリア――問題ない。テロリストは全員射殺した。俺の勝ちだ」

 

「問題大ありよ! 相良くん、スタングレネードは使っちゃダメ!」

 

「なん……だと!? 北野、それは本当か!? そんなことルールでは言ってなかったぞ!?」

 

「サバゲーに本物のスタングレネードを使うなんて、ルール以前の問題でしょ! ダメ! もう一度最初からやりなおし!」

 

「……むぅ、まったく理解できん」

 

 

 そしてテロリスト側の回復を待って、Take2へ。

 

 The Unstoppable Serjeant. 誰も彼を止めることはできない。

 

 

……to be continued

 

 




お読みいただき、ありがつございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。