……アレ? ここは? わたしは一体…。
気がついたらわたし、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、薄暗い場所で椅子に座っていた。
そう言えば衣装が、転身前に戻ってる?
「お待ちしていました、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん」
いきなり声をかけられて慌てて前を向くと、そこには、背中に白い大きな翼を生やした綺麗なお姉さんがいた。
「……天使?」
「はい、その通りです」
わたしのつぶやきを肯定するお姉さん。…って、この状況って!?
「これってもしかして、わたし死んじゃったの!? ここってまさか、死後の世界!?」
「はい。貴女は先程お亡くなりになりました。理解が早くて助かります」
いやいやいや! こんなこと、理解したくも無かったんですけど!
「ち、ちょっと待って。まさか間違って死なせちゃったとか…?」
「いいえ。ほんの僅かですが、あの場面で死ぬ可能性は存在していました。貴女は、その可能性を引き当ててしまった貴女なのです」
天使さんの説明にショックを受けたけど、同時に納得もしている。
身体を酷使したツヴァイフォーム。8枚目のカードの英霊が放った攻撃。命を落とす要因は充分にある。
「あの、戦いはどうなったんですか?」
わたしは、わたしが死んだ瞬間のことは憶えてない。
みんなは、どうなったんだろう。ミユは助け出せたの? わたしと痛覚共有している、クロは無事なの? リンさんは、ルヴィアさんは、バゼットさんは…。
「貴女が放った攻撃であの英霊は倒れ、美遊さんは解放されました。しかし貴女の魔術回路はその負荷に耐えきれず、貴女は意識を失い、そのまま息を引き取られたのです」
そっか。うん。かなりムチャしちゃったもんね。
わたしは、泣きたくなる気持ちを抑えこんた。まだ、聞かなくちゃなんないことがあるんだから。
「クロは、どうなったの?」
「クロエさんは生きてますよ。彼女にかけられていた呪い、『死痛の隷属』は、死を伝えるほど強力なものではありませんから。
あとのお三方も、目立った怪我などはしていないようですね」
……リンさんの、死を伝えるって話、嘘だったの!? いや、お陰でクロも、しばらくの間は大人しかったんだけど。
……って、今は関係ないよね。
「……うん。でも、みんなが無事でよかった」
わたしの一言に、だけど天使さんが表情を曇らせる。
「美遊さんは、捕まってしまいました」
「……え?」
「あの英霊の宝具によって空間に亀裂が入り、美遊さんがいた世界から刺客がやって来たのです」
---並行世界のお姫様
あの、英霊の子が言ってた言葉。並行世界からやって来たミユは、わたしと同じように、生きた聖杯として生まれてきた。
それなら、
「貴女を失った美遊さんは、抵抗する気力もなくあっさりと捕まり、その後に起きた時空の揺り返しによって、あの場にいた皆さんが美遊さんの世界へと飛ばされたようです」
そんな! そんなのって…!!
「み、みんなを助けたい…!」
「それは出来ません。天界規約によって、貴女の世界での死者の蘇生は許されていません」
そんなの、言われなくったって判ってる。それがあの世界での常識だから。でも、それでも…!
「……ですが、方法はあります」
「……え」
「そもそもここは、若くして命を落とした者を導くところ。本来その責にあった女神は訳あってここにはいませんが、今は私が代行しています。
ここでは、生まれ変わって赤ん坊からやり直すか、天国に行ってぼうっと暮らすかを選んでもらっていました」
て、天国って、つまんないとこだったんだ。
「そして、ここからが本題ですが。
最近ではひとつ力を与えて、魔王が猛威を振るう世界に転生してもらう、という選択肢が増えました」
「ええっ!? それって所謂、特典付けて神様転生ってヤツ!?」
「はい。本当に理解が早くて助かります」
今時の、サブカルに精通したオタクをなめないで欲しい。
……ミミみたいなのは、専門外だけど。
「それで、もし魔王を倒したあかつきには、その功績を称え、どのような願いでも叶えて差し上げられます」
「どんな願いでも!?」
「はい」
そうか。天使さんが言ってた方法って、このことだったんだ。
「だったらもちろん、わたしを転生させて!
魔王を倒して、わたしはみんなのところに帰るんだ!!」
みんなのところに帰って、一緒にミユを助ける。たとえどんなに僅かな可能性でも、わたしは絶対にあきらめない!
「わかりました。それでは特典を選んでください」
そう言われて渡されたカタログに、わたしは目を通す。
カタログにはそれこそ、「
「うーん、どうしよう?」
『これだけあると、なかなか決めかねますねー』
「そうだねー…」
……………………。
「って、ルビー!?」
「な、何ですか!? 一体いつの間に!?」
天使さんも驚いてる。それじゃあ天使さんは関係ないんだ。だったら一体…!?
『イリヤさんと一緒に、ずっといましたよー? まあ、髪の毛の中に隠れてましたけど』
「ですが、どうやってここに!?」
『いやー、推測の域を出ませんが、時空の揺り戻し現象に巻き込まれたときに、ここへ引っ張られていったイリヤさんの魂に私も引っ張られたみたいですねー。
おそらくは、イリヤさんとの契約が原因じゃないんですかー? 限定的とはいえ、第二魔法が使えることも関係しているかもしてません』
「第二魔法…、並行世界の運用ですか」
並行世界の運用? よく分かんないけど、ルビーには並行世界に関わる力があって、そのお陰でここに来ることが出来たってこと?
『運用と言ってもくそジジイじゃありませんから、並行世界から使用者の可能性を引き出す程度のものですけど。まあ、今回のは完全にイレギュラーですね』
うーん、よくわかんないなぁ。とにかくルビーは、偶然ここに来たって事でいいんだよね?なら。
「あの、質問ですけど。ルビーを一緒に連れていくのは、特典になるんですか?」
「え、それは…。少々お待ちください」
そう言うと天使さんはどこかに行ってしまった。多分偉い人、じゃなくて神様に聞きに行ったんだ。
しばらく待つと天使さんが戻ってきた。
「ええと、今回はイレギュラーということもあり、貴女の持ち物として特典には含まないそうです」
そうなんだ。だったら、やっぱり。
「それなら特典は、わたしたちが持ってた7枚のクラスカードでお願い、出来ますか…?」
言いながら、カタログに無いけど大丈夫なのかなって思って、心配になってきた。
「そうですね。貴女が持っていた3枚のカードは取り寄せることが可能ですが…。
アーチャーのカードはクロエさんの核となっていますし、バゼットさんの所持するカードも、取り寄せたら騒ぎになるでしょう」
「アー、ソーデスヨネー」
そっかー。言われてみたら確かに…。
「なので残りの4枚は、こちらで同じ物を用意いたします」
「えっ! そんなこと出来るの!?」
「ええ。もちろん貴女が、魔王を打ち倒し元の世界に戻るという願いを叶えた場合は、その4枚は回収させていただきますが」
「それで充分だよ!」
『さすがは神、といったトコですねー。どんなに複雑な術式で編まれた礼装でも、所詮人間の魔術師が作製した物など、簡単に再現できるんですから』
わたしには魔術のことはよく分かんないけど、多分神様と比べちゃいけないと思う。
「それでは貴女を、異世界へと送ります。文字や言葉は、転送の際に覚え込ませますので安心してください。失敗すると、パーになりますが」
「今、不穏な言葉が聞こえた気がするんだけどッ!?」
言ってる間にも、わたしの足下に現れた魔法陣が光を放って。
「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん。願わくば、数多の勇者候補の中から、貴女が魔王を打ち倒すことを祈っています。
……さあ、旅立ちなさい!」
「無視したッ!?」
このツッコミを最後に、わたしは異世界へと飛ばされた。
書いてる作品多いのに、また新作を書いてしまいました。