このカレイドの魔法少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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お久しぶりです。本当は後編も書き終わってから投稿しようと思ったのですが、おめでたいので緊急で投稿します。


この真っ当なパーティーとクエストを!

≪イリヤside≫

「大喜びで代わってやるよおおおおおおっ!!」

 

カズマさんは、それはそれは大きな声で絶叫してました。

 

 

 

 

 

それは雪精退治から数日後のこと。カズマさんもようやく、荷物持ちみたいな簡単な仕事を受けられるくらいに回復して、ギルドの掲示板をチェックしていた。

そんなカズマさんに酔っ払いのお兄さんが絡んできた。上級職ばかりのパーティーで荷物持ちの仕事を探してるカズマさんに、イチャモンをつけてきたんだ。

そのお兄さんの心ない言葉にカズマさんは耐えていたし、ベルディアの時のことを知ってる人達はその発言をしかめっ面で聞いてる。わたし達もカズマさんを庇うように声をかけた。

……だけど、このお兄さんの次の一言で、カズマさんの堪忍袋の緒が切れた。

 

「上級職におんぶに抱っこで楽しやがって。苦労知らずで羨ましいぜ! おい、俺と代わってくれよ兄ちゃんよ?」

 

そしてカズマさんは、さっきの絶叫をあげたのでした。……あれ? これってわたしも入ってるの?

 

「代わってやるって言ったんだ!」

「えっと、カズマさん?」

「確かに俺は最弱職だ!」

「あのぅ…」

「お前、その後なんつった!」

 

……うん、完全に頭に血が上ってて聞こえてないや。

 

「いい女! ハーレム!! おいお前、その顔にくっついてるのは目玉じゃなくてビー玉かなんかか? どこにいい女がいるんだよ!」

 

カハァ! ……うう、そりゃあ確かに、わたしはまだいい女って言われるような歳じゃないけど…。因みにアクアさん達も、「あれっ!?」とか言いながら、それぞれ自分を指差してる。

 

「てめー、この俺が羨ましいって言ったな!」

「あ…あのう……」

 

お兄さんの胸ぐらを掴んでるカズマさんに、今度はアクアさんが代表して声をかけたけど、やっぱりカズマさんは聞く耳を持たないでいる。

 

「ご、ごめん…。俺も酔った勢いで言い過ぎた。でもあれだ!隣の芝生は青く見えるって言うが、お前さんは確かに恵まれてる境遇なんだよ! 代わってくれるって言ったよな? なら、一日だけ代わってくれよ?

おい、お前らもいいよな?」

 

お兄さんがパーティーのメンバーにそう声をかける。

 

「俺は別にいいけどよお…。今日のクエストはゴブリン狩りだし」

「あたしもいいよ。でもダスト、居心地がいいからこっちのパーティーには帰ってこないとか言わないでよ?」

「俺も構わんぞ。ひよっこ一人増えたってゴブリンくらいどうにでもなる」

 

お兄さん、……ダストさんのパーティーからも許可が下りた。

 

「ねえ、カズマ。勝手に話が進んでるけど、私達の意見は通らないの?」

 

アクアさんの意見にカズマさんは。

 

「通らない」

 

デスヨネー…。

話がまとまるとダストさんは、アクアさん達と一緒に掲示板に向かっていった。……あれ? わたしは?

 

「……フッ」

 

はえっ!? カズマさん?

 

「あいつめ、せっかくうちのパーティーの良心を残しておいたのに、無視して行っちまいやがった。この憐れなチンピラに敬礼を!」

 

言ってカズマさんは、警察官みたいにビシッと敬礼をした。と言うか、それってつまり。

 

「わたしは、カズマさんと一緒でいいの?」

「当たり前だろ? 俺はあのチンピラに、チャンスを与えただけだ。あいつはそのチャンスを掴み損ねたのさ。

あいつ、絶対苦労するぞ?」

『(カズマさん、悪い顔ですねー)』

 

ルビーが耳許で、こっそりと呟いた。

 

 

 

 

 

「俺はテイラー。片手剣が得物の[クルセイダー]だ。このパーティーのリーダーみたいなもんさ」

 

そう自己紹介をするテイラーさん。カズマさんが、自分が指示を出してたことを言うととっても驚いてた。

 

「あたしはリーン。見ての通り[ウィザード]よ。中級魔法まで使えるわ」

 

そう言うリーンさんはだけど、羽織ってる青いマント以外は向こうの世界の衣装に近い。女子中高生の普段着みたいだ。

でも、それよりも気になるのは、お尻から伸びた縞模様の、太くて長い尻尾。あれってホンモノ? アライグマのようなそれを見てると、何だかモフモフしたくなる。……ってそうじゃなくって、リーンさんっていわゆる獣人さんなのかな? 尻尾以外はそれっぽくないけど。

 

「俺はキース。[アーチャー]だ。狙撃には自信がある」

 

キースさん、アーチャーなんだ。何だか軽い感じだけど、ダストさんよりマシかな?

 

「じゃあ、改めてよろしく。俺はカズマ。クラスは[冒険者]だ」

「えっ、あ、わたしはイリヤスフィール。イリヤって呼んでください。クラスは[メイガス]です」

 

カズマさんに続いて、わたしも慌てて自己紹介をした。

 

「[メイガス]? 初めて聞くクラスだな」

 

テイラーさんがそう言ったけど、なんて答えたらいいんだろう? すると。

 

『フッフッフ! [メイガス]とは、イリヤさんにのみ与えられた奇跡のクラスなのですよー!』

 

そう言いながら、わたしの髪の中からルビーが飛び出した。というか、神秘の秘匿はどうしたのー!?

 

「ちょっと、何これ!?」

「喋る魔道具…?」

 

リーンさんとキースさんが驚いてる。テイラーさんは声を上げないけど、やっぱり目を丸くしてるし。

 

『私はカレイドステッキのマジカルルビー。イリヤさんのパートナーで、最高位の魔術礼装…、こちらで言う魔道具です。

私のことは、ルビーちゃんって呼んでね!』

「お前は宇宙一の天才科学者かっ!?」

 

よくわかんないけど、ルビーのセリフはなんかのパロディらしい。

 

「ま、まあ、よくわからんが…。

ともかく、ゴブリンの討伐なんて美味しい仕事が転がり込んできた。というわけで今日は、山道に住みついたゴブリンの討伐だ」

 

気を取り直したテイラーさんが、依頼の説明をしてくれた。なんかこの人も気苦労が絶えなさそう。とりあえず、ルビーが迷惑かけてスイマセン。

 

 

 

 

 

「しかし、なんでこんな所に住みつくのかな、ゴブリンは。まあおかげで、ゴブリン討伐なんて滅多に無い、美味しい仕事が出来たわけだけどさ!」

 

討伐地点に向かう中、リーンさんがぼやき混じりで言った。その後ろを、みんなの荷物を持って着いていく、わたしとカズマさん。因みにカズマさんが殆どの荷物を持ってくれてる。

 

「ねえ、カズマさん。リーンさんが言ったのって突き詰めたら、『どうして魚は水の中にいるの?』ってのと同じだよね?」

 

確かにリーンさんが言うように、こんな木々の生えない岩だらけの場所にいる理由なんてわかんないけど。

 

「うん、まあ、そうなんだが…」

 

……うん? なんだろ? 随分歯切れが悪いけど。

 

「この際だから、教えてやる。いいか、この世界ではな、サンマは畑で採れて、バナナは川を泳ぎ、キャベツは空を飛ぶんだ」

 

……………………は?

 

『ちょっとカズマさん、からかうのも大概にしてくださいよー』

「お前に言われたくねーよ! 言っとくが、冗談でもなんでもないぞ。俺も何度ツッコミを入れたことか!」

 

そう言ったカズマさんは、どうも嘘を吐いてるようには見えない。でもだからって、そんな話、俄には信じられない。だからわたしは、確認することにした。

 

「ねえ、リーンさん。わたし、カズマさんと同じトコ出身だからコッチのことに疎いんだけど、サンマって畑で採れるの?」

「え? うん、養殖物のサンマは畑で採れるよ?」

 

うわっ、本当だった!? 異世界、恐るべしっ!

 

「まあ、イリヤちゃんはまだ幼いから、常識に疎くても仕方ないだろ?」

 

キースさんがフォローしてくれたけど、向こうの常識はもう少し知ってるからね?

そんな中、テイラーさんは立ち止まり地図を確認し始めた。

 

「ゴブリンが目撃されたのは、この山道をてっぺんまで登りちょっと下った所らしい」

 

テイラーさんが気を引き締めるようにと注意する。……うん。わたしって気持ちの切り替えが下手だからなー。気をつけないと。

そして更に山道を進んで行くと、カズマさんが突然ぴくりと反応する。

 

「何かこっちに向かってくるぞ。敵感知に引っかかった。一体だけだが」

 

敵感知って、クリスさんが使ってた…。

 

「お前、敵感知なんて持ってるのか? と言うか一体だと? それはゴブリンじゃないな。そこの茂みに隠れたところで、すぐに見つかっちまうだろう。迎え撃つか?」

「いや、多分見つからないと思うぞ。俺、潜伏スキル持ってるから。このスキルは使用者に触れてるメンバーにも効果がある」

 

潜伏スキルを持ってると言ったカズマさんに、テイラーさん達が目を丸くしてる。

 

「わたしもひとり用だけど、潜伏に似たスキルが使えるから」

 

続けて言うわたしに、更に驚いてみせるテイラーさん達。わたしはクラスカードを取り出して。

 

「クラスカード[アサシン]、夢幻召喚(インストール)!」

 

夢幻召喚と同時にわたしの衣装が、ホットパンツ風の袖無しフード付きワンピになった。

カズマさんを含めた四人は潜伏を使って茂みに、わたしは気配を遮断して木の枝に飛び移る。そうして息を潜めていると進行方向から、以前絵で見たことある、大昔に滅んだっていうサーベルタイガーに似た、全身真っ黒な大型生物が現れた。

その生物はしばらく辺りを嗅ぎ回ったあと、わたし達がやって来た方へと消えていった。

 

「こここ、怖かったぁ! 初心者殺し! 初心者殺しだよっ!」

 

初心者殺し? なんか物騒な名前なんだけど。

 

「あれだ、ゴブリンがこんな街に近い山道に移り住んでるのは、初心者殺しに追われたからだぜ」

「しかし厄介だな。よりにもよって、帰り道の方に向かっていったぞ」

 

キースさんとテイラーさんも、口々に言ってくる。わたしは気配遮断を弱めて、みんなの傍に降り立つ。

 

「あの、テイラーさん。初心者殺しってそんなに危険なんですか?」

「ああ。あいつはゴブリンやコボルトといった、駆け出し冒険者にとって美味しい、比較的弱いモンスターの近くをうろついて、弱い冒険者を狩るんだよ。つまりゴブリンをエサに、冒険者を釣るんだ。

しかもゴブリンが定住しないように、ゴブリンの群れを定期的に追いやり狩り場を変える、狡猾で危険度の高いモンスターだ」

「「なにそれ怖い」」

 

テイラーさんの説明に、わたしとカズマさんが思わずハモった。

 

「とりあえず、ゴブリン討伐を済ませるか?」

 

そう提案したテイラーさんによると、初心者殺しは普段、冒険者をおびき寄せるエサとなるゴブリンを守ってるので、ゴブリンを退治すればその血の臭いを嗅ぎつけてやって来るに違いない。だから途中の茂みに隠れてやり過ごそうって事らしい。

 

『まどろっこしいですねー。イリヤさんならあんな…』

「(しーっ! わたしは無駄な戦いはしたくないよ。冒険者として命を奪う覚悟は出来てるけど、だからって無駄に命を奪う気なんてないから)」

 

わたしがそう小声で言うと、翼で頭を掻く仕草をしてからルビーは言った。

 

『まったく、甘っちょろいですねー。でも、ま、そこがイリヤさんらしいっちゃらしいですけど。それに血生臭いのなんて、魔法少女らしくないですからね』

 

いや、モンスター討伐してる段階で、充分血生臭いと思うけど。

なんてちょっとした会話をしているうちに、テイラーさんの意見で行くことに決まってた。まあ、わたしもそっちのがよかったから、全然問題ないんだけど。

と、リーンさんがわたしが背負ってる荷物を手に取り。

 

「……イリヤ、荷物渡して。もし初心者殺しに会って逃げるとき、イリヤも身軽な方が良いからね」

 

うわぁ、リーンさん、いい人だぁ。

するとテイラーさんとキースさんが顔を見合わせて。

 

「お、おいカズマ。荷物をこっちに渡せ」

「俺の荷物は俺が持つから」

 

なんて言ってくる。

 

「「お、俺達は別に、カズマのスキルを頼ってる訳じゃないからな?」」

 

……あー、そう言うことかぁ。わたしとカズマさんは思わず見つめ合い、ふたりで同時に笑ってしまった。




久々の続きです
やっとリーンげふんげふん! ダストが出せた。カズマの悪友ですからね。アニメのようなストーリーカットは出来ません。
そしてリーンには、凛の代わりにお姉さんポジになって欲しいです。決して名前が似ているからではありません。
クリスは、まあ、ちょっと枠が違う予定なので。

さて、遂に新作アニメ化決定しましたね。実にめでたいです。
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