このカレイドの魔法少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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10年に一度の宴。これはその、あったかも知れない物語である(笑)。


番外編・この生物(ナマモノ)狂(あるいは凶)宴(カーニバル)を!

≪カズマside≫

テイラー達とのクエストの翌日。昼近くに起きた俺は、空腹を満たすため、宿を出てギルドへと向かっていた。

 

「あれ、カズマさん?」

 

後ろから声をかけられ、俺は振り返る。

 

「よう、イリヤ」

 

右手を軽く挙げ、銀髪赤眼の少女に挨拶をした。

 

「カズマさん、これからギルド?」

「ああ。昨日は遅かったからな。そう言うイリヤは…」

『実はイリヤさんもこれからなんですよー。起きたのだって、ついさっき…』

「ルビー、余計なこと言わないでッ!!」

 

なんだ、イリヤも同じか。

 

「まあまあ、そんなに恥ずかしがることないって。昨日はクエスト完了まで時間がかかったし、その後打ち上げで、お開きになったのは深夜を回ってたからな。疲れも溜まってただろうし、仕方がないさ」

「そ、そうだよね!?」

 

縋るように言うイリヤ。女の子としては、昼近くまで惰眠をむさぼってたのが余程恥ずかしかったらしい。うん。どこぞの駄女神にも見習ってほしいものだ。

 

『まあ、いいですけどー。イリヤさんはこれがクセにならないように、気をつけてくださいよー?』

「あう!? うん、気をつける…」

 

なんか、俺の耳にも痛いんだが。

 

「じ、じゃあギルド行って、ブランチといくか?」

「あ、うん、そうだね」

 

話を逸らす俺に、乗っかるイリヤ。跋の悪い話はこれくらいにした方が、お互いのためだ。

気持ちを切り換えた俺が歩き出そうとしたとき、視界の隅に、何か違和感のある物が映り込む。そちらに視線を向けた俺は、思わず体が固まってしまった。

 

「……ん? どうしたの、カズマさん?」

「……あれ、なんだと思う?」

 

俺が指差した方を見たイリヤが、やっぱり固まる。

 

「あれ、ケット・シーか?」

「猫の獣人さん?」

 

そう。そこにいたのは、身長60センチくらいで2~2.5頭身程の、ネコ耳と尻尾を生やした謎生物だった。

 

『あれはまさか…』

「えっ、なに? ルビーはなにか知ってるの!?」

『いけません! このままアレを放置していたら、世界観が崩壊してしまいますっ!』

 

なんだって!?

 

「おい、ルビー! 世界観が崩壊するって、……え、()()()?」

「世界じゃなくて?」

『世界観です。我々からすればあまりにもおかしい、この世界の常識すら覆してしまうでしょう!』

 

おいおい、冗談じゃねえぞ。サンマ畑や空飛ぶキャベツ以上のおかしな世界になるってのか?

 

「そんなの、黙って見過ごせ…」

「なんだニャ。あちしのはにゃしですかい、お兄さん方」

「「『!?』」」

 

いつの間にか、俺達のすぐ傍にまで来ていた()()

 

「おや。よく見たら、そこな銀髪幼女はロリブルマじゃにゃいですかい」

「ロリブルマッ!? なに? その謂われの無い誹謗中傷!?」

 

ううむ、イリヤの体操服姿は似合うと思うが、さすがにロリブルマは如何なものだろう?

 

「おや、お嬢さん。とぼけるのも大概にするニャ。タイガー道場や『こっちが本当! 次回予告!』でタイガーとわちゃわちゃしてたのを、忘れたとは言わせにゃいニャ?」

「忘れたも何も、そんな事は!?

…………タイガーってもしかして、藤村先生の事?」

 

ん? イリヤには心当たりがあるのか?

 

「そーだニャ! アンタはタイガーの弟子一号、ロリブルマニャ! その証拠にアンタは、藤村大河の事を知っていたニャ! ……うーん、見事にQED(証明終了)だニャ!」

 

いや、それ穴だらけだろ? ……おや、イリヤ?

 

「弟子、一号…。言われてみれば、そんな気も…?」

『イリヤさん! なに言いくるめられそうになってるんですか! あなたは【プリヤ(プリズマ☆イリヤ)】のイリヤさんであって、【ステナイ(stay night)】のイリヤさんではありませんよっ!』

「前も聞いたけど、プリヤって何!? ステナイってなんなのよっ!?」

 

ルビーがまた、ワケのわからないことを曰って、イリヤがツッコミを入れている。まあ、お陰でイリヤも、正気を取り戻したみたいだが。

 

「ニャニャ? よく見たら、割烹着の悪魔的人工天然精霊のステッキじゃにゃいかい!?」

『そうです! この私は、直接お目にかかったのは初めてですが、貴女のことはよぉく存じ上げてますよ! 型月世界の謎生物(ナマモノ)、その名もネコアルク!』

 

何だ、このシュールな絵面は。と言うか、型月世界って何だよ?

 

「ねえ、ルビー。ネコアルクってなんなの?」

『詳細は私にもわかりません。知っているのは、[グレートキャッツビレッジ]と言う空間が出身で、周りの状況をしっちゃかめっちゃかにしてしまう、ということです!』

 

……ん?

 

「それって、ルビーと一緒って事じゃないか?」

「あ、ホントだ」

『カハァ!? まさか、身内から攻撃を受けるとはッ!!』

 

いや、だからそういうトコだって。

 

「にゃはは。仲間割れとは片腹痛いニャ!」

「いや、割れちゃあいない」

「ツッコミ入れただけだし」

 

俺とイリヤはそれ、……ネコアルクだっけか? そいつにもツッコミを入れた。

 

『コホン。えーと、それはひとまず置いておきましょう』

 

コイツ、逃げやがったな?

 

『カズマさん、うるさいです』

 

コイツ、ついに俺のモノローグまで読みやがった!?

 

『単刀直入に伺います。貴女はどうやって、なんのためにこの世界へとやって来たのですか?』

 

この世界。そうだ。話が噛み合わないとはいえ、イリヤとルビーを知ってるネコアルク。そしてルビーは、そのネコアルクを知っていた。つまりこの生物…、いや、ナマモノは、元の世界かその並行世界に関係してるって事だ。

 

「にゃふふふ、そりはモチロン、この世界を第二の[グレートキャッツビレッジ]にするためだニャ!!」

「「ええっ!?」」

 

まさかの世界征服だと!? いや、しかし。

 

「世界征服が目的としても、どうやってこの世界に来たんだ? 世界なんて、そう簡単に移動できるもんじゃないだろ?」

 

そう。イリヤの[小聖杯EX]だって、異世界転移どころかアクアを天界に帰すことも出来なかったんだ。

 

「知りたいかニャ? ……そう。それはあちしが、盗んだパソコンで走り出した時のこと」

 

なんか回想が始まった!? と言うか、パソコン盗むんじゃねえよ! いや、それ以前に、「走り出した」って意味不明だし!

 

「気がついたら、2032年の電子虚構世界ムーンセルの中にいたニャ」

 

2032年!? 電子虚構世界!?

 

「そこで出会った、クラスで二番目くらいにかわいい少女はくのん。パンツ履かないメガネっ娘ラニⅧ。そして何故かいた、ツインテの[あかいあくま]遠坂凛」

「リンさん!?」

 

遠坂凛? 確かイリヤの知り合いだったか?

 

「はくのんはNPCタイガーの無茶なお願いを聞きつつ、ムーンセル()の聖杯戦争を勝ち進んでいったニャ」

「「聖杯戦争!?」」

 

つい最近聞いたばかりの、パワーワードじゃねえか!

 

「まあ、あちしにはカンケーにゃいんだけどニャ?」

「関係ないのかよっ!!」

 

紛らわしい話、してんじゃねえっ!

 

「タイガーのお願いで回収してきた、願いが叶う[虎の魔法瓶]、たいころ風に言うと[虎聖杯]を失敬して、あちしはこの世界へとやって来たのニャ」

 

そう言ってどこからともなく取り出したのは、デフォルメされた虎の顔がプリントされた、まごう事無き魔法瓶。だが、ナマモノの証言が本当なら、見てくれはどうあれ本物の聖杯に違いない。……ということは!

 

「アレを手に入れれば、願いが叶え放題!!」

「カズマさん!?」

『急に欲望に忠実になりましたねー、この男は』

「うるさいわい! よく考えてみろ? あの化け猫はアレを使ってこの世界へ来たんだ。逆に言えば、アレを使えば…」

 

俺の説明に、ハッとするイリヤ。

 

「元の…ううん、ミユの世界に行けるかも知れない?」

「そういうこった」

 

イリヤをその世界に送ったあとは、聖杯を使ってあんな事やこんな事を…。うん。実に悪くない展開だ。

 

「というわけで、虎聖杯戦争の始まりだあああ!」

「えっと、ネコアルクさん。恨みは無いけどその聖杯、戴きます!」

『いきますよ。多元転身(プリズムトランス)!』

 

イリヤもやる気を出して、魔法少女に変身する。

 

「フッ、あちしと戦う気かニャ? わかったニャ、どこからでもかかってくるが…」

砲撃(フォイア)

 

ぼふん!

 

「ぐはあぁっ!」

「「『弱っ!?』」」

 

俺が見てもわかるくらい力を抜いたイリヤの魔力弾を受けて、吹っ飛ぶネコアルク。ハッキリ言って予想外の弱さだ。

いや、今はともかく、虎聖杯を回収して…!?

 

「フフフ、油断したゼ、ロリブルマさんよぉ」

「ロリブルマって言わないでよっ!」

 

口許を拭いながら、むっくりと立ち上がるネコアルク。イリヤは盛大にツッコミを入れる。

 

「じゃあ略してロリマニャ」

「「ロリマじゃない(ねえ)から!!」」

 

思わず俺も突っ込んだ。普段からカスマだクズマだゲスマだと言われてるせいで、なんか俺のこと言われてる気がしたんだが…。うん、言われないように気をつけなければ。

 

「へへっ、いいモノ貰っちまったからニャあ、お礼をしにゃきゃ気が済まねぇ。

喰らえ! 目から怪光線ニャー!!」

「どぅわあっ!?」

「うええええっ!?」

 

ネコアルクのヤツ、マジで目からビーム出しやがった! テメーはゲー○ーズの看板キャラかよっ!? ……ん?

 

「目がっ! 目がああああ!!」

 

目を押さえたネコアルクが、七転八倒のたうちまわってる。ひょっとして、自分で出した光線が眩しかったのか?

いや待て、これはチャンスじゃないか? 俺は右手を突き出して。

 

「『スティール』ッ!」

 

窃盗スキルを発動させた。右手にかかる重量感。その感触はフワッと…、フワ?

 

「まさかあちしを捕まえるとは、なかなかやるじゃにゃいですか、お兄さん?」

 

俺が掴んでいたのは、ネコアルクの頭だった。

 

「うわああああ!?」

 

思わず俺は、それを放り出す。

一体何が起こった? 窃盗スキルを使って、なんで本人ごと盗み出してんだ!?

 

「にゃはははは! 名残惜しいけど、そろそろ決着をつけるときが来た様だニャ!」

「いや、まだそれほど時間は経ってないんだが?」

 

イリヤもとなりで頷いている。

 

「まあ、文字数のカンケーもあるから、仕方ないのニャ」

『ああ、それはわかります』

「ルビー!?」

 

だからイリヤを、と言うか、俺達を困らせるようなこと言ってんじゃねえよ!

 

「と言うわけで、来たれ! 『猫二十七キャット』ッ!!」

 

右手を掲げ、声高らかに叫ぶ! ……が、何も起きる気配がない。

 

「コラ! さっさと来るニャ!」

 

ネコアルクが怒鳴ると、空間にぽっかりと穴があき、ひらりと一枚の紙切れが落ちてきた。気になった俺とイリヤは、紙切れを拾い上げたネコアルクに近づき、その紙を覗き込む。

 

『異世界までいくのめんどいからパス!ニャ』

 

紙切れには日本語で、そう書かれていた。流れる、気まずい空気。しかしネコアルクは突然バックステップで距離を取り、「フフフ…」と笑い出す。

 

「これはきっと、NECOゴッドがあちしに与えた試練! ならばその試練、見事に乗り越えて見せようニャ!」

 

猫ゴッドってなんだよ!? などと内心でツッコミを入れてると、ネコアルクに異変が! ネコアルクの足から物凄い勢いで、ジェット機の様に噴出する!

 

「喰らうニャ! NECOロケット・ボディ・アターック!

名前は適当ニャー! 」

 

ネコアルクが両腕を突き出し、こちらに向かって突っ込んでくる! 名前は適当かよっ!? って、やべえ! 反撃が間に合わ…、え!?

 

「物理保護・錐形(ピュラミーデ)!」

 

イリヤが間に入り、星型の魔力の盾の中心点を前方に引き伸ばした錐形に展開する。ネコアルクは、その側面を滑るように軌道を変え。

 

ドギュワシャッ!!

 

「のぎょわあ!?」

 

路地へと突っ込んで行き、盛大な音と悲鳴が聞こえた。

俺達が中へ駆け込むと、すっかり伸びているネコアルクの姿があった。

 

「……へへっ……こんな所で会えるたぁ思わなかったゼ……、さっちんよぉ……」

 

なんかうわごとを言ってるが…、さっちんって誰だ?

なんて思ってると、コロコロと転がってくるものが。アレは!

 

「「虎聖杯!」」

 

俺とイリヤのセリフが被る。俺が慌てて手を伸ばすと、その前を影が横切り虎聖杯をかっ攫っていく。

 

「誰!?」

 

イリヤが声をかけ、俺は影が移動した先へと視線を向ける。そこには、ネコアルクとよく似た、スカートを履いてはいるが、おそらく雄のナマモノがいた。

 

「吾輩はネコアルク・カオス。そこにいるネコアルクの同胞であるな」

 

タバコを噴かしながらニヒルに言う。俺から見たらただのギャグだが。

 

「クソッ! 仲間がいたのかっ!」

 

俺が歯噛みをしていると、ネコアルク・カオス…めんどくさいからネコ・カオスが、ゆっくりとタバコの煙を吐き出して言った。

 

「案ずるな。吾輩に闘う意志などない」

「闘う意志が、ない?」

「うむ」

 

ネコ・カオスは頷き、話を続ける。

 

「吾輩は、そこで気持ち良さそうに眠っている哀れなNECOと、虎聖杯を回収しにきただけだからな」

 

気持ち良さそうに…って、コイツマジで眠ってやがる! なんか、スゲえムカつくんだけどっ!

 

「……まあ、ぶっちゃけ? 世界征服なんて出来るワケないし? やるだけムダってヤツ?」

 

急に砕けた口調に変わり、そんなことを言い出すネコ・カオス。どうやら、虎聖杯に願うという発想はないようだ。

 

「でもだとしたら、お前はどうやってここに来たんだ? もうひとつ聖杯があるわけでもないんだろ?」

「フッ。我が[グレートキャッツビレッジ]の技術を舐めないでもらいたい。我らが科学力を持ってすれば、次元の壁を越えることなど造作もないことだ」

 

えっ? 向こうの人間、こんなナマモノに科学力で負けてるの?

 

『さらっと、第二魔法の定義を無視するのがムカつきますねー』

 

ルビーが何に怒っているのかは、さっぱりわからん。

 

「ではこのNECOと虎聖杯は、責任を持って回収しよう。なに、案ずることはない。月の聖杯戦争の監督役とはメル友だからな。間違いなくムーンセルへ送り届けよう。

では、さらばだ」

 

そう言ってネコアルクを引きずり、ネコ・カオスは立ち去っていった。

 

「……結局、虎聖杯は手に入らなかったね」

「ああ。まあ、アイツが言ってたことが本当なら、悪事に使われないだけマシ、って思うしかねえな」

 

もちろんただの負け惜しみだ。

 

『でも、まあ、あの生物(ナマモノ)を追っ払えただけでも御の字ですよ』

 

うん、まあ、それもそうか。確かにあれは、世界観を崩壊させかねない危うさがあったからな。

 

 

 

 

 

翌日。冒険者ギルドにて。

 

「……サトウカズマさんにイリヤスフィールさん。昨日街中で、戦闘を行われたそうですね?」

「「あ」」

 

受け付けのお姉さんの、少しばかり怒気を含んだ声に、俺とイリヤは同時に固まる。

 

「住人から苦情の声が寄せられて、困っているのですが?」

「「済みませんでしたあっ!!」」

 

俺達は、瞬時にDOGEZAして謝ったのだった。




本日2021年10月13日はFate/Grand Carnival 2nd
seasonの発売日。というわけで、グラカニならぬカニファンネタでした。いや、AATMかも。
ちなみにネコアルクの声のイメージは、アルクェイドの先代声優・柚木さんでお願いします。
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